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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第18章 漆身呑炭
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171話 親友の墓参り

今回の話は、前回の話の中で、白夜達がみんなにカストルの話している間の春人の話です

 城での仕事が落ち着きを見せ、そしてスターズの仕事もすべて片付けてあるので、今日は久しぶりの休日だ。だが今日は、私にとってこの日になると、あの日のことを鮮明に思い出す。何なら、今でもその感覚が私の手に残っている。大切な親友をこの手で撃ち殺してしまったという感覚が。

 そして今日は、その親友だったカストル……レオニスの命日である。


「あの日から今日で丁度100年が経つんだな……」


 私は、それが少しだけ実感が湧かなかった。なんせ、あいつと過ごした日々が昨日のことのように思い出せるからだ。だからこそ、レオニスが死んでからもう100年が経ってしまったこのに実感が湧かないのだ。


「さて、そろそろ墓参りにでも行くか。【ゲート】」


 私は、その【ゲート】をスターズの墓地へと直接繋げ、レオニスの遺体が眠る墓までは歩いて行く。

もちろん花を持ってだ。まあ、あいつの場合は、花よりも酒を持って来いって言いそうだがな。

 そんな訳で、レオニスの遺体が眠る墓の前まで着くと、その墓には既に誰か来ているようで、花や菓子などが供えられていた。

 レオニスの妻であるポラリスは、しばらくの間任務で本部を離れているので、ここ最近で供えられる可能性は低い。なんせ、この供えられた花は、明らかに最近供えられたものだった。だからおそらく、これらを供えたのは、あの2人の娘だろう。そういえば、あの()に最後に会ったのは、レオニスの葬式の時だったな。あの時はまだ5歳と幼かったが、今ではもう100歳を超えているとはな。少し感慨深いものがあるな。まあ、成人した姿を見ていないから何とも言えないが、あいつだったら絶対に娘が大人になった姿を見たかっただろうな……。

 そして、私もレオニスの遺体が眠る墓に花を供えた後、あいつが好きだった菓子を供えて、手を合わせる。

 

「なあ、レオニス。あれからもう100年が経ってしまった。私はまだ、あの時の行動が正しかったのか分からないときがある。お前にとっては、あれで良かったのかも知れんが、もう少し私達のことも考えてほしかったよ……【ストレージ】」


 私はレオニスに対して、そう愚痴をこぼす。そして【ストレージ】の中から、レオニスと私の2人でよく呑んでいた酒を取り出して、一升瓶(いっしょうびん)のフタを開けて、更に【ストレージ】の中から取り出したお猪口(ちょこ)に私が呑む分を注いだ後、余った酒はすべて、レオニスの墓石へと上からかけ流す。


「今のは、あくまでも私の愚痴だから聞き流してくれ。今日此処に来たのは、お前に伝えたいことが会ったからだ。まずこの2年間来れなくてすまなかった。2年前にアリスと娘のひとりの桜がドランクによって殺されて此処に来る心の余裕が無かったんだ。それでここからが本題なんだけどさ、実は今、婚約者が出来たんだだよ。まあ、何言ってるのか分からないと思うんだけどさ。更に言うと、その人数が9人もいるなんて信じらんねぇよ。もちろん今でもアリスは大切な妻だ。だけど、あの子達も私の中では既に大切な存在になってしまった。最近では、『あの計画』を忘れてしまいそうになる。だけど、またアリスや桜と一緒に過ごしたい。何なら更に増えた家族と一緒に暮らしたいとさえ思ってしまうんだ」


 レオニスにそんなことを言う。本当は自分自身でも分かっている。『あの計画』自体、ウルメリア事件で使用されたレベルの禁術指定されているものだ。それを使用することは、元とは言え、望月家当主として決っしてやってはいけないことだ。だが、やっぱり私は諦めたくはないのだ。

 ん?レオニスはその計画に組み込まなくてもいいのかって?それは不可能だ。なんせ私はあのとき、レオニスの魂を転生できるように逝かせたのだ。だが、言い方はあれだが、あの2人の魂はこの世界に留まり続けている。本来、魂が現世に留まり続けるのはかなりマズイのだが、問題にならないように私が調整している。これ自体は、禁術には指定されていないが、グレーゾーンであることには変わりはない。


「だけど、お前ならこの考えに反対はするだろうけど、気持ちだけは分かってくれるよな?」


 私は、返ってくるはずのない返事を聞きたいのか、そんな風に言ってしまう。


「まあ、せっかく此処に来たのに暗い話をしてもお前はつまらなそうにしそうだから、そろそろ話題を変えるか。まず、何から話そうか……そうだ!私がアルマー王国って国を建国してそこの国王になった話でもしようか。ことの経緯は───」


 そうして、その間も墓の前で話を続けた。


「てな訳で、今は案外楽しくやってるよ。だから安心して輪廻転生をすると良い。それじゃあ、私はいつも通りあの場所に行くよ。またな、レオニス。【ゲート】」


 私は、レオニスの墓に向かって手を振りながらあの場所へと【ゲート】を開き、そのまま【ゲート】を潜り抜けてあの場所へと向かった。

 【ゲート】を潜り抜けると、一面に高原が広がっていた。そう、この場所は、レオニスが死んだ場所であるコレット大森林の中にあるコレット高原である。

 そしてとある場所で、私は足を止める。その足を止めた場所には、一つの十字架が立てられていた。そう、その場所こそ、レオニスが息を引き取った場所である。

 

「この場所は、あの時の景色のままだな。まあ、変わらないように裏で手を回しているのは、私なんだけどもさ」


 実は、このコレット大森林の開発を、国は何度か行おうとしていたのだが、私が裏で止めているのだ。何故なら此処は、レオニスが死んだ場所であるため、どうしても残しておきたかったのだ。

 何故そんなことが出来るのかって?確かに他の国ならば個人的な願いであるため、少し言い難いことではあるが、この国に関しては少し違って、この国はスターズの影響力が他の国よりも強く、特に私の影響力がかなり強い。その理由は、以前この国が滅亡の危機に瀕していたときに助けたことがあったからだ。そこから私へ恩義を返そうと、私の言うことは、この国の王族は素直に聞いてくれるって訳だ。

 

「さて、墓の方でも話したからある程度は省くけども、お前が死んだ後からも色々と大変だったんだからな。まあ、そんなことはどうでも良いか。どうせ私の声なんて届いてないだろうけども、そろそろ新しい転生先に転生していてもおかしくない頃だろう。どうか、新しい転生先では、幸多からんことを願うよ」


 私は、上空を見上げながらそう言った後、一瞬だけ十字架が刺さっている地面を見る。そしてすぐに【ゲート】を発動させて、自室のドアの前辺りに繋げる。そして【ゲート】を閉じて、部屋の中に入ろうとドアノブに手を掛けると、部屋の中から話し声が聞こえる。声的に白夜達だろう。

 その話を少しだけ聴いていると、丁度レオニスの話をしていた。そこで私は、姿を消すのと同時に気配も察知されないようにして、白夜と春奈の後ろへと転移した。

 そしてタイミングの良いところで、気配だけを悟られない状態にして、姿を表す。すると、白夜と春奈は、後ろにいるのにも関わらず、私の存在に気が付いていなかったが、他のみんなには私の姿が見えているため、私の姿を見た瞬間、まるで幽霊を見たかのような反応をされた。……いやいや、私の婚約者だよね君達?そんな反応をされると、流石の私でも少し傷付くんだけど!?

 そして、みんなのそんな表情に後ろに何かいることに気が付いた白夜と春奈が同時に私の方を見る。

 すると、かなり驚いた表情を見せた。うん、やっぱり私に許可なくレオニスの件について話したことについて後でじっくりと聞こうと、心の中で密かに思うのだった。

『良かった』『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。投稿日時は不定期となりますが、どうぞこれからもよろしくお願いします。

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