25話 魔術師試験と勧誘拒否、そして一時の別れ
「ここへ来るのも懐かしいな。ここの風景は、あの日からまったく変わってはいないな。さてと、このあとどうしようか?ここへ来たのはいいんだけど、まったくのノープランだとは言えなかったし……。そういえば、ソーラルが魔術師試験の募集が今、王城であるとか言ってたし、とにかく行ってみるか。近くの人目がないところにでも転移して……あ、そういえば身分証持ってなかったな。いつも通りこっそり入るか?いや、今回はバレる可能性の方が高いな。でも確か、身分証を持っていなかったら金を払えば仮の身分証が発行されるはずだ。確か、入るのに銅貨3枚だったはず。え〜と、あったあった。とりあえずは、これで良いな。それじゃ行くか」
ベルンガ王国、王都マナフィアスの近くの木陰へと座標を合わせて転移した。
良し、誰もいない様だな。
このまま、王都に向かうか。
そうして、門の行列に並び、しばらくして私の番になった。
「次の人、身分証の提示をお願いします」
「すみません。身分証はまだ発行してなくて。今回は、魔術師試験を受けにやってきただけなので」
「そうでしたか。では、通行料の銅貨三枚の支払いをお願いします」
門番に銅貨3枚を支払った。
「確かに銅貨三枚確認しました。では、こちらが仮身分証となります。有効期間は、1ヶ月です。期限が切れてしまう場合は、近くにある騎士団の関所に延長手続きをして下さい。出来れば正規の身分証の発行をおすすめします」
「ありがとうございます」
「試験頑張ってくださいね」
「はい」
結構良い人だったな。
魔眼でも特に何にもなかったし……。
城下内に入りできるだけベルンガ城の近くの宿屋に泊まるため宿屋を探していた。
だが、さすがにベルンガ城のすぐ近くは貴族街となっていて関係者以外は入れない様になっていたため、ギリギリ近くの宿屋に泊まることにした。
「ようこそ。ベルン亭へ。何泊のご宿泊ですか?」
「え〜と、試験が終わるまでだから……1ヶ月くらいですね」
「宿泊ですが、食事付きになさいますか?」
「では、お願いします」
「はい。畏まりました。では、1ヶ月の食事付きの宿泊で、金貨1枚となります」
私は、財布の中から金貨1枚を出し、手渡した。
「確かに。こちらがお部屋の鍵となります。ご夕食までは時間がありますのでどうぞ、ごゆっくり」
まあまあの値段したな。
ベルンガ城の近くで食事付きの宿泊そして、この宿屋の内装ならばこのくらいの値段はするのかな。
とりあえず、部屋に行くか。
とりあえず、ひと通りの荷物は部屋に置いて試験の申し込みにでも行くか。
ベルンガ城、城門前。
「止まれ。この城になに用か?」
「魔術師試験の申し込みに来たのですけど?」
「試験の申し込み者か。今担当の者に連絡するから少しそこで待っていろ」
王都に入る時のあの門番に比べると丁寧ではないけど、これくらいが普通だからべつに良いんだけどさ、もう少し口調が丁寧だったら良かったのに。
「初めまして。魔術師試験の担当をしております、上級宮廷魔術師の者です。では、手続きはこちらで行いますので着いてきて下さい」
その人の言う通り、ついて行った。
案内されたのは、おそらく試験に使われると思われる試験会場だった。
「こちらが試験会場となります。こちらが申し込み書となります」
その申し込み書にサインをした。
「望月春人さん、ですか。名前と家名が逆という事はもしかして、イシュタリカ出身ですか」
本当は違うけど、説明をするのも面倒くさいしとりあえずは、イシュタリカ出身てことにしておくか。
「はい。そうですね。一応私は、イシュタリカ出身ではありますが、それはもう何年も前の話ですし、今はアバリアの方で暮らしています」
「では今回は、アバリアから試験を受けるためにやってきたということですね?」
「はい。そうです。そういえば、試験日はいつでしたっけ?」
「その件ですが、申し訳ありません。こちらの都合により試験日を来週に変更することになりました。この件は、申し込みが済まれた方全員に既に通達済みです。お忘れのないようにして下さい」
「わかりました」
「では、改めて試験について説明をさせていただきます。まずこちらで試験を行います。当日は城門に身分の確認が終わり次第こちらに来てください。試験が終わり次第あらかじめ申し込み書に記載のある宿屋等に試験の翌日結果が届く仕組みとなっておりますので必ず直接お受け取り下さい。説明は以上です」
試験の結果は、宿屋で直接確認する形なのか。
思ってたよりもちゃんとしてるんだな。
まぁ、そりゃあそうか。なんせ、世界に通用する試験なんだからちゃんとしていない方がおかしいか。
「では、また1週間後に。城門までお送りしますね」
「ありがとうございます」
城門の外に出ると夜になっていたこともあり、来た時に比べて人通りが少なくなっていた。
宿屋に行くと夕食の支度ができていたようなので、そのまま食べてから部屋へと戻った。
私はそのままベットに寝転んだ。
「にしてもまさか、試験が予定よりも早くなっているのは予想外だったな。今回案内してくれた人、たしか上級魔術師とか言っていたから、宮廷魔術師の中でも幹部クラスなんだろうな。でもなんで、そんな人が案内役なんてやってたんだろ。まぁ、今はそんなことはどうでもいいか。……とりあえず今日はもう風呂にも入ったし寝るか」
そして1週間後
「魔術師試験の受付はこちらです」
「次の方どうぞ。では、お名前からお願いします」
「望月春人です」
「望月春人さんですね。確認します……確認できました。ではこのまま試験会場まで行って下さい」
試験会場に行くと、既に何人かが試験を開始していた。
どうやらある程度の人数がそろったら始まるようだ。
試験は、四人同時におこない結果は、各配置場所に置かれている量産型アーティファクトであるこの測定器で調べるため、即座に結果がわかるそうだが、認定証の製作には、次の日までかかることが多いため次の日に渡しているとのこと。
そして、私の番が来た。
「では、あなた方の魔法を今持てる力を使って下さい。また、攻撃魔法が苦手な方は、支援系の魔法でも構いません。それでは、はじめ!」
開始の合図と同時に、他の受験者達が詠唱を始めた。
「【炎よ来れ、我が声に応じ敵を撃て、ファイヤーボール】」
「【光よ、我が周りを癒したまえ、エリアヒール】」
「【荒れ狂う水流よ、我の言葉に応じ敵を流せ、アクアトルネード】」
へぇ〜、これが詠唱魔法か。
実戦だったら詠唱中にやられてそうだけど、なんで詠唱なんてするんだろうか?
詠唱なんて本来、その魔法のイメージをしにくいやつがイメージをしやすくするためのものなんだがなぁ。
それに、こいつらの魔法、本来の威力の半分も出ていないし……もしかしてこれが、この国で神級魔術師が出ない理由か?
そう思いながら私は、神級魔法【ヘルフレア】を放った。
すると、的どころか城壁の一部までも溶かしてしまった。
「な……!?この城の城壁には、精霊級の魔法さえも耐えれるはずなのに」
「団長!この測定結果ですが……その……神級です」
「……神級ですか。それならばあの桁違いの威力も納得がいきますね」
「……ん?なんか試験官達がやけに騒いでいるが、なにかあったのか?もしかして、私がなんかやらかしてしまったのかな」
一応魔法を放ち終わったのだが、試験官がまだ終わりの合図が出ない。
「あの他の方も終わったのですが、まだやった方が良いんですか?」
「あ……す、すみません。もうやめていただいても良いですよ。では、試験お疲れ様でした。明日には、結果が届くと思います」
宮廷魔術師団、魔術師試験結果報告会議。
「神級魔術師が出たというのは本当ですか?団長」
「はい。私もその場で確認しましたので間違いありません。試験用のアーティファクトの点検何度も行っていますので、故障による結果ではありません」
「神級魔術師が、我が国で出たのは実に喜ばしいことです。ですが、そうなってしまったら実力は団長以上となってしまいますな」
「確かにそうですね。ですがそれは、この場で決めることではありませんよ」
「失礼しました」
「では明日受験者全員に結果を届けることにしましょう。ただし、神級魔術師枠の望月春人さんは、陛下との謁見にて、陛下から直々に杖とマントとローブを渡して頂きます。この件は既に陛下には承諾を得ています」
翌日
「お客さん。お客さんに来客だよ」
「望月春人さんで間違いないですか?」
「はい。そうですが」
「私は、宮廷魔術師の者です。昨日行われた、魔術師試験の結果の通知を届けに来ました。ご確認ください」
渡された封筒から出して見る。
結果は、予想通り神級魔術師合格の通知だった。
「貴方は、神級魔術師に合格なさいました。よって、今から私と王城に来ていただき陛下への謁見をしていただきます。謁見用の礼服はこちらでご用意しておりますのでご安心ください」
「わかりました」
こうして私達は王城へ、ベルンガ国王に謁見をするため向かった。
王城へ着くや否や、私は別室へと案内され、そこで礼服の準備や作法の練習をしたが、作法に関してはとっくにできるため、難なくできた。
「作法がちゃんとできていたのには少し驚きました。もしかして、どこかの王侯貴族に仕えていたりしていたのですか?」
仕えてはいたが、それはあくまでも潜入捜査だから言えないし、たまたま知っていたということにでもしておくか。
「いえ、たまたま友人が貴族に仕えていて、作法に関してはその友人に教えてもらったのが、今回たまたま役に立ったというだけの話ですよ」
「そうだったのですか。おっと、もうすぐ謁見の間に到着します。それでは、いきますよ」
そう言うと、その人は息を吸い込み大声で言う。
「神級魔術師!望月春人殿がご到着なさいました!!」
そう言い終わると同時に、重々しい扉が開き中に入った。
そして、国王の前まで向かい跪く。
「面を上げよ」
「ではこれより、神級魔術師の授与式を開始する」
「此度、我が国で神級魔術師を出せたこと嬉しく思う。ではこれより其方にはこの神級魔術師の杖とマントそしてローブを授与する」
「は、ありがたき幸せ」
杖は、ミスリルと魔銀を合わせてできた混合金属であり、マントは、オリハルコンを糸状にして縫った物であり、ローブは、アダマンタイトをマントと同じく糸状にして縫った物でありこれらは、かなり高度な技術を用いて作られているため、この技術を用いた衣服を着られるのは、本当のごく限られた人物だけである。
「ではこれにて、授与式を終了する」
授与式が終わり、私は控え室へと戻っていた。
そして、部屋で先程渡された杖とマント、そしてローブを【ストレージ】にしまっていた。
「春人さん、本日はお疲れ様でした。とても今回が初めての謁見とは思えないほど素晴らしかったですよ」
「お世辞は結構ですよ。それよりも、いくら私が神級魔術師だからといって、自分の仕事を放ったらかすのもどうかと思いますがね。ベルンガ王国宮廷魔術師長レベッカ・アルナスさん」
「……いつ、私が宮廷魔術師長だと気づいていたのですか?」
「そうですね。確かに貴女はかなり巧妙に偽装をし魔力を抑えていたようですが、残念ながら私にはその程度の偽装は意味がありません。まぁ、最初に現れた時に中級魔術師になりすましていたときは何をしているのかとは思いましたが……で、一体なんのようですか?まぁ、大方私のスカウトといったところでしょうけども」
「その通りです。春人さん、宮廷魔術師になりませんか?勿論ちゃんとした給料は出ますし、待遇だってかなりのものですよ」
「申し訳ありませんが、私は自由に生きたいものですから特定の国に仕えるつもりはありません」
「そうですか……残念です。話しは変わりますが、春人さんはこれからどうなさるおつもりですか?」
「そうですね。とりあえずは、今日は宿屋に戻って明日にはアバリアへ向かい、しばらくはそこで過ごす予定です」
「わかりました。ではお気をつけて」
「ありがとうございます」
そして、着替え終わった後そのまま宿屋に明日宿屋を出ることを伝えると、突然のことだったこともあり驚かれた。
「そうかい、明日ここを出ていくんだね。なんだか少し寂しくなるねぇ」
「そう言ってもらえて嬉しいです。また、この辺りに来る機会があれば寄らせてもらいます」
「そんじゃ、今夜は豪勢にいかせてもらおうかね。あと、寄るだけじゃなく泊まっていきな。あんたやこの先仲間になるでろうやつなら大歓迎さね」
「はい」
「悪いけど、出来るまでは部屋で待っててもらえるかい。出来たら呼ぶから」
「はい。わかりました」
そう言われ部屋に戻り部屋に置いていた物などもストレージの中にしまったりして明日の準備をした。
そうこうしていると、夕飯が出来たようで、女将さんが呼びに来た。
席に座り料理が運ばれてきた。とても美味しそうな物ばかりである。
「本当に豪勢な料理ですね」
「そうだろう。なんたってこれらはすべて私の自信作なんだ。ささ。遠慮なく食べな」
「いただきます」
一口肉を口に入れた瞬間物凄い肉汁と共にほのかな旨味、そして肉の上に乗せられたバジルの匂いが合わさることによってさらに美味くなっていく。
一体なんなんだこれは!?
他の料理もどれも美味しく、流石女将さんが腕によりをかけていると言っていただけはあってとても美味い。
「ご馳走様でした。やっぱり女将さんのご飯は、美味しいですね」
「そうかい、ありがと。それにしても今日はまた、随分と美味そうに食べてくれたねぇ。あんなに美味そうに食べてくれて私も嬉しいよ」
部屋に戻りベットに横になると、突如スマホが鳴った。
相手は、ソーラルだった。
それにしても、スマホに着信とは珍しいな。
「はい、もしもし」
「俺だよ俺」
「詐欺ならこのまま切るぞ?」
「ちょ待て!開口一番が詐欺ってどう言うことだよ!?」
「すまんな。で、何のようだ?」
「魔術師試験の結果だよ。どうせお前のことだし受けたんだろ?」
「ああ、受けたぞ」
「結果は……って、聞くまでもなくどうせ神級なんだろ?」
「まぁな」
「それにしても、随分とそっちの生活を満喫しているようだな。仕事はちゃんとしているんだろうな?まぁ、いいや。それで、何か報告することはあるか?」
「いいや。今んところは特に何にもないな」
「で、この後はどうするんだ?」
「明日にはアバリアに行ってしばらくの間は、そっちの方を拠点に活動しようと思っている」
「そうか。なら、冒険者が一番手っ取り早いな」
「わかった。なら切るぞ。悪いが明日は少し早いんでね」
そう言って、ソーラルとの通話を切った。
そして、次の日。
「お世話になりました」
「こっちこそだよ。お客さんのおかげで新メニューも何種類か出来たし、本当に感謝してるよ」
「では、またいつか」
私は宿屋を後にし、マナフィアスを出ようと門に行くと、あの日と同じ人だった。
「あ、あの時の方ですね。魔術師試験の方はどうでしたか?」
「ええ。おかげさまで無事、合格しましたよ」
「それは何よりです。では、仮証明書の提出をお願いします」
内ポケットから仮証明書を出し、門番に手渡した。
「はい、確かに。それではお気をつけて」
こうしてアバリアに向け、ベルンガ王国首都マナフィアスを旅立ち、マナフィアスに来るために転移したあの木陰でアバリアの近くのかつて、私が初めてこの世界へと来た時のあの木の木陰へと座標を合わせてこっそりと誰かに見られないうちに転移をした。
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