第四話
また長めです。最後まで読んでくれると嬉しいです。
少女が落ち着いてまた眠ってしまったあと、僕は弟から少女について聞いた。名前はシエナ。どうやら記憶を失くしていそうということ。自分がどうしてあそこに倒れていたのかもわからないそうだ。
それならやっぱり、身元や家族のこともわからないだろうし、やっぱりうちで預かるのがいいだろう。
「あいつ大丈夫かなー。」
「多分ね。ベットの横に置いておいたリンゴがなくなっていたし。食欲もあるみたいでよかったよ。」
シエナさんを治療室に移動させたあと、リキとそんな会話をしつつ、とりあえず家に帰ることにした。
「…兄ちゃん、腹減った。」
「そういえば昼飯食ってなかったもんな。なんか屋台で買って食うか。」
ギルドから出て少し歩いたところに、屋台がずらっと並んでいる。天気があまりにも悪い日や、魔獣などで街が危ない時以外はだいたい年中やっている。
適当にパンと串焼きを買って、近くのベンチに座って食べ始めた。
「そういえば、シエナさんを家で預かるってもう言ってたっけ?」
「聞いてないけど?まぁオレは賛成だよ。兄ちゃんの魔法のこともあって他のとこにやるのは良くないだろうしな。」
口いっぱいに串焼きを頬張っている弟を見ながら、空をなんとなく見上げる。シエナさんの髪の色を思い出しながら、一雨降りそうだな、と思った。
シエナさんに、果物でも買っていこう。そう思いつつ、ベンチから立ち上がった。
※
また、泣いてしまった。そして、寝てしまった。
何回やるんだという話だけど、こればっかりは仕方ないと思ってほしい。
でも、収穫(?)はあった。ほんの少しだけ、自分のことを思い出した。
私は魔法が好きで、魔法に関するありとあらゆるものを愛していた。あれらは、私が持っていた物の一部で、残りの物たちはどこにあるかわからない。でも、なんとなくもう手に入らないことはわかる。
一番大切な杖は、両親に買ってもらった物で、魔法が好きなことも相まって命の次に、または命と同じくらい大切なものだ。まぁ、その買ってくれた両親の名前も顔も思い出せないのだけれど。
(コンコンコン)
ドアが叩かれた音がして、ちらっと目をやる。ガチャリとドアが開き、いかついおじさんが入ってくる。確か、お兄さんと話してた人だ。
ちょっと怖いけど、悪い人ではないんだと思う。
「…起きたか。これ、食うか?」
おじさんは、手に持っていた多分果物だと思うものを持ち上げた。私が知っているプルーという果物ににているけど、プルーは緑なのにこれは赤色だ。
コクリと頷くと、おじさんはどこからか取り出したナイフとまな板を使って、皮を剥き始めた。サクサクと切られていくプルーもどきを見ていたら、ベッドの横に置いてあったあの果物ができていった。
まな板に乗っかったまま、切られた果物を差し出されたので、とりあえず一切れ取ってシャクシャクと食べ始める。
「ここに置いておくから、食いたいときに食え。」
おじさんは私が寝ているベッドの横の机に果物を置いて、出ていってしまった。
もう一切れ手にとって食べながら、名前を聞いておけばよかったかなと思った。
とりあえず二切れ食べて、暇で何もすることがないからまた寝ようとベッドに横になった。
目を閉じて、耳を澄ましてみる。誰かの足音、話し声、カチャカチャと何かがぶつかり合う音。ここがどういうところなのかも知らないなと思いつつ、ぼんやりしていた時だった。
ぽつり、ぽつりと音が聞こえた。雨だ。
なぜか懐かしく感じて、もっと耳を澄ましていたら、ざぁざぁと降ってきた。
雨の音を心地よく感じていると、突然頭が痛んだ。
―魔法という単語を聞いたときと同じ感じ。
でも、この痛みはすぐに治まってくれなくて、うめいてしまう。涙がにじんできて、だんだん苦しくなっていく。意識を外に向けようと、また雨の音に耳を澄ました。
頭の痛みが引いてきたかと思ったら、一気に霧が晴れたように痛みが消えた。
それと同時に、私は雨が好きだったことを思い出した。両親に無断で外に出て、びしょぬれになって風邪を何回もひいた。それでも、やっぱり雨が好きでたまらなかった。外に行きたいと、最初に目覚めてから初めて思った。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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