55話 隠れ里を襲う下級竜
野営ポイントに到着した私達は早速、テントを張ったり食事の準備などの野営の準備をしている。
「春人様、こっちのテント張り終わりました」
「うん、分かった。トワ、悪いんだが、私と夕食の準備を手伝ってくれないか?」
「わかりました。お任せください」
今日で野営最終日で、明日はとうとう、王都マサラに入る予定だ。
「やっぱり、春人さん達の料理は美味しいですね。おかげで、皆の士気が普段よりも高いです」
「それはそうだと思いますよ。なんせ春人様は、調理師免許を持っているだけではなく、その腕前は、宮廷調理師以上ですから」
「なるほど、この美味しさなら、トワさんがそうおっしゃるのも納得です」
「ですよね。私も実は久しぶりに食べましたが、あの頃と変わらず美味しいです」
「そうだっけ?帰ったらまた作ってあげるからさ」
「はい!」
「なんだか、エリアリア様とではなく、トワさんの方が婚約者という感じですね」
そうマリィさんが言うと、エリアが「聞き捨てなりません!」と言う風にこちらに近づいて来て、不安を抱く様な目をしていたので、不安を減らすべく答える。
「大丈夫だよエリア。エリアを頼りにする事だってあるんだから、エリアはエリアに出来る事をして、それで妻……今は婚約者として私を支えてくれたらその……助かる」
「はい!私が出来る限り春人さんを支えてみせます!!」
「それじゃあ、頼りにしてるね」
夕食を食べ終え、寝る準備をしようとしていると、不穏な気配があたり一帯に広がっていた。
この気配……。
「何かこっちに向かって来てます!」
「上空からだね。この気配から察するに、恐らく下級竜だろう」
そう私が発言すると、グリウスさんがあり得なさそうに言う。
「住処から竜が出て来るなんて有り得ません!何か違うものではないのですか?」
「以前、何回か戦ったことがあるが、この気配は間違いなく下級竜で間違いない。現在は細かい種類までは特定出来ないが後どれぐらいで来るかは、さっき【サーチ】を使って調べた結果、後30秒程でこの上空を通過する」
「理由もなく竜が住処から出て来るなんて考えられません。春人殿、竜が向かっている先には何がありますか?」
そんな話をしていると、さっきから話していた竜が上空を通過して行った。
「まさかあの竜、暗黒竜じゃ……!!」
「いいえ、それはありえません。さっきお話した通りあれは、暗黒竜ではなくただの黒竜です。しかもまだ100にも至っていない、若竜ですね。あの程度ならば私1人でも倒せますが……一つ問題があります」
「問題?」
「ええ。さっき、あの若竜の向かった方向には、エルダーウルフの隠れ里がある。彼らの力があったとしても倒すのは少し難しいかも知れないな」
「エルダーウルフ!!確かそれって、はるか昔に絶滅したという伝説の戦闘種族の獣人ですよね!?」
「その通りだ。だが、実際は僅かに生き残りが存在しており、彼らは自分達の存在がバレない様に密かにこの地に隠れ里を築いた。現在はバルハラン支部が密かに警備隊を駐在させている」
「なら、その警備隊に討伐を頼むというのは?」
「いや、残念ながらあそこの警備隊は去年でその任を解かれたから今は警備隊が誰もいない状態だ。老狼人でも少しは足止めは出来るとは思うが、急いで向かわなければ村が全滅する可能性が高い」
「しかしながら、我々の任務は大使の護衛です。大使の身を危険に晒すわけにはいきませんよ?」
「分かっている。だが、そこら辺は心配要らない。全ての馬車は現在私の結界によって守られているため、黒竜程度の攻撃では傷一つ付ける事なんて出来やしませんよ。再度、指揮権を一時、私が預かる」
『了解!』
そして、私達は急いで老狼人の隠れ里の方へと向かった。
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