22話 絶望
私達はすぐさま本部にドランク殲滅用に新たに軍用機を向かわせたことを今現場にいる部隊の者達に伝えるため本部へと向かっていた。
スピードから考えて、敵地に到着するまでおよそ20分くらいといったところか。
「本部より各総隊並び部隊に緊急連絡。繰り返す。各総隊並び部隊に緊急連絡。本部より航空戦闘機を多数送った。その部隊が到着するまで後およそ18分。それまでは、なんとしても耐え抜いてくれ」
『了解』
やっぱりなんか心配になってきたな。私も現場に行ければ良いのだが。
あ、そうだ。シエラ聞こえるか?
《どうしましたか?マスター》
《現場に小型のドローン爆弾を50個ほど上級ドランクにぶつけられるか?》
《可能です。速やかに実行します》
《やっぱり私はここから離れてはダメかな?)》
《今指揮官が離れるのは得策ではないと推測します》
やっぱダメか。
『こちら航空部隊。あと3分で現場に到着します』
「こちら本部。了解。現場の戦闘員がそろそろ限界をむかえそうだ。できるだけ急いでくれ。そして、操縦士以外の戦闘員は、直ちに戦闘態勢に移行せよ」
「こちら本部より現場にいる各総隊並び部隊に連絡。あと3分で援軍が到着する。あともう少し耐え抜け」
《ドローン爆弾の製造完了。いつでも突撃可能です》
『こちらシャドウ部隊より本部へ緊急報告!繰り返す。本部へ緊急報告!!上級ドランクが亀裂より完全出現!繰り返す。完全出現!先程の援軍はまだですか?』
「こちら本部。現状を理解。援軍の到着時間についつは少し待て。こちら本部より航空部隊へ連絡。現場まであとどのくらいだ?」
『こちら航空部隊。現場まであと約1分』
「こちら本部。了解」
「こちら本部より現場各員に連絡。援軍到着まであと1分」
『こちらシャドウ部隊。了解』
《ドローンを【テレポート】にて転移後、一斉突撃。爆発させろ》
《了解。速やかに命令を実行します。一斉突撃完了。全ての爆弾が命中しました。これによるダメージを計算中……計算完了。ダメージ総量4分の1です》
「おい、いったい今の爆発はなんだ!?今すぐに本部へ連絡しろ!」
『現場より緊急連絡!緊急連絡!上級ドランク付近にて謎の大規模爆発が多数発生!!』
「現場でいったい何が起きたんだ!すぐに確認しろ!!」
「その必要はない」
「元帥。それはどういう意味ですか?」
「その爆発の原因は、私がやったドローン爆弾によるものだからだよ」
「ドローン爆弾とはなんですか?」
「えーと、なんて言うか、ドローンって言うのは、無人航空機のことで私がいた世界では様々な用途で使われていたが今使っているのは軍事利用のドローンだな。そのドローン50個に爆弾を取り付けてそのまま突撃させたんだが、思っていたよりもダメージが入らなくてな……一応C4爆薬という軍用プラスチック爆弾を取り付けていたんだがなぁ」
『こちら航空部隊より本部。現着』
お、やっと着いたみたいだな。
「こちら本部。現場到着まで時間がかかったようだが、今はそんなことを言っている場合ではないからあえて言わないがもう少し早くしてくれ。それよりも現状を報告せよ」
『多数のドランクを視認。こちらはいつでも戦闘可能』
「了解。戦闘機はそのままドランクに対し一斉攻撃を開始せよ。また、航空機から降りて戦闘を行う部隊は、他の各スターズの部隊の援護にあたってくれ」
『了解』
「あれがもしかして春人さんが言っていた、援軍でしょうか?」
「そうだと思いますよお母様」
そんなアリスの質問に答えたのは、春奈だった。
そして、降下して来た隊員とそれぞれの部隊が合流を始めた。
「本部より応援に来ました。航空部隊です。これより我々もドランクの殲滅にあたります」
「ありがとうございます。ですが、私達の部隊よりも苦戦をしている部隊の方を優先して応援にまわって下さい」
「しかし、元帥からはすべての部隊の援護をするように命じられています」
「そうですか。わかりました。ですが、他の総隊が危険と私達が判断したらそっちに行って下さい。これはお願いではなく、命令です。良いですね?」
「了解」
攻撃機による攻撃が始まり、発射される弾丸が雨のようにドランクに降り注ぎミサイルが霰のようにようにドランクに撃っていた。
「これは、ある意味凄い光景ですね。あの攻撃をしている航空機?もそうですが、これだけのドランクの数と攻撃も異常ですね。ここ数百年の間に何が起きたのでしょうか?」
「あ、あれはなんだ!?亀裂からまたなんか出てこようとしてるぞ!!」
『本部へ緊急連絡!!本部へ緊急連絡!!亀裂から新たなドランクが2体出現中!形態および等級は………え、人型……です。また、等級不明!』
「人型?………人型だと!?まずいな。人型といえば確か、支配級と呼ばれ、上級と比べられないほどの強さを持っていると聞いたことがある。これは、かなりやばいな」
『こちらシャドウ部隊。本部、至急応答を!』
「ああ、すまない。古の書によると、そいつらはおそらく、支配級と呼ばれる階級のドランクだ。上級とは桁違いの強さを持っているとても危険で厄介な存在だ」
支配級が出てきてしまっては、いくらアリス達でも手に負えないだろう。
ここは、私が現場に直接赴き、指揮を執るしかないな。
現場へ転移魔法で向かおうと思い転移座標を合わせた直後、私の前に立っていた人物がいた。
カーラルである。
「いったいどこへ行こうとしているんだ?」
「いやね、少しトイレにでも」
「嘘をつくんならもっとマシな嘘をつくんだな。転移魔法を使おうとしておきながら何が少しトイレにいくだ?確かに、君の気持ちもわからんでもない。なんせ、支配級とかいう桁違いの強さを持つドランクが2体も現れたのだからな。だがこの場から君がいなくなってしまうのはまずいことくらいわかっているだろ。それにもし他の場所にも出現した時の対処だってある」
「確かに私がいなくなるのはまずいことくらいいくらなんでもわかるさ。それと、他の場所にドランクが出現することはないから安心しろ」
「なんで他の場所には出現しないもわかるんだい?」
「あそこに支配級が出てきたことが何よりの証拠だからさ。わかったら大人しくそこを退いてくれるか?」
「退くわけないだろ!力づくでも止めてやる」
「そこまでいうのなら仕方ないな」
「やっとわかってくれたか」
その瞬間、カーラルの背後に回り込んだあとに気絶させた。
「ちょっ!?いったい何をやっているのですか?元帥殿!!それがどういう意味かくらい貴方ならわかっていますよね!!なんでこんなことをするのですか?!」
「なんで、か……それは、私にはどうしてもやらなくてはならないことがあるからさ。【テレポート】」
そのまま私は【テレポート】で現場まで転移をした。
「んっ……」
「特将殿!?ご無事ですか?」
「あ、ああ。なんとかな。そういえば春人は?」
「元帥殿はあの後すぐに現場に向かわれました」
「そうか……」
「どうなさいますか?止めに行きますか?」
「いや、止めに行っても意味がないむしろ現場に行くんならそのまま戦闘に参加した方が明らかに効率がいいしそれに止めに行ったとしても、さっきの二の舞になるだけだ」
「そうですか。わかりました」
現場では、かなり被害が出ていた。
グラノンドとランス支部の機動総隊がほぼ壊滅状態となっており、本部のシールズ総隊やノーヴェラ総隊もかなりの被害を受けていた。
「アリス、大丈夫か?」
「大丈夫ですが、本部にいなくて大丈夫なのですか?」
「…………」
「もしかして、抜け出してきたのですか?」
「…………」
「まったく、いったい何をやっているのですか。そんなことをしたらどうなるかくらいご存じですよね」
「それは知ってるけども、支配級はアリス達でも倒すことはほぼ不可能に近いほど強い。だから来たんだ。悪いがアリス達は雑魚どもを頼めるか」
「わかりました。春人さんどうかお気をつけて下さい」
「そっちもね」
私は、アリスと別れた後そのまま支配級の近くまで飛んだ。
「まったく、お前達この世界でよくもまあ、随分と暴れたもんだな。その代償、ここで支払って貰うぞ」
「#&#&&#@@gdkg!」
「いや、何言ってるかまったくわからんわ。まあ、お前達の言葉に耳をかすことはないしそもそも私には、正直言ってどうでもいいことだからべつに良いんだがな」
「それじゃ、行くぞ!」
支配級に斬りつけに向かうも防がれてしまった。
私は一瞬、目を見開いた。
両腕がまるで刃物のように鋭くなっていた。
「やっぱり人間に見えても違うってわけね」
今度は、やつが斬りつけに来たと思って防ごうと思った瞬間、指から光線を撃ってきた。
下を見ると、地面が少し溶けていた。
危なかった。なんとか間一髪でそれを回避出来たものの、もし避けていなかったら私の身体が貫通して溶けるところだったな。
「あっぶなかった。もし避けてなければ、防護結界の構築前に身体が貫通してたなこれ」
「春人さん。こっちは片付きました」
「思ってたよりも早かったな」
「ええ、あの応援部隊の方々の協力もあり私も予想以上に早く終わりました。片方は、私達にお任せください。行きますよ。桜」
「はい。お母様」
そう言って二人は私が相手をしているのとは別のやつの相手をしに行った。
急いであの2人を止めなければ!
「戻れ!2人共!!」
私の声が聞こえていないのか、2人はあいつと戦っている。
その瞬間、私の相手が自分の相手をしていないからか私に思いっきり斬りかかってきた。
「早くこっちを片付けて、アリス達の方の支配級ドランクをどうにかしなくちゃな」
一方、アリスと桜はというと……。
「桜、そっちから回り込んで攻撃を。くれぐれも例の光線には気をつけるように」
「わかりました」
桜がやつの後ろに回り込んで攻撃をしようと思った瞬間、やつの背中から棘のようなものが桜を襲い、その棘が桜の身体に何本か刺さった。
「桜!!」
アリスがそう叫んだ瞬間アリスもその棘に刺されてしまった。
二人ともなんとか避けてはいたものの全てを避けることはできなく、しかも運悪く全ての棘が致命傷の部分に刺さってしまった。
「アリスーー!!桜ーー!!退け、このくそ虫ケラが!」
私は、そいつを思いっきり弾いて遠くへと投げてすぐにアリス達の元へと向かった。
そしてアリス達の前に着くと同時にそこに結界を張った。
「おい!しっかりしろ!頼むから2人とも目を開けてくれ!」
私は目から溢れんほどの涙を流しながら二人に必死に呼びかけた。
回復魔法……そうだ、回復魔法だ!
そう思い【アルティメットヒール】を二人にかける。
《回復限界を越える傷ならび異界の技術を用いた精神体への攻撃も含まれているため【アルティメットヒール】を用いての回復魔法でも回復が不可能です》
『【アルティメットヒール】!【アルティメットヒール】!!』
《回復対象者への現在の【アルティメットヒール】では、回復効果がありません》
「クソ!なんで、なんでだよ!!こんなに魔法を使えるのに、なんで肝心な時には使えないんだよ!!」
目尻に涙を浮かべながら、地面を思いっきり殴る。
「春人……さん」
「お父……様」
「ア、アリス?アリス!桜!」
「春人さん。あとのことを頼みます」
「私からも、お父様今までありがとう、ございました」
「おい、二人ともいったい何を言っているんだ!私が絶対に死なせはしないから、だから、頼む、生きてくれ!!」
もう、涙が出るのを止められないほどに泣きながら回復を続けた。
そして、それと同時にアリスや桜を突き刺したあいつにひどく激しい怒りが込み上げてきた。
「アリス、桜………嘘だろ?おい!アリス!桜!!目を開けろ!おい!」
《アリスロードならび桜の心肺停止を確認しました。現時刻をもって、両二名の死亡を確認しました》
「……まだだ」
(まだだ。この二人の魂が肉体から離れてから時間は経っていない。ならば、まだ助けられるはずだ!)
その瞬間、私達を囲うようにして形代の人型が無数に並ぶ。
(あの術ならなんとかなるはずだ!なんとしても必ず助ける)
《その術による蘇生は肉体が崩壊してしまい危険です!速やかに実行を中止して下さい》
術を発動最中、鼻や口、そして眼から流血する。
この術は、かなり消耗するので、2、3回と使用する事は出来ないが、今回はこの術を使わなくては、この二人を助けることは出来ない!私が諦めるわけにはいかないんだ!!
『मेरो आवाजलाई जवाफ दिनेहरू तिनीहरूको शरीरबाट अलग आत्माहरू छन्। मेरो पुकारको जवाफ दिनुहोस् र तपाईंको आत्मालाई तपाईंको शरीरमा फर्काउनुहोस्। सोल टेक्निक एन्टी-सोल टेक्निक』
術の詠唱を終え、発動させると同時にさっきよりも流血が増す。
この術は、かなり強力な術。それ故にその発動代償も大きく、その代償は術者の生命力である。
そして、もう少しで陣が完成し、なんとか二人を蘇らせられるというところで術の陣の完成をシエラが強制的に止める。
「なぜ止める!!」
《これ以上の術の発動はマスターの生命力が大きく削られ、仮にお二人が助かったとしても、代わりにマスターが死んでしまいます!それでは意味がありません。ですので、他の方法で助ける方法が見つかった時に再度蘇生させる事を推奨します。尚、遺体は保護魔法で保存しておけば、腐敗する事はありません》
「なら、私はどうすればいい?この二人を守れなかった私になにが出来るというんだ!」
《簡単な事ですよ。お二人の仇を取ってあげればよろしいのでは?》
そうシエラが言った瞬間、私の中にあった糸のようなものが切れるような音がした気がした。
そして私はこの時、怒りに任せ自分を制御できない状況にまでなっていた。
「よくも……よくもよくも!!アリスと桜を殺してくれたな。この罪、ただで済むと、思うまいな!!」
《怒りエネルギーを大量確認しました。これにより妖力量ならび魔力量その他の能力も上昇しました。よって、これらのエネルギーに耐えられる器を再構築中……完了しました。種族『上位人間』から種族『古代人間』への進化を完了しました。これにより前種族時よりも全能力が大幅に上昇しました》
なんだ、急に力が湧いてくる。これが、種族進化したことによる影響なのか?それに妖力量も上がっている。これなら……。
《召命───鎌鼬》
そして私は、鎌鼬を呼び出し、鎌鼬と共に近くにいた雑魚を一瞬にして粉々に切断し、一気にやつとの距離を詰める。
「#@@#g@#@&#/&!?」
「だから、何言ってるかわかんねぇて、言ってんだろうが!!」
やつらは突然攻撃をやめ、後ろに逃げるように後退した。
逃すわけねぇだろが!
「逃げんじゃねぇよ!このクソったれが!!」
そう叫んだ瞬間あいつらの目の前に世界の狭間が閉じかけていた。
そのままあの支配級どもと他のドランクも中に入ろうとしていた。
私は、その狭間の中に入る前に斬り殺そうと思ったが斬り込みが間に合わずやつらは世界の狭間の中へと逃げ去った。
《敵が世界の狭間に逃走しました。なお、追跡は不可能です》
狭間を無理矢理こじ開けようとはしたものの、一度閉じた狭間を開けるのはそう容易なことではない。
むしろ、何もない空間に世界の穴を開ける方が簡単だ。
そのまま気力を無くした私は、アリス達の遺体の前に行き両膝からその場へと泣き崩れ落ちた。
「すまない。お前達の仇を取ることができず、挙句の果てには、奴らを逃してしまった。奴らはおそらくまた、体制を整えてこの世界へと再びやってくるだろう。お前達の犠牲を無駄にしてしまって本当にすまない」
その後、事後処理部隊が到着し、この場で起きた戦闘の痕跡の消去や遺体の回収を済ませて帰還して行った。
……私達も帰還するか。
「皆、今回の任務ご苦労だった。今回かなりの犠牲を出してしまったのは痛いが、お前達は今生きている。この現場での任務に参加した者は、明日から2日間の休暇をこの私の名の下に命じる。各自、しっかりと体を休めよ。それでは、我々も本部へ帰還する。また、支部の機動総隊も支部へ帰還せよ」
「了解」
本部へ帰還後、カーラルなどにお叱りを食らった。
「なんで行ったんだ!確かに君のおかげで被害を抑えられたのは事実だ。だが、こう言うのもあれだが、アリスと桜2人のシャドウを無くしたのはスターズにとってかなりの損害だ。とりあえず今日はもう君は休め。だがまずは、五星使徒の二柱と殉職した者達へ……黙祷!……止め。最後に二人の遺体安置所に行くぞ」
そして二人の遺体のある遺体安置所の中に入り二人の遺体の前へ行き、取り囲んだ。
「勇敢なる二人へ敬礼!………あとは、春人達家族がいると良い。我々は出ていかせてもらうが良いか?」
「ああ、気遣いに感謝する」
他の者達が部屋から出て行くと、春奈と白夜は冷たくなったアリスと桜の遺体に抱きついて泣き出した。
アリスに声をかけたのは、春奈だった。
「お母さん!お母さん!なんで死んだの!まだ一緒に居たかったよ……」
桜へ声をかけたのは白夜だった。
「私が近くにいたのにお兄ちゃんとして、守れなくて、本当にすまなかった……」
2人も相当自分を責めているな。
お前達は何も責任を感じる必要はないというのに。本当に悪いのはこの私なのだから。
「白夜、春奈。お前達が責任を感じる必要はない。お前達は自分の任務をこなしただけなんだ。責められるのはお父さんなんだ。勝手に本部を抜け出し現場に出て剰え守るべき肝心な時に守れない人間なんだからな」
「父上!父上こそしっかりとしてください。どうか、ご自分を責めすぎないでください」
「ああ、わかった。2人には迷惑をかけたな」
「気にしないでちょうだい。お父さん」
自分の子供に励まされるとは、いったい私は何をやっているんだか。
この子達にこれ以上心配させる訳にはいかないな。
「2人共、そろそろ帰ろうか。大丈夫だアリスと桜も明日家に帰ってくるからさ」
「わかりました。帰りましょうか」
次の日、アリス達が家へと無言の帰宅をし、その後スターズ専用の墓地の中の最高幹部専用墓地へと保護魔法を掛けて埋葬した。
その間、アリス達との思い出を思い出していた。
「この長き間、ご苦労だった。ゆっくりと休むと良い」
アリス達に最後の別れを告げ墓地を去った。
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