第十一話
今回は、前回のシエナ視点からの続きです。
紛らわしくてすいません。
迫りくる風が、ゆっくりに感じられた。
それでも、避けることはできない。
風は、咄嗟に防ごうとした腕と胴体を切りつけて消えた。
その勢いのまま、私は廊下の壁に寄りかかるように倒れ込んだ。
傷はそこまで深くない。でも、血が流れるのを見て、頭が痛んだ。何かを思い出しそうな時の頭痛だ。
なんでこんな時に、と思いつつ、立ち上がろうとする。だけど、そんなのろのろとした動きじゃ、やっぱり敵は立ち上がることも許してはくれない。
腹を蹴り飛ばされて、また倒れ込む。
かはっ、と、口から小さく息が漏れた。
だんだん強くなっていく頭痛と、血を失ったことによる目眩で、もはや立ち上がることもできなかった。
魔法を使おうにも、手は切りつけられたことで脱力して動かない。
ぼやけていく視界の中、敵がこちらに向かってくるのがわかった。そして何か瓶のようなものを開けて、中身を私に飲ませようとしてきた。
一応口を閉じて抵抗しようとしたものの、頬をぶたれて無理やり飲ませられる。
どろりとした、甘い匂いの液体が口に入ってくる。そのまま、とてつもない眠気に襲われた。抗う事も出来ず、私は深い眠りに落ちた。
※
男の腕の中で動かないシエナを見て、ドクン、と心臓の音が鳴るのを感じた。光魔法を使うなかで身につけた知識で、すぐに分かった。呼吸が浅い。早く処置をしなかったら、手遅れになる。
どうすればシエナが助かるか必死に考えを巡らせながらも、手は震えていた。
僕がついてこないことに苛立ちを感じたのか、敵は舌打ちをして「早くしろ」と急かしてくる。
どうにしろ、このままいたらシエナが危ないので、とりあえずついていくことにしようと思い、俯くように頷いた。敵はそれを見て、こちらへと向かってくる。そして魔法で拘束した後、おそらく闇魔法が付与されてるであろう縄で腕を縛り、ついてくるのを促すように引っ張った。光魔法を使えなくすれば特に問題ないと思ったのだろう。
だが、もちろん、ただついていくわけもない。
僕が使えるのは光魔法だけではないのだ。
単純な水を出す魔法で、敵の足元に水をぶちまける。勢いもあったおかげで、敵はすっ転んだ。そのまま頭を蹴っ飛ばして、ウォーターニードルを腹にぶつける。
敵の口から、ぐっ、と呻くような声が聞こえたと同時に、僕もふらついた。魔力が少なくなってきている。やっぱり、闇魔法と水魔法はそこまで反発しないとはいえ、手が後ろに縛られているのも相まって無駄な魔力が放出されてしまっている。
どうか起きないでくれ、と願っていたら、いつの間にか姿を消していたリキが拘束魔法をかける。
「ごめん。出るタイミング遅かったかも。」
「いや、すごい助かった。ありがと」
探知魔法や拘束魔法、隠れることも得意という、我が弟ながら暗殺者か?とも思ってしまうけれど、すごく役に立つ。
リキに縄を切ってもらい、すぐにシエナの方に駆け寄った。かろうじて息もしているような酷い状態だったが、魔力も少なくなっているので、とりあえずヒールをかけてギルドに向かうことにした。
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