51話 新拠点と使用人の雇用
屋敷へと到着した私達だったが、思ってたよりも大きな屋敷だった。
「立地的にはかなり良い物件ですし、元辺境伯邸だったのを考慮すればこのぐらいの広さは当然だと思います。少なくとも私は気に入りましたよ」
「確かに広いうえに部屋数が多いのは良い事だと思うが、流石に6人で暮らすには広過ぎないか?」
「「「「え?」」」」
広過ぎだと思ってそう呟くと、エリア以外の4人は不思議そうな声を出した。
「この屋敷は春人さん達が暮らすために陛下から貰った屋敷で、私達が一緒に暮らすというのは、少しいかがなものかと……」
「その件ならば心配いらないよ。既に国王からは一緒に暮らす許可は得ているからね。それに同じ大切な仲間なのに別々に暮らすという方がおかしな話だと思うよ、少なくとも私はね」
「春人様……。あの私、厨房を見に行っても良いですか?せっかくですので、今夜は私が作ります!」
「なら私も手伝うよ」
「どうぞ春人様はごゆっくりしていてください。料理の腕も成長したところをお見せします!」
「なら期待して待ってるよ」
「はい、お任せください!」
それからみんなが屋敷の中を見て周っている間に自分の部屋と地下室を2部屋程貰うとするか。
まずは、自室に荷物を【ストレージ】の中から取り出して置いていく。机の上に宋花にも置いていた、アリス達と撮った最後の家族写真を置く。今見ても懐かしいな……。
部屋の方が終わったら次は、地下室の方だ。
地下には私の許可がない者が入れないように結界を張ってから地下の奥の部屋を研究室用にリフォームをしたり、機材などを【創造】で創って配置したりしていた(もちろんだが、電気ではなく別室にある魔力タンク魔力で動くようにしている)。こうして見ると、大分研究室っぽくなったな。
これで地下室の方も終わったことだし戻るとするか。
その後は、中庭の芝生でコハクとビエラとともに寛ぐ。コハクは気持ち良さそうに芝生をゴロンゴロンと回ったりしている。そして、ビエラは人型の姿で私の隣で気持ち良さそうに寝転ぶ。
……こういう戦いや任務がない平和な日常も悪くないのかもな。
「コハク、ビエラ。ここは気に入ったか?」
「とても。この芝生はかなり手入れがされていてとても寝やすいです」
「はい、とても気に入りました。ですので、この屋敷と庭を守るために私の結界を張りますね」
こいつ、やっぱり本質は猫なんだな。
そして、ビエラの張った結界は【インフェルヌスシールド】である。
これは、亜神級に相当する結界なため並大抵のことでは傷一つ付けることは出来ない。
そうして、そのままなんとなく空を眺める。その空は綺麗な青空だった。そのまま空を眺めていると、いろいろと考え込んでしまうな。
ああ、このままスターズから引退して冒険者として暮らすのも良いかもしれないな。まあ、あのスターズが私の引退を素直に認めるとは思わないがな。
そんな事を考えていると、みんながやって来た。
「春人、本当に一緒に暮らしても良いの?」
「後になってから出て行けとか、言わないですよね?」
「ここにいる全員、同じ扱いをしてくれるのですか?」
「春人様、どうなのですか?」
「出て行けとか余程なことがない限り言うわけないし、全員私にとって大切な仲間なんだから、当然同じ扱いをするに決まっているでしょ」
「余程の時は言うのですね……」
「では、先程の話は気持ちが落ち着いたら話すと言う事で」
なんの話だろう?そう思って聞いてみたが、秘密だと言われた。
やっぱり女の子というのは難しいな。
「それにしてもこの屋敷、少し広いな。魔法を使って綺麗にしたとしても長くは続かないだろうしな……」
「そうですね。ここはやはり使用人を雇う方が良いと思います」
「だよね。でもそんな伝手私には持ってないしな……」
「あの、ここは私に任せてはもらえませんか?心当たりがある者達がありますので」
「なら頼むよ、エリア」
それから1時間後、エリアが戻って来て、その後ろから何人か入ってくる。
それにしてもあの執事、なんだか大公爵の執事のジアスに気配がそっくりだな。血縁者と思うほど気配が似ているんだよな。いや、たとえ血縁者だとしてもこの気配は似すぎだろ。
「お初目にお目にかかります。本日よりこの屋敷の執事を務めさせていただきます、元国王陛下専属執事のラクアス・セバスチャンです。よろしくお願いします旦那様」
「セバスチャン?どっかで聞いた覚えが……」
「クラウディウス大公爵家に仕えております、ジアスは、私のはとこになります」
「なるほど……」
再従兄弟ならば気配が似ていてもなんら不思議ではないな。
「爺やはお父様が産まれた時から仕えている優秀な執事なんですよ」
「お褒めに預かり光栄です。お嬢様」
「エリアがそこまで推薦する人ならば、私に異存はない。ではこれから宜しく頼みますラクアスさん」
「ありがとうございます。ではこちらで働く者達の紹介を致します。まず、メイドギルド加盟のAランクメイド、ラナ・ドーマとシリカ・アルカルトです」
「ラナ・ドーマです。よろしくお願いします」
ラナさんは、黒髪のロングヘアで、スレンダー体型の人物であり、大人しめな印象を受ける。
「シリカ・アルカルトです。よろしくお願いします!旦那様!」
シリカさんは、明るめな茶髪のストレートヘアで、グラマー体型であり、真面目タイプな印象を受ける。
「続いて、この屋敷の警備を担当するダナン・トーマスとベルナルド・ハッカーソンです」
「元王国第二騎士団、第二階級騎士のダナン・トーマスです。私は主に屋敷外を担当します」
ダナンさんは、かなりゴツい騎士といった感じである。ちなみに、屋敷外の警備とは言っているが、実際の主な仕事は屋敷の門番である。
「元王国陸軍第一軍団第一中隊長、少尉のベルナルド・ハッカーソンです。私は主に屋敷内を担当します」
ベルナルドさんは、ダナンとは反対に細身な肉体をしているが、鑑定眼でこっそり覗いてみると、強さ的にはダナンとほぼ同じぐらいだった。
「続いて、この屋敷のコックを担当する調理師のクリス・ウーガントです」
「元宮廷料理人、調理師のクリス・ウーガントです。先日は助けて下さりありがとうございました」
「申し訳ないのですが、貴女を助けた記憶が私にはないのですが?」
「それはそのはずです。先日の国王陛下が毒を盛られた事件の際、私はキッチンで盛り付けを担当していたのですが、その際に国王陛下が毒を盛られたという話があり、1番料理の近くにいた私が疑われていたのですが、旦那様に間接的ですが助けられました。ですので、そのお礼をしたいと思い今回のお話を聞いた際真っ先に応募しました」
「改めて、ありがとうございました。そしてこれからよろしくお願いします」
クリスさんは、赤髪のショートヘアの女性である。
「続いて、この屋敷の庭の手入れを担当する庭師のケルシュ・ウーガントです」
「元宮廷専属庭師のケルシュ・ウーガントです。妻を助けて下さりありがとうございました。妻のご恩を返すべく、妻とここで一生懸命働かせていただきます」
「やる気がすごいですね。やる気があるのは良い事ですが、あまり気負いすぎないで下さいね」
「わかりました」
このケルシュさんは、ベルンガ城の専属庭師だったため庭の手入れに関しては私以上に役に立つだろう。
……それにしてもやっぱり、ラナとシリカのメイド2人とラクアスが気になるな。
ただのメイドや執事にしてはやけに気配が少ないしメイドに至っては、スカートの中に暗器を隠していると思った私は、3人の事をこっそりと『鑑定眼』で見ると、案の定私の予想通りだった。
この2人は、あと気配の扱い方さえしっかりとしていれば私でも分かりにくかったというのに……惜しかったな。ただし、ラクアスさんだけは平均値よりもかなり高いステータスの持ち主というだけだった。流石は国王の執事だっただけのことはあるなと感心した。
「以上がこの屋敷で働く使用人達です。これからよろしくお願いします、旦那様。それでは各自仕事に移行するように」
ラクアスさんの合図とともに各々が持ち場へと向かって行った。
「皆さん、夕食の用意が出来ましたので食堂の方に来て下さい。それと、申し訳ないのですが、他の人達の分は用意が出来てなくて……」
「突然来ましたし、それに我々使用人にはお構いなく。使用人は使用人同士で食事等を行うことが基本ですので」
そう言ってラクアスさんは仕事に戻った。
そして私達は、トワの作った夕食を食べるため、食堂へと向かった。
食堂に着くと、テーブルの上がかなり豪華な料理が乗っていた。
そしてみんなが席に着き、トワの作った料理を食べる。美味い!これはもう、料理の腕を上げたというそんなレベルだはないぞ!この腕前は宮廷料理長を務めても良いレベルだ。
「美味いよトワ、これはもう下手をすれば、宮廷料理長以上の腕前だよ!」
「トワ殿の料理は天下一品です!」
「確かに、城で食べる料理と同じかそれ以上の美味しさですね」
「美味しいわ!」
「はい、美味しいです!」
そう言いながら、信女、アイリスの2人がテーブルに上がっている料理を口へ次々と運ぶ。
気持ちはわからんでもないが、落ち着いて食べないと喉に詰まらせるぞ。
そして、コハクと獣姿に戻ったビエラにトワが料理を持ってくる。
一口食べると、美味しかったようで、自分の食欲のままに食べる。……お前らも喉に詰まらすないようにしろよ。
「ところで、明日の予定はどのような感じですか?」
「そうだなぁ、明日は一日オフで良いよ。みんなも今日1日いろいろとあって大変だっただろうしね」
それに、私も明日はあっちの仕事もあるからな。
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