はじめに、亜龍の剣士あり。Part 2
投稿頻度がカッスいけどよろしくお願いします
「はぁ…はぁ…」
俺は息を切らしながら、小さな林と草原を区切るように配置された、小さな門の前でしゃがみこんでいた。
「はぁ…なんだ…ここ…気味の悪い…場所だな…」
周囲を見回す。門の周辺には錆び、朽ち果てた鉄格子が倒れており、茂った草の中に「□.●.✕」と刻まれた石板がいくつか見え隠れしている。雰囲気的におそらく墓場だろう。俺は荒くなった息を整え、目の前に浮かぶワンダーライドブックに問いかけた。
「こんなとこに…つれてきて…どうするつもりだ…」
答えるはずがない。本が喋るような事はないのだから。しかし、それは奇妙な動作で地王を墓場の中へと誘う。ついに本は闇の中に消えてしまった。
「あっ…」
俺は追いかけようとした足をとめる。ここは今のところ未知の場所だ。ここに来た時の状況的に異世界転生とか言うやつだろうし、そんなところで墓場なんてもっと危険そうな場所に足を踏み入れてしまっていいのだろうか…?
(…じっとしててもどーにもなんねぇな)
どこかで聞いた覚えのあるセリフが頭を駆け巡り、茂みの中を思い切って駆け抜ける。途中ツルや石板に引っかかり転けそうにもなったが、どうにか墓場を走り、ワンダーライドブックを追いかけた。
「いったいどんだけ走らせんだこいつっ…」
そんな悪態をつきながら走り、ついにたどり着いたのは…
「ここか…?お前が連れてきたかったのは…」
石で作られた、和室程度の大きさの小部屋だった。ツタの絡みついたそれは、木の葉でさえぎられた陽光によって薄くライトアップされ、神聖ながらもどこか不穏な雰囲気を醸し出している。
「入れ…ってか?」
壊れたドアが中途半端に開いた、暗い入り口に佇むそれに、俺はしゃべりかける。だが、それは何も言わずに俺の手の中へ滑り込む。
「…まぁ、そういうことだろ」
俺は手にもったそれを見つめ、小屋の中へと足を踏み入れた。
「…暗いな」
声が怖いほど響かない。やけに圧迫感がある。外とは違う冷たく、じめじめとした空気が頬を撫でた。それは俺の恐怖心をあおる。もう一歩を踏み出そうとしたところで、足に何かが引っかかった。
「うぉっ!?」
ワンダーライドブックを手に持ったまま、俺は前にぶっ倒れた。
「いっでぇ...ったく...なんだぁ?」
俺は自分の足に引っかかった物を見る。入り口から入り込む光で、足元にあるそれは映し出されていた。それは、直径30cmはありそうな大きさのトカゲのしっぽの様な物だった。
「…尻尾?」
赤黒く光る鱗がきれいに並んだそれを目でたどっていく。それは暗闇の中まで続いていた。その向こうはよく見えない。
「…ひっ…!?」
ただ、そちらから感じる圧力で、ここに入るのはまずかったと、本能的に理解した。今更か。
「…ぁ」
暗闇に、ルビーのように赤く光る瞳孔が浮かび上がった。目が赤いやつは大抵ヤバい。俺はその威圧感にしりもちをつく。
「ぁ…っ!?」
とたん、俺の右手側に青い炎が立ち上った。人魂と形容した方が分かりやすいかもしれない。その光に照らされて、部屋の中が一気に明るくなった。よって、その眼の持ち主の姿が現れる。
「…ドラゴン...」
浮かび上がったその姿を見て、俺はそう呟いた。赤く光る鱗、鋭い牙、それはまさにアニメで見たドラゴンとそっくりだ。違うところと言えば、サイズが小さいのと、右半身(こちらから見て)がなにやらグロい状態になっており、青白くなっていることだろうか。ドラゴンの口が開かれる。
「我がやしろに何用か…何もないのなら…出ていけ...」
…喋った。ドラゴンがいること自体もおかしいものだが、それが喋るとは思っていなかった。俺が魔物に転生したとかならまだしもこっちは純人間だ。意外な展開の連続で、俺は声を出せずにいた。
「そうか…答えぬか…ではそれなりの対応をさせてもらう」
「へっ?」
ドラゴンは目を細め、少し悲し気な表情で口に火球を生み出した。周囲の空気が揺らぐ。
「えっあっちょまっ」
「不運な旅人よ…さらば」
ドラゴンを止める隙もなく、ドラゴンの口から火球が放たれた。
(これは…死ぬ...短い異世界転生...だったな…)
本能的に腕でガードしようとしているが、ガードできたところで無事では済まないだろう。俺は目をつぶった。
「…?」
十数秒ほど、無音の時が流れた。だが、熱くない。痛くもない。俺が死んでないことも確かだ。これは解かる。人生でこれほど嬉しかったことはあるだろうか。この喜びがぬか喜びでないことを証明するため、俺はおそるおそる目を開けた。
「……......」
目の前には先と変わらない光景。目の前にはドラゴンがおり、その姿は宙に浮かぶ炎で照らされていた。やはり俺は運がいい。きっと神に救われたのだろう。
「…それは…!」
驚き、喜び、興奮、それらが混ざったような声でドラゴンはそう呟いた。ドラゴンの視線は、俺の手の中のワンダーライドブックに集中していた。
ライダーだけじゃなくほかの特撮ネタをぶち込むこともあります。隠れミッキーみたいなもんだと思っといてください。