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からっぽなぼく

作者: 木田 梅子

僕は小学生5年生。

実は僕の頭の中は空っぽです。

それはなぜかと言うと、神様が僕の中に夢を入れ忘れたからです。

僕にはなりたいものはもちろん何もありません。

お父さんもお母さんも大人になった今だって、いろんな夢を見ている。

僕の周りはみんなそうだ。

なのに僕だけ何もない。

僕は、みんなが夢を語る時は心がはち切れそうなくらい、ものすごく悲しいんだ。

そんな日々を僕は過ごしていた。

ところが、突然

とても天気のいい日曜日の朝、白い帽子を被った白い服の小さい人が小さい小包を届けに来た。

宛名を見ると僕宛だった。

届けに来たその小さい人は一言、

「この度はご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ございませんでした」

と、僕の顔を覗き込みながら帽子をとってあやまった。

そして玄関の扉を開けて、もう一度頭を下げると、玄関は自動でしまったかのように閉じた。

僕はその箱を持って自分の部屋にいった。

部屋に入って改めて見ると、送り主の名前がない。

でも、なんだか僕はその箱を開けなければいけないような気がしていたので、思い切って開けてみる事にした。

箱を開けると、ふわっと小さな手紙が飛び出してきた。

そしてそれは僕の目前でひらひらと開いた。

僕は驚いたけれど、手紙が開いた途端なんだかすっと落ち着いた。

手紙はこう書いてある

(この度はこちらの手違いで大変申し訳ございません。今となってしまいましたが、あなたにお渡しするはずだった夢をお届けさせて頂きました。つきましては、箱の奥にあります、もう一枚の手紙をお読みください。)

箱の中は細かい紙でいっぱいだった。

その細かい紙をどかすと、薬の瓶とてがみがあった。

ビール瓶を手のひらサイズにしたみたいな形で透明。中はキラキラした液体みたいなものが入っている。

手紙を開けてみた。

(この瓶の中身を1日寝る前に一滴飲み込んでください。それを6日間お続けになってください。もし万が一飲み忘れてしまった場合は大変申し訳ございませんが、そこからまた6日間お続けください)

なんだか大変な事になった。

僕は毎日続けるものが苦手です。

いつも必ずどこかでわすれてしまって、そのままにしてしまう。

でも、これは僕が一番欲しかった夢だ。

神様が僕に届けてくれた。

頑張ろう!続けよう!そうこころにつよくきめた。

夜になって、寝る前になった。

僕はベッドの横の棚にこの箱を置いた。

僕は眠時必ず左側の壁を見て寝るからだ。

箱から瓶を取り出し、キャップを取ると、舌を大きく伸ばした。

目を下げて瓶から一滴落ちるのを確認した。

口に入ると、フワーッと空気が広かった感じになってスッと喉の奥に入る。

なんだか少し嬉しい気持ちになった。

そのまま僕は布団に入って寝た。

僕はその次の日も、また次の日も頑張った。

夢は僕の夢だった。

4日目に僕はなんとも言えない嬉しさでいっぱいになった。

それは、電車に乗った時初めて思った。

これを運転してる人ってかっこいいなって。

そんな事思った事なかった。

あれ?ってすごく思った。

僕はその日ところどころでスキップして帰った。

5日目も無事に済み、とうとう残すところあと1日になった。

6日目の朝、僕は学校の課題で、お父さんの仕事についていった。

お父さんの会社はビルとか家を作る会社。

僕のお父さんはその会社の中で、働いている。

お父さんの働く部屋に入ると、端から端までひとでいっぱいだった。

みんなパソコンを眺めてパチパチ打っている。

「こっちだ」

お父さんは1番奥でみんなを見るように座っている。僕はその横に座った。

僕はずっと見ていた。いろんな人がお父さんのところに来て、いろんな人がお父さんと話す。

話が終わるとお辞儀をする人もいれば、そのまま立ち去る人もいる。泣きそうになってる人もいれば、大笑いしていく人もいる。

人ってすごく面白いなぁって僕は思った。

お父さんは話し方がみんな違う。丁寧な人には丁寧に話すし、泣いてる人には優しく話して、

僕のお父さんなのに、会社だとお父さんじゃない気がした。

でも、すごくかっこよかった。

ここにはたくさんの人がいる。

この人たちは一体どんな夢を持っているんだろう。 ひとりひとりきいてみたい。

僕は、椅子に座りながら、目の前を通る人の夢を想像して楽しんでしまっていた。

あの人は堂々としているからスポーツ選手みたい、あの人は姿勢がよくて勉強できそうだから学校の先生かなぁ。なんて考えていたら、お父さんの仕事が終わってしまった。

「さぁ、終わったから帰るぞ」

「うん」

僕はお父さんと電車にのって、家までかえった。

途中お父さんに「すごく格好良かったよ。僕もお父さんみたいになりたい」

って言ったら、僕の頭をくしゃくしゃして、笑って喜んでくれた。

僕も嬉しかった。

さぁ、今日は最終日の6日目。

僕はワクワクしていた。

僕はどんな夢を持つのだろう。

夢を持ったら、今度こそ学校でもちゃんと言える。みんなと夢の話ができるようになる。

わくわくがとまらなかった。

お風呂に入って、おやすみなさいと言うと、僕はすぐ部屋に向かった。

ドアを開けてしっかり閉めた。

ベッドにあがり、瓶を取ろうとした。

「あれっ?あれっ?瓶がない!箱もない!」

僕はどうしようもない気持ちになった。

気持ちが慌ててしまっていた。

お母さんは部屋に入ってないっていうから、

僕は部屋中を探し回った。

悲しさと悔しさで涙がでできた。

そしたら涙は止まらなくなってしまった。

僕がずっと欲しかった夢をみる心。

やり直しでもいいのに、でも、瓶がない。

僕は悲しくてそのまま寝てしまった。

朝起きて、お母さんがお越しに来た。

僕の顔を見て、黙って一緒に顔を洗いにいってくれた。

ご飯が用意されているテーブルの椅子につくと、お父さんがおはようといった。

僕がおはようというと、お父さんはニコニコしていった。

「昨日お前がお父さんみたいになりたいって言ってくれたのが嬉しくてね。お前から、こうなりたいっていうのを聞いた事なかったから、それがお父さんすごく嬉しかった。ありがとう。今日から仕事が楽しくなりそうだ」

お父さんはそう言うと、嬉しそうに朝ごはんを食べた。あれ?僕は?

僕の夢?お父さん?

僕はしばらくぼーっとしていた。

あれ?なんだかわかった気がした。

そんな時、お母さんが僕に焼いたパンをお皿に置いてくれた。

それを食べようとして持ち上げた時、バターが動いてもじになった。

「真面目なあなたに1日プレゼントしました。夢入りました。」

僕は、もちろんそれをみておどろいたけど、今度はすごく笑った。

神様は僕に夢を入れ忘れてしまった。

ねぇ、神様。ありがとう。

僕わかったよ

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