はじめに、亜龍の剣士あり。Part 1
色々至らない点もありますが、よろしくお願いします。
皆、仮面ライダーは好きだろうか?…おそらく好きな人が多いと思う。この話は、そんな一般のライダーオタクが、異世界に転生し、世界を救う物語だ…
「ありがとうございました~」
店員の挨拶が聞こえる。
「今日はいい買い物したな~…さすが俺、顔もよければ運もいいぜ...」
中古屋の紙袋を肩にかけ、上機嫌に道を歩く彼は神越地王。ただの特撮、主にライダー好きである。若干ナルシストではあるものの、他は普通の高1男子である。今日は近くの中古屋にライダー玩具を買いに行っていた。今はその帰り道だ。
「まっさか4000円で火炎剣烈火が買えるとは…」
定価より1000円ほど安く買えた戦利品を満足げに眺めて、また脇道を歩き出す。
「にしても…あの店員変な事言ってたけどなんだったんだ…?」
実は先の買い物で少々違和感があったのだが、今は早く帰って火炎剣烈火を開封することが最優先だ、と俺はあまり気にしないことにした。だんだんと道を走る車の音が聞こえ始め、子供が遊ぶ声も聞こえてくる。
「元気だなぁ…まぁ昔の俺ほどではn....」
脇道を抜け、開けた道へと出た時。目に入ったのは横断歩道に飛び出した一人の子供。見たところ小学生あたりだろう。
「えっ…」
奥からはミニバンが向かってきている。あまりに突然の事だったので、俺の思考は混乱していた。
(…は?え?何?交通事故?起きる?どうする?…)
そんな考えが頭の中を駆け巡る。その中、最終的に俺の頭で行きついた結論は…
…助ける? だった。
視界にブラーがかかる。その一瞬で、俺は自分が何をしたのか、それを理解した。
どんっ...と人間に車がぶつかる音。
直後、俺は空を見上げていた。視界がどんどん暗くなっていく。
(う...ぐぁ…)
「お兄さん!!お兄さん!!!」
血まみれの体を小さな手がゆする。そのたびに全身がひどく痛む。
(子供は大丈夫か…さすがおれ...ヒーロー…だな…)
俺は助けた子供の無事を確認し一息つく。周囲から悲鳴が聞こえてくる。救急車だのなんだの言っているが、間に合わないだろう。とたんに最後の持ち物がライダー玩具かと少し恥ずかしくなってきた。
(せっかく買ったのに…開封できなかったし…最悪だ…)
そんなことを考えているうちにも、どんどんと意識は遠のいていく。
(死ぬな…これ…母さん...父さん...ありがと…)
最期に両親への感謝を心の中で伝え、地王は約60kgの肉の塊に成った。
…地王が買った玩具の箱の中身は、怪しく赤く光っていた。
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(あれ…?)
地王は意識を、取り戻した。背中に病院のベッドでも、硬いコンクリートでもない、地面の感覚が広がる。
(ん…ぁ…?なんだ…?さっき...ひかれたはず…)
理解が追い付かない。確かに俺はさっき轢かれたはずだ。飛び出した子供を守って...。薄れゆく意識の感覚も、鋭い痛みも、しっかり覚えている。ただ、今はそれを感じない。天国にでも来たのだろうか?俺はゆっくりと目を開けた。
「まぶっ......あ…?どうなってんだ…こりゃ...?」
先ほどまで曇り空だったとは思えないほどの晴天が、そこには広がっていた。大きく息を吸い込むと草の匂いが風に乗って鼻にスッと入ってくる。
「草の匂い...?」
体を起こそうと体を曲げる。すると、腰に違和感を覚えた。
「ん…なんだ…?」
体を起こし、腰にある何かを見る。それは…
「…火炎剣烈火ァ!?何でここに…」
俺が買った火炎剣烈火、及びそれが挿入された聖剣ソードライバーだった。
「なっなんだ…?一体何が起こってるってんだよ…」
あたりを見回してみる。するとそばには何も書かれていないワンダーライドブック(変身アイテム)が落ちていた。俺は急いでそれを手に取る。
「わ、ワンダーライドブック...!?」
どうしてこれがここにあるんだろう?そしてここはどこだ?何が起こっている?そんな疑問達が頭の中を占拠する。あまりに考えることが多くフリーズしていた時、突如、ワンダーライドブック(変身アイテム)が俺の手から離れ宙に浮いた。そして意思を持ったように飛び回り始める。
「あっまてっ」
俺もそれにつられて立ち上がった。周りを見渡してみる。あたりには草が一面に広がっており、見渡す限り地平線だ。俺の少し前にはワンダーライドブックが浮いている。俺がそれを掴もうと一歩踏み込むと、ワンダーライドブックもそれに合わせて俺から離れていく。
「…この俺と追いかけっこか?」
ようやくキャラを取り戻し、困惑しながらも、俺は走り出した。
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