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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第8章 イシュタリカ神王国
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74話 スタンピードの依頼と突然の来訪者

 私は今、ギルドへと来ていた。その理由は、およそ30分ぐらい前にギルドから使者が屋敷に私を呼びにやって来たからである。

 ギルドの中へと入ると、そのままギルドマスターのいる部屋まで案内された。

 そして、ギルドマスターから私を呼び出した用件を聞く。


「春人さんを呼び出したのは、ある依頼を受けて欲しいからです。その依頼はスタンピードの終結及びスタンピードの発生原因の捜査です。現在、王都にいるBランクの冒険者が春人さんのところだけですし、それにパーティランクでさえ、Bランクは春人さんのところだけなんですよ」

「分かりました。それで?そのスタンピードの規模等の情報は?」

「紅魔の森方面からホブゴブリンが約1000、ゴブリンキングが100、オークが約300、グレーウルフが約50、デュラハンが約500、デビルベアが約100です」

「規模は小さい方のスタンピードだな。だが、スタンピードの発生した魔物の組み合わせがおかしいな。ホブゴブリンやゴブリンキング、オーク、グレーウルフやデビルベアならスタンピードを起こしても不思議ではないが、デュラハンがスタンピードに参加しているのが気になるな……」

「そうなんです!だからこそ春人さん達のパーティにベルンガ王国王都支部ギルドマスターとして依頼したいのです。あと、そちらでは何か掴んではいないのですか?」

「すまないが、国でこの件を正確に把握しているとは思えない」

「いえ。私が聞いているのは、神級魔術師の春人さんではなく、スターズのシリウスさんに対して聞いていたのですが…」

「ああ。たしか、ギルドの諜報部隊なんかには元スターズの人間もいるし、ギルドマスターはスターズの存在を知っていて確かな実力があり尚且(なおか)つ、口の堅い者しかなれなかったな」

「はい。おっしゃる通りです。それでどうなのでしょうか?」

「結果だけで言うのであれば、ベルンガ支部は多分すでに調査を行なっているだろうな」

「ではこの依頼、受けてはいただけないでしょうか?」

「分かりました。その依頼、引き受けましょう」

「ありがとうございます。あ、それと。現在は王都近くの森の中央付近を移動中で、森の入り口にギルド職員やCランクの冒険者達が警備にあたっています。すでに、春人さん達のことは伝えていますので、森に入る際にギルドカードを見せれば簡単に入ることが出来るはずです」

「少しは私が依頼を断るとは考えなかったのですか?」

「スタンピードと聞いて、スターズに所属する春人さんが依頼を引き受けないとは到底思えませんし、その春人さんが依頼を受ければお仲間は必ず来ると思っていましたので」

「なるほど?まあ、良いでしょう。とりあえず私はこの事を伝えるため、一旦屋敷に戻った後、向かいます」

「宜しく頼みます」


 【テレポート】で屋敷に急いで戻る。まだ森の中央付近にいるといっても、いつ侵攻速度が速くなって警備部隊が全滅してもおかしくないからな。


「と、言うわけで、ギルドマスター直々に指名依頼があった。私一人でも良いが、君達も出来れば来てほしい」

「スタンピードってどんな感じなの?」

「その質問がその魔物一体に対しての質問であるのならば、答えは、アイリスでも倒すことは可能だ。けれども、さっきも言った通り、数が少ないがスタンピードには変わりないから数はその魔物の特性的に対してかなり多いと言える。さらに今回の場合は、スタンピードの型が分かっていない以上、危険なのには変わりないが良いか?みんな」

「ええ、もちろんよ」

「拙者は、いつでも大丈夫です」

「もちろん、です」

「私は何処へだって、春人さんについて行く所存(しょぞん)です」

「私もエリアさんと同じですよ。春人様」

「そうか。ありがとう、みんな。それじゃ、各自準備ができ次第玄関前に集合」

「了解 (しました)」


 すると、コンコンコンとノックが鳴るとラクアスが中に入って来る。


「失礼します。旦那様にお客様です」

「そんな予定は無かったはずだが……。分かりました。通して下さい」

「かしこまりました」


 ラクアスに連れられて、中に入って来たのは、レベッカ・アルナス名誉子爵とマリン・ラージャント、そしてマリンのそばにいる猫のようなぬいぐるみの姿をしたフィジーだった。


「お二人が何故ここに?」

「実は、春人に聞きたいことがあったからよ」

「私は、師匠の案内役として来ました」

「マリンが師匠ですか?……なるほど、だからこの間、妖精族の話をした時あのような反応をしていたのですね」

「はい……」

「それで、マリンが聞きたいことってなんだ?」

「貴方が最近倒したという、封印されていた黒い魔物についてよ」

「……なんだと?」


 マリンが言っているのは間違いなくドランクの話だろう。

 倒したことはすでに国には報告したから、おそらくそこから私が倒したという情報が漏れたんだろうな。

 仕方ないので、応接室でマリンの話を聴くことにした。


「貴方達がベルンガ王国に帰る2日ぐらい前に精霊の大森林内のある小さな村から緊急の連絡が城の方にあってね。その内容は、村の近くに変な亀裂があるという内容だったわ。で、その話の内容に興味を持った私は、騎士団1中隊を引き連れてその村へと向かったわ」


 マリンはテーブルの上に置かれた紅茶のカップを手に取り口にする。


「ところで、そこの小さな子は新人さんかしら?あまり接客には慣れていないみたいだけど」

「最近雇ったんだよ。本職はメイドじゃなく私の専属補佐官だけど、最近は補佐官を必要とした仕事がないから、補佐官以外の時はこうしてメイドとして仕事をしてもらっているんだよ。少し不慣れなところはあるだろうが、許してやってくれ」

「こんな小さな子を補佐官にしたの?」


 マリンが紅茶のカップを受け皿に戻す。頼むからこのまま事件に関わったスターズのことは言わないでくれよ。例え、この場にいる全員が知っているとはいえ、その事を話せばそれ相応の対応をしなくてはならなくなるからな。

 そう思いながら、私も目の前に置かれたカップを手に取り口にする。


「それでね、その村に着いたら変な格好をした人達と報告があった内容に関連があると思われる悪魔と形容すべきその異形の形をした魔物がいたのよ。その変な格好をした人達は、そいつらを犠牲を出しながらも倒していたわ。特にその人物達を束ねていた人物はその中でも桁外れの力を持ったのがいたわ」

「し、師匠。その辺にして本題に入ってはいかがですか?」


 レベッカ名誉子爵は、このままではスターズのことを言ってしまうのではないか。そうなれば、目の前にいるスターズの最高幹部である私に何かされるのではないかと懸念して、話題をずらそうとしているといったところだろう。

 だが、マリンはその意図が分からなかったようで話を続けた。


「それでね。その人達が使ってた武器のほとんどは、貴方が私に向けていた武器と同じようなのを持っていたわ。……ねぇ、貴方その人達の関係者じゃないの?」

「あの武器はたまたまダンジョンで見つけたアーティファクトだよ」

「スターズっていう組織に聞き覚えはないかしら?私が遭遇した組織はおそらくそんな名前だったはずよ。そして、そのリーダーの名前はシリウス」


 私はシリウス(スターズ時)の声で話す。


「……シリウスは、名前ではなくコードネームだ」

「え?」

「そして、お前が会話をしたリーダーというのは私だ。ちなみに、私はスターズの中で最高幹部の五星使徒(ペンタグラム)の一柱だ。それで?私の正体を知って、どうするつもりなんだ?言っておくが、私に(おど)しは効かないからな」


 私がそう言った瞬間、マリンの背後に2人、マリンの後頭部に向けて銃口を突きつけていた。

 その2人からは素人でも分かるぐらいの殺気を放っていた。


「落ち着け、2人とも」

「これをどう落ち着けというのですか、シリウス様!」

「そうです!この女は、スターズにとって危険因子になりかねません!早急に処分するべきです!!」


 彼女達の言うことはもっともだ。マリンが私がスターズの人間と怪しんではいたようだが、確証は無かっただろう。だから少し驚いたのかも知れん。

 話は変わるが、この2人の素顔を見るのは、数十年振りだろうか。

 それにしても、他のみんなは動揺している中で一人紅茶を落ち着いて飲んでいられる精神力はある意味凄いな。


「確かにお前達の言いたいことは分かる。それで、ここに来た本当の用件を聞かせてもらおうか?まさか、ここに殺されに来たわけではあるまい」

「ここで私を殺したとしても貴方が疑われるだけではなくて?」

「その通りだな。だが、証拠隠滅も得意としている我々にとって、お前一人の死体ぐらいどうとでもなる。あと、それ以上余計なことは言わない方が身のためだぞ?後ろの2人に殺されかねないからな」

「分かったわ。ここへ来た目的は、アレについて聞きたかったのと、お願いがあって来たのよ」

「あの時の奴らのことか?」

「ええ。私が知っている記憶の中にアレと酷似したものがあるわ。その名はドランク。約8000年前に突如として現れたドランクはこの世界で暴れまくっていたが、多種多様な種族と人数で構成された、対ドランク専門討伐組織スターズ。私の記憶にあるこの情報は間違いないかしら?」

「概ねはあっている。にしても、よく民間で記憶が残っている者がいたな……」

「それって、どう言うこと?」

「ああ。それは、ドランクの脅威が去った後、スターズは、ドランクによる脅威を無くそうと、文明をある程度回復させた後、魔道航空機という、アバロント文明時代の搭乗型航空機にて、世界中に記憶処理薬を散布したんだよ」

「だから、ドランクという存在を知らない人も多いし、そもそも残せる人がいないから文献にも載っていないのね」

「そういうことだ。マリンが聞きたいことはそれだけか?」

「そうね。予想以上の収穫があったわ」

「おい、この情報を漏らしてみろ?必ず漏らした相手とお前を必ず殺すからな」

「シリウス様。いっそのこと、呪縛魔法で縛りつけてはいかがですか?シリウス様はこの者を殺したくはないのでは?」

「そうだな。そうするしかないか。これからお前に【シークレットカース】という呪縛魔法を掛ける。いいな?」

「それで信頼してもらえるのなら構わないわ」

「分かった」


 【シークレットカース】をマリンに掛ける。


「呪縛が発動する条件は、私の許可なくスターズの情報を一切口外しないこと。ただし、私が近くにいて、私が許可した場合はこの限りではない。発動内容は、死ぬ直前までこの世の地獄が全て自分に降り注ぐような生き地獄を味わいながらじわじわと苦しみながら死んでいくことだ」

「……かなり悪趣味な発動内容ね」

「これぐらいしないと、今のお前は信用出来ないからな」

「まあ、良いわ。次はお願いについて話しても良いかしら?」

「構わない」

「実は、ある国にあるというダンジョンを調査したいのよ。そのために協力して欲しいのよ」

「……その国と遺跡の名前は?」

「遥か東方、東の果て。イシュタリカ神王国。そこにあるという、ミランダンジョンよ」

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