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第一話

第一話、結構長いです。この話以降は少し短くなると思います。ぜひ最後まで読んでください。

 頭が重い。周りはぼんやり光っているように見える。身体は熱くて、じわじわと痛い。でも、だんだん痛くなくなっていく。

 せっかく逃げれたけど、やっぱり死んじゃうのか…何から逃げていたんだっけ?でもどうせ死ぬからもういいや。そう思った瞬間、誰かの声が聞こえた。


 そこで意識は途絶えた。



「兄ちゃーん、こっち来て!」

自分のベッドでだらけていた僕は、弟・リキに呼ばれてパジャマのままリビングに出た。

「なにー…」

寝ぼけ眼で弟の方を見…

バシャッ!

「ちょッお前っなにする!」

「ゲヘヘー驚いたでしょ?」

 突然ウォーターボールを顔面にぶち当てられて、思わず尻もちをついた。

「顔洗ってやったんだから感謝してねー!」

いたずらっぽく笑う弟は、指先でウォーターボールを巧みに操っていた。

「リキ、お前ウォーターボールうまくなったな」

前までは浮かすことしかできなかったのにな、と思いつつ褒めた。

「えへへ、ありがと」

弟は照れつつも嬉しそうに笑った。

「というか、今日は二人で魔物討伐しに行くんだろ?待ちきれなくてもう準備やっちゃったぞ?」

「あっ!そうだった!」

言われてやっと気づき、急いで準備を始める。

「っとその前に…」

クリーン、小さくつぶやき、床にこぼれた水を乾かす。ついでに周りの掃除もやっておく。

 着替えて、軽く髪の毛を整えながら道具の準備をする。

「朝飯はそこら辺の屋台で食べるでいいか?」

「やったー!っていうか兄ちゃんが起きるの遅いからもう昼前だけどね…」

 そんな会話をしながら、僕たちは家を出た。



 私はシエナ。家名はキーリア。好きなものは魔法。そして今、叔母にいじめられている。というか、納屋に閉じ込められている。結構寒い。

 私のお父様はキーリア家の次期当主で、身分も近く接点もあったお母様に恋をし、とんとん拍子で話が進んでお母様を嫁に迎えた。そして晴れて当主になり、私も生まれて順風満帆の人生だったのだが、私がまだ幼いうちに、二人は出かけ先で死んでしまった。事故だということだ。

 そこから数年は前当主のお祖父様がキーリア家を仕切っていたが、お祖父様もなんと事故で亡くなってしまった。それと同時に叔母が婿を迎えて、当主となった。

 その頃にはもう私は七歳になっていた。叔母は私を毛嫌いし、奴隷のように扱われた。いじめられることもたくさんあった。その中で、お父様やお祖父様を貶めるような発言をしていたから、たぶんあれは事故じゃなくて叔母によるものだったんだろうと気づいた。それでその娘である私が嫌いなんだろう。でも、使用人の方たちが割と良くしてくれたので助かった。

 でもやっぱり逃げ出したいに決まってる。なので好きな魔法を使って逃げ出そうと思う。でも私は魔法が好きなだけで得意なわけじゃないし、警備も頑丈だ。だからわざわざ転移魔法用の魔法陣を描かなければいけない。ということで、たった今閉じ込められている納屋の中でくすねた物たちを使い魔法陣を描いているのでした。

(ちょうどいいからといって毎回納屋に閉じ込めたのが仇になったな、叔母よ。ククク…)

と内心思いつつも、魔法陣は残り三分の一ほどを描くだけとなっていた。

 使用人のみんなには、置き手紙を残そうと思っている。叔母の態度は悪いけど扱いも悪いわけではないと聞いたし、給料もそこそこ出されてるみたいだから大丈夫だろうという判断だ。

 夜も更けてきたところで、魔法陣は発動自体はできるところまで描くことができた。どうせ今夜は納屋で寝ることになるので、本格的に寒くなる前にこれまたくすねてきた毛布をかぶって寝ようとした、その瞬間。


 爆発音が聞こえた。



 僕たちは冒険者ギルドに着き、ちょうど良さそうな依頼を探していた。

「これとかは?」

「だめ、お前にはレベル高すぎ。」

「おれこの前Dランクになったんだぞー?」

すごいじゃん、と軽く褒めながら

「じゃあこの依頼にするか」

とFランクの薬草採取2つとDランクの魔物討伐の依頼を手に取る。

 カウンターで受理された後、僕たちは森に入った。


「兄ちゃーん!持ってきた!」

もっさりとたくさんの薬草を抱えて弟が走ってきた。

「すごい量だな。結構金になりそうだ。ありがとな」

そう言って頭をワシャワシャと撫でてやる。

「じゃあ薬草採取も終わったし、魔物討伐行くか」

「よっしゃあ!」

弟は嬉しそうに森の奥にかけて…

「うべぇっ!」

思いっきりコケてずざざーっと音がした。

「まったく…急ぐんじゃねぇの」

弟を起こしながら服についた土を払う。

「…ごめん」

少しふてくされながら涙目になっている弟に「ヒール」とつぶやき回復魔法をかける。

「いいよなー、珍しい光魔法の使い手様はー。」

「ほれほれさっさといくぞ。」

 ちょっと馬鹿にされているのかわからない弟の言葉を流しつつ、弟の手を引っ張りながら僕は森の奥の方に進んでいった。



 爆発音がした。

 パチパチと、何かが燃える音も聞こえてくる。

 まずいと思って、普段だったら納屋から出てもどうせなんにもなかったからあまり使わなかった解錠魔法を使って納屋から出る。その瞬間目の前に広がったのは屋敷の結界を壊して入ってくる平民の人達だった。皆それぞれ農具や武器を持っている。

(…あの人は領民からも顰蹙をかっていたのか…)

 ともかくこれはまずい。私の部屋という名の物置には両親からもらった魔法の杖がある。それがなきゃ転移魔法で逃げ出すこともできない。というかそれ以前に死んでもなくしたくない。あと魔法書とか魔法関係のもの色々大事なものたちが…

 とりあえず部屋に向かわなければ!

 少しだけ自分に身体強化をかけて裏口に向かって全速力で走り出す。どうかそちらにはいないでくれ…!というそんな願いは届いてまだ領民は来ていなかった。また解錠魔法を使って扉を開け、物置に向かって走る。できる限り音を出さないようにしながら。

 幸い裏口からとても遠い訳じゃないのですぐ着いた。解錠して中に飛び込む。一応扉を閉めた。

 大切なものを急いで選びながらカバンに詰め込み、杖を抱えて窓から外に…

「…っ!」気配を感じて振り返ると、腕際々のところで矢が通り過ぎて床に刺さった。と思った瞬間、剣で斬りかかられた。咄嗟に防御魔法を使ったけれど、防ぎきれず肩に斬撃を食らった。

 でも倒れている場合じゃない。立ち上がりつつ、火魔法で反撃して時間を稼ぎ、既に割れている窓から外に出た。ここから納屋はそう遠くないから、とあと少しの体力を振り絞って走る。納屋に着くと、もうすぐそこに火の手が迫っていた。飛び込み、納屋の床に描かれた魔法陣の上に立つ。完成していないけど、もうやるしかない!

 必死に覚えた呪文を唱えて、魔力を注ぎ込む。魔法陣に魔力が回って光りだして、吸い込まれて行きそうな感覚に襲われる。杖に寄りかかって耐えながら呪文を唱える。あと少しというところで、納屋の壁が焼けて落ちる。ものすごい熱と痛みに耐えながら、私は呪文を唱え終わった。それと同時に魔力が尽きた。

 ふらっと崩れ落ちるのを支えるように、光りに包まれて浮遊感に襲われる。本当に浮いたかと思うと、急に体を締め付けられたような、圧縮されるような苦しさを感じた。息もできなくて、頭も中身が揺さぶられてぐちゃぐちゃになるんじゃないか思う程痛い。

 やっぱり、少し危険な魔法だから、魔法陣に生存確率上昇の呪文が組み込まれていたんだろうけど、それを描けなかったからこんなになったんだろうか。

 少し後悔しかけたところで、光が消えて、草むららしき所にとさっと落ちた。頭はもう痛くないけれど、肩がじんじんとする。食らった斬撃が裂けて肺まで届いている。何とか生きてたどり着くことはできたけど、大怪我を負ってしまったからもう助からないだろう。呼吸ができずに、ヒュー、ヒューと音を立てているのが分かる。だんだん痛みすら分からなくなっていくのがわかって、逃げれただけでもよかったと現実逃避をし始めた時、誰かの声が聞こえた。

 そこで意識は途絶えた。



 僕たちは今魔物と戦っていた。といっても、そこまで強いものじゃない。

「よっ」

襲いかかろうとしてきた魔物を軽く剣で払い、斬撃を食らわせる。

「てりゃっー」

弟も思いっきり戦えて楽しそうだ。

 魔物の毛皮など、素材をとり終えて、太陽の位置をみた。

「依頼も達成したことだし、遅くなってきたからそろそろ帰ろうか」

「はーい」

二人で帰路につこうとした、その時。

「!兄ちゃん来て!」

突然弟が帰り道とは全然違う方向へと向かって走り出した。

「おい!どうした…」

呼び止めかけたところで、弟は気配察知が得意だから、もしかしたら誰かが危険な状態なのかもしれないと思い直し、すぐに追いかけた。

 弟が急に止まって、後ろに倒れ込みそうな所を急いで支える。その視線の先には、


 大怪我をした少女と血溜まりがあった。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

感想、評価など励みになりますので、ぜひお願いします!誤字報告等も助かります。

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