175話 省庁の案内
タイトルが省庁の案内となっていますが、内容は国防省(一部)だけとなりますので、ご了承下さい。
「という訳で、城の内部の案内は以上となります」
ローレンス近衛副団長が言って、城内の案内を終わらせる。そして、現在私は、城内の案内の続きをしてもらい、今その案内が終了したという状況だ。
ちなみに、前回の案内の日から既に2週間が経過している。その間何をしていたのかというと、王国騎士団第3師団から北側の山岳で発生した事件の事後処理等をしていた結果、2週間という時間が経ってしまったのである。
そんな訳で、城の案内が済んだことにより、次は、城下の案内をしてくれることになっている。まあ、ある程度の地図は、頭の中には入っているし、限定的ではあるが、暇なときなんかに、街を見たりしているので、そこまで憶えるのに苦労をすることはないだろう。
そんな訳で、私達は今、城下の方へとやって来ていた。
「まず、アルマーの城下について説明をさせていただきます。アルマーの城下にはいくつかの区分が存在しております。まず、アルマー城に1番近い区分である、各省庁が建ち並ぶ官公庁区域。次に各国の大使館が駐在する大使館区域。次に城内の高官や各省庁の高官・他国の賓客などが宿泊するための高級宿がある貴族・上級宿泊区域。次にレストランなどの飲食店やその他のお店が建ち並ぶ商業区域。次に一般人が住む住宅地や一般宿、露店などがある一般区域。最後に、王都を囲む城壁に1番近く、各ギルド・冒険者向けの宿屋・治安維持組織の施設などが点在する多目的地区の6つの地区が現在この王都に存在しています」
「なるほど。ところで、1番大切なことを聞き忘れていたのですが、この王都の名称は何と言うのですか?」
「………」
私がローレンス近衛副団長にそう質問をすると。少し考え込むような仕草を見せながら黙り込んだ。そして、考えるのを終えたのか、口を開いた。
「そう言えば、この王都には、まだ名称が存在していませんね。そもそもこの国で人が住んでいる所かは、この王都ぐらいですしね。まあ、陛下は、何年かしたら、国の東西南北に強固な城塞都市を建造する計画を立ててるようですが、実現はまだまだ先のようですし、何もなければこのまましばらくの間は、この王都には名称がないままだと思いますよ」
この王都だけでもかなりの軍事力があるというのに、さらに軍事力を強化しようとしているのか。でも、前回調べたら、この王都の外に見えないだけで、国防空軍などの基地が何ヶ所かあるというのは判明しているが、どうやらこの2人はそのことを聞かされていない感じがするな。まあ、それだけ機密性が高いということなんだろうけど。
「それでは、まず最初にご案内するのは、この国の国防の要にして、国防軍の本部である、国防省へ向かいます」
国防省へと移動をし、一旦国防省の敷地内に入る前で、立ち止まる。
その門の右端には、国防省と大きく書かれた看板が壁に設置されていた。
「それでは、国防省の敷地内に入るためには、この国の身分証を守衛に見せなければなりません。スターズの身分証は、あくまでも他国の身分証となるため、他の各省庁でも同様ですが、どうしてもスターズの身分証で入らなければならない場合は、城の一定以上の権限のある方が同伴でなければ、敷地内に入ることは出来ません。まあ、とりあえず敷地内に入ってしまいましょうか」
アルシェ師団長からそんな説明を受けた後、彼女が先に守衛に身分証を見せて中に入ってから、次に私が同じようにして中に入った。ちなみに、ローレンス近衛副団長は、私達よりも先に中に入り、私を何処まで案内して良いかの確認と許可をもらいに行っており、私達は、彼を敷地内に入ってすぐの場所で待つことになっている。
そして、待つこと20分。彼が建物の方から走って戻って来た。
「待たせてしまい申し訳ありません。国家機密にも関わる場所がある所は、お見せ出来ない場所もありますが、ほとんどの場所は、案内することができます。それにより、あの建物の入り口にて、担当者が待機していますので、この国防省の案内は、その方
が行います。それと、こちらを首に下げて下さい」
「分かりました」
いくら『暗黒群』が国の上位部署であり、私がその副隊長補佐官とはいえ、国家機密のところを簡単に見せることが出来ないというのは、ある意味当然とも言えるだろう。
そう考えながら、渡された特別入館証を首に下げる。
そして、建物の入り口の自動ドアを通過すると、その先に制服を来た男が立っており、その左腕には、国防省広報官と書かれた腕章が付けられていた。
「初めまして。ようこそ国防省へ!や本日案内役を務めさせていただく、少尉の坂本悠太であります!よろしくお願いします」
「こちらこそ、わざわざ時間を割いて下さりありがとうございます。本日は、よろしくお願いします」
坂本少尉に対して、私はそうお礼をする。
「それでは、まずはこの建物の中の方を案内させていただきます。と、その前にこの建物について説明をさせていただきます。まず皆さんがいるこの建物は、国防省の本庁舎となります。この本庁舎は、地上20階、地下10階になっており、この建物ではほぼすべてのことが出来るようになっています」
「ほぼすべてのこと……ですか?」
ほぼすべてという言葉の意味を理解出来なかった私は、坂本少尉にそう質問をする。
「この建物内は、空間魔法によって、外観よりも広くなっています。まあ、口頭で説明をするよりも実際に見てもらった方が早いですし、この場にずっといても仕方ないので移動しましょか。では、私に付いて来てください」
「分かりました」
坂本少尉のあとを付いて歩く。
「まず1階部分について説明します。現在いるエントランスでは、ここで国防省職員証または特別入館証があるかどうかを確認し、ある場合はそのまま通し、ない場合はこの先な入ることが出来ないという仕組みです。今回の場合は、既に首に特別入館証を下げているので、このまま中に入ります」
警備の者に特別入館証を見せてから中へと入る。ちなみに、この警備員も国防省所属の警備兵であるため、軽装備ではあるが、銃や警棒などの武装はしている。
「此処から上の階や下の階に行けるエレベーターや階段などがあり、その他の部屋などにも行くことができます。そしてこの階には、守衛室や業務課のオフィスや休憩室があります。まず、守衛室について説明をします。守衛室に所属する警備兵は、この庁舎内の警備や敷地内の巡回警備などが主な仕事内容となります。それと、2階には、守衛室とは違い、警務課と警務司令課が存在しており、警務課は、国防省職員が犯罪に関与した場合の取り調べや調書の作成などを行っており、警務司令課は、全国にいる警務官に対して、司令を行う部署になります。では、時間もあまりないですし、そろそろ次の階に移動しましょうか」
坂本少尉にそう言われて、2階の方へと移動する。こんな感じで順番に案内をしてもらい、3時間で案内出来るすべての箇所の国防省の本庁舎内の案内が終わった。
そして私達は再び、エントランスへと戻って来ていた。
「以上で、本庁舎内の案内は以上となります。何か質問等はありますでしょうか?」
「はい。私が質問をしてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
坂本少尉のそんな質問に対して、手を挙げたのは、アルシェ師団長だった。そんな彼女が手を挙げると、坂本少尉は、一言だけそう言った。
「何故、病院を7〜8階まで設置したのでしょうか?普通であれば、機密情報の防衛のために、別な建物に設置するべきですし、何よりそこまで行くのに時間が少し掛かると思うのですが……」
アルシェ師団長の言う通り、普通本庁舎内の7〜8階なんてところに病院を設置するのは、あり得ないことだ。
「ああ、それはですね。建物を出来るだけ少なくして、防衛装置などの設置場所を多くするためなんです」
つまり、防衛用の兵器を配置する場所を多くするために、建物を必要最小限に抑えて、迎撃・攻撃兵器を重点的に配備したということだろう。
その後、それらの兵器について実際に見てから説明を受け、国防省の案内をすべて終了した。
「本日は、国防省へお越し下さりありがとうございました。こちらはお越しくださった方へお配りしているボールペンとメモ帳です」
そう言われて渡されたのは、国防省と印字された0.3の黒のボールペン一本と国防省のエンブレムが印刷されている手のひらサイズのメモ帳を1つづつ渡された。
こうして、国防省の案内が終わった後、その日は城へと戻り、その後、各省庁を約2週間に渡り案内をしてもらった。
「この約2週間お疲れ様でした。これで各省庁の案内は以上となります」
ローレンス近衛副団長がそう告げる。
こうして各省庁を見て回って、どの省庁も独特ではあったが、やはり一番印象に残ったのは、国防省だろう。あそこだけは、他の省庁よりもかなり細くそして規模が大きかった。流石は国の最重要施設のひとつに名を連ねているだけはあるなと思った。
「私達はこの後仕事がありますので、城の方に戻りますが、インディ中佐は如何なさいますか?」
アルシェ師団長が私にそう尋ねる。
「そうですねぇ。まだ街の方を見て回れていないので、少し見て回ってから帰ろうかと思います」
「では、これで私達は失礼しますね」
そうして私は、ローレンス近衛副団長とアルシェ師団長と別れた後、街を散策して城へ戻り、今までの分の仕事を片付けるのであった。
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