59話 バルハラン王との模擬戦と親善パーティー
バルハラン城内にある大型訓練所に案内され、そこにあったテーブルの上には用意された幾つかの木剣や木の盾が置かれていた。
最初にバルハラン王が自分のを選んでから、私もそこに置かれた武器を選ぶ。私が選んだのは、木剣一般的な十字木剣だけである。盾は嵩張るため必要ない。
「準備が出来た様だな。実戦と思って攻撃して来てくれ」
バルハラン王がそう言うという事は、余程の自信がある様だな。
そして、審判役の臣下がルール説明に入る。
「それでは、ルールを説明します。双方どちらかが真剣ならば致命傷になる打撃を受けるか、あるいは自ら負けを認めるまで。魔法使用も可。ただし、直接的な攻撃魔法禁止とします。双方宜しいですか?」
お互いに構える。
「始め!」
その合図と同時に殺気をバルハラン王に向けて放つ。しかし、一瞬は怯んだものの、すぐに攻撃をしに突っ込んで来る。
伊達にやってはバルハランの国王はやってはいないというわけか。
突っ込んで来た勢いを使って、剣を受け流し、横に一振りするが回避された。
ほぅ、なかなか筋が良いな。実力だけなら、准尉か少尉レベルの強さを持っているな。
その後もなどか打ち合い、バルハラン王の実力は大体分かったので、終わらせても良かったのだが、バルハラン王の面子に関わるので、もう少しだけやり合う事にした。
それから1分後、そろそろ良い頃合いだと思って一気に距離を詰め、喉元に剣先が付くか付かないかのところで止める。
「勝負あり、ですね」
「そのようだな」
「それまで!勝者、望月春人殿」
そして、お互いに少しだけ笑う。
「儂とここまで戦えたのは、春人殿くらいだ。だが、それでも手加減をされて負けたのは少し癪ではあるがな」
「手加減していると気付いていたのですか?」
「途中からだがな。あんなに強力な殺気を放てる者がこの程度でない事はわかる。手加減をした理由は大凡は察したが、私にはそんな気遣いは不要だ。だが、もし本気の春人殿なら儂なんか一緒で倒せたのだろうな」
「そんなはっきりと言うのもどうなんですか?バルハラン王。国を統治する国王という立場でそれは少しまずいんじゃないんですか?」
「儂がこんな性格なのは、この場にいる臣下ならば国王となった時から知っておるから問題ない」
「私が言いたいのはそうではなく……いや、もういいです。臣下の方々の気持ちはお察ししますよ」
臣下の人達には正直、同情するよ。
「儂はこれでもかなり強いと思ってあったが、どうやらそれは儂の思い上がりだったようだな」
「そんな事はないと思いますよ。思い上がってはいましたが、それなりの強さを持っているのは確かです。戦っている中で、さすがは数多のの獣人達を纏める王だと思いましたよ」
「春人殿にそう言ってもらえるとは、ありがたいな。流石はあのベルンガ王が使いとして送ったのもわかる。ベルンガ王からのに書かれていたのはてっきり大言壮語かと思ったが、今の戦いでそれは事実だと納得させられたわい。改めて良くぞいらっしゃった、神級魔術師の望月春人殿」
あの人、私が神級魔術師だって伝えたのかよ!まあ、この人ならば問題なさそうだから良いが……帰ったらじっくりと話をする必要がありそうだな。
「私はあまり神級魔術師だと大っぴらにはしたくはないので必要時以外では私が神級魔術師だという事は内密に頼みます。私も信用に値すると判断した人物ぐらいにしか話していませんので」
「そうか、分かった。それとこの後、パーティーが大広間で行われる。なので、別室で着替えて来てくれ」
「分かりました」
その後、着替えるために一旦女性陣と男性陣とで別れた。
「アルドーさん。パーティー用の衣装、持って来ていたんですね」
「ええ、念のために持って来ていました。そう言う春人殿は持って来ていないのですか?」
「いや、一応ありますよ。【ストレージ】から取り出せば良いだけですから」
一応【ストレージ】の中に入れていた黒色のパーティー用のタキシード パーティー フォーマル メンズを取り出して着る。
「珍しい衣装ですね?」
「あっちでのパーティー用の衣装だからな」
「な、なるほど……」
アルドーさんは今の発言でどうやらスターズのなんだと察したようだ。流石にスターズの制服で出席するわけにもいかないし、これならば少し珍しい衣装だと誤魔化す事が可能だ。
着替え終わった事だし、そろそろ会場に行くとするか。
会場に行くと、もう既に何人か会場入りしていた。その中にはバルハラン王の姿もあった。
「おお、春人殿。その姿もよく似合っているな」
「お褒めに預かり光栄です。バルハラン王」
それから少しの間、バルハラン王と他愛もない話をしたりしていると、後ろの入り口の方から「おお〜」などといった声が聞こえて来たので後ろの方を見てみると、そこにはドレスアップをした女性陣の姿があった。みんなよく似合っているな。
「春人さん、似合ってますか?」
そう質問をして来たのは、エリアだった。
「ああ、みんなよく似合っているよ。普段の姿も見慣れてて良いが、ドレスアップをしたみんなの姿もまた新鮮味があって良いと思うよ」
「あ、ありがとうございます」
私がそう答えると、みんな少し顔を紅くしながら恥ずかしがっていた。
あ、今の言い方はあれだったか!
「春人殿も大胆だな。この様な場所で口説き文句を言うとは」
そう言いながらバルハラン王が笑う。
「べつに私は口説き文句を言ったつもりはありません!素直な感想を言ったまでです」
「それはそれで、女たらしのようだな」
「ふざけないでもらえませんか?いい加減にしないと怒りますよ」
「すまんすまん、ついな」
「まったく……みんなもごめんね」
「いいえ!春人さんに似合うと言ってもらえて、その、嬉しかった、です!」
トリスのその一言に対してなんて返したら良いか分からなかった。
「陛下、そろそろお時間ですので前の方に」
「もう時間か?分かった、すぐに行く。すまんが一旦席を外す」
「分かりました」
そうして、バルハラン王は正面の方に行ってしまった。
その後は、みんなと食事をしながらいろいろな話をしていると、途中でマリィさんの父親で、アーベント商会の会長をしている言う獣人の男性に声をかけられた。
「初めまして、春人さん。私は、アーベント商会の会長を務めています、マルス・アーベントと申します。失礼ながらご質問をしても宜しいでしょうか?」
「構いませんよ」
「では、何故アセドライン商会の会長だと公表しないのですか?商会長はアセドラインさんですがその上の会長は春人さんですよね?何か理由があるのですか?」
「いろいろと事情がありましてね。詳しくは明かせないのはご了承下さい」
「すみません。深く聞きすぎました」
「べつに構いませんよ。あ、私からも1つ質問を良いのですか?」
「ええ、どうぞ」
「私が会長だと知ったのはアセドライン本人から聞いたからでしょうが、アーベント商会とアセドライン商会はどのような関係なのですか?」
「アセドライン商会とは、同盟店として、仲良くさせてもらっております」
「なるほど、アーベント商会はその加盟店だったのですね」
「はい」
それからもいろいろと更に話したりしていると、司会の方から今日のメインイベントが行われる旨のアナウンスが流れた。
「これより本日のメインイベントを執り行います。陛下、壇の上に上がって下さい。そして、バルハラン王国外務省親善大使マリィ・アーベント殿、前へ」
マリィさんがバルハラン王の前に行き跪く。
「面を上げよ。其方は、我がバルハランとベルンガとの同盟を築き上げる架け橋となったその功績を称えて、其方に名誉男爵の爵位を叙爵する」
「ありがたき幸せでございます、陛下」
「これにて叙爵式を終了とします。では引き続き、パーティーをお楽しみ下さい」
この後もパーティーは続いたが、まだ長くなりそうだったので、少し席を外す。
廊下にあった長椅子に座り込むと、奥の方から何かが近づいてくる気配が感じた。
普通だったら使用人などと思うだろうが、その気配には明らかに生きている気配を感じなかった。
念のため、ホルスターにある銃にいつでも取り出せるように掴みながら警戒をする。
そしてそこに姿を見せたのはなんと、猫のようなぬいぐるみだった。
念のため銃をそいつに構える。
……なんだあれ?そう思っていると、尻尾で器用にクイクイと手招きをしているかのような動きをする。
私はその猫のようなぬいぐるみに不安を残しつつもついて行った。
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