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32話 先代の遺物


 王都の地下にある【ミューミス大迷宮】は、てっきり地中を掘った洞窟的な構造かと思っていた。

 しかし、そこには想像を遥かに超えた異様な光景が広がっていた。


「かつて小人神ミューミス様が下した巨神の数々です」


 そこには巨人……というか多分サイズ的には人間だとは思うが、無数の骨が絡まり合って螺旋状の大階段ができていた。


「地底へと導く【逆神殿】は中々に壮観でしょう。さっ、子供たちは『供物畑』を見学した後に『継承式』へ案内しましょう。タリスマン下級兵は、小人神ミューミス様が座す、『巨神殺しの間』へ」


 どうやらこの地下階段には、途中でいくつもの区画に通じる扉が存在し、俺はその中でも最下層の神がいる場所に案内してもらえるようだ。

 連れてこられた子供たちが『供物畑』とやらに通じる扉へ姿を消すのを横目に、神への道程が少しあっさりしすぎているように思えた。


 とはいえ神と崇められるだけあって、しっかりと荘厳さも感じられた。

 というのも、【逆神殿】から『巨神殺しの間』へ通じる扉を開けると、そこには広大な空間が地下に広がっていたのだ。

 よくよく天井を見れば、人間よりも遥かに巨大な巨人のあばら骨が支えとなってドーム状の空間を築いている。

 さらには何人も巨人の白骨が横たわっていたり、四つん這いになっていたりと、骨そのものが橋や道になっている。

つまりここは、白骨死体の上に築いた神殿街なのだ。


 暗がりの中でもぼんやりと青白く発光する巨人たちの骨は、幻想的だが不気味でもあった。

 俺やリブラとそのお母さん、そして複数人の信徒たちは巨人の頭蓋骨までたどり着き、その上に立てられた立派な石積みの神殿へと案内される。


「タリスマン下級兵。これより神の御前です。くれぐれも粗相のないように」


 神父の言葉に、リブラ以外の信徒たちは祈りを捧げて下を向く。

 それらを見届けた神父は、両開きの重厚な……これまた指の骨あたりが使われた扉を開くと、そこには絶世の美女が胡乱な目つきで鎮座していた。

 明け空のような薄紫の長髪は、地面につくほど長くて艶やかだ。また、紫水晶(アメジスト)の煌めきを内包する双眸は、数多の男性を虜にしてきただろう。


 神秘的なオーラを纏う彼女だが、その服装は奇抜で頭には頭蓋骨を被っていて、肩や胸当てもまた動物の骨でできているようだった。


「小人神ミューミス様……この度は新たなる信者をご紹介したく————」


 神父や信徒一同が膝を突いて彼女に礼を尽くす。

 それに俺も便乗しようとするが、それよりも早く反応を示したのは【小人神ミューミス】と呼ばれた女性だった。


「ほ、ほ、ほねっ……」


「えっ」


【小人神ミューミス】はおぼつかない足取りで何かを呻きながら、俺を穴が開かんばかりに見つめて来る。

 その異常な行動は信徒たちをもざわつかせ、まとめ役の神父ですら狼狽えていた。



「骨の髄までッ、骨抜きにされりゅぅっ……!」


「うわっ」


 みなが唖然とする中、まさかの【小人神ミューミス】は俺の首にその両腕を巻き付け————突然のハグを交わしてきたのだ。


「タリスマンッ、骨太……先代のタリスマンに私は創られた! 今代のタリスマンも、骨太……?」


「ええっ!?」


 なんと【小人神ミューミス】は2000以上前に天空城で創造された存在だったらしい。つまり俺がタリスマンになる前の、先代タリスマンの遺物だったのだ。


「私はッ、ずっと待っていたのです! 共に骨太なダンジョン作りのできりゅっ、骨太な者を!」


「ダ、ダンジョン作り……?」


 予想外すぎる神の発言に、俺も含めて周囲は唖然とする他なかった。




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