第5話 冒険者協会
第5話 シュラング異世界を知る
次の朝、宿で目を覚ました俺はこの世界での金の稼ぎ方について調べ始めた、今後のことを考えれば現地の人間と協力する必要があるが、収入源がわからない者は治安がいいとは思えないこの世界で基本的に山賊あたりの無法者と思われてもおかしくないからだ。それと仕組みもよくわからないものに収入を頼るわけにもいかない、というのもあるのだが
そんなこんなで調べているとどうやら冒険者協会というものがあるらしく、ここでは大した身分審査もないにも関わらず、自由に街同士を通行料無しで、世界中色んなところで仕事をする事ができる今の状況にぴったりな仕事を見つけた、ただこの世界の技術や価値観を見てもとても世界に跨る大組織を結成できるとはとても思えず、この世界の人間にも確認したがどうやら間違いないらしい、聞く所によると昔の大国が世界を統一した時の名残なんだとか
そんなこんなですっかり明るくなった街で冒険者協会を探すことになった、地図を見ていてなんとなくわかっていたことだが、俺は気候的にちょうどいいところへ転送されたようだ、街中を歩いていても半袖長ズボンが多い、そんなこんなで探しながら散策していると大きな動物を入れる牛舎のようなものが見えてきた、そう言えばこの世界の動植物についてあまり知らないなと思い横目で見るとそこには小型の竜らしいものがいた、動く骸骨以外ファンタジーしてるものを見てついほおが緩んだ。
それと同時に中世の時代に航空戦力があるなら対空装備や戦術はどうなっているのだろうと疑問に思ったが、今は冒険者協会に行く事が優先のため考えるのをやめた。
一応端末で確認はしてきたのだが、土地勘がない場所でというのもあり探すのにも苦労したが、逐一人に聞くも面倒だったのでこうすることにした
「おい」
そう言って俺が振り向き、露店で商品を見ているふりをしている私服の男に声をかけた、俺を監視していたここの衛兵だ、
「どうせ行くところは同じだろう?冒険者協会に連れて行ってくれよ」
そういうと衛兵は
「不思議ですね、なぜ私のいこうとしているところがわかったんです?丁度いいですし連れて行ってあげますよ」
といった
「おぉおぉ、それはありがたいね」
俺がそう話し終わるとその衛兵はやけに大きな声で
「すいません、これひとつください」
と言った
しばらく案内されていると、俺は目の前で窃盗を目撃した、親子が買い物をしていた所、腰に下げていた巾着(おそらく財布)が男2人に取られ、俺たちの前を走り去っていったのだ、おれはそれを見て衛兵に
「追いかけなくていいんです?」
と聞いたが
「ああいうのは"衛兵"に任せましょう」
と返された、まだ言うか
と、そんな話をしたところその2人は露店から紙袋を持ってひょこっと出てきた1人の褐色女に転ばされた
その女は男2人を念入りに蹴ったくると、巾着を持って親子に返した、そして親子にすごく礼をされたのち、何故かこっちだけ睨まれ去っていったのだ
なぜ自分たちだけ睨まれたのかサッパリわからないが、窃盗を無視したこちらもこちらなので文句は言えない。
そんなこんなで冒険者協会に来た後、衛兵は用事を思い出したとか言って去っていった、これからはまた別のやつになるのだろう。
そんなことを考えながら冒険者協会の建物を見ていた、サイズ的にはなんというか、お屋敷と呼ぶに相応しいサイズだった、飾りっ気こそあまり無いが、外から見ても鍛冶屋らしき物やちょっとお見せできないレベルのグロさを放つ何かを解体している場所などが見えた、見る限りでは中央にある建物が受付のようなものだろうと予測して入る
中に入ると非常に綺麗な内装だった、外の光が十分に中を照らし摩耗しつつも綺麗に保たれている家具類が置かれてあった
とりあえず受付と書かれた札のあるカウンターに向かい、そこに座っていた職員らしき男に話しかける
「すいません、ここで冒険者になれると聞いたのですが」
「あぁ、冒険者登録の事ですね、少々お待ち下さい」
そう言うと男は手元の紙を探し、何かを確認したのちこう言った
「冒険者登録のためには最低限の実力を確認させてもらいます、その為一週間に一度の頻度でテストを行っておりますので、それに参加していただきます、丁度今日なので今から行いますが、剣はまだ持っていらっしゃらないようですね?ですがこちらで一時的に貸し出しますのでご心配なく、何か質問はございますか?」
長めの説明をペラペラと話す職員に役人様を思い出しつつ質問した
「試験内容は教えてもらえるのかな?」
「はい、剣、弓、魔術のうちひとつ得意な物を選んでもらい、それに合ったテストを行います、剣ですと主に小型ゴーレムとの戦いを見て評価します、この際倒せなくて不合格になることはありませんが、倒せれば相当な事がない限り合格と思ってもらえればと思います」
「質問は以上です」
「わかりました、ではまずテストの前に名前と年齢を、書けないなら代筆も可能です」
「自分で書けるから問題ない、、、あ、です」
「無理して敬語で話さなくてもいいですよ?我々も一般市民ですし」
「そうか、すまんな」
「いえいえ〜」
そんなこんなで名前と年齢を書いて出した、そのあとは1時間ほどロビーで待たされたのでついでに冒険者を観察してみた
個人的には世紀末でヒャッハーしてそうな輩が5割占めてると思っていたがそう言う輩はあまりいなかった、田舎の方なのもあるのかもしれないが、人が少ないと言うわけでもなかったのでまぁ少ない方だろう、そっちの方がありがたいし、そして何より気になったのが思っていたより女性割合が多い事だ、少なくともここでは30%位が女性でしかもゴツい斧持って前衛してそうなのも見かけた
(うちでも10%ギリなんだよなぁ)
とかそんな事をつい思ってしまった。
まともに他のことを言うとすれば魔術師についてだ、どれもこれも決まって杖を持っていた、服装もなんと言うかあまり派手なものを着ている奴は少なかった、教え的な何かでもあるんだろうかと思うと同時に杖無しで魔術は使えるのかと言う疑問も浮かんだ
そんなこんなで圧倒的不審者をかましていると先程の職員が声をかけてきた
「テストの時間となりましたのでこちらへどうぞ」
そう言われて案内されたのは建物2階の少し広い部屋だった、机も何もなく、そこには多くの人が集められ、魔術師らしきやつや豪華な剣を持ってきてるやつもいた
そんな中協会の制服を着て茶色い髭を生やした中年のおっさんが大きな声で言った
「よくぞこられました冒険者希望の皆様、本日のテスト担当の、当協会支部長の、イヴァンレストゥと申します、以後お見知り置きを」
続けてイヴァンは言う
「かねてよりお待たせしておりましたテストですが、まず皆様には事前にもお知らせしております通り、まずご自分の得意だと思うものを剣、弓、魔術の中からお選びいただきます、その後はそれぞれのテスト担当者の方に集まり指示を聞いてください、テスト担当者はそれぞれの札を持っている者達です」
そう言うと札を持った職員たちが部屋に並んだ
(ナイフ使ってるし剣かな)
と、剣の列に並んだのだがそこにはここにくる途中に窃盗犯から金を取り返した褐色女がいた、そして目があった
絶対なんか言われるだろうなと思いつつしれっと並んでいたのだが、何か言いたげな顔をされただけで特に何も言われなかった。
そんなこんなしているうちに剣のテスト担当者に列が動かされ、建物をでて広間に案内されるのだった