第十話
作戦が決まり、話が終わったふうにして立ち上がる。見られている緊張で、心臓が大きな音を立てている。シエナは僕が狙われていると言ったけれど、シエナが狙われている可能性だって、あの時見られていたかもしれないことも考えると普通にあるのだ。本当にシエナ一人で大丈夫だろうか。だけれど、どうにしろ全員が危険なのだし、うじうじ悩んでいるより、さっさと倒してしまう方がいいのは確かだ。
緊張しているのを悟られないように、深呼吸をする。
「ドアのすぐ向こうにいる。」
リキの呟いた言葉に、冷や汗がたれた。玄関に向かい、ドアノブに手をかける。少しドアを開いた瞬間、煙玉のようなものが足元に転がってきて、少し甘い匂いが鼻をついた。
とっさに自分と辺り一帯に軽い「浄化」をかける。おそらく即効性の睡眠薬だろう。
相手は睡眠薬が突然消えたのに気づいたのだろうか、一旦玄関前から退散したようだった。少し安心して、ついシエナの方を振り向いてしまい、背を向けた瞬間、パキン、という音がした。振り向くと、結界に阻まれ、ナイフをこちらに向けて固まっている敵の姿があった。
※
リッカさん達に背を向けて、何かを取りに行くような素振りで二階へと向かう。相手がいる部屋のドアの前に立ち、呼吸を落ち着かせてドアノブに手をかける。中にいる相手の位置を確認して、ドアノブをひねろうとしたとき、何か違和感を覚えた。中にいる相手は、一人…
「…!」
思わず悩んで立ち止まってしまった、その瞬間にドアを突き破って剣が突き出して来た。咄嗟に避けれたけれど、よろけて壁にぶつかる。そのタイミングで、もう一人の敵も別の部屋から出てきた。剣を振りかざしてきたのを、対物理攻撃用防御魔法で防ぐ。相手がそれに驚いているうちに、氷魔法で氷塊をつくって思いっきりぶつける。だけど動きが機敏で、一人には避けられてしまい、もう一人の方もぶつかりはしたけれどよろける程度だった。
でも、避けられるならば数を増やすまでだ。小石のようなサイズの氷を多めに創り出し、一斉に相手に向かって打ち出す。さすがに避けられなかったようで、相手はよろけながら廊下の突き当たりの物置へ逃げ込む。それに追い打ちをかけるよう追いかけて、ものに足を取られている相手に大きな氷塊を強く打ち付けた。
意識を失った相手に、拘束魔法をかけて動けないように縛る。ふぅ、と息を吐く前に、意識を失っていたはずのもう一人がいつの間にかいなくなっていることに気がついた。
「…っ」
気づかぬうちに後ろにいたその敵が、剣を振りかざしてくる。それを自分にあらかじめ張っていた対物理攻撃用結界が防ぐ。剣が、キイン、と硬質的な音を立てて弾かれる。なのに、斬撃が届く。
それは、剣筋ではなく、風魔法によるもの。
迫りくる風が、なんだかゆっくりに感じられた。
※
攻撃を防いでくれたシエナの結界に感謝しつつ、後ろに下がって攻撃態勢をとる。腰のベルトにつけていた鞘から剣を取り出し、構える。
相手が投げて来た短剣を剣ではらい、鍔のところにつけてある魔石に魔力を込めてから、光魔法を纏わせて斬りかかる。
目の前の敵には少し当たった程度で避けられてしまったけれど、外から入って来ようとしていた敵に斬撃が当たり、倒れた。その隙に、リキが横から水魔法のウォーターニードルをぶつけて、気絶させる。
起きる気配がないことを確認して、魔法で強化した縄で縛り上げる。二人を離しておき、シエナの方へと急ごうとした時だった。
「動くな」
振り返ると同時に、今さっき倒した敵と同じ服装の男が視界に入った。
「こいつを殺されたくなければ黙ってついてこい」
その男の腕の中には、意識を失い、白い首筋にナイフを突きつけられているシエナの姿があった。
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