78話 砦の防衛
三方ヶ原の戦いとは、地球の日本史における元亀3年12月22日(1573年1月25日)に、遠江国敷知郡の三方ヶ原(現在の静岡県浜松市北区三方原町近辺)で起こったとされる武田信玄と徳川家康・織田信長の間で行われた戦いだ。
だが、今起こっているのがこの状況に似ているだけで、三方ヶ原の戦いがそのまま起こっているわけではない。
だが、地球の歴史通りだとこのままでは武田軍に徳川・織田の連合軍は敗北する事となる。詰まるところ、信女の父と兄は戦で死亡する可能性が高いという事だ。
「急いで行かなくては……!春人殿!砦の近くには何回か行ったことがあります。ですので、先程使った【メモリーサーチ】とやらで記憶を読み取って下さい」
「分かった。【メモリーサーチ】」
【メモリーサーチ】で信女からその記憶を読み取って、【ゲート】を開く。
「【ゲート】は一応開いたが、【ゲート】を潜ってすぐに戦闘になる可能性もあるからくれぐれも油断はするな!」
「はい」
【ゲート】を潜って、戦場を見渡すとそこには目を見張るような光景が広がっていた。
「なに、これ……」
「『鑑定』」
『鑑定』を行って、足軽のような格好をしたソレらを見るとそいつらが信じがたいことが分かった。
「春人様、『鑑定』したようですね。何か分かったのですか?」
「ああ、あいつらは全員死人化していたよ」
「アレらが全てアンデッドだと言うのですか……!?」
「だとするとかなり数が多いわね」
「そうだな。とりあえず、私はあの砦に行って状況を確認してくるからみんなは【ゲート】が開くまでこの場で待機していてくれ。もしアレらが襲って来たら対処してくれ」
「分かったわ」
浮遊魔法で上空まで行き、砦に近いやつらを排除することにした。
「とりあえずあいつらを近づかさせないようにしなくてはな。まず、【サイクロンバリア】で砦を囲って【コキュートス】の冷気を砦の敷地内に入らないようにする。普通の人間では【コキュートス】の冷気に耐えることは難しいからな。まあ、そんなことはどうでも良いか」
私は上空で準備をする。
《シエラ、【サイクロンバリア】で砦を守りつつ、【コキュートス】の範囲は砦から約半径100mだ。頼んだ》
《了解。速やかに実行します。第一段階として【サイクロンバリア】を砦の周りに構築……完了》
砦からは「アレはなんだ!?」などという声が聞こえて来たりした。
《続いて、【コキュートス】を砦から半径100mで展開……完了。砦から半径100m以内にいる全ての敵の殲滅を確認しました。また、氷漬けにした敵を今なら砕くことが可能ですがいかがなさいますか?》
《全て砕け》
《承知しました。速やかに実行……完了しました》
これでとりあえず時間は稼げるな。
まずやるべきはやっぱり砦の中に入って責任者と話をするところからだな。
そう思い【テレポート】で砦の中へて転移する。
【テレポート】で砦の中へと入ると、その中にいた兵は突然現れた私に驚いて動けないでいる中でただ1人だけ私の喉元に刃を突きつける人物がいた。この中では間違いなく1番の実力者だろう。
「何者だ?ここへ一体どうやって入って来た?」
「私は望月春人という。ここへは私の無属性魔法【テレポート】で入って来た」
「魔法?つまり、外の現象は全てお主の仕業か?」
「その通りだ。それで、そちらは?」
「私は工藤弘信だ」
「もしかしてだが、信女の兄だったりするか?」
「確かに私の妹の名は信女だが、何故その名を?」
「信女は私の大切な仲間であり、ここへは信女にお願いされて助けに来たんです」
「そうでしたか。信女がお世話になっているようで……。先程は大変失礼しました。それでその……信女には会うことは出来ますか?」
「ええ、出来ますよ。ちょっと待ってて下さい。【ゲート】」
【ゲート】を開いて、一旦彼女達がいるところに顔を出して事情を軽く説明をして、信女とその後ろに他のみんなが付いてくる形で【ゲート】を潜り砦へと戻る。
「兄上!!」
「本当に信女なのか?」
「そうです。正真正銘、工藤弘信が妹。工藤信女です。父上は無事ですか?」
「父上は殿の警護に当たっているから心配しなくても良いよ」
「そうですか。無事で良かったです」
そんな中で私は砦内の負傷した兵達に対して【エリアヒール】で回復する。
大抵の者達はこの【エリアヒール】で回復したが、重症だった者はあまり回復することはなかった。
「これは一体……」
「春人殿の回復魔法ですので心配はいりません」
「いや、信女。確かにほとんどの者達は大丈夫だが、重症者はかなりまずい状態だ。弘信さん。動ける兵達に重症者達をこの場に運んで来るよう指示を出して下さい。早く!」
「はい!」
その後、動ける兵達によって重症者達を一ヶ所に集めてもらった。
「それで春人殿。重症者達を集めてどうするのですか?」
「一人一人治療していく。今は全員止血は済んでいるが【エリアヒール】の回復力では足りなかった部分などを私が直接治療する」
「直接って……。大丈夫なのですか?」
「心配いりません。私は医師免許も持っていますので」
「春人殿の治療技術は王宮でも評価されていますので心配しなくても大丈夫ですよ」
「信女がそこまで言うのであれば大丈夫なのだろう。皆のことを頼みます」
「分かりました。最善を尽くします」
それから全員の手術を行い、最後の一人の手術が終わって外を見ると、もう既に夕暮れ時だった。
「お疲れ様でした」
「皆を助けていただきありがとうございました」
「一応輸血も行いましたが、無理はさせないようにして下さい」
「分かりました」
《敵が半径100m以内に入りました》
「砦の外にいるアレらは何なのか分かりますか?」
「いえ。陣笠を破壊すれば動きが止まるという噂はあるのですが定かではありません」
すると、窓から奴らを見ていたマリンが呟く。
「死霊系の魔法か、アーティファクトかしら?」
「おそらくアーティファクトだろうな」
「どうしてアーティファクトだって分かるの?死霊系の魔法でもできるとは思うけど?」
「確かにアイリスの言う通り魔法でもできるが、今の話を聞く限りだと、アーティファクトの可能性が高い」
「そうね。私も同意見よ」
「どうしてですか?」
「アンデッドは、魔法の場合、普通のアンデッド同様、光魔法だったり、脳が弱点なんだが、アーティファクトの場合は脳以外の場所に弱点を移動させることが可能なんだ。だからさっきの話を聞いて、アーティファクトの可能性が高いと思ったんだよ」
「なるほど。それで春人さんはどうするんですか?」
「奴らを殲滅する」
「やっぱり……」
奴らを殲滅させるには一気に陣笠を破壊するか。
「【ダークブレイズ】」
《【ダークブレイズ】を敵上空に配置完了しました》
「なんだあれは!?」
「あれは私の魔法です。安心して下さい。すぐに敵を殲滅しますので」
《【ダークブレイズ】にて、敵を上空より一斉射撃をし、敵を殲滅します。これより一斉射撃を開始します》
そして、【ダークブレイズ】が雨のように上空からはなたれ、敵は瞬く間に殲滅した。
《敵の殲滅を完了しました》
《了解》
「敵の殲滅を完了しました。もうこの砦は安全だと思います」
「おかげさまで、助かりました」
「気にしないでください。仲間の家族を護りたいと思っただけですので」
まあ、本当のところは信女が見限らないでもらうためなのだが、敢えて黙っておく。
「それで春人殿。父上に事情を説明したいので、一度会っていただきたい」
「分かりました。それぐらいならば構いません」
「感謝します」
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