50話 叙爵
先に攻撃を仕掛けたのは、アースゴーレムの方だった。だが、レベッカ名誉子爵はその攻撃をギリギリのところで躱したと同時に素早く詠唱を唱える。
その放った攻撃はアースゴーレに見事にヒットした。
だが、アースゴーレムはその攻撃をものともしなかった。
あのぐらいの攻撃では私のアースゴーレムは倒せんぞ。
「その程度の攻撃では、そのアースゴーレムは倒せませんよ」
レベッカ名誉子爵は、突如走り出しながら詠唱を唱え始めた。成程、アースゴーレムが狙いを定め難くするために不規則な走り方をしながら自分は攻撃の準備をするといったところか……それにしても意外と体力あるなあの人。それにさっきよりも攻撃の威力も上がってきてるし、このまま成長していけば神級も夢ではないかもしれんな。
そうこうしているうちに1時間40分ぐらいして、なんとかアースゴーレムを倒す事に成功した。私はてっきり倒せたとしても2時間以上は経つかと思っていたのだが……良い意味での誤算だったな。
「お疲れ様でした。これは約束の本です。それにしても本当に2時間以内に倒してしまうとは思っていなかったです。この調子で訓練を重ねていけば遅くても5年以内には精霊級や亜神級になれる可能性がありますよ」
「本当ですか!?」
「嘘を言っても仕方ないでしょ?」
「訓練を今の何倍かでやるのと、実戦をもっと積んだ方が良いですね」
「普通の訓練だけではダメなのですか?」
「上級まではそれでも特には問題ないですが、帝級からは実戦の数が物を言うんです。少なくとも精霊級からは実戦もなしに合格するのはほぼ不可能です。ですからもっと実戦をと言うよりは、対人戦と言った方が正解ですね」
「人間相手と実戦で戦うと言うのはつまり、盗賊なんかを魔法で討伐という事ですか?」
「簡単に言えばその通りです。どこの国でも法律上盗賊には人権がなく魔物と同じ扱いですから見つけたら魔法の訓練の相手にでもしたら良いと思いますよ。宮廷魔術師ならそんな任務もあるでしょうしね」
「死なせないように威力を調整したり、撃つタイミングなんかの訓練にはなりますね。機会があったらやってみますね」
「気が向いたらで良いですよ。それじゃ、この辺で訓練は終わりますが、今日の感覚を忘れないようにして下さいね。ですが、やり過ぎで体調を崩してしまわないようにそこら辺はくれぐれも注意して下さい」
「わかりました。今日は私の訓練に付き合っていただきありがとうございました」
「気にしなくても良いですよ。それにこちらとしても面白いものを見させていただいたのでお互い様ということで。それでは【ゲート】で城の方まで送りますね」
【ゲート】を城の中庭に開いてレベッカ名誉子爵を通して別れを告げた。それじゃあ、私も宋花に戻るとするか。
そして訓練から数日後、城の方から私に手紙が届いた。内容を確認して、特に聞かれても問題ないと思い丁度みんながいるので手紙の内容を伝える。
「「「「爵位の授与!?」」」」
「うん。なんでも、この前の暗殺未遂事件や大公爵令嬢誘拐未遂事件の解決に大いに貢献したからその褒賞として、今回の叙爵らしい……。でもそれは半分建前で、国王や国の威信の問題で礼をしなければ後々面倒な事になるからせめて公の場に出て改めて感謝を伝えさせてほしい、という内容なんだけどさ、これってやっぱり行ったほうが良いよね?」
そう聞くとエリアが頷き答える。
「春人さんの事ですから叙爵は断るのでしょ?」
「爵位なんて貰ったら本職の方に支障がでるかもしれないからね」
「ですが、断るにしても公の場で爵位などはいらないと宣言した方が良いと思います」
「どっちみち城には行かなくちゃならないのか……。だったら正直言って、この前行った時に直接伝えてくれた方が私としては助かったんだがな」
「とりあえずお城に行ってみませんか?」
「そうだね。とりあえず話はその後でって事で。それにみんなも一緒に来ても良いって手紙に書いてあったから全員で行こっか」
という訳で、全員で城に行く事となり私は【ゲート】を城の応接室へと開いて、国王に会いに行った。
「お久しぶりです、ベルンガ王。それにエレン王妃」
「春人殿。早速なんだが……」
「先に言っておきますが、叙爵の件についてはお断りしたいと思います」
「やはりそうか。春人殿ならば必ずそう言うと思っていたが、春人殿には申し訳ないが、この後行われる叙爵式には出席してもらい、その場で断る理由も話してほしい」
「それじゃ、少し打ち合わせをしましょうか」
「そうだな」
それから数時間の間、叙爵式の打ち合わせをして大体の内容が決まった後、すぐに式典用の礼服に着替えて、謁見の間へと向かった。
「望月春人様がご入場されます!」
その言葉と同時に両扉が開き中へと入る。中に入ると、両側にこの国の重鎮や上級貴族や中級貴族の姿がちょくちょくと見れる中でみんなも国王の近くの方にいた。どうやらみんなも着替えたようだな。
国王の前に着き跪き面を下げる。
「本来なら命の恩人である貴殿ではなく私が頭を下げる身なのだ、面を上げよ。それでは、今回の国王たる私に対する暗殺未遂ならび大公爵令嬢誘拐未遂の犯人確保やその者の余罪に対する証拠収集に多大なる貢献をしたその功績を称え、貴殿に伯爵の爵位を叙爵する」
「勿体なきお言葉。ですが、私はどこの国にも仕えるのではなく自由に活動をしたいと思っております」
「ならば無理強いはせん。だが、何も渡さぬわけにもいかん。よって貴殿には爵位の代わりとして、叙爵用に用意した屋敷と白金貨300枚そして、王家のアダマンタイトカードを進呈しよう」
「お気遣いありがとうございます。国王陛下」
大勢の拍手が聞こえる中で「謙虚な者だな」とか「せっかくのチャンスなのにもったいない」などと言った声がちらほらと聞こえてきた。
……ちょっと待て、屋敷って何?打ち合わせにそんな内容あったっけ?いや、絶対になかったはずだ。
「これにて叙爵式を閉式とする」
それから別室へと移動してからいつもの服へと着替え直して、応接室に戻った。
「国王陛下、あんな話事前の打ち合わせにはありませんでしたよね!」
「そりゃあ、打ち合わせでは言わなかったからな。だが、打ち合わせでは言わなかったが、叙爵の件を断ると事前に予想していたからフーリンと相談したうえで、ついでに春人殿を驚かそうという事になったんだ」
「確かに驚きはしましたけど……」
それなんなら屋敷の件も普通にやっても良かったんじゃないかと思うのは私だけなのだろうか……?
「まあ、終わったことをとやかく言ったって仕方ないだろ?それよりも屋敷を見に行ったらどうだ?春人殿の屋敷は元々ある辺境伯の別邸だったものを国で買い取った物だから広さはそれなりにあるぞ」
「分かりました。それじゃ、今からみんなと一緒に行ってみますね」
「馬車はこちらの方で用意しようか?」
「お気遣いありがとうございます。ですが、馬車はすでに持っているので大丈夫です」
「そういえばそうだったね」
その後、みんなが揃ってから屋敷に移動する事にした。
それからみんなが揃ってそのまま、馬車で屋敷まで移動する。その屋敷は、城からそれほど遠くない貴族街にあったので、馬車でほんの3分近くの道のりだった。まあ、元辺境伯邸だったわけだから近くて当然と言えば当然だが。
それにしてもどういった屋敷なんだろうか?あの国王のことだから広さはかなりあると思うがな。
作業部屋や研究ができる研究室とかあれば良いんだけどな。
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