34話 光と影
うなだれる神父や信徒たちを見て、俺が思い出すのはつい最近の自分だ。
王国が滅んだと思い、大切な者を誰一人として守り切れなかったと、どうしようもない喪失感を胸に抱えていた。
でも天空の城は……ラピュタルたちは、俺に生き甲斐をくれた。
事実を知って、信徒たちに必要なのは生き甲斐だろう。
「わかった。ダンジョン作りにはなるべく協力しよう。信徒のみんなもな」
「タ、タリスマン下級兵殿、一体なにを……?」
俺の発言に神父は疑問符を投げかける。
周囲の絶望しきった信徒たちもまた、同じような表情だ。
「俺たちは戦争で多くの居場所を、人を失った。でもここ、地底の楽園があるだろう?」
「地底の……楽園……?」
「そうだ。自分たちの楽園を小人神ミューミスと、【骨拾いの楽園】と作っていけばいい」
「しかしダンジョンなどと……おぞましいものを……」
「ダンジョンは希望でもある。冒険者にとってワクワクが詰まっているし、ダンジョンの噂を聞いて多くの人々がこの王都に集まってくるだろう」
「希望……? 確かに……冒険者ギルドに卸される品々が増え、加工する職人や、取引きする商人も集まってくる……? そうなると戦争孤児たちも働き口が増えたり、我々だって活躍できる場が生まれるかも……?」
「ダンジョンは王国を活性化させる。同時に、あなたたちの痛みを無視する者に、戦争の痛みを軽視する者に、行き過ぎた奴らに鉄槌だって下せるかもしれない」
人間は清廉潔白なんて存在じゃない。
光も影もあって、今はまだ『幸せそうな奴らをダンジョンという名の罠にハメて、行き場のない悲しみや鬱憤を晴らす』って動機でもいい気がする。
ダンジョンに入ってくる者とは、『死を覚悟』した冒険者たちなのだから。
「もちろんやりすぎはよくない。ほどよい難易度に調整しないとリピート率が下がってしまうからな」
「なるほど……つまりミューミス様は……いえ、【骨拾いの楽園】様は、戦争で亡くした愛する者の骨すら拾って生きよ、と……我々に生きる希望を持ち続けよ、と……」
「まあ、そんなところだな」
多分違うけど、今はそれでいい気がする。
「それに他のダンジョンと違って小人にならないと入れないってところも特別感があっていいじゃないか。暗殺術? を鍛えた子供たちに『選ばれし者だけが与えられる招待状』を夜中にこっそり置いてもらうのはどうだろう?」
「小人のまま家屋に浸入してこっそり【小さき運命】を同封した招待状……いいかもしれません」
我ながらロマンのある提案をしてしまった。
深夜に目が覚めてなんとなくキッチンに行ったら、小人がこっそり招待状を置いている姿を目にしてしまう。
寝ぼけて見た夢か幻と思ったが、しっかりと招待状はあって、しかもその内容は地底の小人世界へと誘うものだ。
『説、新たなる伝承を創造しました』
『伝承ポイントを2000獲得』
『ガチャシリーズ【地底の小人世界】が追加されました』
『20%……【小さな化け物】』
『20%……【|×〈Κ〈◆針の苔】』
『20%……【|×〈Κ〈棘きのこ】』
『20%……【|耳穴×〈Κ】』
『10%……【成長の呪木】』
『5%……【地底◆§Λ◆】』
『5%……【骨読みの教皇】』
おおっ、なんか力になれそうなガチャシリーズも出たぞ。
それにしても【成長の呪木】って……なになに、身体のサイズが元に戻る花粉を飛ばす木……うわ、小さな地底で急に身体が元に戻ったら圧死するんじゃ……。
エグいトラップだな……。
これ、ダンジョン作りが好きってだけの無邪気な神に管理させて大丈夫か……?




