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振り子

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 僕はブランコが子供の頃好きだった。勢いを付けて前後に揺さぶると高い位置まで身体が上がった。友達のはるかちゃんと高さを競ったものだ。


 ある日、そのはるかちゃんは勢いを付けすぎてブランコから飛ばされて怪我をした。顔面を7針縫う傷が付いてしまった。僕たちは揺らしすぎないようにと大人たちから厳命を受けてしまった。


 スリルが無くなったブランコに僕は急速に興味を失っていった。そして家でゲームをするようになった。


 大学に進学し、物理学の講義で振り子がテーマの実験があった。正確には「スリング」や「投石器」と呼ばれる物で、より遠く、正確に石を投げる術が古代から中世にあったのだ。それの再現実験である。幸いなことにキャンパスは山の中にあり、安全に実験できる環境だった。


 はるかちゃんの事故もこのスリングの石みたいなものだと悟った。


 僕は子供の頃と同じようにのめり込んだ。放課後練習していたら興味を持った同士が集まりサークルが出来た。


 練習するといつしか、石を的に当てられるようになった。台に置いたペットボトルを粉砕できるようになった。


 スリングを所持していて武器とは見なされない。

 ある日の朝、事件に遭った。登校していると、

「子供が! 人さらいよ!」


 叫び声が上がった。僕を抜いて子供を抱えて走り抜けた男が居た。


 僕はバッグからスリングを取り出すと街路樹の根元にあった小石を入れ、投擲した。


 石は車に子供を押し込んだ男の背中に当たり、そのまま男は転倒し動かなくなった。背後から大人たちが駆け寄って子供を保護し、警察に通報した。


 頭に当てることも出来た。さすがに頭粉砕したらマズいと思ったので。犯人は骨折して重傷。


 警察から事情聴取されたけど、凶器認定されなかったし、それどころか感謝状を貰ってしまった。


 SNSで話題となり、今まで撮り溜めていた動画を公開したらいいねが8万もついてしまい、テレビから取材依頼が来たがさすがに断った。


 就活するつもりだったがスリングの専門家として注目されたので、この分野(史学と物理学)で食っていけないかと考えているところである。

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