↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブおじさん、【伝承集め】と【天空城】で全てを見下ろしながらゆるりと生きる。  作者: 星屑ぽんぽん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/36

28話 史上最強の雑用人


 門衛たちとの問答を思い出すに、おそらくミユユは現王国の重役を務めているのかもしれない。

 そしてレジェンド・ソルジャスと名乗って笑われたのは、よほどこの名が荒唐無稽な冗談だと聞こえるぐらい……王国民の間で浸透している……?


 なんだかむずがゆいな。

 とにかく俺は自分の名を伝えると、まともに相手してもらえないと学んだ。

 さて、これからどうするべきか。


 ミユユに会うのが難しいなら、オルカスやマギー、そしてマニーの下へ顔を出したいのだが……また同じような対応をされては困る。


「……ひとまずは身分証か。どうしたものか」


「おっと、そこの立派な鎧の旦那。何かお困りかい?」


 俺の独り言に反応したのは、街のどこにでもいそうな町娘だった。

 しかしその双眸は鋭く、瞳の奥に隠された知性が垣間見えた。

 俺は彼女の身なりから商人だと判断する。


「仕立てのよい服に、簡単にはひったくれそうもない頑丈な鞄。商人がどうして俺などに構うんだ?」


「おや、旦那は商人を知っているようで。おっ察しの通り、うちはしがない商人ですとも。いえ、なに。旦那がお困りのようでして」


「商人は金の匂いがしないと近づいてはこない」


「ええ、ええ。商人は互いに利益を生む者ですから」


 ニコニコ顔で俺が身に着けている鎧やマントや兜、そして腰に差した剣をわかりやすく……いや、おそらく自分の狙いが何なのかを誠実に伝えているのだろう。

 自分の狙いはあなたが身に着けている武具です。

 相当なお値打ちなのでしょう? と。

 


「俺の武具を売るつもりはない」


「さようですか。では、商人としてご提案させていただきます。そのような貴重な武具を身に着けている御方が困っているようなので、お力になれたらと思います」


 ようは物凄い武具をつけている俺と繋がりを作っておきたいと。

 一目で俺の武具がかなりの等級だとわかるその審美眼からして、優秀な商人なのかもしれない。


「今後も取引きするとは限らないが、それでよければ」


「ええ、ええ。顔と名を覚えてもらうだけでも嬉しい限りです」


「そうか。俺は……タリスマンだ」


「私は駆け出しの行商人リブラでございます。それで、タリスマンの旦那は何をお困りで?」


『天秤(リブラ)』の名を意味する少女は意気揚々と質問をしてきた。

 おそらく彼女は、俺が門衛に門前払いをされていたところから見ていたはずだ。当然、俺の悩みは王城に入りたいとわかっていて、しかも彼女は王城に入れられる手段があっての質問だろう。

 少し癪ではあるが、商人というのは効率を求め利益を生む者だ。


 俺に何かしらの商品価値、もしくは取引先としての何かを見出したのなら、王城に入れるぐらいお安い御用なのだろうな。


「んん……王都での俺の身分を作ってほしい」


 俺は一時的に彼女の力を借りて王城に入るよりも、何度も出入りできるように正式な身分を欲した。

 こちらの方が後々、ミユユに会いやすくなるだろう。


「旦那ぁ……身分ですか。でしたら————」


 この返答によって、彼女が信頼できるかどうか少しばかりわかるだろう。

 さて、商人関係者としての身分を俺に提案するなら、商人のプライドもへったくれもない、不正な商談にも喜んで首を突っ込む闇商人の類だろう。

 

「——でしたら旦那の力になれないですね。正確にはうちの手助けを借りなくとも、身分ぐらい旦那であれば持てますよ」


「ほう? どのように?」


「旦那の恰好からして戦えるのでしょう? 傭兵団に一時的に籍を置くのもありですし、王都の冒険者ギルドへの登録をするのもいいでしょう」


「情報料はとらないのか?」


「これぐらい街の誰に聞いても答えられる情報ですから」


 なるほど。

 彼女が俺に話しかけてきたのは、駆け出しらしく何らかのチャンスを掴みたいとの野心ゆえだったのだろう。そして彼女は、確かに誠実だった。


「冒険者ギルドまでの付き添いを頼めるか? もちろん案内料を払わせてほしい」


 俺が銀貨1枚を見せると、リブラの表情はわかりやすく輝いた。



◇



「こちらが旧【戦乙女オルトリンデ庭園】で、横道をまっすぐと行くと冒険者ギルドにつきます」


「そうか……ところでリブラさんはなぜ行商人を?」


 俺はリブラに王都を案内されながら、彼女自身の生い立ちもそれとなく聞いた。

 

 女性の身で行商人をするのは珍しい。

 なぜなら取引きの場では女性であることは、舐められるからだ。さらに言えば、行商の道中で襲われやすい。それは商品の安全を確保しづらいと判断されるわけで、当然取引きしたがらない者が多いのだ。


 それでもなお行商人になった経緯に、少しだけ興味が湧いたのだ。


「うちにはこの眼がありますから」


 そう言ってズイっと自身の眼を指さしながら近づいてくるリブラ。

 

「ふむ。目利きって意味か?」


「そうとも言えます。うちは【鑑定眼】の魔法が使えまして、まだまだレベルは低いのですがそれでもタリスマンの旦那が全て【希少位(レア)】の装備を身に着けているとわかったのです」


 正確には【希少位(レア)】より格が上の【冠位(ネームド)】や【王位(キングス)】、そして【伝承位(ミソロジー)】の物ばかりだが……見る者が見ればわかるのか。


「少し、近くないかリブラ」


「ああ、やっぱりタリスマンの旦那には通用しませんか」


 そう言って彼女は服越しからでもわかる、存在感の大きな胸をワシっと自ら掴み、上下に揺らしながらニカっと笑う。


「うちの見目は凡庸ですが、身体は一級品らしくて? だからよく商人連中には娼婦になった方が成功するんじゃないかーって言われます」


 アハハっと笑う一方で、彼女の目は少しも笑っていなかった。


「母さんみたいにはなりたくないので、うちはうちの道を目指します。ですが、自分の持ってる武器を最大限に使うつもりです」


 商魂たくましいものだな。

 さて、そんな駆け出しの彼女から指摘されてしまうぐらいには俺の装備は目立つらしい。

 それならすぐさま宝物殿に送還しておこう。

 王都は比較的、治安が良さそうだしここでは強力な武器を身に着ける必要もなさそうだ。

 唐突に俺が身に着けていた装備の数々が消失すると、リブラは目を見張って驚く。


「……収納魔法持ちですか。タリスマンの旦那も、商人向けの魔法を習得しているんですね」

「ま、各地を点々としている身だからな。荷物は軽いに越したことないさ」



 そんなこんなで冒険者ギルドに到着すれば、受付嬢の方が冒険者登録の案内をしてくれた。

 そのやり方は10年以上経った今でも変わりはなく、知っていただけにスムーズに進行できた。



「お名前はタリスマン様と……前職は下級兵士でしたか。下級兵章など、証明できる物があれば冒険者ランクはE級から付与できます」


「いや、それが何年も前のことでな。紛失してしまった」


「さようですか。今回は商人ギルドに所属しているリブラ様も付き添いでいらっしゃいますので、虚偽ではないと判断させていただきます。ですが冒険者ランクはF級からとなります。タリスマン様は最近、従事されてたことや得意分野はございますか?」


 これは適性項目をギルドに登録して、仕事を斡旋しやすくする質問だ。

 備考として、例えば元庭師だと貴族の庭園警備や管理などの臨時要員クエストを紹介されやすくなる。


「うーん……庭園を手入れしたりしてるから庭師みたいな……いや、でも本物の庭師と比べて知識も技術も素人に毛が生えたようなものか。それに最近では家を建てたりしたけど……とはいえ本職の職人さんと比べたら拙いか……」


 魔法で作っちゃった部分が大半でもあるしなあ。



「かしこまりました。ひとまずは応用が効きやすい『雑用人』と登録させていただきます」


「やっ、それは……」


 非戦闘ばかりのクエストを推奨される『雑用人』か。

 まあ、冒険者の肩書がもらえればいいか?


「もちろん斡旋される仕事内容は地味なものばかりになりますが、これらは街の人々に貢献する立派なものです」


「……そうか」


「では受付嬢のキュアが承りました」


「ああ、今後ともよろしく頼む」



 隣で『本当にいいの?』って顔になるリブラにも頷いておく。

 甲冑を取ったら思わぬ方に誤解されてしまったが、これもこれでありだろう。

 何も冒険者になったからって率先して魔物と戦いたいわけじゃないしな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。