18話 春人の過去
「今さらだが、ここで話すのもアレだから家に戻ってから話すよ」
すると、ソーラルが。
「おいおい、あんなに期待されておいてそれはないだろ。俺達もお前の昔話しを聞きたいんだがな」
そこまでして私の過去が知りたいのか?
あまり話したくはないんだがなぁ。
「もう、わかったよ。そこまで聞きたいんなら一緒に来れば良よ。ただし、改めて注告するが、あんまり面白くはないし、話の内容にはこっちの世界ではわからない単語もあるからそこだけは注意しろよ」
「わかった」
私達は家着き話し始める。
「私のことを話す前に前の世界の昔のことから始める。そうしなければならない内容もあるからな」
地球の日本の天皇家、日本国憲法が出来るまでは日本の王族や神族と同じ扱いとなっていた。
そんな一族の中に我が望月家は存在し、さらに言うと、天皇一族の中で唯一呪術を扱うことが出来たこともあり我が家は大変重宝されていた。
しかし、西暦863年、時は平安時代、我が望月家は、霊鬼の呪いによって引き起こされた越後地震を止められなかったとして、当時の天皇だった桓武天皇によって、天皇家から追放処分を受けてしまった。
だが、望月家から天皇家から追放されてから様々な事件が起こった。
そりゃあそうなるのも当然だな。なんせ、天皇家を守護していた望月家がいなくなったのだから当然天皇を守る者もいなくなる。
それに気づいた者が、そのことを天皇に話し、天皇家には戻すことはできないが天皇とほぼ同じ権力を与えるという事で交渉が成立し、現在でも日本は、望月家の支配は大きいがこの事を知っているのは国の中でも限られた機関の人物だけだ。
その限られた機関の例としては、警察庁や防衛省などの国家機関の上層部の人間だったり、国の内閣府や天皇家だったりは望月家の指揮下には一応置かれてはいるが、それを知っているのはおそらく首相や国務大臣くらいになる。
そんな越後地震の事件から時が流れ、約1200年(西暦約2060年)後に望月家の本家のとある一室にて、私は産まれた。
「奥様おめでとうございます。元気な男の子ですよ」
「男の子ですか。これだけ元気ならば将来は立派にこの望月家の当主を務めてくれるでしょうか。あなたはどう思いますか?」
「そうだな。この子の妖力量を見てみたが、産まれて間もないにも関わらず、既に私よりも妖力がかなりの量を上回っている。この妖力量ならば歴代当主のなかでも例に見ない当主へとなれるだろうな。だが、この歳でこの妖力量は扱うことが難しい。早いうちから妖力制御訓練をさせなければ妖力が暴走して大変なことになってしまう可能性もある。そうなってしまえば、この子が自分の妖力に耐えきれずに死んでしまうか、もしくは、私達の手で殺すかの二択となってしまう。だから、私達がそうならないようにしっかりと育てていかないといけないな」
「もちろんです。せっかくこの世に産まれてきたこの子を死なせるわけにはいきませんからね」
私が1歳になり言葉を話せるようになり、そして普通に立てるようになった時期から私の妖力量を扱うための妖力制御訓練が始まり、私が2歳になる頃には、私が保有する妖力量をきちんと扱えるようになり望月家の中でも最強レベルの強さを持ったが……私が3歳の時にとある地形破壊未遂事件を起こしたことによって、妖術の使用が一時期的に禁止された。その理由は、私がうっかり妖術を暴走しかけ危うくその周り一帯を灰にするところだったためである。
4歳の頃には、本当の意味で自分の妖力量を扱うことができるようになり、その頃には、私ひとりで任務を与えられるようになった。
そんな、私の最初の任務内容は、妖退治だった。
その妖退治だったが、調査ミスによってその妖が害悪がなかったことがわかったが、その後もなんやかんやとありその妖と契約を結ぶこととなり私の式神となった。
この時、式神となった妖とは、私がエルナント様に(うっかりと)殺されるまで一緒に過ごした。
アイツとあんな最後でなんとも申し訳ない。という気持ちがある。
ああ、せめて、死ぬ少し前になんとかしてでも最後の挨拶くらいはしたかった。
13歳の時に望月家の当主に就任して、当時、歴代の中でも最年少で就任したこともあり望月家の関係者の中では、かなりの噂となった。
16歳に望月家が管理、運営している表向きには存在しない望月家の関係者やどこの勢力にも所属せず、呪術師として、かなりの実力がある子ども達が通う呪術師の専門高校に入学し、その専門高校で妖術師として、様々な任務をこなしたりし、そして私は、呪術師専門高等学校……通称、術専校を卒業した。
そして私が18歳になり高校を卒業した後、そのまま防衛大学校に進学し、卒業後私は、防衛省に特別に三等陸尉として入りそして、いきなりレンジャー課程に上の方から無理矢理参加させられたが、普通にレンジャー課程を合格することができた。伊達に小さい頃から訓練をしてきてないからな。
28歳の頃に一等陸佐に昇進し、特殊作戦群長に就任しておりさらに、防衛省特別情報指令本部総司令官も兼任しておりかなり自衛官生活も充実していた。
だが、31歳の頃に陸上自衛隊を辞め、警察大学校にオールAでキャリア組として入校した。
望月家の権力を少しだけ使ったが、試験に関しては、自力で入った。
警察大学校では、警部補任用科に2週間、所属しており、警察大学校を卒業後は、警部に昇任後、警察庁警備局警備企画課に配属となり何の因果か、その警備企画課の課長が私が小さい頃から姉として慕っていた女性だった。
その女性の名前は、真田澄子。
私は、小さい頃から姉と慕っていたため、澄子姉さんと呼んでいる。
真田家の第36代目当主であり、望月家の一族の中でもかなりの実力を持った人物でもある。
この人は、一応人間ではあるが、もはや人間ではない。
その理由は、長い時を生き、歳は既に500歳は超えて生きているという。
どうして、そんなに長く生きているのかと言うと、元々は普通の人間だったが、この人はかなりの力を身につけてしまい、人間から鬼神へと進化し、あの世とこの世を管理する重要人物の一柱となった。
そして、太平洋戦争にも参加し表向きには知られてはいないが、旧日本軍にも所属していた時期があり、そこでかなりの功績を出し、大佐にまで昇進した人物であった。
確か、唯一澄子姉さんが結婚をした夫が亡くなったと聞いてそれからは全く連絡がつかなくなったからそのせいで澄子姉さんは、てっきり死んでしまったとばかり思っていだんだが。
見た感じ、それはただの勝手な思い違いだったんだな……。
まさかそんな、澄子姉さんが自分が配属となった、警備企画課の課長をしているとは思わなかったな。
「本日より新しくこの特異現象対策係係長となった。望月春人だ。不慣れではあるが、よろしく頼む」
他の人達も挨拶をしてくれた。
「これから特異現象対策係係長として、よろしくお願いします。春人君」
「はい。承知しました。課長」
昼休憩に入り、澄子姉さんと久しぶりに話をした。
「久しぶりだね。春人君。最後に会ったのは、春人君の結婚式以来だっけな。しばらく見てないけど昔とほとんど変わってないよね。呪術で、年齢でも固定しているの?まぁ、それは、ひとまず置いといて、とりあえず元気そうで何よりだよ」
「澄子姉さんこそ、相変わらず元気そうだね」
「そりゃあ、こう見えてもあの世とこの世を管理する鬼神の一柱なんだから。でもまさかここに配属になったのが春人君だとは思わなかったよ」
「え、もしかしてここ最近、澄子姉さんって報告書とかって見てないの?」
「一応は見ているんだけどね。こっちはこっちでいろいろと忙しくてね。新しく特異現象対策係の係長が新しくなるっていうのは知ってはいたんだけど名前までは見てなくて……」
「全く、澄子姉さんは時々こういうところがあるよね。その性格は、いつになったら直るんだか」
「ちょと、私を子ども扱いしないでくれない。一応、春人君よりは、か・な・り!の、年上なんだけれども」
そういうと、澄子姉さんは頬を膨らませた。
そういうところなんだけどなぁ。
でもそれを言ってしまうと、澄子姉さんがさらに怒りかねないからやめておく。
それからしばらくの時が経ち、私と澄子姉さんは様々な仕事を共にしてきた。
そして私は、仕事もしっかりとこなして、階級も警視に昇任し警備企画課長に昇格した。
ちなみに澄子姉さんに至っては、警視正から警視監に昇任し、警備企画課長から警備局長に昇格していた。
その頃私は、望月家の当主としての仕事を本格的にしなくてはならなくなっていた。
当主の仕事の方を本格的にするということはつまりは、警察を辞めなくてはならないという事でもある。
澄子姉さんと一緒に仕事が出来たことはとても楽しかったが、望月家第87代当主である以上、私はその責務は全うしなくてはならない。
そういう訳で私は、辞表を出すべく警備局長(澄子姉さん)のところへと向かった。
「せっかく警視に昇任したばかりだというのに、どうしてまた、警察を辞めようと思ったの?」
「実は……望月家当主としての責務をしっかりと果たしてほしいと他の者達から言われていまして、澄子姉さんと一緒に仕事をするのはかなり楽しかったですが、私も当主の一人として仕事をしっかりとしなくてはならないんです。そういう訳で、警察を辞めようと思い辞表を提出をしに来ました」
「そう……確かに、当主としての責務は全うしなくてはならない。他のところの当主は知らないけれども、望月家の当主だけは、他の一族の当主に比べて、この日本を守るというとても重大な仕事を行う。今思えば春人君は、警察や前職の自衛官と日本を守る仕事に就いて、あまりやっていることは当主の仕事とほぼ変わらないね。でもね、春人君。これだけは、覚えておいてほしいの。これから当主として本格的に取り組むという事は、今まで以上に大変なことになると思う……いや、絶対になる。だけど、春人君が出来ることをやって、それでも春人君が困ったときには、私や他の者達に頼ってね。まぁ、それはそれとして、確かに辞表は受けとりました。今まで警察官として、そして、私の部下として尽くしてくれてありがとうございました」
「こちらこそ、澄子姉さんと一緒に仕事を出来たことは、私にとってとても光栄でした。今までありがとうございました!!」
そうして、私は警備局長室を後にした。
それから2年後、私はとある任務中にある神の手(エレナント様)によって、死亡した。
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