第五話
長いです。すいません。
読んでいただけると大変ありがたいです。
雨が好きだ。しずくが地面に打ち付けられる音が好きだ。雨を浴びてずぶ濡れになったあと、両親にふかふかのタオルで身体を拭かれるのが気持ちよかった。
雨の思い出と同時に、まだ名前が思い出せない両親の顔がぼんやりと浮かび上がって来るような気がした。雨に当たったら、もっと思い出せるだろうか。でも、濡れるのは構わないけれど、外に行くにも靴なんてないし、そもそも、外に出る方法がわからない。
うーん、と考えていると、カタカタっと近くで音が聞こえた。音がした方を振り向くと、向かい側のベッドの近くに窓があった。
そうだ。窓だ。高くて届きそうになかったけど、ベッドからよじ登って窓の枠に手を掛けた。開けられる形のものか確認して、開けられそうだったので一気に全開にする。
ひゅぉおお…という音とともに、風と雨が入り込んでくる。私は雨を顔に受けながら、窓から下を覗いてみた。ここの部屋はどうやら二階みたいで、地面から少し距離があった。窓から見て左側に大きな門があって、雨にも関わらず結構な人数が行き来していた。道も整備されていて、レンガの道に雨が打ち付けられてきらっと反射している。
何となく下の方を見渡していると、あのお兄さんがやってくるのが見えた。なんだか嬉しくなってしまって、「おにーさーん!」と手を振って大声で呼んだ。
どうやら気づいてくれたみたいで、私の方を見てくれたけど、なんだか慌てているようだった。
なんでだろうと思っていたら、突然ぴかっと空が光った。雷だ。そう思ったときには、私の身体は宙に投げ出されるようにして窓から落ちていた。
そうか、お兄さんが慌てていたのはこういうことだったんだ。雨で浮かれていたのもあったけど、少し考えれば分かることだったのに。なんでわからなかったんだろう。落ちていく感覚が怖くて、ぎゅっと目をつむった時だった。
身体が風に乗ったように軽く、いや、本当に風に乗って、地面へと降りていった。魔法だ。
でも、なぜか私が知っている魔法とは違うものを感じた。
地面に足がつく前に、お兄さんが抱きとめてくれたので、足は汚れなかった。ちらっとお兄さんの顔を見上げると、心配そうな、複雑そうな顔をしていた。
「…大丈夫?」
その問いに、コクリと頷く。
「なんで窓から身を乗り出していたの?」
「…雨に当たりたかった」
お兄さんはため息をつくように軽く俯いて、「一回中に戻ろうか」といった。
※
びっっっくりした。窓から落ちてくるなんてやめてください。雨に当たりたいとか、風邪引く気…?なんて思ったことは一旦心の奥に仕舞って、ギルドの中に入り、受け付けの人に説明をしてから治療室へ向かう。
「ぺくちっ」
雨に当たっていたから当然だろうが、シエナさんは頬がほんのり赤くなっていて、いかにも風邪を引いていそうな様子だった。
「…どうしたんだ」
治療室に入ると、険しい顔をしたギルド長が待っていた。しかし、シエナさんがビクッとしたのを見たんだろうか。眉間のシワを薄めて「取り敢えず座れ」と小さい丸椅子を二つ差し出した。
シエナさんが座ったのを見て、ギルド長が「ドライ」と唱える。その瞬間、暖かい風が吹いて服や髪が乾いていくのを感じた。
別に僕までやってもらう必要はなかったけれどな、と思いつつ、隣をみると、シエナさんが訳がわからないというふうに首を傾げつつもギルド長を尊敬の眼差しで見ていた。
「風邪を引いているかも知れないから、ヒールでもかけてやれ」
とギルド長に言われたので、僕もヒールをかけると、ありがとうございます、と笑顔で言ってくれた。
もう少し大きくなったらどんなに可愛いんだろうと思ってしまった自分を恥じつつ、ギルド長の方に向き直る。その後は、ギルド長に根掘り葉掘り聞かれつつ、軽いお叱りを受けた後、シエナさんに僕たちのところで過ごしてもらうことでいいかということを聞いたりした。ちなみに返事は、
「お兄さんとリキさんの所なら安心出来そうです」
と言ってくれた。
「そういえば、まだお二人の名前を聞いていなかったのですが、聞いてもいいですか?あっ、私はシエナです!えっと…よろしくお願いします!」
自己紹介にこちらこそと返しつつ、僕も自己紹介を返す。
「僕はリッカです。突然一緒に暮らすことになって戸惑うかもしれないけど、よろしくね。えっと…ギルド長は、やっぱり…」
「…仕事上の都合により名乗ることはできない。呼び方はギルド長で大丈夫だ。」
ぶっきらぼうだなぁと思いつつも、シエナさんによろしくね、と微笑んでおく。
いろんなことがありつつも、僕とリキとシエナさんの共同生活が始まっていくのだった。
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