魔女の森
小さな村の更に森の近く
魔女の家のドアをノックする
「遅効性で誰が盛ったかわからない無味無臭の毒薬を下さい」
「ありません」
赤毛の魔女は素気なかった
「魔女なのに毒薬も作れないの?」
「作れないのでは無く、作ってはいけないのです。
私は人の助けになるような物しか作りません」
「じゃあ惚れ薬は?」
「……永遠に愛するような物は無理です。
一時的に好意を高めたり
愛を囁いたりする位なら作れますよ」
「じゃあそれ下さい。」
ファリンは悪い顔で笑った
まだ若い魔女は溜息をつき
薬草棚に向かう
何種類か植物の根っこを選び
鍋に入れていく
「それはサルバの根っこですか?」
「そうです。3週間乾燥させた物です」
「乾燥させると生の状態と何か違いが?」
「有ります。単純に濃度が上がるのと何故か気分が高揚する効果も出ます。それと一月以上干しても効果は変わらないんですよ。」
「ヒンピの実は?」
「サルバと合わせると幻覚症状が出ることがあって…今回は危険なので使わないですね。」
魔女と話すマーカスは楽しそうだ
年上好きだったのかしら?
暇なので家の回りでも散策しようかと思っていたら
熊みたいな男の人と可愛い赤毛の男の子が帰ってきた。
魔女は既婚だったようだ。マーカス残念。
程なく惚れ薬が出来上がる
瓶に詰められた惚れ薬を眺めてファリンはにんまりした。
「使い方はこの薬を相手にかけるだけです。かかった人は振りかけた相手に一時的に好意を持ちます。
効き目は三十分程でそこまで過大な効果はありませんよ?
例えば三十分の間に高い宝石を買わせるとか後々揉めるような使い方は止めて下さいね。」
「ありがとう。報酬よ」
以前オスカーからプレゼントされた小さな宝石付きのネックレスを渡す
「これはお代には高価すぎます。」
「良いの。貰って頂戴
もう私には必要無い物だから
それに正直持っていたくないのよね。あの男からのプレゼントなんて
あなた達で売っぱらって美味しい者を食べてね!それではさようなら!」
「私の作った惚れ薬なんて必要無いでしょうに」
窓から2人を眺めて魔女は不思議そうに呟いた。
魔女の家を後にし屋敷に歩いて向かう。
「どうやって惚れ薬を使うつもり?ファリンがオスカーにかけるの?」
「そうねぇ。他の人にかけ
させたりしたら巻き込んじゃうから自分でやるしか無いわね。
毒薬で殺せないから
惚れ薬を使ってシルフィード令嬢の前でオスカーと目一杯いちゃついて嫌がらせしてやるのが良いかと思って。」
「そんな事止めなよ」
「なんでよ?私はあいつらにほえ面かかせたいのよ」
マーカスは私の腕を掴む
真剣な顔だ。
「俺は面白いファリンが好きだ」
「私もマーカスは好きよ」
「結婚したい」
「無職は嫌!兄が家を継ぐから私は家を出なくちゃいけないしマーカスは次男じゃない!」
「俺は無職じゃないよ。国からの依頼で魔獣の研究者をしている。」
「中等学校中退でしょ?」
「学校で習える事が無くなったから行かなくなっただけ」
そういえばマーカスは小さい頃から頭が良かったような?
うむむと考えていると
顔にびしゃっと惚れ薬をかけられた
「ぶはっ!」
あれ?マーカスってこんなにしゅっとした素敵な顔だったかしら?
何だか全体的に輝いて見える。
好き。好きだわ!
「マーカス。好き」
家に帰ってきたと思ったらまた飛び出していった娘を心配して
探しに来た父や兄、使用人達が目撃したのは
結婚相手を探し中の娘とその従兄弟マーカスが
森でキスを交わす姿だった。




