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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第4章 ベルンガ国王暗殺未遂
41/176

41話 正体を明かしても構わない?

 大公爵邸から宿に戻った私たちは夕飯を食べた後、私の部屋に集まり私の教えられる範囲のことをみんなに教えることにした。

 とはいえ、私が話せるのは限られているが……。


「あの、春人様。急に私たちを集めてどうなさったのですか?」

「ああ、これからについて一回話し合おうと思ってね。さっきの件で言いたいこともあるからさ」

「確かに聞きたいことが無いって言ったら嘘にはなるけど、あんたはそれで良いの?さっきはこれ以上関わるなと言ってたけど…」

「確かにあの時はそう言ったが、よくよく考えてみると、私と一緒にパーティを組んでいる以上、どう考えてもこれ以上関わるなと言うのが無理なんだよ。だから説明できる事は今のうちに説明をしようと思ったんだよ」


 後々言わずに後悔するよりだったら、言ってしまってからの方がまだ良い。


「まず、あの遺跡にいた魔物についてだが、あれはあの壁というか奥への入り口に書かれていた通り、異界から来た悪魔とも言える存在だ。あれには様々な形や種類があり、最悪の場合はSランク相当かそれ以上になる個体もいる」

「Sランク相当じゃ勝てないじゃない!」

「その生物がこの世界にやってきた時の名前を受け継いで私たちは、そのままドランクと呼んでいる」

「なぜドランクなのですか?」

「ああ、それはさっき言ったSランク相当の個体が自分からそう名乗ったからなんだ。そいつらはかなり高い知能を持っていて、それ故に厄介な存在でもある。トワ、なぜあいつらが人を殺すのかわかるか?」

「なんでなんですか?」

「質問を質問で返さないでほしいんだが……答えは、やつらが人間……正確には、人型種ならばある目的のために手当たり次第殺すためだ」

「その、目的というのはなんなのですか?」

「トリス、悪いがこれ以上は言えない」

「ねえ、春人は一国の諜報員なのよね。なんでそんなことを知ってるの?しかも他国のことを」

「正確には国の所属ではなく、ドランクを専門とした諜報機関というか、武装や人数的には一国とそう対して変わりはしない。そもそも国というのは、領土、国民、主権の三要素で構成されているから国だと名乗ることは可能なんだよ。私が所属する場所は、この三要素のうち領土と国民は既に満たしているから主権さえあれば、完全な国家となる」

「ほとんど国家と同じなんて、すごいところですね……」

「そうだね。もう扱い的には軍国にも近いのかも知れないね」


 まあ、今は正直言ってそんな事はどうでも良いんだがな。


「そういうわけで、私と一緒にパーティを組んでいる以上危険なことに巻き込んでしまうかも知れない。だから、君たちは私と別れて活動する権利がある」

「私は春人様と一緒にいます。だって春人様の事はこの場にいる誰よりも知っていますし、そもそも私が強くなろうと思ったのは、春人様と一緒にいたいと思ったからです」

「トワは最初からそのつもりだったから安心しろ。アセドラインからの約束というのもあるが、一人でいるのって思っている以上に寂しいものだからな」

 

 正確にはシエラがいるから一人っていうわけではないが、シエラはスキルだから実質一人なんだが……。


『その言い方は私に対して少し失礼ではありませんか?』

「え?な、何?今の声?気のせい?」

「いえ。はっきり、聞こえました、ね」


《シエラ、なんで普通に聞こえるようにしてるわけ!?》

《別に良いではありませんか、そのうち疑われると思いますよ。それよりだったら…というより私が単純(たんじゅん)にこの子たちと話したかったという方が大きいですが》

《ほんと、お前って時々本当にスキルなのかって疑いたくなるよ。人間のような思考判断(しこうはんだん)を持っていてさらには感情(かんじょう)まであるんだ。肉体に受肉(じゅにく)さえすれば本当に人間じゃないってわからないくらいだと思う》

《そりゃあそうですよ。なんせ私には、エレナント様に創られた際にそういったのも一緒にインプットされましたから》


 あの(ひと)はなんでスキル(シエラ)にそういった機能を搭載(とうさい)したんだよ……だけどそのおかげで助かった時もあったのも事実だけどさ。


「えーとね、さっきの声は私の無属性魔法のひとつでシエラっていうものなんだ。こいつは魔法が自我を持った存在とでも思ってくれ」

『その説明には、少々違うところもありますが、概ねはそんな感じですね。あっと、初めて声をかけたというのに自己紹介がまだでしたね。私はシエラ、マスターである春人様の手助けをするための存在です。ですが、マスターはほとんどのことを自分でなんとかしてしまいますので私の出番はあまりないわけですが……』

「シエラさん、質問をいくつかよろしいでしょうか?」

『はい。なんでしょうか?』

「シエラさんはさっき少し説明が違うとおっしゃっていましたが、どのあたりが違うのですか?」

『ああ、そのことですか。私が言ったのは、魔法が自我を持ったというところです。私は魔法が自我に目覚めたのではなく、魔法と自我が同時に宿ってマスターに目覚めたというのが正解です』

「つまりどういうことなのですか?」


 シエラの説明を聞いても意味がわからなかった信女がシエラに質問する。


『つまり、私は自我を持った魔法であり、その魔法をマスターが創って己に宿したということです』


 ちょっ、シエラ!?創ったというのは秘密にしてほしかったんだが!


「ちょっと待ってください、シエラさん。今創ったと言いましたよね?それってつまり、春人様がそういう系の無属性魔法でシエラさんという魔法を創ったということですか?」

肯定(こうてい)します。私はクリエイティブマスター(最高神(エレナント)様)の魔法創造によって創られた魔法 (スキル)です』

「すごい魔法を持っているのですね」

「魔法を創れると言っても無属性魔法しか創ることが出来ない(本当は、無属性以外にも創ることが出来るが)。それに馬鹿(ばか)みたいに一気に魔力を消費するからそんなに使うことが無い魔法だけどね」

「それでも便利なのには変わりないじゃない」

「それはあくまでも魔力量が普通の人の何倍もある私だからの話で、もし他の人がこの魔法を使ったら間違いなく魔力量が足りなくなり、その足りない魔力を補うために自身の生命力を代償にしてやっと1つの魔法を完成させることができるからあまりにもリスクの高い魔法でもあるんだよ。まあ、それでも私にとっては便利なのには変わりないんだが」


 って!話がだんだんと違う方向に行ってるじゃん。そろそろ話を戻さなきゃな。


「話を戻すんだが、結局君たち3人はどうする?一緒にいる?それとも3人でパーティを組んで活動する?」


 私がそう問いかけると信女が答える。


「春人殿、その言い方はいささかズルくありませんか?」


 確かに信女の言う通りズルいかも知れないが、正直な気持ちで言ったら一緒にいたいという気持ちがある。

 こんな気持ちにさせてくれる人はなかなかいない。だから、この子たちと一緒にいたいが、それと同時にこの子たちを危険な目に合わせたくないという気持ちもある。

 だからこそ、こんな若干卑怯(じゃっかんひきょう)な言い方をしてしまったのだが。


「あたしは一緒にいるわよ。なんだか抜けてるところがあるのよね、アンタって……」

「私も、お姉ちゃんが良いなら、春人さんと一緒にいたいです」

「拙者もまだ春人殿には教えていただきたいことがあります故、引き続き一緒にいさせていただきたく思います」

「本当にみんなはそれでも良いんだね」

「だから、さっきからそう言ってるでしょうが!」


 さすがに少ししつこく言い過ぎたかな。


「そういうことなら、これからもまたよろしくね。みんな」

「今度また同じこと言ったら許さないわよ。あたしたちは同じ仲間なのにあたしたちのため一人だけが犠牲(ぎせい)になっても良いという理由にはならないんだからね」

「ええ、アイリスさんの言う通りです。春人様お一人で抱え込む必要はないのですよ。春人様のお手伝いはできないかも知れませんが、精神面でのサポートは出来るだけ致しますので」


 トワの言葉に私は思わず、小さい笑いが出てしまった。


「なんでここで笑うんですか!」

「いやね、トワや他の3人も私のことをそんなにも気にかけてくれてるというのが嬉しいんだが、でもどうしてかどこかで笑えてくるんだよね」

「人がせっかく心配してあげてるのに失礼ね」

「それだけ嬉しいってことだよ。とにかく、改めてよろしく、四人とも」

「はい。これからも一緒ですよ。春人様」

「ああ、もう君たちにこんなことはできるだけ言わないよ」

「そこは、はっきりと言わないと言ってほしかったです」

「いや、仕方ないだろトリス?だって私の仕事の関係上、君たちとはいつ別れてもおかしくないわけだしさ」

「ならせめて、それまでは一緒にいると約束してくれませんか?」

「ああ、わかった。約束するよ」

「あたしからも同じ約束をしなさいよね!」

「私もできればこれからも皆さんと一緒にいたいのでお願いします」

「わかった。わかったから!」


 それにしてもなんでみんなは私なんかとこうも頑なに一緒にいたがるのだろうか?


《それだけ、皆さんに信頼されているということですよ。マスター》

《いや、そんな信頼しているというだけでわざわざ危険な道に自分から行くものなのか?》

《マスターだって先日アイリスを肺を貫通(かんつう)するのをわかっていながら(かば)って助けていたではありませんか?》

《私の場合は、回復させることができるし、そもそもアイリスは普通の人間よりも強いとはいえ、所詮(しょせん)はただの『人間(ヒューマン)』だ。この『人間(ヒューマン』の進化系である『古代人間(エンシェントヒューマン)』である私とは防御力から何もかもステータスが違うんだから、このくらいのことで私が死なないことぐらいお前だってわかっているだろう?》

《それはそうですけれども……私が言いたいのは自分を犠牲にしてアイリスさんを守ったという事実ですよ』

《そうは言うが、私がアイリスを守ったのは、ドランクの攻撃で死亡した場合ドランクという存在が大きく世に出回ってしまうから、それを防ぐという目的でだな……》

《やっぱり、そういうところは昔から変わっていませんね。自分が思っていることを素直に話すことができないでそれらしい理由を話して本意ではないことを言ってしまうのは、マスターの悪い(くせ)だと私は思いますよ》

(そう言われてもな…これは昔からだから治すのは難しいよ)

《そういう面はこのアシスタントスキルである(わたくし)、シエラがサポートしますのでご安心ください、マスター》

《ああ、これからもよろしくな。シエラ》

《はい》


 まさか、極力仲間などの大切な存在を作らないようにしていた私が自分から大切な存在を作ることになるとはな。

 昔の私だったら考えられないな。

 今思えば、元々そんなに作る事は無かったが、アリスと出会ってそして、結婚をしてから随分と感情が豊かになったんじゃないかと思う。

 そのせいで自然と、そういった大切なものを自分から作っていったのかもな。でもあれ以来、作るのを再び恐れるようになって、今も若干恐れているが、せめてこの子たちだけでも守っていかなくちゃな。

 そう思いつつ、4人を見る。


「それじゃ、そういうわけでこの話はなかったという事で、忘れてくれ」

「ええ、そうさせてもらうわ」

「そういえば、春人様。今更なんですけど、アリスロードさんはお元気ですか?」

「アリスロード?」


 トワの質問にアイリスたちが首を傾げる。

 そりゃあ、アリスと会ったことのない3人には誰なのかがわからないからな。


「それと、もう一つ気になったことがあったのですけど、なんで写真立てを見えないように下に伏せているのですか?」

「……アリスは2年前に任務中に死んだよ……しかも私の目の前で娘とともにね」

「す、すみません。そうとは知らず、私……」

「いや、気にするな。君が知る機会はなかったんだし、そもそも自分の友人のことを聞くなんておかしくないからな」

「あの、春人さん。そのさっきから言っているアリスロードさんというのは、どういうその、関係なんですか?」

「私の元、妻だよ」

「すみません、余計なことを聞きました」

「べつに気にしてはいない、と言ったら嘘にはなるが、もうあの時みたくは落ち込んではいないから大丈夫だよ」

「ていうか、春人って奥さんいたの」

「アイリスが言いたい事はなんとなく察したが、君が思っているよりも私は歳上だよ」

「歳上って言ってもあたしたちとそんな変わらない歳よね?」

「見た目だけならね。だけど、私はこう見えても長命種だからゆうに300は超えているよ」

「そうなの!?」

「そうなんですか!?」


 私の答えにアイリスだけでなく、トリスまでもが驚いていた。

 だが、案外意外だったのが、信女があんまり驚いていない事だった。

 アイリスやトリスは私が長命種だと伝えていないから驚くのは普通だというのに、この2人と同じく私が長命種だと伝えていなかったのにそんなに驚いていなかった理由を少し聞いてみると、トワが私たちと出会う前の旅の道中で、自分の(あこが)れている人が長命種で、(はた)から見たら普通の人間にしか見えないことを聞いていて、それでそれが今の話で私だということがわかり納得したのだという。


「あのな、トワ。出来れば人の個人情報を簡単に流さないでくれないかな?私のことを吹聴(ふいちょう)されるといろいろと私的にもまずいんだよ。特に貴族とか商会を持つ商人とかには」

「でも、クラウディウス大公爵とかアセドライン商会の会長でトワのお父さんのアセドラインさんとかには知られているのですがそちらは良いんですか?」

「確かにさっき話した通りならば、信女の今の話の通りだが、決して全ての貴族や商人とは私は一言も言っていないし、そういう人たちを私たちの協力者にして情報収集を行ったりしているんだよ」


 とは言え、私とのちゃんとした連絡手段を持っている私の協力者はアセドラインぐらいなんだがな。

 近いうちに他の協力者との連絡手段も確立した方が良いかも知れないな。

 かと言って、電話を普及させてしまうのもどうかと思うし、やっぱりここは、まだ試作段階のアレを早いうちに完成させるべきだな。

 そろそろこの世界の文化レベルを上げていかないと、ドランクの侵攻に耐えられない可能性が高いし、スターズがずっとドランクの存在を隠していくのにも限界があるし、もし知られたとしても大丈夫だと言えるくらいには戦力が欲しいが、出来れば大昔の魔法文明ではなく化学文明の方を発達させた方がドランクへの対処につながるし、そもそも魔法文明滅んだのは、兵器までもが魔法力を使用した攻撃だったためにその攻撃のほとんどがやつらの(えさ)として吸収されて、そのまま(むな)しく文明は(ほろ)んでしまった。

 だから、今度はやつらに負けないように戦っていく必要があるということであり、世界が一丸(いちがん)となって戦う必要がある。

 しかし、現状それは不可能に近い。

 とりあえず、今は目の前の問題の対処をするしかないか。


「というわけで、私から言えるのはここまでかな。話せる時になったらその時にまた話すさ」

「はい。待っていますよ」

「あ、それとさ、明日と明後日は別な仕事の関係で冒険者としての方は行けないからそこら辺はよろしく」

「わかりました」


 その後も少しみんなで軽く話した後、下の食堂で夕飯を食べた後それぞれ各自の部屋へと戻っていった。

 私も自室に戻りスマホに保存(ほぞん)していた例の遺跡(いせき)で撮った写真を何枚かA5サイズの紙に印刷(いんさつ)して角2封筒に入れて、そのまま【ストレージ】へと封筒を収納した。

 その後は、パソコンを取り出して今日の分の報告書を作成&送信をした後、ベッドへと入り込んでそのまま寝た。

『良かった』、『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。投稿日時はバラバラですが、どうぞこれからもよろしくお願いします。

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