98話 婚約の報告と馬鹿騎士
今日は、エリアと一緒にベルンガ城にやって来ていた。
その理由は、ベルンガ王達にエリア達との婚約を報告するためである。
「ほう、そうかそうか!とうとうエリアが春人殿を落としたか!これはめでたい」
「良かったわね。これからは一層、妻として春人さんに尽くすのですよ」
「はい!お母様」
エレン王妃がエリアの頭を撫でながらそう言う。
「それにしてもいきなり4人と婚約したと聞いた時は驚いたぞ?」
「あら、そう?私にはこうなるんじゃないかという予測はあったわよ。初めて会ったときから春人さんのことが好きなのは分かっていたもの」
「お母様気づいていたのですか!?」
「叙爵式の時に実はあの子達と話しててね。それで、話を聞いてやっぱりそうだったんだと思ったわ。1番予想外だったのは、あの子達にエリア自身が一緒に婚約者になろうと提案したことね」
「皆さんが春人さんが好きなのは以前から知っていましたし、それに私1人で支えていくにも限界がありますから仲間が多ければ良いかなと思いまして」
エリア1人で私と婚約するよりも、エリアと同じく私のことが好きなのであれば、同じ婚約者にした方が公平で良いというわけか。
「でも、これからは大変なことになるかも知れないわね。やっぱりまだ伏せた方が良いかしらね」
「そうですね。まだ伏せていた方が良いかもしれませんね」
「どういうことですか?」
「エリア、よく考えてみてごらん。エリアとの婚約を発表するとする。世間一般的には、私はただの平民に思えるだろう。神級魔術師としての身分を使ったとしても実績がないという理由で、他の馬鹿な貴族共が余計なちょっかいをかけてくる可能性が高い。だからまだ公表するべきではないということだ」
「なるほど。確かにそうなる可能性はありますね。春人さんの仕事に支障が出ては大変ですから今はまだ内密にする必要がありそうですね」
「エリア姉様。お話は終わったのですか?」
リアが柱からひょっこりと出てくる。
「今終わったところです」
「春人さん。私とはいつ婚約してくれるのですか?」
まったくこの子は……。
「いつも言ってるけども、私は君と婚約をするつもりはないよ」
「そうですか。でも私はいつまでも待っていますからね」
そう言ってリアは部屋から出て行った。
そして私は、国王と王妃のところにエリアを残して、城の訓練場へと向かった。確か今日は、アイリスとトワが行くと言っていたからもしかしたら訓練の様子を見れるのではないかと思ったからだ。
訓練場の近くにある木の上から訓練場を見る。
訓練場の至るところで模擬戦が行われていた。だが、あんな剣の振り方では模擬戦の意味がないだろうに。
そう思って訓練場の中に入って、もう少し見ていることにした。
「おいそこの貴様、そこで何をしている」
声をかけられて振り返ると、そこには若い騎士達が13人ほどこちらをうかがっていた。見た目からしてたぶん新入りあたりの騎士だろうな。おそらく勝手に入って来た私を警戒しているのだろう。
「見慣れない顔だな。誰かの使用人か何かか?ここは貴様のようなやつが来るところではないぞ!」
なんかさっきからどこか見下しているような言い方をしてくるんだよな、この先頭にいる金髪の騎士。
「ここへは、私の仲間がいるかと思ってな。少し覗いていただけだ。いないようなら他の場所に行くとするよ」
面倒なことになる前に撤退しようと思い、適当に返事をする。
「知り合いだと?」
「もしかしてあいつじゃないか?ほら、最近レオナルド将軍が連れて来る拳闘士の女共」
金髪の騎士が聞いて来ると、その騎士の後ろにいた紺髪の騎士が答える。レオナルド将軍と一緒にいる拳闘士と来たら間違いなくアイリスとトワだろう。
「ああ、あの女共か。なるほど、あの女共を使って上手い事将軍に取り入ろうってハラか。これだから下賎な輩というのは節操がないな」
そう答えたのは、紺髪の騎士ではなくその隣にいた朱髪の方だった。だが、その顔はいやらしい笑みでいっぱいだった。
「あの女共を上手く使ってこいつも軍に入ろうと企んでるんだろ?」
「軍は数を揃えなくちゃ格好がつかないからな下民でもいないよりはマシなんだろ。我々少数精鋭、名誉ある騎士団のような者とは違うのさ」
そう言うと、何がおかしいのか他の騎士達と一緒に笑い出した。もういい加減ウザったらしくなってきたので、その場を離れることにした。
「お前、ひょっとしてあの女共の男なのか?」
「……だったらなんだ?」
まるで私のことを引き止めるかのように朱髪の騎士が声をかけて来て、若干イラつきながら答える。さっきからそのヘラヘラ笑うのがやたら癪に障るな。
「だったら将軍の部屋のベッドの中でも探してみることだな。今頃いい声をあげ、ぐぼぇえッ!?」
とうとう我慢の限界に達した私は、そいつの言葉を最後まで待たず、その騎士の鳩尾に少し本気のパンチをその顔面に叩き込む。全ての歯が折れ、鼻が潰れて鼻血を飛ばしながら地面に転がるそいつの首を掴んで上に上げ離すと同時にその横っ腹に蹴りを入れる。
私が蹴ったところの鎧部分が凹みその蹴り飛ばした相手は壁まで飛んで行き、壁が少し剥がれてそいつが吐血しながら倒れ込んだ。
「貴様、何のつもりだ!?」
「人が黙っていれば好き放題言いやがって。私の婚約者にあのような言葉の数々。ただで済むとは思うなよ?クソガキ共」
さっき見下すように話していた金髪の騎士に対してそのようなことを言ってそいつにも鎧が凹むぐらいの勢いのパンチを鳩尾に入れる。出来るだけ苦しむように気絶ギリギリの攻撃なので、気絶することはないはずだ。
「貴様、その者はワルーイ子爵家の次男なんだぞ。それを殴ってただですむと……」
「な、なんだこれは!足が凍って……」
「ごちゃごちゃ五月蝿えな。家柄とか関係ねぇよ。別にテメェら偉いわけでもないだろうが。それにワルーイ子爵家は近いうち貴族ではなくなるぞ。まったく、これだから家柄だけの馬鹿なガキというのは困る。だからそのまま凍りついて死ね」
「何だと!?」
その様子を見ていた他の騎士達も私の周りを囲い込み、剣を抜いて構え、殺気を向ける。
「剣を抜いて殺気を向けて来たからには、私に殺される覚悟があるんだろうな?言っておくが、私は躊躇なんぞ一切しないからな」
「黙れっ!」
1人の騎士が斬りかかって来るが、まったくなっていないな。まあ、こういう奴等は所詮この程度か。
そう思いながら、その斬りかかって来た剣を手刀で真っ二つに斬る。するとその騎士の顔が青ざめる。
「剣を真っ二つとか、ば、化け物かよ」
「雑魚が。貴様らがいう少数精鋭の選ばれた名誉ある騎士とはこんな程度の実力なのか?こんな程度でよくもまあ、それだけの大口を叩けたもんだな」
「一斉に斬りかかれ! 同時に攻撃するんだ!」
もう1人の金髪の騎士がそう叫ぶ。作戦内容を叫んで言うとか馬鹿なのか?いや、馬鹿だったな。
「そろそろ貴様らも死ね。【アブソリュート・ゼロ】」
訓練場一帯が氷の世界と化した。
「何なんだよこれ?」
「貴様らは相手を間違えた。だからこそ貴様らはこの場で死ぬ。ただそれだけだ」
アイリスとトワを侮辱したこいつらを許すわけにはいかない。そう思いながら完全に凍りつかせようとしたその時。
「そこまでにしてはもらえないか」
突然声をかけられて振り向くと、そこには2人の騎士が立っていた。1人は40から50代ぐらいの髭を生やした白髪の騎士ともう1人は何度か会っている騎士だ。
「アルドー・マッカーサー……」
「春人殿。お久しぶりです」
『良かった』、『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。投稿日時はバラバラですが、どうぞこれからもよろしくお願いします。




