82話 突入作戦(四天王救出)
暗闇の中に向けて私が声を掛けると、暗く見え難いが、松の木の陰から私と別行動をしていた突入チームだった。
「いつからそこにいた?」
「大体1、2分ぐらい前だったと思います」
その程度の時間ならギリ大丈夫だな。
この子達にはまだ私が異世界人だと知られるわけにはいかないからな。
「なら問題ない。だけど、私に対して隠れるという手段は下手をすれば死を招くことにも繋がるから気をつけた方が良いぞ」
「は、はい!」
とりあえず、コイツらの身柄を引き渡してから中に入るか。
人払いの結界を再度構築をして、中へと呼び出す。
「お待たせしました。シリウス様」
仕事時の声で対応する。
「ご苦労。早速だが、この者達の身柄を本部まで連行してくれ。それと、全武装は一応解除してある筈だが、まだ何処かに隠している可能性もあるため、本部に連れて行く前にもう一度確認してから連行してほしい。それと、その者達は戦闘技術がかなり高いから絶対に油断せず連れて行け」
『了解』
護送部隊が拘束した全員を本部へと連行したのを見届けた。
私は改めて、みんなに注告する。
「これから敵対する者達は菖蒲さんを含め、今までの中で一番の強敵になるだろう。はっきり言って今の君達の実力では間違いなく死ぬだろう。例え結界を解いて魔法を使えるようになったとしてもだ。だからこの2つの約束だけは守ってほしい。1つ目、退避しろと言ったら速やかに安全区域まで退避する事。正直この2つ目の方が大事なんだが、これさえ守ってくれれば多少は目を瞑ろう。絶対に死ぬな」
「そんなの当たり前でしょう?あたし達がそう簡単に死ぬとでも?」
「普段だったら君達はそう簡単に死ぬことはないだろう。だが、今回は違う。今回は『フェアラート』の2級の上〜1級の下レベルの実力を持つ敵がいる可能性がある。正直、私が敵を相手にしながら君達を守れる自信はない。それに、もう二度と目の前で大切な子達を失いたくないからな。だから危険だと判断したら即座に逃げてくれ」
「わかりました。春人様」
話が終わり、まずは武田四天王達が囚われているという地下の座敷牢を目指して、月明かりが地上を照らす中で私達は敵に見つからないように向かった。
地下牢のへと続く結界の中へと入り、菖蒲さん以外は念のために気配遮断で完全に私達の存在を消す。
そして、菖蒲さん1人だけが中に入ったように見せかけて、少し様子を伺うことにした。
「高坂様。ただいま使いの任より戻りました」
「ご苦労様でした。無事に私の密書を家康様に届けられたようで何よりです。それと先程から気になっていましたが、そこにいる『4人』はいつまでそうして隠れているつもりですか?」
バレているんならば気配遮断をする必要がないなと思い、全員の気配遮断を解除して姿を見せる。
「他の3人はともかくとして、よく、私の存在まで気づけましたね」
「空気の流れがおかしかったですし、その空気の流れの乱れは3人分でしたが、何処か空気の圧があったので、恐らくかなりの猛者がいるのではないのかと思いました」
「なるほど。圧が原因でバレてしまったというわけか。これは少し予想外だったな。まあ、それは今はどうでもいい。今からこの格子を斬るので格子から少し離れていて下さい。でないと、貴方諸共斬ってしまう可能性があるのでね」
高坂さんにそう言って格子から離れさせてから、魔力を無数の小型の刃に変形させて斬って、高坂さんを座敷牢から出す。
「若いのに随分と凄いことが出来るのですね」
「子ども扱いはやめてもらえます?私は見た目よりも歳を取っているんですから」
「そうですか、すみません。それと、今更なのですが貴方達は何者なのですか?」
「この方達は高坂様から見て右手から紹介します。まず妖精族族長のマリン・ラージャントさん。続いて神級魔術師の望月春人さん。この春人さんは徳川領に攻め込んだ約3万の兵をお一人で倒した実力者です。そして、その隣にいるトワさんとアイリスさんは春人さんの仲間です。全員家康様の来客で我々の味方ですのでどうぞご安心ください。それで、残りの御三方はどちらに?」
「奥の牢にいます」
高坂さんに奥の牢へと案内される。
「久しぶりだな。高坂」
目を閉じ、座禅を組んでいたその白髪交じりの長い髪と立派な髭を生やした巨漢が、目を開けて高坂さんにそう挨拶をする。
高坂さんが挨拶を返す。
「お久しぶりです馬場殿」
隣の牢から高坂さんに向けて声をかける人物がいた。
「お久しぶりですな。お元気そうで何よりです。高坂殿」
その男性は、緩んだ顔をしていて、武人というよりもどちらかというと細身で内政向きという感じだった。
「おもしろいことになってるようだな、俺の戦場も用意してくれよな、高坂」
細身の男の反対側の牢に入れられていた、黒髪の長髪の胸の辺りに傷があるその男が高坂さんにそう言う。
そして、ハァーと呆れたように高坂さんはため息を漏らす。
「まともなのは馬場殿だけなのですか?まず、内藤殿はもう少し緊張感を持って下さい。現在貴方は罪人としてこの地下牢に囚われているのですよ。次に山県殿は戦いの事だけでなく今の状況をもう少し考えて下さい」
なるほど。細身の男が内藤昌豊で、胸の辺りに傷があるその男が山県昌景というわけか。
「春人殿。申し訳ありませんが、この3人の出してあげて下さい」
「分かりました。危ないので、全員格子から離れて下さい。もし格子の近くにいて誤って斬ってしまったとしても私は一切の責任はとりませんからね」
そう言って3人を格子から離れさせて、さっきと同じように魔力を無数の小型の刃に変形させて全員分の牢の格子斬る。
「それでこれからどうする気ですか、春人殿」
私は作戦内容の一部を4人に伝える。
「まずは貴方達4人をこの躑躅ヶ崎の外へと避難してもらい、外にいる部下が一旦貴方達を保護します。そして、私達で小山田信茂とその部下を拘束する予定です」
「春人様、その部下ってもしかして」
「トワの言う通りの部下だよ」
「やっぱりそうですか。でも良いのですか?存在をバラすような行動をとって」
「あまり良くはないが、今回は事情が事情だ。それに部下と言っても私の部下ではなく此処の管轄担当の部下だからな」
「そう、ですか」
そう。この躑躅ヶ崎の周りには、支部の総隊以外にもイレルリカ直属の部隊が本部から派遣されこの周りを既に包囲しており、いつでも突入が出来る状態なのだ。
それを聞いた山県さんが反対意見を出す。
「そりゃあねえだろ。俺も連れて行ってくれよ春人。信茂の野郎には貸しがたんまりあるんだからよ」
山県さんがそう言いながら指をバキバキと指の骨を鳴らしながら不敵な笑みを浮かべる。
「仕方ありませんね。小山田信茂の所までは連れて行きますが、小山田信茂をはじめとした敵は我々が身柄を預かります。それが条件です」
「……分かりました。その条件を飲みましょう」
「本当に良いのか?高坂」
「ええ、我々の目的は信茂を捕らえるもしくは殺すことです。身柄自体を回収して下さると言っているのですからこれは我々にとっても悪くない条件だと思います」
「そうか。高坂が良いと言うのであれば儂は反対せん」
「ご協力いただきありがとうございます。まず小山田信茂の所に行く前に発動中の結界を解除する為、護符を破壊します」
「その護符の場所なら俺知ってるぜ」
山県さんがなぜ護符の場所を知っているのか聞いたところ、その護符は元々この躑躅ヶ崎を守る為の防衛設備の一つでその護符を管理していたのが、山県さんだったのだから驚いた。
護符のところに向かう前に、4人が丸腰であるのに気がついて、それぞれに自分の武器を武器庫からこっそり回収してから護符の所へと向かった。
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