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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第3章 新たな仲間
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35話 迷子の道案内と魔法店とアバリアへの帰還

 店を出て集合場所に戻ろうとしていたとき、一人の少女を見つけた。

 その少女は辺りを見渡している。どうやら迷子のようだ。

 近づいて気づいたが、この少女は人間ではなくて犬というかどちらかと言うと(オオカミ)のような感じの耳と尻尾がある。人狼族だろうか……。

 歳は、11くらいかな。

 ああもう、仕方ないな。

 このまま放って置けなくなった私はその少女に近づいて話しかける。


「どうしたんだい?」 


 と、私が声をかけた瞬間。


「な、なんですか!?」


 そう言って少女は後ろに凄いスピードで下がった。

 そんなに怯えなくても良いだろうに……。


「いやね、何か困ってるみたいだったからさ声をかけてみたんだけど……」

「実は、お姉ちゃんと待ち合わせをしていたのですが、その場所に行く途中なのですが、今何処にいるのかわからなくなってしまって……」


 要するに迷子ってことか。

 声が小さくなるのと同時に耳と尻尾(しっぽ)が垂れ下がる。


「その待ち合わせ場所というのは何処なんだい?」

「確か……『マーシュ』という魔法店(まほうてん)です」


※魔法店とは、この世界の魔法に関係するものを取り扱っている魔法専門店のことである。取り扱っている物は主に魔法スクロールや杖、無属性魔法の辞典(じてん)など様々な商品を取り扱っている店である。

 なるほど、魔法店ならば待ち合わせ場所なんかにはピッタリの場所だな。

 なんせ大抵の魔法店は店構えが独特だからすぐにわかるから色々と便利なんだよな。それに、たまにだが掘り出し物も見つかることもあるし……。

 まぁ、今はそんな事はどうでも良いか。


「もし良かったら一緒に行かないかい?」

「本当ですか!?ありがとうございましゅ!」


 あ、今噛んだな。ま、良いけどさ。

 それからマーシュまでの通りを一緒に歩きながらいろいろなことを話ながら歩く。 

 その過程でお互いの名前を教え合ってその少女の名前はルリィ・アーベントというそうだ。


「春人さんは冒険者の仕事で王都に来たんですね」

「そうだよ。あ、でも、もう今は仕事が終わってほとんど観光状態だけどね」

「私もお姉ちゃんの仕事に無理を言ってついて来たんです。このベルンガ王国の王都が見たくて」


 そう言って、ルリィがにこやかに笑った。

 ……まったく、さっきまでの泣きそうだった顔が嘘のように笑顔になってるな。

 それからもお互いのことを話たりしながらしばらくすると、魔法店が見えてきた。

 ……やっぱりわかりやすいな。

 そして、その店の前付近には一人の獣人の女性がいた。そして……


「お姉ちゃん!」

「ルリィ!今まで何処にいたの!」


 ルリィのお姉さんは、ルリィとは逆で凛とした印象が強く持てる女性でなんとなくだが軍の関係者ではないかと思ってしまうくらい、規律(きりつ)を守り軍人としての印象がかなり強いが失礼してこっそりと【鑑定】で見た結果、驚いたことに彼女は、我々スターズの護衛対象者だった。つまりは、彼女がこのベルンガ王国へとやって来た、バルハラン王国の外務省に所属する外交官(がいこうかん)(大使)だったのだ。

 これには流石の私もつい、驚いてしまった。あ、もちろん顔には一切、驚いた表情は出してはいないがな。

 という事は……。やっぱりいたな。

 私は、ハンドサインで引き続き護衛を頼むとぞ!と送った。

 それにしても、疑問がひとつあるのだが、なぜ外交官である彼女の周りにはバルハラン王国の護衛が一人もいないのかが謎だな。

 そう考えたりしている間にもルリィのお姉さんの説教が続いていた。


「どれだけ私が心配したと思っているのよ!約束の時間帯を過ぎてもまったく来る気配がないし、もしかしてルリィが何かの事件に巻き込まれてるんじゃないかと思うと心配だったんだから。とりあえずルリィが無事にここに来てくれて安心したわ」

「ごめんなさい、お姉ちゃん。でもね、あそこにいる春人さんがここまで一緒に来てくれたから大丈夫だったよ」


 その時になって私の存在に気づいて、店の端の方にいた私のところまで来て彼女は深々と頭を下げた。


「妹が本当にお世話になりました。ここまで連れてきてくださりありがとうございました」

「いや、べつに気にしなくても良いよ。ここに用があったのは私も同じだったし、ついでに一緒に来たと思ってくれれば良いさ」


 その後もぜひお礼を!!と、しつこく言われたが、魔法店での買い物が終わったら次の用事があるのでと、断った。あながち嘘でもないしな。

 そういうわけで二人はこの後、王都の観光をするため私と別れた。ルリィはそのままお姉さんと手を繋ぎながら後ろ向きに歩いて手をかなりの時間振っていたが……。

 ……なんだか少し危なっかしい子だったな。

 その後私は、店の中に入った。その店の奥にはお爺さんが一人、椅子に腰掛(こしか)けていた。

 

「いらっしゃい」


 と、その店の奥にいたお爺さんは一言言った。

 店の中をいろいろと見たりしていると、ひとつのある物に目が留まった。

 それは、無属性魔法の辞典だった。

 その辞典を少しだけ読んで見ると、私がまだ知らない魔法もあった。これは掘り出し物だな。

 よし、これを買うとするか。


「すまない。これを購入したいのだが」

「お客さん、本当にそれを買うのか?こう言ってはなんだがあんまり使う機会があるとは思えんのだが……」

「私は使うのだが?」

「まあ、お客さんが良いんなら良いんだが……。そういえばそれを買うんだったな。そいつは在庫処分する予定だったから銀貨7枚でいいぞ」

「ではこれで」

「確かに、銀貨7枚ちょうどね。毎度あり、今後とも宜しく頼むな」

 

 その後、マーシュを出たら日が落ちてきていた。急いで懐にしまってあった懐中時計(かいちゅうどけい)を見ると、午後の6時近くになっていた。思ってたよりも長くこの店にいたんだな。

 急いで待ち合わせ場所へと走って向かう。

 べつに【テレポート】などの転移系の魔法で行っても良かったが、余計なところで目立つのは勘弁(かんべん)してほしいからな。

 それはともかく、私は急いで待ち合わせ場所へと向かった。

 

「遅れてごめん」

「春人様、そのコートはなんなんですか?」

「ああ、このコートね。なんでも、店員によると、耐刃、耐熱、耐寒、に加えて非常に高い耐魔の魔力付与が施されているけど、厄介なのが、この耐魔の効果が発動できるのは装備そうびされている方の魔法属性しか、発動することができないだけでなく、さらに、適性のない属性の魔法攻撃の場合その逆に倍化する一種の呪物のようなコートらしいんだけど、私には別に問題ない物だしむしろありがたい物なんだよねぇ」

「確かに……そのコート、まるで春人さん専用って感じですね」


 と、トリスがなかなか面白いことを言ってきた。

 なるほどな。全属性持ちはこの世界で私が知っているのは、アリスくらいだったけれども、そのアリスももうこの世にはいないから実質私だけだと思う。


「ところで、そのコートっていくらしたのよ?」

「え〜と、確か、金貨13枚で白金貨1枚と金貨3枚を現金でそのまま支払ったよ」

「高っ!?でも、性能とかも考えたらそんなに高くない金額なのかも……」


 大公爵からの謝礼(しゃれい)として貰った大量の白金貨のせいで金銭感覚が狂ってきてるみたいだな。

 ……私が言うのもどうかと思うけど……。

 これでみんな揃ったので(私が一番遅く来たけど)、私達は馬車へと乗り込んで、アバリアへと出発することにした。

 今回の御者は、私が担当することにした。そっちの方が【ゲート】を開くときや急な襲撃のときの対処なんかにも都合が良いしな。

 そして王都を出たあとは、そのまましばらく馬車を走らせて、王都が小さく見えるくらいに離れた場所まで行ってから、中にいるみんなに声をかける。


「それじゃ、この辺で【ゲート】を使ってアバリアの近くまで行くけど良いよね」

「それってどういうことなのですか?」


 【ゲート】のことをまったく伝えていなかった信女が不思議そうに尋ねてきた。


「べつにいきなり街中に出るわけじゃないんでしょ?だったらここからでも良いんじゃないの?」

「その判断は私達よりも春人様の方が良いのではないかと思うのですが」


 う〜ん。どっちみちどこから行ったとしても開く場所は、同じだから良いんだけどさ。

 そう思いながら私は、場所のイメージをして開いた。


「もうそろそろ、アバリアに入るから降りる準備しておいてよ」

「な、なんなんですか?!いったいどうなって!?……」


 窓を見た信女は一瞬で変わった外の景色にかなり驚いていた。


「やっぱり便利よね、この魔法」

「そうですね、私も春人様のような空間魔法を使えれば良かったのですが……残念ながら、私には適性がありませんでしたから」

「でもこの魔法の難点と言えば一度行ったところじゃないと行けないってところくらいなんだよね」

「いや、だから。何がどうなってるのですか!?」


 未だに一人だけこの状況について来れていない信女をよそにして、話を続けた。

 信女よ、これも頭の柔軟性(じゅうなんせい)と状況分析、状況変化に対する耐性の訓練だと思って今のうちに慣れておいた方が良いと思うぞ。

 この程度で驚いているようではこの先多分もたないぞ……精神が。

 アバリアの中へと入り、アセドラインへの報告をしようかと思ったがもう夜になっているため、報告は明日ということにして、『宋花』へ戻ってその扉を開けると、受付にはヒナタさんではなく知らないがっしりとした男性がいた。


「いらっしゃい。お泊まりで?」


 カウンターの奥から出てきたその黒髪でがっしりとした身体付きの男性が迎えてくれた。

……いや、誰だよアンタ?


「……えーと、この二人以外はここに泊まっている者で、王都の仕事から帰って来たのですが……」

「泊まってるお客さんたちだったか。見たことがなかったもんで、すまんな」

「ところで、ヒナタさんはどちらに?」


 そう男性に聞いた瞬間、奥の方からヒナタさんが現れた。


「みんな帰ってきてたのね。確か、王都に行ってた割に随分と早かったわね」


 まぁ確かに、こんな数日で帰って来られる距離ではないし、普通だったら怪しむわな。


「あの、ヒナタさん。ところでこの人はどちら様で?」

「あれ、会ったこと無かったけ?この人はうちのお父さんよ。2日くらい前に港町からの仕入れから帰って来たのよ」

「ライオネルだ。よろしくな、お客さん」

「あ、どうも……」


 どうやらライオネルさんは、ベルンガ王国の北にある、アース王国という海の幸が豊富(ほうふ)海洋国(かいようこく)として知られている。この西方諸国(せいほうしょこく)では珍しい国なのである。

 そこに魚や香辛料を買いに行っていたんだそうだ。

 確かにこの辺じゃ、海の魚や塩なんかはあんまり取れないからなぁ。でも塩だったら岩塩でも良い気がするが海塩の方が作りやすいし、そもそもこの世界には岩塩の製造方法は知られていないため、岩塩という単語すらこの世界には存在しないのである。


「あ、ライオネルさん。この子たちの部屋をお願いします」

「あいよ」


 信女とトワをカウンターの方へと行かせた。

 どうやら二人とも同じ部屋にするようだ。

 そして私は馬車を【ストレージ】にしまう為、馬車を停めてある裏庭の方へと向かって馬車を収納した。

 馬車を収納した後、中の方に戻ってヒナタさんに王都で購入した土産物を渡した。


「あ、ヒナタさん。これお土産です」

「あら、わざわざありがとね。ところで王都の方はどうだった?」

「いろいろあった」


 ヒナタさんの質問に対して苦笑気味に端的に答えた。

 ヒナタさんに夕食は食べてきたの?と言われたので、食べてないと答えると、すぐに夕食を用意すると言って厨房の方へと戻って行った。

 その後、出された料理を私たちも結構食べたが、信女はその倍の量を食べていた。

 それにしてもほんと、よく食うなこの子……。

 その食べる量を見ていたヒナタさんとライオネルさん親子も少し呆れ顔になっていた。

 後日談だが、その食べる量を見ていた二人から信女の食事代だけ宿泊代とは追加に別料金となってしまった。あの食う量なら別料金になっても仕方ないよな。

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