30話 大公爵令嬢誘拐未遂事件
私達も食事を取ろうと思っていたところなので、何か奢ろうと思い二人を連れてレストランに入ったのだが、信女は、見ず知らずの人に施しを受けるわけにはいかない、とかなんとか言って、食事を取ろうとはしなかった。
反対にトワは素直に奢られてくれるみたいだが。
施しという形に見えなければ問題ないということだよな?
だったら……。
「私達は君達がどういう旅をしているのか話を聞きたい。その代わりとして、私達は食事を提供する。これならば施しではなく立派な交換条件という名目がたつ。これならどうだ?」
と言ってやったら、それなら、と注文し始めだした。チョロい、あまりにもチョロすぎて心配になるくらいだ。
「なるほどねぇ。信女は武者修行の旅をしていてその旅の途中で同じく旅をしていたトワと意気投合して、それからは一緒に旅をしていたというわけね」
「はい。最初は1人旅だったのですが、そんな道中で信女さんと出会って、旅の目的がほとんど一緒だったので話していたら意気投合してしまい、それからは一緒に旅をしているんです。異性の方と旅をするよりも同じ女の子と旅をしたいと思うのは普通ではないでしょうか」
そう答えたのは信女ではなくトワだった。
あ、はい。そうですか。
ほんと、5年で一体何があったんだよ。こんなに人って変わるもんなの?
「ところで信女は武者修行の旅なんてしてるの?」
「もぐもぐ……拙者の家系は代々武士の家系です。実家の方は兄が継ぎ、拙者は剣の腕を上げるために旅に出ることにしました。……んぐ!?」
どうやら喉に詰まったらしく、勢いよくコップに入っていた水を飲んだ。
いや、喋るか食べるかどっちかにしろよ!喋りながら食べるから喉にも詰まったりするんだよ。
「それで、これからどうするんだ?どこか行くところとかあるのか?」
「もぐもぐ、王都に行こうかと……ごっくん。父上に昔剣術の指導を受けたという方がいるので、その方を訪ねようかと思っています。ごっくん」
いや、だから。食べるか話すかどっちかにしろよ。
ていうかよく食うなこの子。……本当、よく食うな!?
一応余裕はあるはずだけど、この調子で大丈夫かな?
「そうなんだ、実はあたし達も王都にギルドの依頼で向かってる最中なのよ。もし良かったら2人とも一緒に行かない?馬車には2人分ぐらいならば余裕で乗れるし、その方が移動が少しは楽になるでしょう?」
「本当ですか!?それはとてもありがたい提案ですね。是非ともよろしくお願いします」
「春人さんは、それで良いですよね?」
「べつに構わないぞ。それにトワには、稽古をつけて欲しいとアセドラインから頼まれているしな」
「お父様からそんなお願いをされているとは、お忙しいのに申し訳ありません春人様、稽古の方よろしくお願いします」
「任せておけ」
食べ終わり食事の会計をした時に金額に少し驚いた。
いやだってさ、1回の食事に普通、金貨12枚もかかるとは思わないだろ、普通……。
お金に余裕があると言ってもこの調子だと支出額がかなりやばい状況である。
今度からは、信女みたいな細い体型だからと言って油断せず、大食いには注意しようと思いながら会計をした。
その後、2人は私達と同じ宿屋に一晩泊まり、少しの間だけの旅の仲間となった。
次の日、王都に向けアランの街を出発することにした。
「凄い、ですね。この馬車……特に中が」
「この馬車はもともと私の実家であるアセドライン商会の馬車であり春人様にお父様が差し上げたものですが、これほど広くはなかったはずです。もしかしなくても、改良しました?」
「ああ、改良していくうちについつい楽しくなっていってね。空間魔法なんかで馬車の中の空間もいろいろ改造してたら気がついたらこうなってました」
「あはは。春人様、集中してしまうとやり過ぎてしまうところがありますもんね」
「とりあえず出発しようか」
そして、やっと王都に向け出発した。
私達は道中、トワと信女が増えたことによって交代の時間が短くなり休憩も多く取ることができるようになった。
そして、信女の番となり少し経った時に嫌な感覚がした。
この気配……殺気か!?それも複数……。
念のため外に小型の偵察用ドローンを3機ほど飛ばした。
気配がした森の中で探していると、その元を発見した。
魔物に襲われているな。魔物の数に対して戦えているのが少なすぎる。
急いで救出に向かった方が良さそうだな。
そう思い、中にいる他のみんなに伝えてから、信女がいる御者台に移動した。
「信女」
「うわぁ!びっくりした……。どうかしましたか春人殿?」
「あの森の中で魔物に襲われている人たちがいる。中にいるみんなにはもうすでに伝えてあるから大至急向かってくれ。場所は魔法で君の脳内に直接送っておいたから。私は一足先に行って対処してるから。それじゃ」
私はそう言い残し御者台から飛び降りて現場まで向かった。
現場近くの森に入る前に銃の使用許可を求めるため懐からスマホを取り出して電話をかける。
「はい、こちらソーラル」
「私だ」
「お前から電話をかけてくるとは珍しいな。一体どうした?」
「貴族と思わしき人物達が多数の魔物に襲われている。その為、銃器の目撃使用許可を求める」
「……わかった。許可する」
ホルスターにしまっていた銃の撃鉄(ハンマー)をいつでも撃てる状態にしておく。
森の中へと入り現場近くまで到着する。
木の影から様子を見て、ある一体のジャイアントオークに向けて引き金を引いた。
ジャイアントオークとは、冒険者ランクにおいてCランク相当の魔物である。ただしこれは、あくまで単体でのランクであり群れの場合はBランクにまで上がる。
その他にもホワイトウルフ(Dランク相当)が複数体いた。
私は木の影から飛び出して他のにも何体かに撃ちながら場所はのところまで行く。
「密集した状態では全員やられるぞ!私はあのジャイアントオークの方を相するからお前達はホワイトウルフの方を頼む」
「わかった」
私はジャイアントオークを倒していくがいくら倒してもきりがない。そもそもこの辺りにはジャイアントオークは生息していなかったはずだ。
一体なぜこんなところに出現したんだ?ん、待てよもしかして……。
ふと、目についた木に登り辺りを見渡すと、召喚魔法を発動させていた怪しい黒ローブの男が1人いた。
やっぱり召喚魔法で呼び出していたのか。
そうして他にもいないか確認している途中に丁度良くみんなが到着したのが見えた。
「春人様これは一体どうなっているのですか?」
「説明は後だ、今からとりあえず作戦を説明するからその通りに行動してほしい。まず、アイリスとトリスは向こうの馬車にいるあの護衛騎士達の援護にまわって、トワと信女は向かう側にいる召喚魔法でこの魔物どもを呼び出している黒ローブの男の制圧を頼む。ただし、黒ローブの男の殺傷は禁止とする。ただし、自分や周りの人が危ないと判断した場合は殺しても構わない。では、作戦開始」
私がそう合図を出すとみんなは私の指示通りに動いた。
さてと、私もこいつらをなんとかするとしようかな。
と思った直後突然と魔物達が消えていった。
どうやら二人とも作戦完了したみたいだな。思っていたよりも早かったが。
とりあえず私は、護衛騎士の元へと行き被害の報告を聞くことにした。
「早速だが、そちらの被害を聞かせてくれ」
「護衛全、18名中、9人が先ほどの戦いでやられてしまった」
護衛達が悔しそうに握った拳を震わせて、そうか答えた。
「……了解した」
被害の報告を聞いた私は捕らえた黒ローブの男の元へと行く。
私は、銃をやつの額に突きつけスターズの任務の時の声で問いを投げかける。
「お前はなぜこの馬車を襲った?お前一人の計画ではあるまいて」
「……」
「黙秘すると。ならば、お前に指示を出したのは獣人差別派の貴族か?」
「獣人差別派?なんだそれは?私はただ命令されて実行しただけだ。本当だ!信じてくれ!!」
魔眼でも確かめてみるが、どうやら本当に知らないようだな。
「なるほど。その言葉、信じよう」
そう言って鳩尾に一発殴って気絶させる。
するとその時、向こうにある馬車の方から叫び声聞こえてきた。
「誰か!誰かいませんか!!爺やが……爺やが!!」
馬車の方に戻ると、馬車の中で9〜10歳くらいの金髪の女の子が横たわっている黒い礼服を着た白髪の老人に抱きつきながら泣いていた。
その老人は、胸からは血を流し、苦しそうに喘いでいた。
「爺やを、爺やを助けてください!胸に矢が刺さって……」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、その老人を助けて欲しいと懇願する。彼女にとって、よほどこの人は大切な人なのだろう。
そう思っていると護衛達が移動させようとしていた。
「下手に動かすな!下手に動かすと逆に中に入り込んだ矢尻が奥に入り込むぞ!!」
一体どうすれば、と考えていると。
「……お嬢様、お別れで、ございます……。お嬢様と一緒にいられたこと、私にとって大切な、時間でございました……。ごふっ……!」
老人は吐血し始めた。このままではまずいな。
ここは一刻も早く緊急手術を行いたいが、手術を行う時には、本人にその意志があるかどうか確かめる必要となる。
私は、その老人に確認を取る。
「緊急を要します。率直に聞きます。あなたはまだ生きたいですか?」
「私はまだ、お嬢様と一緒いたい、です」
「ならばこれから緊急手術を行いますが、よろしいですね」
「助かるのであれば」
「あなたの意志、確かに確認しました」
私は【ストレージ】から手術用器具などを出した。
そして、結界を張り細菌などが入らないよう仮設の無菌室状態にする。
「春人さん。手術なんてできるのですか」
「こう見えても、宮廷級医師免許も持っているからな」
この世界の医師免許はランク別に分かれており、宮廷医師の免許は最高位の医師免許であり、どの科での症状でも診察が可能だけでなく、手術や薬剤の調合なんかも許可される資格である。
その合格率は狭く、その合格率はたったおよそ、0.01%である。
私は手術服に着替えて手術準備を開始する。
流石に私一人だけだと難しいから助手として、式を呼び出す。
《召命───鬼女》
「お久しぶりです。主様」
「急な呼び出して悪いが手術の手伝いをしてくれ」
「承知しました」
「では、これより矢尻摘出の緊急手術を開始する。メス───」
それから、およそ30分にわたる手術が行われた。
「よし後は回復魔法で傷口を回復させてっと。ふぅ。これにて、矢尻摘出の緊急手術を終了する。お前がいてくれて助かった。ゆっくりと休むといい」
「では、これにて」
私は、馬車の外にいる人達の前に行く。
「爺やは、爺やは大丈夫ですか!」
「落ち着いて、無事手術は完了しました。おそらく、後遺症も残ることもないですし、もう大丈夫ですよ。ですが、今は麻酔を投与してありますのが、後5分ほどで目が覚めると思います」
「良かった。本当にありがとうございました」
さてと、次の問題はそこいらに転がっている遺体をどうするかだな。
先程の召喚魔法の影響で魔力濃度が増しているし、このままここで埋葬したとしても、このような死に方だ。おそらくはこの世にかなりの未練があるだろう。それによってアンデッドとなり無関係な人を襲ってしまう恐れがあるな。
それに、こいつらだってここに埋められるよりも家族の元に帰りたいはずだしな。
そう考えた私は、9人の遺体をストレージに収納した。
馬車の方に戻るとあの白髪の老人が目を覚ましていた。
「目が覚めたようですね。早速ですが痛みなどはありますか?」
「ありません。痛みがまったくありません。本当にありがとうございました。なんとお礼を申し上げたら良いか」
「別に気にしないでください。そんなことよりも、一応体内にあった矢尻の摘出は終わりましたが、その際、輸血がなかったので、怪我の時のと合わせてかなりの出血をしていますので無理に体を動かさないでくださいね」
「私からも感謝します。春人。貴方は私だけではなく、爺やも助けてくださりありがとうございます。貴方は、私達の命の恩人です」
この子の馬車の紋章見たことがあるはずなんだが、どこのだったか……。
「ご挨拶が遅れました。私、クラウディウス大公爵家の執事を務めております、ジアス・セバスチャンと申します。そして、こちらが大公爵家令嬢のアルトリア・フォン・クラウディウスでございます」
「アルトリア・フォン・クラウディウスです。よろしくお願いします」
そうだ、そうだよ。大公爵家の家紋だよ。
……ん?ていう事は、この子大公爵令嬢かよ!?
みんなして、急いで片膝をつき頭を下げる。
大公爵とは、爵位の1番上……他の爵位とは違って、この爵位を与えられるのは基本的に王族のみである。
「私の父、フーリン・フォン・クラウディウス大公爵はこのベルンガ国王陛下の弟です」
「アルトリア様、とお呼びした方がよろしいでしょうね」
「公式の場ではありませんからリアで構いません。それに敬語も要りませんし、春人たちは私達の命の恩人。故に頭を下げるのは私達の方なのです。ですので頭を上げてください」
リアがそう言ったため全員立ち上がる。
私やトワはともかくとして、他の3人は免疫がないようでまだ緊張しているようで表情が固い。
「早速なんだが、ひとつ質問をいいかな?」
「なんでしょうか?」
「それにしてもなぜ、大公爵令嬢がこのような場所に?」
「調べ物を調べるため国立大図書館に行っていて、今はその帰りだったのです」
「なるほど、その帰る道中に襲われたというわけか……。単なる賊、というわけでもなかったし……」
「そういえば春人、さっき獣人差別派がどうとか言っていたけど、それと何か関係があるの?というか、なぜ春人が貴族の派閥について知っているのですか?」
「知り合いが貴族なんかとよく取引を行なっている商人がいてその関係で知っていただけだ」
「……そうですか。わかりました」
そう言いながらも怪しそうにこちらを見てくる。やっぱり言い訳としては結構苦しかったかな。
そう思っていると、先程の白髪の老人……ジアスが話しかけてきた。
「我々の命を助けてもらいこのようなことをお願いするのは申し訳ありませんが、我々のの護衛をしては頂けませんか?先程の戦闘により護衛騎士の半分近くがやられてしまいました。ですのでお願いできませんか?もちろん依頼としてですので報酬はきちんとお支払い致しますので何卒よろしくお願いします」
正直言ったらこれ以上面倒なことにならないように断りたいが、もしここで断ったりしたら下手をするとギルドからの信頼が低くなるかもしれないし、どうしたもんかと考えていると、アイリスが……。
「べつにいいんじゃないかしら。どうせあたしたちも王都に向かっているんだしついでに依頼を受けても問題ないんじゃない?」
「そうですね」
「拙者は同行させていただいている身ですので、春人殿にお任せします」
「春人様、諦めるしかないようですよ?」
「わかりました。ではその依頼、引き受けさせていただきます」
「ありがとうございます」
前に大公爵家の馬車、後ろに私達の馬車が続いて走行する。
さらにその大公爵家の馬車の前と私達の馬車の後ろに騎馬兵を配備した。その他にもステルスモードにした小型ドローンを数機周りに飛ばしながら警護にあたる。
ちなみにだが、私がリアの直接護衛となった。
なんでも、危機的状況に速やかに対応することができ、1番強いから適任。ということらしい。
それから王都に着くまでリアとジアスそして私の3人でいろいろと話したりした。
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