47話 ケルベロスと神獣召喚
宋花に戻ってから改めて、エリアの歓迎パーティをする事となった。何故か私だけ厨房で調理をする方になったが……。
調理している時に思ったのだが、やたらと注文数が多いと思い少し厨房を抜けて確認に行くと案の定信女が凄い勢いでテーブルに置いてあった料理を口の中へと運んでいた。
厨房へと再度戻り、調理を再開する。……私はいつになったら食べれるのだろうか……?
そうこうしている間に、デザートの注文が入ってきたので、やっと満足してくれたのかなと思った。
……ていうか、なんでここの正式な従業員であるヒナタさん達よりも非従業員である私の作る量の方が圧倒的に多いわけ?まあ、べつに良いけどさ。
みんなが各部屋に戻った後、私だけ1人で食事を済ませて、部屋へと戻った。
部屋へ戻っていつも通りに書いた後、ベッドへ入ると、スマホが鳴って、誰からだと思い確認してみると、珍しい方だった。
「はい、春人です。貴女から連絡をしてくるなんて珍しいですね。エルナント様」
『春人さんが婚約したとリナリア……恋愛神から聞きまして、アリスさんや桜ちゃんが殺されてから随分と落ち込んでいたようなので、今回の婚約の件を聞いた時には、仮初の親子だとしても、なんだかとても嬉しかったです。確かお相手はベルンガ王国の第一王女みたいですが、所属的には大丈夫なんですか?』
「べつにスターズの活動に影響さえ与えなければ特に問題はありませんよ」
『それで、エリアリアさんでしたっけ?かなり歳下のようですが……』
「あの、エルナント様?なんか私のことをロリコンとでも言いたげですが断じてそんなことはありませんからね!?」
『まあ、冗談は放って置いて』
「冗談って……」
『でも、あの酷く落ち込んで再婚をする気はないと思っていた春人さんが再婚するとは思わなかったです』
「エルナント様、厳密にはまだ私達は結婚していませんから、再婚は少し違うと思います」
『でも、あの子と結婚するのなら再婚でも良いじゃないですか。それに春人さんはもう彼女を仲間という大切な存在の一人に数えているのでしょ?』
「それは、そうですが……」
『良いじゃないですか、年の差結婚。恋愛神曰く「愛に年の差なんて関係ない!愛さえあれば、年の差なんて簡単にうまる!!」だそうです。それに春人さんが元いた世界では年の差結婚なんて珍しくもないんじゃないですか?』
「年の差が100年単位は流石に元の世界でも1人もいませんでしたよ!」
『人間の寿命なんて100年かそこら辺ですからいなくても当然ですよ。まあ、人間から別の種族へと進化した人も何人かいるみたいですがね』
それって、私や澄子姉さん、それに宮神の幹部連中らのことだよな。
『とにかく、春人さん。改めて婚約おめでとうございます。以前参加した神々一同を代表してお祝い申し上げます』
「ありがとうございます。まさかまた、神からお祝いの言葉を頂けるとは思ってもみませんでした」
『ふふ。それでは、私も仕事が残っているのでこれで失礼します』
「はい。では、いつかまた」
そして電話を切り、眠りについた。
翌日の朝、下に降りて朝食を済ませて、王都近くにある国立大図書館の近くに【テレポート】しようとした瞬間にエリアに声をかけられたので【テレポート】の発動を解除する。
「春人さん。少しよろしいでしょうか?」
「どうしたんだ、エリア?」
「春人さんは、闇属性の魔法も使えるのですよね?」
「ああ、そうだが」
「なら召喚魔法を使うことは出来ますか?」
「できるぞ。それに召喚獣もいるぞ」
「どういった召喚獣なんですか?」
「ここで呼び出すには少し狭すぎるから裏庭の方で直接見せるよ」
「良いんですか!?」
「嫌ならやめるが?」
「見てみたいです!」
「だが、気を一切抜くなよ。気を抜いたら気を失う可能性もかなりあるからな」
「そんなに凄いんですか?」
「ああ、かなり強い類いのやつだからな」
そうして、裏庭に出た私達は早速やつを呼び出す。
「【闇よ集え、我が求は古代の冥界の番犬、古代三頭犬】」
呼び出すとそこには、3つの頭を持つ犬が首を垂れている。
『お久しぶりです。我が君よ』
「Sランクの古代三頭犬を従わせているのですか!?というか喋った!?」
「ああ、おかげで古代三頭犬よりも下位の存在の獣は自由に呼び出すことが可能なんだよね。あ、ちなみにこいつの名はコルビエラで私はビエラと呼んでいる。一応言っておくが、こいつはこう見えてメスだからな」
あ、恐怖で聞こえてないなこりゃ。
「なあ、ビエラ。エリアが少し怖がってるからいつもの姿になってくれないか?そっちの方が多分エリアも怖がることもないだろうからさ」
『仰せのままに』
そうビエラが言うと、身体が光るのと同時に姿が人に変わる。どちらかと言うと獣人にだが。
頭の一つは普通の人間と同じようになり残りの2つは、肩にちょっとした装備のように乗っていた。
「古代三頭犬が人の姿に……いったいどうなって……それよりも、かなり綺麗な方ですね」
「そう言われてみればそうかもな。だが、あくまでも主従関係だからエリアが思っているのとは違うと思うぞ」
「ところで我が君よ、この娘っ子はいったい……」
「紹介するよ。この子は……」
「いいえ、ここは私が自分から名乗ります。私はこの国、ベルンガ王国第一王女のエリアリア・フォン・ベルンガです。そして、春人さんの妻です!」
「我が君の奥方様!!あの「もう結婚なんてしない!!」と言っていた、あの我が君が結婚!時間の流れというのは変化するものなんですね」
「ビエラ、誤解しているようだから言っておくが、エリアとはまだ婚約状態で、正式に結婚した訳じゃないからな」
「婚約状態ならば結婚しているのと同じなのでは?我が君よ、私は応援してますよ。そうだ、召喚してもらったついでにお願いしたいことが二つありまして」
「ん?なんだ?」
「1つ目は、私も我が君とこれからともにいさせてほしいということです」
「そんなことならべつに構わんが」
「ありがとうございます。では2つ目に、神獣が一体である『白虎』様をお呼びしてもらいたいのです」
「なんでまた、神獣なんて?」
白虎は確か、この世界における獣の神(王)だったな。だが地球では、中国の四神の一体として登場していて、さらにかの有名な平安時代の陰陽師である安倍晴明の式神の一体だったとも聞いたことがあるな。
「『白虎』様と契約を成せば、さらに上位の獣を呼び出すことも可能です。そうすればあのような悲劇を繰り返す確率はかなり低くなると思います。私だって、あの時一緒にいたというのに別な者の対処によってあの御二方を救えなかったのが悔しいのです!」
ビエラの手は血が出るほど握りしめられていた。そうか、こいつもまた、あの2人を救えなかったのが悔しかったんだな。そして、まだそれは残っている。……私と同じってことか。
「……わかった。だが、『白虎』を確実に呼び出せるとは限らないぞ。あくまでも召喚魔法は、契約を結んでいるやつよりも上位のを呼び出すとなると、完全にランダムだが、古代三頭犬であるお前と契約をしているからどう転がっても上位のやつが来るのは間違いないから、『白虎』を呼び出せる確率はかなり高いとは思う。とりあえず、物は試しでやってみるか」
召喚魔法の魔法陣を展開させて、さらに魔法神の加護を発動させながら魔法陣に込める魔力を増やす。そしてさらに、古代三頭犬であるビエラの魔力と霊力を魔法陣に流し込み。これであとは、来るのを待つだけだと思った瞬間、魔法陣が光るのと同時に黒い霧が魔法陣内部に充満していき、その黒い霧が晴れると、その姿を見えた。……どうやら当たりを引いたようだな。
『この我を呼び出したのはお前か?』
「ああ、その通りだ」
ふと少し心配になりエリアの方を見てみると、エリアがしゃがみ込んでいた。
「我が君よ。奥方様は、『白虎』様の眼力と魔力によって、身体の自由が効かないのだと思います。かく言う私も少しキツイですが……」
「『白虎』よ、あまりあの子達を威嚇しないでもらえないか?」
『お前はそこの女どもと違って平然としているのだな。……なかなかに面白いやつだ。既に古代三頭犬と契約できるほどの実力はあるということなのだろう。我を呼び出したということは、我と契約を結びたいのだろう?あのような大量の魔力に獣の霊力を流し込まれて召喚に成功できるとしたら、我ぐらいだしな』
「話が早くて助かるな。で、お前との契約条件はなんだ?」
『我を舐めるなよ小僧!そう簡単に神獣たる我と契約ができるのなら、我は神獣なんぞ名乗ってはおらんわ!!』
「舐める舐めない以前に条件さえもわからないようじゃ、できないという判断すらも出来んぞ?それとも神獣のくせに私に契約されるのが怖いのか?」
「良いだろう。そこまでお前が言うのであれば教えてやろう」
声が若干震えている。どうやら怒りを出さないように我慢しているのだろう。
『先程の召喚時で魔力量に関しては合格だ。だが、魔力のコントロールができなければ話にならない。これからお前には魔力のコントロールをおこなってもらう』
「どういった形で魔力のコントロールをおこなうんだ?」
『何、簡単なことよ。我に直接魔力を流し込みながら自分へと魔力循環を魔力量を減らしたり途切れる事なくやれ。それが出来なければ不合格とみなしお前の前には二度と現れることはないだろう」
なるほど。確かに魔力を制御出来なければ神獣たる白虎と契約することなんてできる訳がないか。
「わかった。頭に触れて流し込めばいいのか?」
「頭で構わん。触れたら魔力を流し循環してみよ」
魔力を『白虎』に流し込み自身へと魔力循環をおこなった。
「なんだこの凄まじい魔力量と循環率は!?ち、ちょとま!」
なんか言ってるな。もっと魔力量が必要だったか?
「これ以上は、さすが、に……」
「春人さん!『白虎』が……!!」
エリアの声でやっと『白虎』が気絶しているのに気付き慌てて魔力循環を解除する。
その後急いで魔力酔いを治す魔法をかけて『白虎』が目を覚ますまで待つことにした。なんかすまん。
しばらくすると魔力酔いが治ったようで、『白虎』が目を覚ました。
すると『白虎』が頭を引き四肢を曲げ、体を低くし、尻尾は体の下にしまい込んで、耳も後ろに寝かせて服従のポーズをとる。
『あの魔力量の制御、お見それいたしました。どうか我との主従の契約をお願いいたします』
「ああ、わかったよ」
ナイフで指の先を少し血が出るくらいの斬り込みを入れて、魔法陣にその私の血と魔力を流し込んで詠唱をする。
こればかりは、無詠唱では出来ないことになっているから仕方ない。
そうだな、まずは契約するには『白虎』に名前が必要だしな。そう考えながら白虎をみる。
白色の虎に琥珀色の眼…良し!この名前にしよう。
「【我が名は望月春人。ここに主従の契約を結びし種族は神獣白虎。我が契約獣となりし汝の名は……コハク!】」
『確かにコハクの名、頂戴しました。これから我のことはコハクとお呼びください』
「それじゃ、これからよろしくな。コハク」
「本当に『白虎』と契約してしまうなんて……!」
「娘よ、今の我は『白虎』に有らず。主より頂きし名であるコハクと呼んでくれ」
「す、すみません。コハクさん」
『主よ、お願いがごさいます』
「なんだ?私ができることならば叶えてやる」
『我を常にこちらの世界に存在することをお許し願いたいのですが』
「呼び出すのではだめなのか?」
『いえ。ですが、主の魔力量はほぼ無限と言ってもいいほど多いため少しでもその負担を軽減できればと思いまして』
もしもの時に呼び出すとなれば時間がかかる。それならば最初からこの世界にいた方が対処がしやすいか。
だが、こんな大虎を連れ回すわけにもいかないしな……どうしたものか……?
でも神獣ならば変化をすることも可能なはずだよな?少し聞いてみるか。
「コハク、今の大虎状態じゃ、街の他の人他が怖がってしまう。だからお前クラスならば変化も出来るだろ?だから悪いんだが、威圧感の少ない姿になってくれないか?」
『わかりました…では、この姿では如何でしょうか?』
大虎から変化した姿は、まるでノルウェージャンフォレストキャットに白いふわふわのたてがみを付け足したような姿をしていた。
「きゃーっ、可愛いです〜!!」
変化をした姿を見たエリアは、そのままコハクを持ち上げて思いっきり抱きしめる。……『白虎』だって忘れてないかな?
「いったいなんなんだこの娘は!?」
「あ、紹介がまだでしたね。私はこのベルンガ王国第一王女であるエリアリア・フォン・ベルンガと言いまして、春人さんの妻です」
「主の奥方様!?」
「だから、まだ婚約の……もういいや」
何回も説明するのも面倒だしそれにいずれ本当に妻となる可能性もあるから強く否定するのはやめておくか。
「エリア、コハクが苦しそうだからそろそろ離してあげて」
「……す、すみません!」
やっと自分がかなりの強さで抱きついていたことに気付いたようで、コハクに謝りながら地面に降ろした。
「ところでビエラはこっちに残るか?」
「はい。ですが私は影から御守りしたく存じます」
「わかった。なら、私の影に入ってるといい」
「ありがとうございます」
そう言うと、ビエラは私の影の中に入って行った。
「影の中に入って……」
「これは古代三頭犬の能力の1つでね、影の空間を自由に行き来することが可能で、奇襲なんかには打って付けの能力なんだよ」
それにしてもこんな短時間でかなりの戦力が増えたな…。まあ、戦力が多いに越したことはないからな。
『良かった』、『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。投稿日時はバラバラですが、どうぞこれからもよろしくお願いします。




