83話 突入作戦(決着)
山県さんの案内で護符の前までやって来た私達は護符の周りにいた雑兵を全て倒す。こいつらもまた、徳川に攻め込んで来た兵と同じように陣笠や兜を破壊するとその雑兵も倒れて動かなくなった。
「これが護符で間違いないか?」
「ええ、それで間違いないわ。その石の人形自体が結界の護符で間違いないわ」
マリンが言うこの石の人形の形からして地蔵だろう。それにこの地蔵は四方に設置されていてこれらを全て破壊する必要があるのだが、それは既に四天王を救出した際に支部の潜入班が3ヶ所を破壊しているので、残りのこの地蔵を破壊すればいいだけだ。
そして、懐から銃を取り出してその地蔵を破壊する。
「お、お前その武器もしかして!?」
「何か勘違いしているようなので先に訂正しておきますが、あいつらの仲間とかではありません。奴らとは元々所属していた組織が同じだというだけで、繋がりは一切ありません」
「そうか。なら良いんだがよ」
地蔵を破壊して、敵の雑兵に後々囲まれると厄介なので、【ダークブレイズ】で敵全てを始末する。
「全部お前さんがやったのか?」
「中曲輪の屋敷で囲われても面倒にしかならないので先に始末させてもらいましたが文句はありませんよね」
「ああ。俺達としても助かるが、これだけの魔法を使って魔力は大丈夫なのか?」
「心配いりませんよ。私の魔力はほぼ無限に等しい程の量がありますので」
敵を始末し終え、【ゲート】を開き、中曲輪……小山田信茂のところへと向かった。
大きな中曲輪の屋敷の前へと出ると、そこには動かなくなった武田兵が転がっていた。
辺りは篝火によって照らされ、奥の方から一人の男が姿を現した。恐らくこいつが小山田信茂で間違いないだろう。
そして小山田信茂を護るような隊形で残りの自衛官達が出て来た。
「おや、これはこれは四天王の皆さん。先程の攻撃皆さんの仕業でしたか。一体どうやったんですか?」
すると、隣にいた自衛官が小山田信茂に話しかける。
「失礼ながら申しますと、恐らく四天王の面々の仕業ではないと思われます。四天王は全員魔法を使うことが出来ません。ですが、先程のは明らかに魔法でした。それもかなりの術者です」
「そうですか。確かに四天王の皆さんでは先程の攻撃は不可能ですね」
「ゴタゴタ五月蝿えんだよ!!覚悟しろや!信茂!!」
とうとう痺れを切らした山県さんが小山田信茂に向かって斬りかかりに行く。当然ながら護衛の自衛官達が小山田信茂の前へと出て山県さんに向けて銃を構えるがそれと同時に雑兵とは明らかに違い明らかに将クラスの鎧を着た人物が奥から飛び出して山県さんの剣を弾き飛ばした。
すると、それを見た武田陣営が驚きの表情を見せていた。
「!? 信茂テメェ!お館様に一体何をしやがった!!」
「私は何もしていませんよ。強いて言えば、お館様に私を護ってほしいとお願いしたぐらいですかね」
「『鑑定』」
『鑑定』を見ると、やっぱり他の雑兵達と同じように死体の状態で小山田信茂が自分の思い通りに操っているだけだった。
名称:死者の雫
解説:装備者が死体に直接接触するかもしくはその操った死体を使って間接的に相手を自分の思い通りに指示をする事が可能となる。ただし、死亡した者にしか効果を発揮しない。また、直接支配下に置いた者に関しては間接的に支配下に置いた者よりも細かい命令を遂行することができる。
「山県さん。それはもう武田信玄ではありません。ただの武田信玄の姿をしたアンデッドです」
「それでも俺達にはお館様への忠義ってゆうのがあるんだよ!だからお館様!そこを退いてくれ!!」
「その人の言った通りでお館様に何を言っても無駄ですよ」
信玄を操っているアーティファクトは何処だ。身に付けていなければ、信玄を含めたアンデッドは動かせない。だから必ず何処かに身に付けているはず……。
あった!あの腕輪に埋め込まれている丸い結晶がアーティファクトの本体か。
別に魔法でやっても良いが、ここは久しぶりに式にやらせるか。
《召命───鎌鼬》
鎌鼬は光速で相手に向かって斬り込む為、相手は斬られた事すら自覚する事なく死亡することが多い。だが、今回は召喚こっちに召喚する前に腕輪の内側の腕の方と武田信玄の兜だけを斬るように命じてある。
そして、鎌鼬は誰にも見られる事なく小山田信茂の手首を斬り落とし、その場に小山田信茂の手首が落ちる。その落ちた音に気が付いた小山田信茂が下に落ちた手首を見ると、一瞬固まった。
それよりも先に四天王が信玄が倒された事に気がつき、私へと視線を向けて、馬場さんが言う。
「小僧、お前……」
「あれはもう武田信玄ではなく、その身体を小山田信茂が装備している死者の雫に操られたただの哀れな傀儡です。ならば解放してあげるのもありだと思いますし、そもそも私は武田信玄に仕えてもないし、恩義とかもありません。それと今更ですが、小山田信茂には、殺人罪、死体傀儡侵略罪、異世界人取締り法違反。そして、それに付き従っている自衛官全員には犯人隠避、この世界への密入、殺人未遂罪、銃の未申込の罪で逮捕状が出ています。大人しくご同行願います」
すると小声で自衛官達が話し合う。
「我々が自衛官だとはっきり言ったということは、自衛官の存在を知っているということになる。それに逮捕状ということはそれなりの権限を持った組織という事になる。ここは大人しく投降するべきではないか?」
「確かにそうだが、汚職警官みたいな存在だったらどうする?」
「だが、さっきの攻撃見ただろ。もし本当にあの人1人でやったんなら私達だけでは勝ち目はないし、ここに侵入されているということは、当然警備として配置していた者達は全員拘束されたか殺された可能性だってある。そうなったら全滅だ。ここは大隊長の言う通り大人しくあの人に従った方が良いと思います」
大隊長と呼ばれていた男が少し考え込んだ後、私に言う。
「我々は貴方の指示に従い投降します」
「私を裏切るつもりか!」
「信茂さん。諦めた方が良いと思います。投降すれべ命は取らないと思います」
「諦めてたまるか!それにまだここにアーティファクトがあるんだ」
私は、普通の人間には見えない速度で小山田信茂の所へと行きその勢いを使って肘で鳩尾を押して小山田信茂を建物の奥へと吹き飛ばす。
そして、手から落ちた死者の雫を拾い上げる。
小山田信茂が立ち上がり、私に向かって叫ぶ。
「そいつを返せ!!」
「駄目に決まってるだろ?マリン。確か妖精族にはその物体や人物の濁りなどを判別出来る魔眼を有していたよな?」
そう言ってマリンに死者の雫を手渡す。
「よくそんな事知ってるわね。うーん、やっぱりダメね。この死者の雫というのには装備者の心を濁らせる呪いが付与されているわ。このアーティファクトは使い方によっては便利な物だけども破壊した方が良いと思うわ」
マリンが私から死者の雫を受け取り、魔眼で視てその効果を言い、私に返す。
「小山田信茂。貴方がこの死者の雫によって身体がもうこれなしでは生きていけない状態だということは分かっている。大人しく投降するのであればこれは破壊しない。だが投降しないのであればこれを破壊する。これが破壊されれば、お前は……お前本当は小山田信茂ではなく死者の雫だろが身体を乗っ取ったってところかな?」
「……何故分かった?」
「まじか……」
死者の雫の答えに山県さんが驚く。
「そう特別不思議なことではない。お前のような呪物系のアーティファクトは自我があったりするからな。で、どうする?ここまで言ったんだ。本体を破壊するば、お前は自我は死ぬし、お前が殺した小山田信茂の身体は消滅する」
「……分かった、投降する。死ぬのはごめんだし、それにせっかく良い依代が手に入ったのに破壊されるのも困るからな」
「そうか。『作戦参加中の全部隊に告ぐ。繰り返す。作戦参加中の全部隊に告ぐ。中曲輪の屋敷にて投降した者達を全員拘束の後、本部へ連行せよ』」
私は無線を飛ばしながら死者の雫を【ストレージ】に収納する。
そして、小山田信茂に近づき手錠を掛ける。その次に投降した自衛官全員に手錠を掛ける。
「お待たせしました」
「ご苦労。手錠を掛けている者達を本部へ連行せよ。あとは私の方でやっておくから、情報統制の方は頼む」
「了解致しました」
その後、四天王達や菖蒲さんに今回の事情を大まかに説明した。もちろん、自衛官が異世界人だということは伏せてだが。
あとは、武田の戦後処理だけだな。あ、今回の件。イレルリカにちゃんと説明した方が良いな。それと、家康さんにも武田の状態を話せる程度で伝えておくか。
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