73話 マジックブレイズ
リースは多分私と遭遇した瞬間に撃って来るだろう。リースに渡したH&K USP9の装弾数はたしか15発だったはずだ。リースが15発撃ち終わって、リロードするタイミングで攻撃を入れる。もちろん、軽い攻撃だから怪我をする事はない。
そんな事を考えながら進み階段を登ると、上からリースが途中途中、壁や物陰に隠れ警戒しながら移動していたので、挑発の意味も込めながらリースに向かって殺気を放つ。
すると、リースがその殺気に気付いたようで、こっちに瞬時に銃を向けて、リースの視界に私が映った瞬間に3発撃ってきた。
大体予想通りだな、と思いながら銃弾をかわして、殺気を凝縮して具現化した剣を放つ。この攻撃には殺気だけで、魔力を一切使っていないのでルールには違反していない攻撃だ。
それを見たリースは、物陰に上手く隠れて攻撃をかわした。
その隠れてこちらが見えていない隙にリースのいる近くまで行き、近接戦闘に持ち込む。
近づいてリースが撃つがその軌道はズレていたので避ける必要はないと思っていたが、その銃弾は何故か壁から反射されて、私の方に向かって来た。
私は慌てて反射された銃弾を避けると、右肩にリースが持つ銃の銃口が当たって撃たれてしまった。……まさか、リースがここまでとは予想外だったな。
私は撃たれた右肩の部分を左手で押さえながら、リースへと近づく。
「……私は正直言って、リースがここまでとは思っていなかった。この私に1発当てられたのだから誇っても良い。なんせほとんどの者たちは、私に1発も当てられないことの方が多いのだからな。私に当てられたのだから、ほとんどの者には君の早撃ちなどの射撃技術は通用すると思って良い。リース、改めておめでとう。この訓練試合は君の勝ちだ」
「ありがとうございました!」
今はリースだったが、実はもう一人許可が出ている人物がいる。それは……。
「ラクアスさん。実は貴方にも所持許可が出ています。もしよろしければ、さっきまでの訓練試合のようにやった後に銃を持ってみませんか?」
ラクアスは少し悩んだ後、それを了承した。
「さっきまでとルールはほとんど同じだが、違う点が1つある。それは、魔法の使用も可という事である。私もラクアスの事については調べている。君は、上級魔術師だったよね?」
「その通りでございます。ですが、私の時だけ魔法を使ってもよろしいのですか?」
「別に問題ない。それに、今回は私も魔法を使うので気を付けて下さいね」
「旦那様が魔法を使ったら、この老耄に勝ち目はひとつもありませんよ」
「そうか?私はラクアスさんは上級魔術師の中でも帝級魔術師に近いくらいの強さを持っていると思うんだが?まあ、やってみたらすべてわかるさ」
【ストレージ】からH&K P7 M13を取り出してラクアスに渡す。一応念のため、銃の扱い方をリースの時とほぼ同じ事を話した。
「それじゃあ、私はさっきと同じように向かうの方から来るのでそのつもりで」
「かしこまりました」
移動が終わって3分が経過すると、開始の合図である電子ホイッスルが鳴った。
ラクアスは風魔法で身を護りながら水属性魔法の【サンダーブレイズ】の詠唱を同時にしながら向かって来ていた。
なるほど。移動時間を無駄にしないように魔法詠唱をしながら向かって、私と遭遇した時にすぐに使えるようにしているのか。浮遊魔法で空中からその様子を見ていた私はそう思った。
私はラクアスの前へと出て戦闘を始める。
ラクアスの攻撃は、さっきまで詠唱をしていた【サンダーブレイズ】をこっちに飛ばして、それを避けたタイミングに合わせて銃弾を撃ち込んでくるというスタイルだった。
だが、それらを避けた私はラクアスに向けて攻撃をする。
「ラクアスよ。詠唱魔法は時間がかかりすぎる。だが、無詠唱にする事によって、よりしっかりとした魔法イメージをしなくてはならないからその分、魔法の威力も高くなる。その目に焼き付けてるといい。これが本当の魔法というものだ。……【ダークブレイズ】」
【ダークブレイズ】と言った刹那、全体が漆黒の剣が空中に固定されるように無数に出現した。
「見せてあげよう。本当の魔法というものをな」
そう言い、ラクアスに向けて【ダークブレイズ】を何本か放つ。それに負けじと、ラクアスも【サンダーブレイズ】を私が放った【ダークブレイズ】に向けて撃つが、【サンダーブレイズ】の方が砕けるだけで【ダークブレイズ】はまったく傷付くどころか、威力が衰える事なくラクアスに容赦なく向かっていく。しかし、ラクアスは寸前のところでなんとか物陰に隠れ、私の黒剣が一本たりとも当たる事はなかった。
それにしても上手く避けたもんだな。
「ラクアス、これで終わりだ。……【アブソリュート・ゼロ】」
【アブソリュート・ゼロ】を発動したと同時に、訓練所は氷で覆われた絶対零度の世界へと一瞬で変貌する。
「こ、降参です」
ラクアスの降参の言葉が聞こえたので【アブソリュート・ゼロ】を解除する。
「私にここまでの魔法を使わせたのだから、誇って良いですよ。ラクアスさんは、常時携帯を許可します」
「よろしいのですか?」
「問題ありませんよ」
「そうですか。分かりました」
すると、トワが私に質問をしてきた。
「あの、春人様。先程の魔法は何だったのですか?」
「あれね。あれは水属性の亜神級魔法【アブソリュート・ゼロ】だよ。この魔法は広範囲で高威力の魔法だからこの魔法は意外と便利だったりするんだよね」
「そうなんですね」
「ところでこの魔法は、亜神級魔法ではどれぐらいの難しさ何ですか?」
「そうだな、【アブソリュート・ゼロ】は亜神級では中の上ぐらいだから、トリスが仮に亜神級魔法を使えるようになったとしてもギリギリ使えるかどうかの難しさかな」
「私にはほとんど使える可能性は無い、という事ですか?」
「言い方は厳しくなるけど、使える可能性はほとんど無いかな。でも、なんらかの影響によって使えるようになる可能性はあるよ。でも、その可能性は限りなく低いけどね」
「……そうですか」
「でも、今のトリスなら上級魔術師は合格できると私は思ってるよ」
「そうなんですか」
「ああ、この私が保証しよう。今度の試験に試しに行ってみるといいよ」
「分かりました!」
「それじゃ、そろそろ上に戻ろうか」
上に戻ってラナ、シリカ、ラクアスの3人は通常業務へと戻り、リースは私の補佐官としての仕事の内容の説明の為、私の執務室へと移動して説明をした。
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