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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第9章 ミランダンジョン
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88話 バカンス

「あの、春人様。お話は終わったのでしょうか?」

「まあね。さてと、これでこっちの仕事も終わったな」

「でしたら春人さん。私達と一緒に遊びませんか?」


 うーん。まあ、たまにはこの子達と一緒に水遊びをするのも悪くないか。


「分かった。良いよ」

「でしたら、向こうで待っていますね」


 そう言って、みんなは海の方へと行った。


「さてと、着替えて来るとするか」


 男性用に作った更衣室で【ストレージ】にしまってあった、フィットネス水着を取り出してそれに着替える。

 元の服は万が一に備えて【ストレージ】に仕舞(しま)っておいた。

 そして更衣室から出ると、丁度更衣室の目の前を通りかかったレオナルド伯爵が私の方を見るや、驚きの表情を見せる。

 それが不思議に思った私は、レオナルド伯爵に尋ねる。


「レオナルド伯爵。どうかしましたか?」

「す、凄い筋肉量だな。普段の姿からはまったく予想出来ない程だな。大胸筋、上腕二頭筋、大腿筋(だいたいきん)僧帽筋(そうぼうきん)のバランスがとても良いな。(わし)もそれなりに鍛えているつもりだが、その筋肉には勝てそうにないな。今思えば、あれだけの強さを持っているのならばこの筋肉量も得心がいくな」


 いくら諜報機関とは言っても、本来の私達の仕事はドランクの殲滅だ。いくら身体強化魔法を使ったとしても限界があるし、持続時間がそう続くわけではないし、魔法攻撃は、ドランクには逆効果だ。だからこそ、我々は肉体も鍛える必要があるのだ。


「ありがとうございます。ですが、これぐらい普通ですよ。レオナルド伯爵からしたら、私達はあまり鍛えなていないと思われがちですが、強力な魔物との戦闘もありますし、他にももし任務で敵に見つかった際には戦闘も予想されるので、敵から逃げたりまたは、その標敵を拘束する時にも戦闘は発生しますので、それもあって鍛えているんですよ」

「そっちはなかなかに大変そうなんだな」 

「ああ。最近は特に大変だな。王族の暗殺未遂事件なんかも起こっているしな」

「確かにそれはうちの国での情報収集が完璧ではなかったからだな。そのせいでお前達にも迷惑をかけたな」

「何か勘違いをしているようですね。別にベルンガ王国の情報収集に対して文句を言っているわけではありませんよ。それにこれだけは覚えていなさい。この世に完璧なんてものはないんですよ。あるとすればそこで慢心(まんしん)しているだけの存在です。そこで完璧だと思ってしまえば、その後に残るのは完璧とは正反対の未熟であり、そこから先の成長は一切ありません。ですので、未熟だと思っているのであればこの先も未熟だと思い続けなさい。そうすれば、人はどこまでだって成長(種族進化だって)できます。まあ、これはただの年寄りの戯言(ざれごと)ですので聞き流しても構いませんよ。それじゃあ、私はこれで失礼します」


 そう言って私はみんながいる海の方へと向かった。

 そして、残ったレオナルドは更衣室のテント前で、1人呟く。


「そこで完璧だと思ってしまえば、その後に残るのは完璧とは反対の未熟であり、成長は一切しない……か。確かにその通りなのかも知れないな」


 レオナルドは、握り締めた左手を見ながらそう呟く。

 海の方へと向かった春人は、みんなの所へ向かう途中でマリンに声をかけられた。


「あら、水着に着替えたのね?」

「まあな。1人だけ水着じゃないのも変だろ?それに、マリンだって、最初は海に入らないとか言っていたのに水着に着替えてるじゃないか」

「私も貴方と似た理由よ」

「確かにそうだな。それにマリンの服はこの気温じゃとてもじゃないが暑いだろうしな」

「あら、意外とそうでもないのよ。あの服。一見暑そうに見えるかも知れないけど、あれは夏用の服で見た目以上に通気性が良いだけじゃなくて、あの服には魔力を流し込むと一定時間だけ付与(エンチャント)された魔法によって更に涼しくなるのよ」

「かなり便利だな。その服……」

「ええ。なんせ、私が特注で作らせた服だもの」


 そのデザインの服どれだけ気に入ってるんだよ……。

 それにやっぱり日傘をさしているからやっぱりただの白人というわけではなくアルビノなんだな。今更だが……。


「にしても貴方、かなりの筋肉ね……」

「そうか?さっきレオナルド伯爵にも言われたが……」

「だって、普段の貴方の姿からしたらそんな筋肉量はまったくと言っていい程想像出来ないもの」

「まあ良いや。それじゃ私はあの子達に呼ばれてるからそろそろ行くよ」

「なら私は、弟子と話し合いでもしてるわね」

「ほどほどにしてやれよ。レベッカ名誉子爵もここへは羽を伸ばしに来てるんだからさ」

「分かってるわよ。別に貴方が心配しているような事にはならないわよ」

「いや、べつにそこまで心配はしてないが……」

「普通、そこは心配してるって言うところなんじゃないらしら」

「そうなのか?まあ、べつに心配していないのに心配してるって言っても意味なんてないだろ?」

「まあ、それもそうね」

「それじゃ、そろそろ行くとするか。あの子達をいつまでも待たせるわけにはいかないしな」

「ほんと、同一人物とは思えないわね」

「誰が?」

「貴方よ。村で会った時は、かなり恐ろしいイメージだったけど、今の貴方からはあの時みたいな気配は一切感じない。聞かされるまでまったく分からなかったわ」

「むしろバレたら困る」

「それもそうね」


 マリンとそんな風に話していると海の方から私を呼ぶ声が聞こえて来た。


「春人さ〜ん!まだですか〜!」


 エリアが海から私を呼んでいた。


「それじゃ、また後で」


 そうマリンに言い残して海へと入ってみんなの所へと向かった。


「春人さん。マリンさんと何を話されていたのですか?」

「うん?ああ、ただ泳がないのかって話してただけだよ」

「そうなのですか?それにしては随分と話し込んでいた様子でしたが?」

「あとは、他愛ない世間話程度のことを話してて遅れただけだから」

「そうですか……それならべつに良いんですけど」

「ねえ、春人。さっきから言おうかどうか迷ってたんだけど……凄い筋肉ね。アンタ」

「す、凄い。です」

「これだけ鍛え上げられた肉体は今まで見たことないです」

「言われてみれば確かに凄い筋肉ですね」

「それにしてもトワは驚かないのね?」

「私は昔に何度も見ていますから」

「もしかしてだけど、一緒にお風呂に入ったから。なんて言わないわよね?」

「そうですけど?」


 おいちょっと待てトワ!!その言い方は語弊(ごへい)があるぞ!しかも顔を赤ながら言うんじゃあない!!


「春人さん。いくらトワさんが幼いからといって、一緒に入るのは、その、まずいと、思います」

「トリス、それに他のみんなも誤解すんな!一緒に入ったといっても水着を着て入ってるからな!トワ、お前からもなんか言ってくれ!」

「その、大きかった、です」

「お、大きい……!?」

「その言い方は完全に誤解を生むからやめなさい!!」


 それから彼女達の誤解を解くのにかなりの時間がかかり、そして、その誤解を解いてからみんなと遊んでいるうちに気がつくと、もう夕暮れ時だった。


「それじゃあ、そろそろ戻って着替えるよ。明日は本格的にミランダンジョンの調査をしなくちゃならないんだから」

「分かったわ」


 そう言ってみんな着替え用のテントに戻って着替える。

 そして、全員着替え終わってから、準備した全ての物を【デリート】で片付ける。


「それじゃあ、今日はもう屋敷に戻ろうか。ところでマリンはどうする予定なんだ?城の方にでも泊まるのか?」

「そうなるわね」

「だったら今日はうちの屋敷に泊まるか?」

「あら、私に夜這いでも仕掛けるつもり?」


 マリンが私にそう言った瞬間にみんなからの冷たい視線が私に向けられる。


「そんなわけないだろ?明日城から屋敷の方まで来るの面倒だろ?それだったらうちの屋敷に泊まって、明日まとめて【ゲート】で行けると思ったんだよ」

「そういうことね」

「そういうことだから。みんな誤解しないでくれよ。それじゃあ、そろそろ屋敷に戻るよ。【ゲート】」

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