46話 エリアの腕試しとシュークリーム
宿に戻って来た私とエリアリア王女は、まず最初にエリアリア王女の部屋の手続きを済ませた後、あらかじめ王城のエリアリア王女の部屋から必要な物を私の【ストレージ】に収納していた物を置きに一緒にエリアリア王女の部屋へと向かった。もちろん衣類(下着)等は、バックなどにしまってから収納したからな。そこら辺間違わないように!
そして、荷物をあらかた運び終えるて下に降りると、みんな下でお喋りをしたりしていた。
降りてくる私たちに気づいたトワが一緒にいるエリアリア王女のことを尋ねて来た。
ちなみに、エリアリア王女とトワは昔からの友人である。
「で、なんで王城に仕事に行ったはずのあんたが王女様としかも結婚の約束までして戻って来てるわけ?」
アイリスのツッコミももっともだ。私自身もこの状況をよく理解していないんだからな。
「それにしても春人様が結婚ですか……」
「どうしたらそんな事に……」
「これはびっくりですね……」
「ったく、何やってんだか」
トワや信女、トリスもそしてアイリスまでもが呆れ顔をして、左隣に座っている少女に目を向ける。
私だって、これはまったくの予想外だ。
「ベルンガ王国第一王女、エリアリア・フォン・ベルンガです。皆様これからよろしくお願い致します」
エリアリア王女が礼儀正しく一礼をした後に挨拶をする。
「それで?なんで王女であるエリアさんがここにいるのですか?」
「相手のことをよく知るためには相手の近くにいることが一番肝心だと思いまして、両親や春人様に無理を言ってお願いしました。なにぶん世間知らずでご迷惑をおかけすると思いますが、なにとぞよろしくお願い致します」
最初、一緒に行くことを許可した国王に対して、せめて護衛ぐらいつけろよ! 娘が心配じゃないのか!?と思ったが、ここに来るまでの途中……今もカメレオンの諜報部隊がエリアリア王女を天井裏や近くの建物の屋根の影に隠れながら護衛をしていたのであの国王もなんだかんだで、娘を心配しているようで少し安心した?のかな……。
「ここに一緒に暮らすって……?お姫様なのに大丈夫なの……ですか?」
アイリスの言っていることも理解できる。今まで城では大勢の使用人に囲まれて生活していて何不自由のない生活を送っていた者が、突然全てを1人でできるとはとても思えない。私も潜入捜査で何人かそういった貴族や大商家の娘を見たりしてきたが、それを実現できたのはごく少人数だけだ。
さて、この子はいったいどっちなのか……。
「私が王女だからといって、無理に敬語で話さなくても良いですよ、アイリスさん。とりあえず私にできることを春人様達の足手纏いにならないように頑張りたいと思っています!」
やけにやる気満々だなぁ……。
「……具体的には何をするのです、か?」
トリスの質問にエリアリア王女がとんでもない回答を口にする。
「まずは皆さんと同じくギルドに登録して、依頼をこなせるようになりたいと思っています」
「「「「「え!?」」」」」
その答えに思わずみんなの声がハモってしまった。この王女、ギルドに登録する意味を本当にわかっているのだろうか?なんとなくどこか、冒険者という仕事を少し甘く見てるような気がするな。
「エリアリア王女、冒険者になって依頼を受けるってということがどういう意味かわかっているんですか!?危険なことだって沢山……」
「もちろん危険なことだということは充分理解しています。あとそんな堅苦しい呼び方ではなく、エリアとお呼びください。ダー」
「その呼び名では呼ばないでいただきたい」
私はにこり笑みを浮かべながら少しだけ殺気を放つ。
「では、エリアとお呼びください」
随分と物怖じしない子だな。これでも熟練の冒険者でもまあまあビビるほどの殺気を放っているんだがな。その証拠に他の子達はご覧の有り様である。
これほど肝が据わっているのであれば、問題はなさそうだな。
「わかったよ……エリア」
「はい!」
その後、エリアリア王女もといエリアの戦闘能力を調べるためにお試しでギルドの依頼を受けることとなった。
その依頼内容は、Dランクのホブゴブリン六体の討伐である。
森に入る少し前にどういった戦闘をするのかを聞いてみた。
「私は風、土、闇の3属性の適性があり、これでも正式な上級魔術師です。そして普段の戦闘ならば弓による遠距離射撃をおこなう戦い方です」
「なるほど、後衛ということか」
「あの、召喚魔法で私の召喚獣を呼んでホブゴブリンを誘き寄せてもよろしいでしょうか?」
「どんな召喚獣なんだ?」
「リトルフェンリルというCランクの狼系の魔獣です」
「確かにリトルフェンリルならばホブゴブリンを誘き寄せるどころかそのまま倒すことだって造作もないだろうな」
まさかリトルフェンリルを使役しているとは思わなんだ。
「行きなさい、リルー」
あ、その子リルーて名前なんだ。
「これであとは、リルーが戻ってくるまで少し待ちます。すぐに戻ってくるはずなので大丈夫だと思いますよ」
「本当にホブゴブリンを誘き寄せて戻ってきたな。各自戦闘体制!」
全員野かの戦闘体制が整ったのと同時にリルーとホブゴブリンの集団が飛び出して来た。
「数が少し多いな。余計なやつらは私が排除しておくから依頼内容の6体は君たちに任せる」
「承知」
「お任せください」
「わかったわ」
「わかりました」
腰に下げた刀を抜きホブゴブリンの群れに突っ込む。そして、一気に7体の首を刎ねる。
この程度のやつらがいくら束になってかかってこようが、私の敵ではない。
「すごい……あんな一瞬で沢山のホブゴブリンを……。お父様たちが怖がるのも納得します」
「おい!そっちに何体か行ったぞ!」
さて、お手並み拝見といこうか。
エリアは矢を矢筒から1本取り出し弓にかけ、勢いよく引いて矢を放つ。その矢はホブゴブリンの頭蓋を貫通し、後ろにいたもう1体の頭蓋に突き刺さり2体とも倒れる。
なかなか良い腕をしてるな。
さらに弓を一旦下ろし、トリスと同時に詠唱を始める。
「【風よ切り裂け、我が求は風を切り裂く風刃、ウィンドカッター】」
「【水よ切り裂け、我が求は水を切り裂く水刃、アクアカッター】」
弓矢よりも魔法の方がこれからは良さそうだな。
そして、全てのホブゴブリンの討伐を完了して、討伐部位の両耳を切って【ストレージ】に収納する。
……随分と時間がかかってしまったな。
「あの、どうでしたか?」
「問題なかったですよ」
「別に良いんじゃない」
「やはり、後方支援がいるのは助かりますね」
「ええ、今までの後衛はトリスさんだけでしたし、後衛が1人でも増えるのは助かりますね」
「弓の命中率もかなり高いし、魔法の威力も問題はない。ただ気になったのが、矢を放つ際になんの工夫もされていなかったという点だ」
「春人さん、それはどういうことですか?」
「えーとだな、矢を放つ際にただ狙いを定めて撃つだけだったろ?」
「狙いを定めて撃つのが普通では?」
「狙いを定めて撃つというのももちろん大事なんだが、エリアほどの腕があればもう少し工夫をした撃ち方ができると思うんだよ。ちょっとその弓と矢を1本貸してくれる?」
「どうぞ」
「私が言いたいのはこうやって弓を引くのと同時にこうやって属性魔力を矢にどんな感じの攻撃をするのかの明確なイメージをしながら込めてそれが終わったら撃つ。すると、こんな感じで威力が何倍も増加するというわけだ」
「付与魔法なんて、私できせんよ」
「ものは試しにやってみたらどうだ?それにこれは厳密に言うと、付与魔法じゃないからな。魔道具に魔力を流すようにしてそれを自分が使いたい属性魔力と同時にイメージを流し込む」
そして、放たれた矢が1本の木を貫通すると、矢が分裂して他の木に刺さって消える。
やっぱりこの子、かなり要領が良いな。1回教えただけで使えるようになるどころか、自分なりの応用をして使うとは……。
エリアはこれで問題なさそうだな。あとは……。
「次に信女だが、剣の踏み込みが浅いからもっと深く踏み込めば信女の剣術ならこの程度の魔物ならば一振りでやれると思うぞ」
「次にアイリスだが、無闇矢鱈にツッコミすぎだ。そんなんじゃ、持久戦になった時に体力が持たないぞ」
「次にトリスだが、威力に関してはは申し分ないが、詠唱に時間がかかりすぎだからもっと想像力を鍛えた方が良いな」
「想像力、ですか?」
「そもそも魔法の詠唱っていうのは、イメージをより明確にするための手助けにしかならないんだよ。だから想像力さえしっかりとしていれば詠唱を唱えずとも魔法を発動することが可能なんだよ」
「そうだったんですか!?」
今まで使っていた詠唱が実は意味がないものだって知ったら普通は驚いたりもするわな。
「最後にトワだが、踏み込みは深く的確に弱点を突いた攻撃はかなり良かったと思うぞ」
「はい!ありがとうございます。春人様!」
「なんか、トワにだけ甘い気がするのは気のせいかしら……」
「気のせいだろ?」
決して、甘やかしてはいない。甘やかした場合、下手をすればその人の死へと繋がってしまう場合があるからだ。
「とりあえず、ギルドに戻って依頼達成の報告をしようか」
「そうですね」
「それにしても随分とパーティが賑やかになってきたな」
エリアが小さな声で話しかけてくる。
「春人さん本当の所属組織はもっと大人数でしたよね?」
「あまりスターズに関しては言わない方が良いぞ。私以外の他のやつに聞かれたら、下手をすると民間人だろうとスターズの話そうとすると暗殺しようとする者達もいるから気をつけろよ」
「わ、わかりました」
その後、ギルドに戻り依頼達成の報告をした後にエリアのギルド登録を済ませた後、アーロンに行きみんなが注文をする中で私だけがキッチンへと呼ばれて、以前頼まれていた新しいメニューを作る事となった。
今回考えたのは、シュークリームだ。
※シュークリームの作り方(6個分)
【材料】
(シュー生地)⤵︎
水……カップ70ml、生乳100%利用のバター(食塩不使用)……10gカット×3、微粒子グラニュー糖……小さじ1/2(2g)、顆粒の塩……2つまみ、……大さじ4×1(44g)、全卵……1.5個(90g)、口金 丸 / #12×1コ
(カスタードクリーム)⤵︎
牛乳…… カップ300ml、バニラビーズン……1/8本、卵黄……3個(60g)、微粒子グラニュー糖…… 大さじ×4と1/2(45g)、菓子用小麦粉(高品質)……大さじ×2(24g)、生乳100%利用のバター(食塩不使用)……10gカットを1.5個(15g)
(生クリーム)⤵︎
フレッシュクリーム36%…… カップ75ml、フレッシュクリーム45%…… カップ75ml、微粒子グラニュー糖…… 大さじ×1(12g)
(仕上げ)⤵︎
溶けない粉砂糖……適量、口金 10切り/#8×1コ
【作り方】
(計量)⤵︎
<計量スプーンで計る場合>
粉、砂糖類→ スプーンの背で押して、中に詰まった状態でまっすぐ切る。
【準備】
『シュー生地』⤵︎
・天板にごく薄くバター(分量外)を塗る。
・薄力粉は直前にふるう。
・卵は室温にもどす。
・霧吹きに水(分量外)を入れておく。
・オーブン(この世界では魔道オーブン)は200℃に予熱する。
『カスタードクリーム』⤵︎
・バニラビーンズは半分に割いて、ペティナイフの背で種をこそぎ取り、鞘ごと使用する。
・薄力粉は直前にふるう。
『シュー生地』⤵︎
・水、バター、グラニュー糖、塩を加熱し、完全に沸騰させる。
・薄力粉を加え、ゴムベラで粉気がなくなるまで混ぜる。
・練るように混ぜながら中火で加熱する。(目安30秒〜1分)鍋底に膜が張り、小さく焼ける音がしてきたら火を止める。
・生地をボウルに移し、卵を少しずつ加えながら、ハンドミキサー(ハンドミキサーが無いためホイッパー)でその都度よくなじませる。ゴムベラで生地を落として、正三角形の形ができる固さになったら、卵を加えるのを止める。
※卵の分量を考えて、 必ず固さを見て調整する。
・天板に丸口金で直径5cmの丸に絞り、水を表面全体に軽く霧吹きする。
・200℃の魔道オーブンで約30分(25分→反転5分)、割れ目にキツネ色の焼き色がつくまで焼く。
※ 表面が焼き固まってくるまでは、絶対に魔道オーブンを開けない。生焼け状態で開けてしまうと、生地がしぼんでしまうため。
『カスタードクリーム』⤵︎
・牛乳、バニラビーンズにグラニュー糖をひとつかみ加え、沸騰直前まで温める。
・卵黄に残りのグラニュー糖を加え、白っぽくなるまで混ぜる。
・先程のに薄力粉を加え、泡立て器で粉気がなくなるまで混ぜ合わせる。
・先程のにカスタードクリームの最初の半分を加え、泡立て器で混ぜ合わせて鍋に戻し、泡立て器で混ぜながら中火で加熱する。
・とろみがついてきたら一旦火を止め、ゴムベラで鍋底とフチのダマをしっかりかき取る。 泡立て器に持ち替え、ダマがなくなるように全体をよく混ぜる。
※ 鍋底とフチは焦げやすいので注意する事。
・再びゴムベラに持ち替え、中火で加熱する。沸騰直後はツヤが少なくクリームがぶるんと固い状態が、このままだと加熱不足である。
・沸騰後さらに1〜2分加熱し、クリームのコシが切れたら火を止める。
※コシが切れると、クリームがゆるんでツヤが増してくる。
・バターを加え均一になるまで混ぜ、こし器で漉す。 バットやボウルに薄く広げ、ぴったりとラップをし、氷水に当てて急冷する。
『仕上げ』⤵︎
・冷めたシュー生地を、やや斜めに上下半分にカットする。
・冷めたカスタードをゴムベラでほぐし、口金なしの絞り袋に入れ、シュー生地の底に絞る。
『生クリーム』⤵︎
・生クリームとグラニュー糖を氷水に当てながら、ハンドミキサー中速〜高速でとろみがつくまで泡立て、泡立て器で8分立てに調整する。
※ 8分立ては泡立て器でクリームを落とさずに持てる状態にする。
・カスタードの上に星口金で渦状に絞る。
・生クリームに上のシュー生地をのせ、茶こしで軽く粉糖をふる。
早速、試作で作った物を食べてもらったところかなりの好評だったので、試しにみんなにも食べてもらう事にした。
そして、みんなにも好評だったので、レシピをラジアンさんに渡して、足りない材料はアセドライン商会から購入するように進言する。レシピに書いてある材料が全て揃うのは間違いないしな。
私も含めて、食べ終わった私達は、宋花に戻る。
「それじゃ、改めてこれからよろしくな。エリア」
「よろしくお願いします。エリア殿」
「よろしく、エリア」
「よろしくお願いします。エリアさん」
「よろしくお願いしますね。エリアさん」
「はい!皆さん、これからよろしくお願いします!」
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