63話 村を襲うドランク
現着した私は、そこにいた支部の者に状況を確認する。
「状況は?」
「シリウス様。半径3km圏内を立ち入り禁止区域として、外部からの侵入を防いではいるのですが、さすがに王都から来たマリン・ラージャント率いる騎士団を止める事は問題があると判断し、バレないよう一時的にその通る場所のみ解除し、再度封鎖しました。ここに到着するまでおよそ15〜20分程度と思われます」
「そうか。村の方の避難状況はどうなっている?」
「それがですね……」
「何があった?」
「その村人が村から出て行かないと、頑なに避難を拒んでいます」
「ハァー、面倒臭いタイプか……」
「それに他にも問題がありまして……」
「まだあるのかよ!」
「自分達の村は自分達で守ると言い出しまして」
「それだけはなんとしても食い止めろ!なんの訓練も受けていないただの村人がドランクと戦ったりしたら10秒も持たないぞ」
「分かっております。ですので、村にも支部の部隊を2つ待機させました」
「そうか、村人をなんとしても守り抜け」
「ハッ」
それから数分後、時空の歪みが大きくなり、中から下級ドランクが出現した。
だが、その後すぐに歪みの中からもう1体現れたが、そいつは、下級ではなく核の大きさからして中級だった。中級の出現予測はなかったはずなのになんで出て来ているんだ!
今はそんな事よりも急いでどうにかしなくちゃと思っていると、中級が下級を取り込み、変化したその形はまるで、コブラとエイを合わせたような姿をしていた。
「総員、撃て!」
その合図とともに、機動総隊が撃つ激しい銃声が一斉に鳴り響く。
「砲撃部隊、準備完了しました!」
「撃てー!」
木の上などにいた砲撃部隊が一斉にRPG-7を撃つ。
すると、全弾命中し、大爆発が起こり砲煙が取り囲んでいたが、砲煙が晴れると、そこには回復途中のドランクがいた。
「撃て!やつに回復の暇を与えるな!!」
ここは私が片付けるしかないと思ったその時、一本の無線が入った。
「至急!至急!村に新たな歪みが発生!内部からドランクが1体出現。核の大きさから判断して、中級と思われる。至急応援を求む!」
馬鹿な!あっちにも中級が出現だと!?一体どうなっているんだ?
すると、1人の隊員がやって来た。
「報告します。観測機が何者かに細工されていた事が判明しました!現在、支部より捜査班が細工をした者を調べております」
「……そうか、ご苦労」
なるほど。この状況はそいつが仕掛けた嘘だったという事か。
「そのまま撃ち続けろ!」
支部の総隊長がそう指示を出す。
「こうなったら私があれの相手は私がする。シールズ第3部隊及び支部から第2、3、5部隊は村の方の援護に向え。残った部隊はこの場で待機。良いな!」
『了解』
そう指示を出すと、転移機能によって村へと転移して行った。
腰にさしている刀を鞘から抜き、斬り掛かる。
「【月剣流剣術 奥義 虧月】」
その斬られたドランクは、核を中心とした身体は欠けて細切れとなった。
「こっちは片付いた。これより我々も応援に向かう!」
『ハッ!』
転移機能で急いで救援へと向かった。
現場に転移が完了しだが、そこでは激しい銃撃戦が繰り広げられていた。
「我々も援護する」
「シリウス様!さっきのやつみたくこいつも出来ませんか?」
「これ以上被害を出すわけにはいかんしな。分かった。周りにいる奴らを一旦離させろ」
「了解!各員に通達。至急、後退されたし。繰り返す、至急後退されたし」
『了解!』
全部隊の後退を確認してから刀を鞘から抜き、技を使う。
「【日火流剣術 八式 金烏】」
技と私のスキルのひとつ絶対切断を使って核を斬った後、陽鳥がその周りを蒸発させてそいつは絶命した。
「残った死骸を回収し、現場確認をしろ。あと、さっきからそこでこそこそと見ていないで姿を見せたらどうだ?」
「バレていたのね。話を聞く限り、あなたが指揮官かしら?」
「確か君は、妖精族の族長のマリン・ラージャントだったか?」
「ええ、そうよ。よく知ってるわね」
「仕事柄知っているだけだ」
「ところで、さっきのアレはなんなの?」
「お前達が知る必要はない。もし必要な時が来たならばその時に知れば良いだけの話だ」
「シリウス様!」
「どうした?」
「村人の生き残りを発見しました!」
そう言って隊員が連れて来た生き残りはこの村人と思われる子どもが男の子が2人、女の子が3人の計5人だった。
「この子ども達がこの村人の生き残りか…」
「この子達は全員、親に守られるような体制で生き残っていました。ですので、大人は子ども達だけでも生き残らせたかったのでしょう」
「たしかに全滅よりは遥かにマシだからな。……素直に逃げていれば良かったものを……。今更何を言っても仕方ないな。こちらの被害状況を報告してくれ」
「バルハラン支部第2、3、5部隊は全滅。シールズ第3部隊は、第2中隊が全滅。その他は重体ですが、なんとか生き延びてはいますが、しばらくは任務に参加出来ない状況です」
「そうか、分かった。重症者をはじめとした負傷者は全員支援局の衛生部隊に運んでもらえ。事後処理部隊は、戦闘の痕跡を消せ。この被害状況は表向きには魔物による被害とさせる。取り掛れ!」
『了解!』
「貴女方にも協力を仰ぎたい。私から言えるとしたら、アレが世間に存在がバレてしまうと、世界が混乱してしまうほどの危険性があります。ですのでこの村の被害も表向きには大型魔物による被害として処理して下さい」
「わ、わかったわ。陛下にはそのように言っておくわ」
「そうしてもらえると助かる」
「残りの戦闘部隊は総員帰還せよ」
『了解』
残りの者達は指示に従い帰還した。
「とこでその子達はどうするの?」
マリンがそう質問してくる。たしかにこの子達をどうしようか。
「君たちはこれからどうしたい?君たちが選べる選択肢は2つ。1つ目は、孤児院に引き渡すのが基本なんだけれどもそうなったらもしかしたら離れ離れになってしまうかも知れない。2つ目は、私達と一緒にみんなで来るかだ。どちらか好きな方を選んでくれ」
その後5分ぐらい子ども達が話し合った。
「決めました。貴方達に付いて行きます」
「本当にそれで良いんだな?私達に付いて来るという事は、このような出来事に自ら向かうという意味だぞ?」
「分かっています。もう二度と私達と同じ目に他の人達が合わないようにしたいんです!それに貴方達に助けられた恩も返したいという気持ちもありますから」
「……君、名前は?」
「リリーです」
子ども達の中で一番の年長者であるリリーで14歳、その他の子達は全員12歳だった。
「君たちが全員一緒の部隊になれるように話しておこう」
「ありがとうございます。失礼ながら貴方のことはなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「シリウスと呼んでくれ。それが私のコードネームだからな」
「コードネーム……ですか?」
「ああ、一定の条件を満たせば与えられるが一番早いのは階級を上げることだな。これから君達は特別訓練を受ける。それを全て終了した暁には、まあまあな階級から始める事ができる。言ってしまえば君達の年代限定特権とも言えるから頑張れよ」
『はい!』
「良い返事だ。この子達を本部の訓練施設へ連れて行け。担当教官には半獣人とはいえ、人間の子どもと同じだから訓練方法には気をつけろとも伝えてくれ」
「承知しました」
そう言って子ども達を連れて行った。
私もそろそろ戻るとするかな。
「君達、もし良ければ王都の近くまで【ゲート】で送っていこう」
そう言って私は【ゲート】を開いて半ば強引に連れ出した。あのまま現場に残られてもいろいろと面倒だしな。
【ゲート】で王都近くまで送ったあと、すぐに【ゲート】を閉じて、【テレポート】で自室まで戻った。
「あの子達はこれからどう成長するかは私にも分からないが、少なくとも良い意味で名前を聞く程度には成長して欲しいものだな」
そう独り言を言いながら作戦着から寝衣に着替え終わってベッドへと潜り込み、ゆっくりと眠りに入ったのだった。
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