19話 神、邪神について
「これが、私が前の世界……地球という世界にいた頃の話しだよ」
「春人さんは、昔からそんな苦労をしていたのですね。あなたの妻だというのに、あなたのことを全く知りませんでした。ごめんなさい」
「いや、この事は、この世界に来てからは誰にも話していないんだから知らなくても当然だよ。だから気にしないでほしい。それに、昔のことなんてはっきりと言ったらどうでも良いことなんだよ。今の生活がかなり楽しいしずっと続いて欲しいとも思っている。こんな気持ちになれたのは、久しぶりだな」
それに、地球のことを誰かにこうして話したこともなかったから懐かしいとも思ってしまったな。
澄子姉さんは、あの後から元気にしているかな。
優しい澄子姉さんのことだから私が死んだことに悲しんでいるかもな。
それでも長年生きている長命種の一人であり、真田家当主なんだから悲しみなんてもうありはしないだろうけど。
それに、もうあれから300年以上経つんだから悲しみさえも忘れてるだろ。
「その、春人さん。あなた自身は自分が神によって殺されたと先程言っていましたが、正直言ってあなたは自分が死んだことに納得しているのですか?」
「普通に、納得はしていないな。だが、感謝もしているんだよ」
「? どういう意味ですか?」
「その、なんだ、私がその神に殺されたことによって、こうして、アリスとも出会えそして結婚し、子供達とも出会うことが出来たんだ。その点だけならばあの方にも感謝することも出来る。それに、あの方もわざと私を殺したわけでもないから今回は、大目にみたけれども一応くぎは刺しておいたから多分大丈夫だとは思うけれども」
「……そうだと良いんですけどね。……今思ったのですけど、神と親しいのならばドランクの件もどうにかできないのですか?」
「それは無理だな。いくら最高神様だとは言えども、神界の決まりの中に『神の力を用いて地上に干渉してはならない』とあるんだ。だが、これを最高神自らが破ってしまっては他の神達に示しがつかなくなってしまう。そうなれば馬鹿な神達が暴走し、地上世界に大混乱を招いてしまうかも知れないんだ。そうなってしまったらドランクなんぞとは、比にならない程の被害が出てしまう可能性もあるんだ。だから神が神の力を用いて干渉する事は出来ないんだ。まぁ、本人曰くその決まりの抜け道を使って地上に干渉している神もいるらしいが神の力を用いていない為全く問題がないらしい」
「その抜け道とは?」
「神が人化し、地上に行って直接解決するといった方法だな。人化してしまえば、一応扱いはぎりぎり人間になるから地上に少しくらいならば行ったりしてもべつに問題はないんだよ。ただし、しっかりと最高神様に許可をもらってからだけどな」
「神と言ってもいろいろと大変なんですね」
「ああ、そうだな。その中でも神界などで罪を犯した神は、その神の身分を剥奪されるうえに、力も奪われてしまうんよ。当然、神界からは永久追放処分となる。だから、神と言っても何をしても良いというわけではないんだよ。人間がそれぞれの国の法律を守るのと同じく、神の中でも神界に於ける厳格な法律、というかそういう決まりの元で、神として生活をしているってわけだな」
ほんと、神って思っていた以上に大変なんだな。
私が今まで出会ってきた神は皆、自分勝手なやつばかりだったから、死んで初めて神界に行ったときはかなり驚いたもんだ。
まぁ、仕事の都合上、神といっても邪神つまり最下級の神と戦ったりしてきた。
その邪神でさえも倒すことが出来たら、神殺しの称号が与えられる。
はっきりと言って、他のやつらはともかく、私にはそれほど名誉ある称号とは思えない。
望月家には、私をはじめとする沢山の者達が神殺しの称号を持っている。
我々望月家いや、日本に今現在も反逆している一族である宮神家は、人間であって、人間ではない。
つまり、どういうことかと言うと、宮神のやつらは身体を改造し、妖に近い体を手に入れている。
無論全ての者ではなく、幹部クラスの者のみだが、これがかなり強い。
だが宮神家当主は、人体改造ではなく、澄子姉さんと同じように人間から進化していて、正直言って地球の邪神よりも厄介だ。
我々望月家と国は、何度か宮神家を排除すべく、宮神家の本拠地である本家を潰そうとはしてみたものの今まで、すべて失敗に終わっている。
この時参加したのは、我々望月家の精鋭達や剣士隊そして、真田家からも当主である澄子姉さんや剣士隊などが参加し、警察からは、SAT(Special Assault Team)とSIT(Special lnvestingTeam)と公安部と警察庁の警備局からも何十名かの警察官、防衛省からは、陸上自衛隊の第一空挺団や特殊作戦群やその他にも航空自衛隊と海上自衛隊からもかなり優秀な自衛官がやってきた。
それでもかなりの被害が出てしまったため、止むを得ず私にとってとても屈辱ではあったがあのまま戦っていたら間違いなく全滅していただろう。
そんなやつらが倒しても与えられる称号に私はそれほど名誉があるとは思わない。
そんな宮神家と戦うよりだったらまだ、邪神と戦っていた方がまだマシだ。
確かに元々神なだけあってどいつも強いけれどもそれでも私にとってはまだマシと言える。
だがそれでも所詮は、神の身分を剥奪された神もどきだ。
そんなやつを倒したからなんだというんだ。と、私は思う。
無論、邪神を甘くみているわけではないからな。
邪神となった者は最後、滅びるだけとなる。それが、その世界と一緒に滅ぶか、勇者などといった神に認められた者が神器を使って、邪神と戦い邪神だけ滅ぶかの二択だけとなる。
私は、身勝手な邪神のせいで世界も一緒に滅ぶというのはごめんだ。
なぜ、世界も一緒に滅ぶかって?
最初私は、邪神によって世界が滅びるものだと思っていた。
だが、その認識は間違いだった。
エルナント様に聞いた話しによると……。
「確かに、邪神が世界を破壊するのは当たり前というかそれが邪神の性みたいなものなんです。ですが邪神が現れた世界が滅びる原因の一番の多くは、私の一つ下の階級である上級神の破壊神によって、世界の害悪となる邪神を他の世界を巻き添えにしないようにするためにその世界を破壊する。といった理由で、邪神が現れた世界が滅びるっていう事例が圧倒的に多いですね」
「一応の救済はあるってことでいいんですよね?」
「はい。その認識で間違いありません。しかし、何度も神の救済があるとは思わないでくださいね。世界が滅ぶのは我々としても問題もありますが、それはそれでその世界の定めとして大人しく受け入れるしかないんです。無論、こちらの一方的な理由ならば話しは別ですがね」
? エレナント様達に問題っていったいどういう意味なんだろ?
「あの、先程我々としても問題もありますがとおっしゃっていましたが、あれってどういう意味なんすか?」
「貴方は、既にご存知だとは思いますが世界というのはたくさんあります」
急に何を当たり前のことを。
「その世界独自の文明だったり文化、力や物質、資源や生命体があります。その中には、我々神さえも殺すことが出来たりする者もいます。今の貴方なら下級神ならば倒すことができる者もいるでしょう。ですが、神を傷つけたり殺したりできる者も地上にも確かに存在しています。そのような者を邪神などがその力を利用してしまうと神でさえ勝つことが難しくなります。と言ってもそれはあくまでも下級神までの話しで、中級神くらいからは地上にあるどんな物を使っても勝つ事はほぼ不可能になります。何故なら、下級神までよりも遥かに内包している神力量大幅に多くなるため大抵はどうにでもなりますから、よほどの実力者でなければ勝つ事は難しいでしょう。ちなみに、春人さんは、今はまだ下級神クラスの実力しかありませんが、地上の人間としてはほぼ最強の化け物クラスで強いです。はっきりと言って、地上に存在していてはいけないレベルの強さを持っています」
「ですが、シャドウの中には私とほぼ同じくらいの力を持ったやつも何人かいますしそれに最近では、アリスだったり私の子供達も強くなってきているのですが、これって大丈夫なんですよね?」
「ええ、大丈夫ですよ。春人さんが現在暮らしている世界が偶々強い者が多かっただけでしょうし、それに春人さんは元々あそこの世界の住人ではなく、地球という違う世界の住人だったのでその世界を渡る際に私が貴方の元々から持っていた力をさらにパワーアップしりたのでそういったのも影響しているのだと思います。アリスちゃんや貴方の子供達のえ〜と、ああ、思い出した。白夜君に春奈ちゃん、それに桜ちゃんの四人についてですが、おそらくアリスちゃんの場合は、春人さんと結婚したことが一番の原因だと思います。そして、子供達三人については、春人さんとアリスちゃんの子供だからでしょうね。元々アリスちゃん自身もかなり強いみたいですし、その二人の遺伝子が合わさったことによって強い子供達が産まれてきたのだと思います」
つまりは、私がアリスや子供達に力を与えたってことか。
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