第1話:目覚めたら、口座残高がバグっていた
初投稿になります!ノリと勢いだけで書いているので、人気が出なかったらサクッと打ち切ります(笑)。
※本作に登場する人物、団体、システム名はすべてフィクションであり、実在のあらゆる大富豪の弁護士軍団とは一切関係ありません。伏せ字も安全第一でお届けします。
「……は?」
朝、スマホのアラームを止めるついでに、なんとなく開いたネットバンキングの画面を見て、俺はベッドの上で完全にフリーズした。
いつもなら数万円、調子が良くて数十万円という、非常に親近感のわく生活費が表示されているはずの場所に、見たこともない桁の数字が画面からはみ出さんばかりに並んでいたのだ。
【現在残高:10,000,000,000,000,000,000,000,000円】
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……億、兆……京、垓……え?」
指で画面をなぞりながら必死に数える。日本の国家予算が年間でおよそ110兆円。それを遥かに超越したこの単位は、確か――『杼』。
俺の口座にはいま、1杼円という意味不明な大金が振り込まれていた。
アプリのバグか、あるいは新手のタチの悪いドッキリか。そう思いながらリビングへ行きテレビをつけると、ニュース番組のキャスターが信じられないほどの血相を変えて絶叫していた。
『緊急速報です! 先ほど、日本政府が発行していた国債、約1000兆円が「謎の個人投資家」によって一括で全額返済されました! これにより、長年日本を苦しめていた借金は一瞬でゼロになりました!!』
画面の下には「速報:日本国債、完済」の赤文字テロップ。そういえばさっき、画面の数字が本物かどうか確かめたくて、ノリで「国債を購入して返済する」みたいなボタンを適当に連打した気がする。あれ、マジだったのか。
「本当に、俺の金なのか、これ……」
ガタガタと震える手でスマホを操作し、今度は世界経済のニュースを開く。そこには、世界的なIT企業のトップであるビ○・ゲイツや、通販大手の創業者ジェ○・ベゾスが、緊急の合同記者会見を開いている映像が映し出されていた。
『我が社の株が、特定の個人に一撃で100%買い占められました……。一体どこの国家が裏にいるんだ……!』
彼らは青ざめた顔で冷や汗を流している。世界の大富豪たちが、揃って大パニックに陥っていた。しかし、1杼円を持つ俺からすれば、彼らの数十兆円という総資産なんて、床に落ちている1円玉のさらに半分くらいの価値しかないのだ。
試しに、俺はいつも通っているお気に入りの街、新○区と銀○の土地と建物を丸ごと買い取ってみることにした。お値段は合わせて約150兆円。画面の「購入ボタン」をポチポチッと2回タップする。
……さて、ここで普通の現代ドラマなら、ネットの有識者()の皆さんが「不動産登記の手続きはどうした」「名義変更に何ヶ月かかると思ってるんだ」「150兆円の送金なんて銀行のシステムが耐えられるわけないだろ!」と怒り狂うかもしれない。
だが、俺の口座にあるのはただの「1杼円」ではない。世界中の銀行や政府のAIシステムが『この口座の主を1秒でも怒らせたら、一瞬で世界の経済バランスが崩壊して地球が物理的に破滅する』と判断した結果、すべての法律や手続きを力技ですっ飛ばす超法規的決済システム――通称【ゴツゴウシュギ(ご都合主義)システム】が裏で自動発動していた。
意味としては、俺がスマホをタップしたその瞬間、裏では世界中のトップエリートたちが白目を剥き、血反吐を吐きながら、数秒で登記手続きを強制完了させていたのである。
結果、画面を2回タップしただけで、購入は無さに完了した。俺の口座からは、1杼円のうちの「0.00000000001%」くらいが引かれた。感覚としては、駄菓子屋で1円未満の端数を切り捨てられたくらいの、まったく痛くも痒くもない買い物だった。
数分後、スマホに1通の通知が届く。
『ビ○・ゲイツ氏、およびジェ○・ベゾス氏より、あなた様への緊急面会要請が届いています。今からヘリでそちらに向かわせるとのことです』
「……よし、とりあえず二人が来たら、コンビニでジュースでも買ってきてもらおう。お釣りは新○区ごとあげるって言えば、喜んで行ってくれるだろ」
こうして、ただ「お金を持っているだけ」で地球の裏ボスになってしまった俺の、お買い物無双ライフが幕を開けた。
(第2話:『世界のトップ、コンビニへ走る』 へ続く)
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