26話 双子との出会い
アバリア近くの木陰へと転移を完了し、アバリアへと向かった。
道中、宿屋を探すためスマホを取り出し、マップを開いて探す。
すると、街の中に宿屋が一軒だけヒットした。
宿屋が一軒だけってどうなのかとも思ったが、そこはあまり気にしないことにした。
アバリアに入るには特に何もなく、検問所がなかった。
どうやらかなり緩い街らしい。
これくらいの街ならば検問があってもいいと思うんだけどなぁと、思いながら街を歩いていると、裏路地の方から何やら声が聞こえてきた。
この声の大きさならおそらく言い争いだろう。それも男女が。
とにかく私は裏路地に入り、狭く細い道を進んで行くと、突き当たりで、私の予想通り六人の男女が言い争っていた。
男が四人、それに対して少女が二人だけだった。
男の方は、ガラの悪そうないかにもチンピラみたいな感じで、少女達の方は、どちらとも可愛い感じの子だ。
二人とも年の頃合いは、15あたりだろうか。
それにしてもあの二人そっくり過ぎじゃないか?双子だろうか。
目つきとか、ミディアムとロングという多少の違いはあるがどちらとも明るめの茶髪だった。
上は白を基調としたものでという姿で二人とも共通していたが、ミディアムの子は、下は黒のミニスカートに黒いニーソックスだったが、ロングの子は、フレアスカートに白いニーソックスという差があった。
そして性格もミディアムの子は活発的な感じで、ロングの子は、清楚系というか大人しめな性格をしていてその違いがよくわかる。
「だから、さっきから言ってるでしょ!これじゃ約束と違うわ!もうこのお金はいらないからそのペンダントを返して!!」
と、ミディアムの子が声を荒げた
ペンダント……?ああ、あのがたいのいい方のチンピラが手に持っているやつか。
大方、ペンダントをあいつらに売って、生活のたしにでもしようとしていたんだろうか。
どっちにしろこのまま放っておくわけにはいかないな。
《マスター、殺るのですか?》
《……シエラさんや、私をなんだと思っているんだい?》
《……冷徹で慈悲を持たない暗殺者だとばかり思っていました》
《ちょと酷くないかい!?私にだってちゃんと人の心ぐらいあるつもりなんだけど!》
《失礼しました。それで、どうなさるおつもりですか?》
《もちろんあの子たちを助ける。なに、あんなチンピラ共、殺す価値もないさ》
シエラとそんなやり取りをしていると。
「こいつはもう、俺たちのもんだ。返すわけねぇだろうが。返して欲しけりゃ、お前達の体を俺たちに黙って捧げたら考えてやっても良いぜ?」
そのチンピラ達は、二人を気持ち悪い声で笑う。
うわぁ、あいつら最初からそれ目的だな。
あの子たちもあんな奴らに騙されるなんてな。
仕方ない、助けてやるか。
「いくらなんでもそれはどうかと思うぞ?お前らさぁ、最初からそれ目的だったら?ペンダントはあくまでもおまけってところか?」
「なんだテメェ?まさか俺たちとやろうってのか?ガキ一人で何が出来るんだか。大人しく帰るんなら見逃してやるぞ?」
あぁ!?誰がガキだゴラァ!ガキはテメェらだろうが!
いかんいかん。ここでキレるわけにはいかん。
「あのねぇ、君達がやっていることは、女の子たちから物を奪ってさらに手をあげようとしているゲスやろうと同じなんだよ?そんなことをしてなんになるわけ?挙げ句の果てには、私に攻撃をしようとしている。こんなんじゃ君達の方がよっぽどガキだよ」
「テメェ、黙って聞いてれば調子に乗りやがって。よっぽど痛い目にあいたいようだな」
「人は見た目によらずって言うんだけどな」
小柄な方のチンピラが懐からナイフを取り出し攻撃をしてきた。
所詮は素人の動きで、相手のナイフの軌道を読むのは簡単だった。
そのナイフをかわし、そのまま一本背負いをし、相手が立ち上がる前におよそ一秒以内に絞め落とし気を失った。
もう一人の方もと思い振り返って見ると、ミディアムの子が、がたいがいい男の方を倒していた。なかなかにいい動きをするな。
どうやら鳩尾に綺麗に入ったようで、こちらも気を失っていた。
「君たち大丈夫だった?」
「ええ、あんたのおかげで助かったわ。ありがとう。あたしはアイリス・ノベール。こっちは妹のトリス・ノベール」
「……さっきはありがとうございました」
そう、ペコリと後ろにいたロングの女の子が頭を下げて小さく微笑んだ。
やっぱりこの子たち双子だったのか。ミディアムの子がアイリスで、ロングの子がトリスね。顔だけじゃ判断が難しいな。髪型とか服装とかでしか、判断が難しそうだ。
「私の名前は望月春人だよ」
「モチヅキ?変わった名前なのね」
「ん?ああ、違う違う。望月は家名で名前が春人だよ」
「名前と家名が逆ってことは、イシュタリカの人?」
「元、イシュタリカの人間だけどね。もう何年もイシュタリカには行っていないし、もうあそこの住人じゃないから。できればあまり詮索しないでくれると嬉しいんだが」
「そう。わかったわ」
「ところで、この近くに宋花っていう宿屋あるかな?今日そこで泊まろうかと思っているんだけども、今日この街に来たばかりだから道に迷ってしまってね」
「宋花って私達が泊まっている宿ですね。よければ案内しますよ」
「それじゃ、お願い」
「わかりました。こっちです」
トリスの案内に着いて行き宋花に到着した。見た目は、煉瓦と木でできたけっこうがっしりとした、三階建の建物だ。
両開きの扉を先にトリスが開けて中に入り続いて私が入った。
一階は、食堂らしき感じになっていた。
「お帰り、トリスちゃんにアイリスちゃん。そっちの人は?」
「ただいま。ヒナタさん。この人がここに来る途中で私達を助けてくれてね。なんか、ここに来る途中だったみたいだから一緒に来たってわけ」
「それじゃお泊まりって事ね」
私は、カウンターの前に行きチェックインをする。カウンターで受付をしている子 (ヒナタさん)は黒のポニーテールをした、二十歳前後といったところだろうか。
「とりあえず一か月泊まりたいんですけど……いくらになりますか?」
「うちは1ヶ月銀貨4枚だよ。あ、前払いでね」
「それじゃこれで」
「金貨1枚ね。最近お客さんが少なかったから助かるわ。はい、銀貨6枚のお釣りね」
ヒナタさんはカウンターから離れると、店の奥から宿帳らしきものを取り出し、私の前に開いて、羽ペンを差し出してきた。
「じゃあここにサインをお願いします」
宿帳に望月春人と記入をした。すると、珍しそうに名前を見ていた。やっぱりこっちだとこの名前は目立つのかな?
「へぇ、名前と家名が逆ってことはイシュタリカの人ですか?」
「元、ですけどね」
「じゃあこれ、部屋の鍵ね。絶対に無くさないでください。それと宿から出る際は、鍵は受付に一旦返してね。部屋は三階の一番奥の部屋になります」
そう言われ部屋の鍵を渡された。
「チェックイン終わったみたいね」
わざわざ待ってくれていたのか。
それから私は、彼女たちがなぜあの男たちにペンダントを売っていたのかの説明を聞いた。
「てなわけで、あのペンダントはもともと近くにたまたまあったダンジョンから見つけて、それをちょっとしたツテであの男達に売ってくれって言われたて渡したら……」
「約束の金額と違ったと」
「そう。やっぱりちゃんとしたところから依頼をうけないとダメね」
「そうだね。今回みたいなトラブルがあったりするから気をつけた方が良いよ。今回はたまたま私が助けに入ったから良かったものの、もしかしたらあのまま君たちが危険な目にあっていた可能性だってあるからね」
ため息をついてお互いの顔を見た。
「この機会に冒険者ギルドに登録した方がいいと思う。明日にでも登録に行こう」
「そうね」
「君たちまだ登録してなかったんだ」
「登録してたらあんな依頼受けなかったわ」
「それもそうか。もしよかったら私も明日一緒に行っても良いかな」
「良いわよ。そんなら一緒に行こう」
「うん……一緒に行きましょう」
二人とも意外と快く承諾してくれた。
その日はそこで二人と別れて、自分の部屋に戻った。
ベッドに横になりついでにスマホであっちの世界の情報サイトを巡って読み漁っているとなんだか変な事故があるのを見てけて見てみると、妖が関わっておりさらに写真の中に望月家の人間が写っていた。
なぜわかるかだって?それは、望月家が仕事中に着る制服を着ていたというだけさ。にしても今もあの制服のままだったんだな。
冒険者ギルドってどんなところなんだろ……とかそんなことを考えていると、すぐに睡魔が襲ってきてそのまま眠ってしまった。
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