99話 意趣返しの夜襲
そこに現れたのは、レオナルド将軍の息子であり第一騎士団副団長のアルドー・マッカーサーとその団長であるリオン・クレイマンだった。
「だ、団長!それに副団長!こ、こいつが、こいつがいきなり襲い掛かって来て!」
銀髪の騎士がそう言って私の方を指差す。
「………」
「お前らもこいつらのように私に攻撃しようとするのであれば死んでもらうぞ?」
リオン騎士団長は銀髪の騎士の前にへと行く。
「お前たちが普段から市民に乱暴狼藉を働き、我が騎士団の信用を下げていることを私が知らないとでも思ったか?」
リオン騎士団長の低く冷たい声が銀髪の騎士に向けられて発せられる。
やはりこいつら普段からあんな感じみたいだな。好き勝手に暴れているとは……何が名誉ある騎士なんだか。騎士の片隅にも置かない奴等だな。こんな騎士共、ユースティティア騎士王国だったら容赦なく鉄拳が飛んで来ることは間違いないだろう。
「今までは実家の権力で上手く揉み消していたみたいだが、今回はそうはいかない。集団で1人に襲い掛かり、よりにもよってその相手が春人殿だ。それに情けなくも何人かは逃げ出してしまう始末。とても騎士とは言えないな」
アルドーもそう言葉にする。確かにこんな奴等がこの国の騎士なんて情けないというかもはやそういうレベルの話ではない。
「すまないが、こいつらの氷を溶かしてはもらえないか?処分について言わなくてはならないからな」
凍てつかせた氷を溶かして中にいる奴等を解放する。
「お前達の処分は追って通達する。倒れ込んでいる奴等にもそう伝えておけ!言っておくが、意趣返しなんぞ考えない方が良い。彼やその婚約者に手を出せば次こそは本当に殺されるのは勿論だが、お前らの家までもが取り潰しになりかねんからな。言っておくがこれはなんの冗談でも何でもないからな」
ポカンと目を丸くする銀髪の騎士をよそに、リオン騎士団長が私の前で深々と頭を下げる。
「私の部下が迷惑をかけた。本当に申し訳ない。だが、騎士団の者が全てこんな奴等ではないということはどうか、わかってほしい」
「それは分かっている。あと貴様ら、次に私の身内に手を出そうとしたり変な真似をしてみろ?貴様らを完膚なきまで攻撃をしたあと、首を刎ねて殺す。私にはそれだけの権力があるということをよく覚えておけ」
そう言うと、奴等はそのまま逃げ去って行った。これで終われば助かるんだがな。
「自己紹介が遅れたな。私は王国第一騎士団団長のリオン・クレイマンだ」
「私は望月春人だ」
「知っているさ。何かと有名人だからな」
その後、アルドーに騎士団の現状を聞かされた。そもそも騎士団の任務は、王都の守りを主とし、その他にも都の安全や、王室警護、要人護衛などを任務としている。そして、その騎士団のほとんどの団員が貴族階級の子息なのだが、長男が家督を継ぐため自然とその次男、三男あたりが多くなってしまう。そういった立場のせいで貴族の子息としての責任感というのが一切無く、家柄を誇るだけの、ああいった我儘な奴等もいるらしい。
「まあ、かくいう私も次男ではありますが、うちの場合はああいった輩の家と違って、人様に迷惑をかけるなどといった行為をすると、容赦なく父の鉄拳制裁がもれなく待っていますので……」
アルドーがそう苦笑いをしながら言う。確かにあの曲がったことが大嫌いなレオナルド伯爵ならばそうなるのも分かるような気がするな。
「少数ではあるのだが、今回みたく家柄とかにしがみつく者がいてね、まったくくだらない」
団長や副団長の2トップがまともなだけまだマシな方だ。上位貴族の家の新兵が下位貴族の家の隊長に従わなかったり、逆に下位貴族の家の隊長が上位貴族の家の新兵に媚びたりして地位を上げようとするくだらない話は、たまに耳にするから、そいつらに比べれば君達はかなり良い方だと言えるよ。
「今回は貴方のおかげで助かった。あいつらの処遇については正直困っていたんだよ。証拠がない限り簡単には処分出来なかったが、今回の件で楽にこの騎士団に巣食うゴミ虫を追い払うことが出来た。ありがとう」
そう言って再び頭を下げて礼を述べる。
「もしも奴等が意趣返しに私の身内に手を出そうとしようとした場合、神級魔術師の権限を使ってでも奴等は殺させてもらうからな」
「……分かった。一応国王陛下には今回の件を伝えておく。もし何かあったら頼ってくれていい」
「ああ、感謝する」
そうしてリオン騎士団長と握手を交わした後、2人のいる場所を教えてもらい、2人と一緒に屋敷へと戻った。
奴等が騎士団長の言葉を無視して意趣返しをするような馬鹿じゃなければ思いたいが……。
「……と会話をしたのが一昨日の昼間のことだったんだがな」
月の光が差し込む我が屋敷の近くに、軽く100人近い襲撃者が潜んでいた。
一応屋敷を警戒体制にして、至るところの壁から私が予めこのような襲撃があった時のために【創造】で創り出していた銃を持った軍服姿の者達が窓から狙撃銃(H&K G3SG/1)を一斉に構える。因みに門番のダナンや他の使用人達には、屋敷の中で待機してもらっている。今からやることに外にいてはかなり危険だからな。
そして、全員が我が家の敷地内に不法侵入したのを確認してから、門を開閉スイッチを押して瞬時に閉じて結界を張る。
襲撃者の中には金髪や銀髪、朱髪のクソガキ共の姿も見えた。やはり殺すしかなさそうだな。
「なんだ!急に門が閉まったぞ!?それになんなんだこの変な結界は!?」
「おいお前、門を開けに行け」
「了解」
1人が門の結界に触れた瞬間、そいつの身体は蒸発し、骨すらも残さず死んだ。
「春人様、いつにも増して殺意が強い結界を張りましたね」
「君達に危害を加えようとした連中だ。これぐらいの報いは当然のことだ」
「怖い方の春人さんになってますね」
「ですね」
なんかさりげなくディスられているような気がするが気のせいか?
一方、外の奴等はというと。
「なんなんだ今のは!?」
「一瞬で消えたぞ!」
「完全に出られなくなったのか?」
さらに奴等に恐怖を刻み込むために窓に配置していた狙撃部隊に一斉射撃を命じて襲撃者の何人かの脳天を撃ち抜いて即死させる。
「攻撃された!?急いで盾を構えろ!!」
そんなことをやっても無駄だ。
そう思いながらもさらに奴等に恐怖を刻み込むために庭にある警備システムの1つを稼働させる。
庭に地下から出現したのは、ファランクスの応用型が数十門だった。
※ファランクスとは、アメリカで開発されたCIWS。M61「バルカン」のこと。日本では高性能20mm機関砲と呼ばれており、主にイージス艦を含む護衛艦などに兵装しされている。20mm多銃身機銃と小型の捕捉・追尾レーダーを組み合わせて、対艦ミサイルのような小型高速の目標を全自動で迎撃できるようにしたシステムであり、アメリカ海軍ではMK15として制式化され、バルカン・ファランクスと俗称されている。
ファランクスが一斉に弾丸を襲撃者達に浴びせる。すると、そいつらの血肉が至る所のに飛び散り身体がバラバラになっていく。何人かには当てないようにして生き残し、私は外へと出る。
拳銃(ベレッタ 90-Two)をホルスターから取り出し銃口を奴等に向かって構える。
「貴様!こんなことをしてただで済むと思っているのか!!お前は間違いなく死刑対処だ。だが、俺達を解放するんならば今回の件は誰にも話さない。悪くない条件だろ?」
この期に及んでまだそのような態度を取るか。
1発そいつの足に目掛けて撃つ。すると、足を撃たれたそいつは撃たれた箇所を押さえながら悲鳴をあげて苦しむ。
「勘違いしているようだが、お前らの死刑は既に確定している。何故ならここは神級魔術師の屋敷なのだからな」
そう言って、私は神級魔術師のライセンスカードを見せる。
すると、やっと自分達がどういった存在に手を出そうとしているのかを自覚した。
神級魔術師は、ベルンガ王国では国王以上の権限を持っている。つまり、国王を殺そうとしたのと同じような状況だ。そうなれば、その場での処刑はほぼ当たり前なので殺されたとしても私を罪に問うことは出来ないのだ。それにここには彼女もいるしな。
「それに私もここに住んでいます。貴方達はこのベルンガ王国第一王女であるエリアリア・フォン・ベルンガに対して牙を向けたということは、反逆罪が適用されます。残念ながら貴方達のせいでご実家の方は取り潰しとなり家族諸共斬首刑が確定となるでしょうね」
エリアがそう言うと、生き残りの金髪と銀髪、そして他の何人かは同時に気絶した。こんな程度でよくもまあ私のところに襲撃をしようと思ったものだな。
その後、ラナさんとシリカさんにリオン騎士団長のところに行って、事のあらすじを伝えて、騎士を連れて来るように頼んだ。
2人共、若干外の光景を見て気持ち悪くなっていたが、落ち着いてから屋敷の周りの結界を解除して行かせた。
エリア達も流石に気持ち悪くなっていたが今は比較的落ち着いている。
まあ、普通こんな身体から内臓が飛び出した死体やバラバラになった死体を見たらこうなるのも当然か。
使い終わったファランクスをまた仕舞い、警戒体制を解除し、狙撃部隊らも壁の内側へと戻らせた。
「それで生き残ったこの人達はどうするのですか?」
「そうだな。本来ならばこの場で殺すか、スターズで捕縛した後に拷問にかけて殺すのもありだが、今回はこの国に任せようと思っている。それに昨日分かった事なんだが、襲撃に来た元騎士達の実家のほとんどは今日一斉に処分する予定なんだそうだ。たぶん今頃、ベルンガ支部の者達が捕縛したり暗殺したりしている頃だと思うぞ」
「なんだかすごいことをサラッと言っていますよね、それ」
それから数分後、2人が呼びに行った騎士団がやって来た。
「こ、これは……」
「副団長……なんだか気分が悪くなりました」
「奇遇ですね。私もです……」
「こんな光景を見たら気分が悪くなるのも無理はないだろう。実際、私も気分が少し悪い」
「すまないが、早速頼らせてもらうぞ」
「分かった。姫様にもご迷惑をお掛けし申し訳ありません」
「春人さんのおかげでこちら側は全員が無事でしたので、気にしないで下さい」
「そう言ってくださると助かります」
「国王には今回の件について報告しているか?」
「一応報告しています。春人殿の屋敷に襲撃をかけた時点でこのようなことを予想しているような言い方をされておりました」
「なるほど。私がとる行動は分かっていたようだな。とりあえずその死体を片付け、そこの奴等を連れて行け」
「分かりました」
それから騎士団で急いで死体の処理を行い、他の生き残った奴等を連れて城の方へと戻って行った。
「あ、そうだ。近いうちにそっちに行くと国王に伝えておいてくれ」
「ああ、分かった」
そう言って、リオン騎士団長らも帰って行った。
「あの、春人さん。さっきの結界は、なんなんですか?」
「ん?ああ、あれね。あれは【アトミックバリア】っていう私のオリジナル亜神級結界魔法だよ。あの【アトミックバリア】に少しでも触れた瞬間、その触れた対象は瞬時に塵も残さず消滅する仕組みになっている」
「それだけの高威力の結界を張る必要があったのですか?」
「トリス達に危害を加えようとするクソガキ共だ。遠慮をする必要がいったい何処にある?私は君達に危害を加えようとする奴には手加減をするつもり一切はない。私が持つ権力と武力を使ってでもそいつに本当の地獄を見せ付ける」
「なんだか春人って前々から思ってだけどもあたし達に対してちょっと過保護過ぎない?」
「ちょっとどころではないと思うのですが……」
「あ、それは前々からそう思っていました」
「春人様。あの警戒体制の時に使ったホムンクルス?とかっていつ配置していたんですか?」
「この屋敷をもらった時からだね。地下施設を造るのと同時に創ってだんだよ。こんな時の為にね」
「そんなに前からやってたんですか!?」
「他にもまだ出してない武器や兵もいるんだよ」
「なんだかここに住むのが初めて少し恐ろしく感じましたね」
「そう?これぐらい普通だろ?」
『全然普通じゃない(です)!!』
「あ、はい」
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