36話 新たなメンバー
アバリアに帰ってきたその翌日私たちは、依頼達成の報告をするべくアセドラインの商会長室へとやって来ていた。
私が【ゲート】を使えることを知っていたアセドラインは、あまりにも早い帰還だったが驚くことはまったくなかった。
ただし、トワと私が一緒になって来た方に驚いていた。
その話は一旦置いといて、報告の方へと戻る。
「これがレクシディア伯爵からの返信の手紙だ」
アセドラインが私が渡した封筒を確認してから中身を1回軽く目を通した。
「確かに。この度はわざわざありがとうございました」
「それと残った交通費は返しておくよ。貰ったってどうせ余すだけだしこれ以上持っていても使わないと思うしさ」
そう言って私は、アセドラインから交通費として渡された袋に入ったままの金を渡した。
「べつに返してくれなくても良かったのですが……そもそもこの金は春人様の物なのですよ」
「今は違うだろ、アセドライン。それに経営者として大事なことを私はすでに教えているはずだぞ?まず商売人として第一に大切なのは信頼だ。そしてもう一つ大切なことがある。それは、いつまでも過去のことに囚われないということだ。もちろん、助けてもらったら恩を返すべきだとは思うぞ。だが、それを理由に余計なことをしないことが大切になってくる。だからさ、もし私が困ったり、手を貸してほしいと言ったその時に手を差し伸べてくれれば良いからさ」
私がそう言うと、アセドラインは金の入った袋を受け取った。
「はい、わかりました。あの、ところで話が変わるのですが、よろしいでしょうか」
「ああ、なんだ?」
「何故、トワが春人様と一緒におられるのでしょうか?それに、行くときには見なかった方もいらっしゃるようですが……」
「アセドラインと別れたあとに行ったとある街で偶然、チンピラ共に襲われているところに遭遇してね。2人ともどうやらその街に来る途中で路銀を落としてしまったらしくて、それで少しやられそうだったから助けに入って、その後はご覧の通り一緒にいるってわけだ」
アセドラインはトワに対して少し怒った表情を見せた。
「何故、路銀を落としたんだ?金の管理は徹底しろとあれほど教えたよな?……」
と、説教がまだ少し続きそうだったので止めに入ることにした。
「一旦落ち着け、アセドライン。その件についてはすでに私から言ってある。同じことを何度も言う必要はないし逆に聞く耳を持たなくなるぞ。説教をする時もダラダラ長くするのではなく、必要なことを端的に、そして相手にしっかりと理解してもらえるように伝えることが大切だぞ。これは、経営者としても必要な技術だと思って意識してみると良い」
「つまり、長く説教をするのは逆に意味がないと言うことですか?」
「その通りだ」
まぁ、そう言う私も少し長々と言い過ぎたな……。
それはともかくとして、そろそろ依頼達成の確認証にサインをしてもらうおうかな。
「アセドライン。悪いんだがそろそろこの依頼達成の確認証にサインをして欲しいんだが」
「あ、そうでしたね。そのためにこちらにいらっしゃったと言うのにすっかり忘れていました。申し訳ございません」
「なに、気にするな」
そう言って私は【ストレージ】から確認証を取り出してアセドラインにペンと一緒に渡した。
サインをし終えたアセドラインから確認証を返された。
あとはこれをギルドに提出すれば依頼完了だな。
「春人様やそのお仲間でしたらサービスしますのでどうぞお越しくださいませ」
「ああ、その時はそうさせてもらうとするよ」
「では、トワのことをよろしくお願いします」
「無論だ」
そして私達は店を出る。
その後、私達はそのままギルドへと向かった。
ギルドの中に入り、受付カウンターの方へ向かいそこにいた受付嬢に確認証を手渡し、依頼完了の報告をした。
「それでは、ギルドカードの提出をお願いします」
ハンコ型の魔導具をそれぞれ3人のギルドカードに押していった。
「こちらが報酬の銀貨7枚です。お疲れ様でした」
カウンターの上に置かれた木製のカルトンに入れられた銀貨七枚を受け取り、後ろの方に待機していた信女をカウンターの方に呼んだ。
「すまないのだが、この子達のギルド登録の方もお願いします」
「ギルド登録ですね。かしこまりました」
信女達が説明を受けている間に私達は、今回の依頼の報酬を分けることにした。
アイリスとトリスの2人で3枚ずつ分けて残った1枚が私の取り分で良いと言うと、2人は私が1番今回の依頼で活躍したんだからそれは絶対におかしい!と言って私が提案した配分方法に文句を出してきた。
私が別に良いと何回か言うと、
「そこまで言うんなら、仕方ないわね」
「きちんとした配分はするべき、だと思いますよ?」
などと渋々納得してくれたようだった。
きっと心の内では納得してなさそうだけど……。
「やっぱりあれよね……。白金貨なんてのを貰ったら報酬の銀貨7枚が少なく感じてしまうわね」
「そうだね。こうやって金銭感覚が狂っていっちゃうのは、悪い傾向に進んでいっているのかも知れないね」
そんな風に悩むアイリスとトリス。
あの時大公爵から貰った白金貨はなるべく頼らないで生活しないと、大金に頼ってしまう生活になってしまうのでは?と示唆しているのかな、2人共。
「登録出来ましたよ〜」
「登録完了しました」
二人共嬉しそうにカードを手に持ったギルドカードを振りながらこっちへとやってくる。
私達と違ってFランク(初心者)の証である黒色のカードだ。
私達とのカードの色の違いに少し残念そうにする2人だが、私達もまだEランクな訳だしそれに2人ならすぐ追いつくだろう。
その後二人がさっそく依頼を受けたいと言うので、みんなでボードの前に行った。
ギルドの依頼は、パーティメンバーの過半数がそのランクを受ける人物より高ければそのランクの依頼を受けることができる。
つまり、Fランクの信女とトワがいたとしてもEランクの依頼を受けるのになんの問題もないということだ。
みんなそれぞれ、依頼書を読んでいく。
「ところで2人は討伐系と採取系どっちの依頼受けたい?」
「私は討伐系です」
「私も討伐系が良いです」
「……わかった」
なるほど、2人共討伐系の依頼を受けたいのか。
となると……、これなんかがちょうど良いかな。
「この、デビルベアなんか良いんじゃないかな?一応Eランクに分類される魔物だが、ほとんどDランククラスの魔物だからちょうど良いんじゃないかな。もし無理そうならやめるが、どうする?」
「受けさせて下さい」
「よし、わかった」
依頼書を受付に提出して依頼を受注し、デビルベアの棲息のある森の中へと向かった。
森の中に入ってしばらくすると、後ろの方から気配がした。
この気配は、どうみても魔物などの野生動物などの気配ではなく人間の気配だ。しかも、たまたまという感じではなく明らかに私達をつけていた。
「あの、春人様。なんだか先程からつけられていませんか?」
「そうだな。この気配の感じ、どうやら私達を魔物に殺されて死んだように見せかけて殺し金品などを盗むのが目的みたいだな。汚い殺気がその証拠だ」
「殺気に汚いなんてのがあるんですか?」
「ああ、欲にまみれたやつのほとんどはこんな感じの殺気を放つんだよ。任務ではそういったやつをたくさん見てきたからなんとなくだが、殺気の区別なんかもできるようになったんだよ」
「普通の人は殺気を感じられるかどうかというのに……本当に春人様はすごいですね」
「そのうちわかるようになる……と、言いたいところだが、私の本音を言えばこういう気配には慣れないでほしいんだがな」
こいつらには私達スターズと関わることがないように生きてほしいが私とすでに関わってしまった以上、巻き込む形で悪いが、もう普通の人生には戻れないと思ってくれよな。
「で、後ろはどうするのですか?」
「そうだな……私が処理するよ。なに、死体は野生の魔物にでも食われたように偽装しておく。……そんなに心配するな。スターズの偽装工作技術を甘く見るなよ。その気になれば完璧にそいつの存在自体すらも消すことが可能なんだから」
私が少し低い声でそう言うと、トワは少しだけ震えていた。……少し脅かし過ぎたかな。
「とりあえず行ってくるか。アイリス、トリス。悪いんだが少し魔物を狩ってくるから先に行っててくれ。すぐに追いつくから」
「わかった。それじゃあたし達は先に行ってるわね」
「ああ、すまんな」
私は【テレポート】を使って、付けて来ているやつの後ろ四十メートルに転移した。
「あいつどこ行きやがった!だが、これで残りは女どもだけか。逆に好都合だな」
付いてきていたやつがそんなことを言う。
あの子達狙いという事は、人攫い……いや、奴隷商人の一味だとすると、ダンバタ王国かもう一つの国、イシュタリカ神王国の少し西側にある大国、ネビリス帝国の可能性が高いな。たしかあそこも奴隷制度のある国だからな。
私にとってそんな事は正直言ってどうでも良い。問題はあの子達に手を出そうとしていたという事だ。
そろそろ行かないと何かあったと感づかれる可能性があるから早めに終わらせるか。
「何が好都合だって?残念だがお前の目的は果たさずこの場でお前の人生も終わるだろう」
「誰だ!?」
姿を隠した私がそいつに声をかけるとそう驚いた。
そしてその約2秒後に首を絞める。ギリ、大丈夫な範囲でだが……。
聞きたいことを聞いてさっさと終わらせるか。
「お前に問う。何故私達を付けていた?」
「………」
黙りこむので少し締めを強める。
「わかった、言う!言うから!!」
話せるように首から手を離す。
「ゴホゴホ」
咳が治ってから奴は目的を話し出す。
「お前達を付けていたのは、ちょうど良さそうな獲物がいたと思ったからだ。俺の仕事は下位ランク冒険者を魔物にやられたように見せかけて殺すか、拉致って奴隷商に売り渡すのが俺の仕事だ!!もう良いだろ!」
「ああ、私は正直者には優しいからすぐに楽にしてやる」
「これで助かるのか……」
私達を殺そうとしていたやつはどうやら解放されると思ったのか、安心したようだが、この私がそんな目的を聞いた以上、お前を生かしておくわけないだろ。
そして、そいつの首を折った。この方法なら間違いなく苦しみを感じることなく楽に死ぬことが出来る。
その後、そいつの身体を細かく切って魔獣などが食べやすいサイズに切って放置した。もちろん魔獣などが好む匂いをつけてだが……。
そのような作業を終えてみんなのところへと戻った。
「お待たせ」
「それでどんな魔物がいたの?」
本当は魔物ではなく人間を一人狩っていたんだが、そんなことを言えるはずもなく、仕方なく以前倒してそのまま【ストレージ】に入れたままだった魔物を取り出した。
「こいつを狩ってたんだよ」
その魔物は、サンダータイガーという電気を放つ虎型の魔物だ。
ちなみにこいつはCランクの魔物だ。
そうこうしている内にデビルベアの棲息場所に着いた瞬間、その巣の中にいたデビルベアがいきなり襲ってきたが、そのほとんどは信女とトワが討伐したが、逃したやつは私がすべて討伐した。
討伐部位である背中に生えている2枚の悪魔の羽を切って、【ゲート】を使ってギルドまで戻り羽を提出し、無事依頼を完了した。
その後二人がまだ時間に余裕があるからもう一つ受けたいと言ってくる二人をなんとかなだめることができた。
正直言ってこの2人をなだめるのが今日一疲れたし、時間がかかった。
べつにやる気が充分なのは良いことなんだがな、そんなに急がなくても私達にランクは追いつくと思うから心配なんてする必要ないと思うんだけどな。
ギルドを出て信女とトワの冒険者ギルドへの登録、依頼での初討伐、トワとの再会など諸々を祝うため、喫茶店「アーロン」へと向かった。
席に座りそれぞれ注文をする。ちなみにここの会計は私がすべて払うことにした。
それはさすがに……とみんなに申し訳なさそうに言われたが、私の意思だから問題ないと言うとみんな納得した。
注文の品が届き食べる。
デザートにみんなでケーキを食べた。
会計を済ませて帰ろうとすると、アーロンの店長であるラジアンさんに新しいメニューを考えてほしいと頼まれた。
実を言うとここへは、ギルドで初めて受けた依頼の帰りに寄ったときからこの店の料理を気に入ってそれからちょくちょくときておりたまに元の世界の甘い物を作ってもらったりしていたらそれがかなり人気となりそれからたまにメニュー作りに協力させられているのだ。
さて、今度は何を作ってもらおうかな。
『良かった』、『続きが気になる』などと思っていただけたのなら、評価やブックマークをしてくださると、嬉しいです。投稿日時はバラバラですがどうぞよろしくお願いします。




