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異世界転生術師  作者: 青山春彦
特別編1
166/176

166 閑話 スターズのクリスマスパーティー{中編(現場サイド)}

 クリスマスが関係ない話になっていますが、そろそろ後もう少しでクリスマス回?は終わりますので、もう少しだけお付き合い下さるとありがたいです。

 神聖歴3254年12月24日18時34分レーン海域━━━


 スターズでクリスマスパーティーが始まって少し経った頃、レーン海域(スターズとアース王国との領海の境界)では、警備艇「やまぎく」がいつも通りの巡回監視を行っていた。

 警備艇とは言っても、その外装は、駆逐艦と変わらないものであり、更には近代化改修をしているので、本来のものから原型を殆ど留めていない。

 

「スターズは、今頃楽しくパーティーですかね」


 「やまぎく」の首席航海士であるカデン警部がそう呟く。


「だろうな。だが、気を抜くことは許されない。なんせ、支部から出航前に通達があったように、巡回監視の際に『フェアラート』の艦艇が出てくる可能性もあるからな」


 ガデンに反応したのは、この「やまぎく」艦長のライサンダー警視正だった。


「それに、我々の任務は、不審船がいないかの監視だ。それに少し特定の所属が増えたぐらい気にすることでもないだろ。まあ、このまま何もないのが一番なんだがな」


 ライサンダーがフラグにしか聞こえない発言をする。


「艦長。レーダーに不審船を確認。反応の大きさからして、漁船ではないのは間違いありません」

「距離は?」

「310前方です」

 

 レーダーを見ながら、船務長のプレサイズ警部がライサンダーにそう報告する。


「なら、アース王国の軍艦か?」

「その可能性も完全には否定は出来ませんが、その可能性は限りなく低いと思われます」


 ライサンダーの言葉をプレサイズが可能性は、あるもののほぼ無いと否定する。


「一応、その根拠を聞いても良いか?」

「はい。まず第一に、巡航速度が速いという点です。レーダーから対象船の平均巡航速度は、約16ノット。それに対して、アース王国の軍艦の平均巡航速度は、約5ノットです。これは、アース王国を含めた船舶の殆どが帆船(はんせん)だというのが理由です。そのため、レーダーに表示されているのが、エンジンを搭載しているものだということが分かります。二点目は、艦隊陣形です。レーダーに表示されている艦隊は、綺麗な形で組まれています。アース王国を含むこの辺りの海洋国は、艦隊を組むこと自体がほとんどありません。あったとしてもこのような艦隊陣形を組むことはなく、この陣形を組むのはスターズや『フェアラート』ぐらいでしょう。3点目は、対象船も我々と同じくレーダーで索敵を行っているという点です。スターズと我々沿岸警備隊、そして『フェアラート』以外がレーダーを照射する機械があるわけがありません。以上の三点から、私は対象船が『フェアラート』の艦隊だと推測します」


 ライサンダーが顎を手に置き、プレサイズの言葉から、状況的にもあり得る話だったし、警戒するに越したことはないと判断した。


「確かに、お前の言う通りだとすれば、状況的に『フェアラート』の艦隊の可能性が高いな。だが一応、沿岸保安法に(のっと)り、警告だけは行わなければならんな」

「待って下さい!相手は、武装艦隊なんですよ!?そんな相手に、沿岸警備隊で一番武装が許可されている警備艇とはいえ、我々はあくまでも警察機関ですので、武装はVLSや魚雷、Mk 45 5インチ砲 、CIWS、SAMぐらいしか装備していません!」


※VLSとは、Vertical Launch SystemまたはVertical Launching Systemの略称であり、潜水艦を含む艦艇に使用されるミサイル発射システム。日本語では、垂直発射システムまたは垂直発射装置と訳される。発射装置には、ある程度の斜角度が付いている場合もあり、狭義(きょうぎ)の「垂直」ではない機種もある。「セル」と呼ばれる、発射筒を兼ねた保管容器を連ねて構成されている。ミサイルは、弾頭を保管状態から直接、垂直方向にむけて発射され、空中で向きを変えて目標に向かう仕組み。弾薬庫と1基の発射機で構成されたミサイル発射装置で発生する、再装填や、発射機を目標へ旋回させる時間を削減する目的で開発された。


「それぐらいあれば、何隻かは無力化できるだろ」


 そう苦言を呈した砲雷長のネット警部に対して、ライサンダーがそう楽観的に話した。

 ライサンダーが言う通り、艦艇が一隻もしくは二隻程度ならば対応できていたかもしれない。だが、ネットが言う通り、この装備でしかも「やまぎく」一隻だけで足止めすることは、ほぼほぼ不可能に近いのもまた事実なのだ。


「警告をしに行くと同時に、攻撃に備えるぞ。また、艦隊ということは、潜水艦もいる可能性があるな。 対空、対水上、対潜戦闘用意」

「対空、対水上、対潜戦闘用意!これは演習ではない!繰り返す、これは演習ではない!」


 艦内に警報音が鳴り響きながら、ネットの声が同時に艦内に響き渡る。


「両舷前進微速」

「両舷前進微速」


 ライサンダーの指示の後にガデンがそう復唱をする。

 ライサンダーが無線機を手に取り、連絡をする。


「こちら警備艇「やまぎく」艦長ライサンダーより通信指令室、応答を願う」

『こちら通信指令室より警備艇「やまぎく」艦長。』


 ライサンダーが通信指令室へ連絡をすると、通信指令員のひとりが、ライサンダーの無線を受け取る。


「現在、レーン海域にて、探知レーダーで『フェアラート』と思わしき艦隊を捕捉。このままでは、アース王国領海に侵入する可能性あり。よって、これよりレーン海域まで急行し、領海侵入の阻止を試みる」

『警備艇一隻では危険すぎます。レーン海域の近くに警戒監視中の警備艇「ひなぎく」がいるため、最低でも「ひなぎく」と合流してから行動せよ』

「こちら警備艇「やまぎく」了解」


 この無線と同時に「やまぎく」に対応していた通信司令員とは、また違う通信司令員が「ひなぎく」へと無線を入れる。


「こちら通信指令室より警備艇「ひなぎく」応答を願う」

『こちら警備艇「ひなぎく」』

「艦長へ繋いでもらいたい」

『了解』


 少しの間が空く。


『こちら警備艇「ひなぎく」艦長マルクス』

「現在、警備艇「やまぎく」がレーダーにて、『フェアラート』と思われる艦隊をレーン海域にて捕捉。よって、警備艇「ひなぎく」には、警備艇「やまぎく」の応援を願う」

『こちら「ひなぎく」了解。至急レーン海域へ急行する』

「こちら通信指令室了解。くれぐれも気を付けるよう」


 一方、通信指令室では、先程の『フェアラート』と思わしき艦隊が捕捉されたという情報によって、通信指令室内では、ヒソヒソといった感じで話している声が聞こえる。

 すると、ひとりの通信指令員が椅子から立ち上がる。その通信指令員に全員の視線が向けられる。


「室長。警備艇「ひなぎく」以外の付近にいる巡視船も向わせるべきかと」

「……巡視船は警備艇よりも武装が少なく危険だ。だが、あの警備艇二隻だけでは危険なのも事実。よって、支部に停泊中の警備艇を含めた全武装艇は、レーン海域に向かえ。また警備艇は、警備艇「やまぎく」「ひなぎく」の両船の援護に向かい、巡視船は、警備艇の援護を行うものとする。これに対して、意見のある者はいるか?」


 通信指令員に室長と呼ばれていた男性……通信指令室室長のアーロン警視正が通信指令室内にいる通信指令員の全員に聞く。だが、反対の者は一人もいなかった。

 アーロンがデスクに設置されている幾つかの色のボタンのうち、さらに2つある赤いボタンのうち左側のボタンを押すと、支部の敷地内にけたたましい警報音が鳴り響く。そして、アーロンがデスクに設置されている卓上マイクに顔を近付ける。


「支部に停泊中のすべての警備艇および巡視船に告ぐ!現在、レーン海域にて『フェアラート』と思わしき艦隊を探知された。その対応に警備艇「やまぎく」「ひなぎく」が向かった。だが、戦闘になったことを想定し、全警備艇および巡視船はレーン海域へ急行し、警備艇は二隻の援護を行い、巡視船は警備艇の援護へ回れ。繰り返す。現在、レーン海域にて『フェアラート』と思わしき艦隊が探知された。その対応に警備艇「やまぎく」「ひなぎく」が向かった。だが、戦闘になったことを想定し、全警備艇および巡視船はレーン海域へ急行し、警備艇は二隻の援護を行い、巡視船は警備艇の援護へ回れ。以上」


 その指示とともに、沿岸警備隊隊員は、駆け足で装備を整えながら出動準備を整える。


 そして話は再び、警備艇「やまぎく」に戻る。


「艦長。まもなく目標の射程範囲内に突入します」

「ああ。警告表示用意」

「警告表示用意」


 ガデンがライサンダーにそう報告すると、それとほぼ同時に、ライサンダーは、プレサイズにそう指示を出す。


「両舷前進原速」

「両舷前進原速」


 「やまぎく」の速度を上げ、レーン海域まで向かう。

 それから数分が経過すると、レーン海域に到着した。


「艦影視認!当初の予想通り『フェアラート』艦隊です!!」

「うむ、取り舵いっぱい!右舷が艦隊報告に向いたのを確認した後、警告表示!」

「取り舵いっぱい!警告表示!」


 その指示の後、「やまぎく」が進路を左にし、右舷側の艦橋付近から横長に設置されている電光掲示板に『これより先、アース王国領海につき、速やかなる進路の変更を求む』という内容が警告表示された。「やまぎく」と艦隊の距離から考えて、この警告表示を読むことは可能だ。

 すると、艦隊の先頭にいた駆逐艦級の艦隊が、「やまぎく」に対して、主砲を一発発射した。


「『フェアラート』艦隊の先頭の駆逐艦より主砲一発発射!」


その発射されたのと同時に、警備艇「やまぎく」の船内に警報音が鳴り響く。


「後進一杯!急げ!!」

「後進一杯!急げ!!」


 「やまぎく」が、発射された攻撃を回避するために全力でバックする。

 そして、敵の主砲弾が「やまぎく」の前方の海上に着弾する。


「主砲弾回避成功!」

「艦長。相手は攻撃をして来ました。攻撃要件は満たしているものだと判断します」

「攻撃要件は、確かに満たしている。……『フェアラート』艦隊を現時刻をもって、(エネミー)と判断する。テフレは、至急現場を通信司令室へ報告。取り舵一杯!艦隊から距離を取れ!」

「取り舵一杯!」


 首席通信士のテフレ警部は、ライサンダーの指示で、通信司令室に現状の報告をする。また、余談だが、テフレ警部は、この警備艇でも数少ない女性隊員だ。

 そして、艦隊に背を向ける状態になりながらも、艦隊から距離を取ろうと動き出す。

 せめて主砲の射程範囲から外れようと動き出すが、そんな「やまぎく」になんと、敵艦隊から無線が入った。


「艦長!!敵艦隊からの無線回線接続許可をモールスにて、求めています!」

「どういうことだ!?とりあえず、進路そのまま。無線の回線接続を許可しろ」

「了解」


 他の通信士から無線を受け取る。


「こちら国際警察沿岸警備隊アース支部所属警備艇「やまぎく」応答願う」

『こちらは『フェアラート』第8艦隊群旗艦空母「プテラノドン」である。そちらの艦長との直接対談を申し込みたい』

 

 その敵の言葉に全員が驚く。まさか敵側から……それも倍以上の戦力を持っている相手からなのだ。そういった反応になるのも至極当然である。

 返答には困ったものの、ここで無反応だと、攻撃されてしまう可能性もあるので、直ぐに返答したいが、内容が内容だけに、直ぐに答えを出せないのもまた、事実なのだ。


「こちら警備艇「やまぎく」より『フェアラート』第8艦隊群旗艦「プテラノドン」へ。対談の申し込みに関しては、上と掛け合う必要があるため、少しの時間をもらいたい」

『承知した。但し、制限時間は現時刻から20分以内とする。では、良い返答を期待する』


 そう言い残して、無線回線遮断した。


「テフレ。至急、通信指令室に連絡しろ」

「は、はい!!至急!至急!警備艇「やまぎく」より通信司令室、応答を願う!」

『こちら通信司令室より警備艇「やまぎく」どうぞ』

「たった今、『フェアラート』第8艦隊群の駆逐艦から主砲による攻撃を受けた。また、その『フェアラート』第8艦隊群旗艦空母「プテラノドン」から対談の申し込みを無線より直接あった。そのため、指示を仰ぎたい。更に回答には制限時間があり、その回答時間までの残り時間は、18分46秒である。これは、こちらへの攻撃までの時間だと思われる」

『了解。至急、こちらで対処を考えますので、少々お待ちください』

「了解」


 通信指令室との無線通信を終了する。

 そして、『フェアラート』艦隊との睨み合いがしばらくの間続いた。

 『フェアラート』艦隊との睨み合いがしばらく続いた後、通信指令室から無線が入る。恐らく返答の通信だろう。


『こちら通信指令室より警備艇「やまぎく」に通達。上層部の判断により、『フェアラート』第8艦隊群旗艦空母「プテラノドン」からの対談の申し込みを受諾するものとする』

「こちら警備艇「やまぎく」より通信指令室。了解」


 通信指令室との通信を終了する。


「残り時間は、3分17秒……なんとかギリギリだった。結果も相手側にとっては良い返事になったから良いか。テフレ、『フェアラート』第8艦隊群旗艦空母「プテラノドン」からの対談の申し込みを受諾すると、送ってくれ」

「了解」


 無線回線が遮断されてる状態なので、一般回線にて、|ー・ーー ・ー ーー・・ー ・ー・ーー ・ー ・ーー ー・・ー ー・ー・・ ・・・ー ーー ーー・ ーー・・ ーー・ーー ・・・ ・ーー・ー ・・ー・・ ー・ ・ー ーーー・・ ・ー・・ ・ー・ー・ ー・ ・ー ー・ー・・ ・ー・・ ・ー・ー・ ーー・・ ・・ーー・ ・ー・ーー ・・・ ・・ーー ・・ー・・ ・ー・ー・ ー・ ・ー ー・ ・ー・ー・ ・・ーー ー・・ー・ ・・ー ーー・ー・ ーーーー ・・ー・ー ・ーーー ーー・ー・ ・・ ー・ ・・ ・・・ー ーーー・ー ー・ーー・《ケイビテイヤマギクヨリフェアラートダイ8カンタイキカンプテラノドン。タイダンノモウシコミヲジュダクスル》という内容を送る。すると、無線回線が復旧し、直接話せる状態へとなった。


『対談の受諾に感謝する。対談をするに従って、我が旗艦である空母「プテラノドン」で対談を行いたい。ただし、こちらへ乗艦を許可するのは、一名のみとする』

「了解した。では、艦長である私が向かう。至急準備を行うため、しばし待たれよ」

『了解』


 そして通信が終了した。


「ヘリの発艦準備を急げ」

「敵艦に艦長一人で乗り込むなんて無茶です!」


 副艦長であるコモンズ警視が、ライサンダーに向かってそう言い放つ。


「こんな危険なことを他の部下にやらせる訳にはいかん。それにもしものことがあれば、コモンズ警視。君に指揮権を移譲する。俺のことは気にせずに攻撃等を行え」

「艦長。ヘリの発艦準備が整いました」

「ご苦労」


 コモンズにそう言い残すと、ヘリの発艦準備が整ったことを報告しに来た船員と共にライサンダーは、艦橋を出た。

 

「それではまるで死にに行くような言い方ではないですか……」


 コモンズは、そう呟いた後に、ポケットに仕舞ってあった鍵を手に取り、ライサンダーの跡を追って、艦橋を出る。


「艦長!」


 ライサンダーを追いかけたコモンズは、ライサンダーを見つけると、そう呼び止める。


「どうした?」

「着いて来てください」


 有無を言わせない声色と瞳で、ライサンダーに対して、自分についてくるように言った。

 そして、コモンズが向かった場所は、艦内にある武器保管庫だった。その中に入り、その保管庫の中にある施錠された保管ロッカーの鍵を持っていた鍵で開錠すると、中からベレッタ90-Towを取り出す。そして、保管ロッカーの鍵を施錠すると同時に、奥にあった防弾ベストを手に取ると、ライサンダーのところへと戻って来た。


「念のためです。防弾ベストは、着用してても問題ありません。また銃は、身体検査でもバレないよう装備をお願いします。これが向かうための私からの条件です」

「ああ、分かった」

「着用手伝います」


 上着を脱ぎ、防弾ベストと身体検査でもバレない場所に拳銃を装備した後、上着を再び着用する。

 ライサンダーとコモンズは、飛行甲板まで移動する。


「艦長!どうかお気を付けて!」

「俺がいない間、この船のことはお前に任せる!」


 そう言うと、お互いに敬礼をし、ライサンダーはヘリへと搭乗する。そして、飛行甲板からヘリが発艦すると、敵艦隊旗艦の「プテラノドン」へと向かって飛んで行った。

 そのヘリが、飛行甲板上にいる誘導員の誘導に従い、敵艦隊旗艦「プテラノドン」に着艦する。そして、ヘリからライサンダーが降りると、空母の艦橋付近から数人が向かって来る。ライサンダーも多少の警戒をしつつその人物らに近づく。


「国際警察沿岸警備隊アース支部所属警備艇「やまぎく」艦長ですね?」

「ええ。国際警察沿岸警備隊アース支部所属警備艇「やまぎく」艦長警視正のライサンダーです。そういう貴方は?」

「失礼。私は、この『フェアラート』第8艦隊群旗艦空母「プテラノドン」艦長のピアンと申します。艦内にて、群司令がお待ちになっております」


 ライサンダーは、プテラノドンのピアン艦長の指示に従い、後ろを着いて行く。更にその後ろに、ピアンと一緒にいた者達が、まるで監視するかのように着いて行く。

 そして、少し歩いた後、ドアのプレートに貴賓室と書かれた部屋のドアをピアスがコンコンコンとノックをして、部屋の中へ入った。


「失礼します。国際警察沿岸警備隊アース支部所属警備艇「やまぎく」艦長のライサンダー警視正をお連れ致しました」

「ご苦労。中に入れてくれ」

「は。では、ライサンダー警視正。中へお入りください」


 ライサンダーは、ピアンのその指示で、貴賓室の中へと入る。


「失礼します。国際警察沿岸警備隊アース支部所属警備艇「やまぎく」艦長警視正のライサンダーと申します」


 制帽を脱帽し、そう挨拶をする。


「自己紹介、感謝します。その場で立ったままというのもなんですから、どうぞこちらの椅子へお掛けください」


 艦隊群司令が、ライサンダーに対して、自分の正面にある椅子に座るように促す。


「では、失礼します」


 ライサンダーは、そう言って、群司令の正面にある椅子に腰掛けた。


「では、私の方も自己紹介といきましょうか。既にご存知だと思いますが、私はこの『フェアラート』第8艦隊群群司令のサーモと申します。それでは、対談を始めましょう」

「その前に、対談を何故、この艦で行う必要が?直接でなくとも無線で済む内容もあったでしょう」

「無線ですと、その内容が傍受される可能性もあったからです。また、この艦で行う理由は、万が一何かあった場合に迅速な対応が可能だからです」

「なるほど。分かりました」

「では、話を戻しましょう。この対談において、確認をしたいことがいくつかあるのですがよろしいでしょうか?」

「質問にはお答えしましょう。ですが、領海侵犯を犯そうとしたそちら側に電光掲示板で警告表示を行った際のそちら側からの主砲による攻撃に対する正式な謝罪を要請したい」


 ここに来て、まさか立場が下の筈のライサンダーからそのような言葉が出るとは予想していなかったのか、驚きはした。


「その正式な謝罪に関しては、質問の答えによって変わります」

「謝罪をもらえるのでしたらお答え致します」

「では、質問をしますが、国際警察沿岸警備隊というのは、スターズの傘下組織ですか?」

「いいえ、違います。我々沿岸警備隊は、国際警察の部署のひとつであり、その国際警察は、アルマー王国に本部を置いているものの、国際警察は、西方諸国同盟における国際司法警察機関となり、ほぼ独立した組織となります」

「なるほど。どうやら、我々の勘違いだったようだ」

「予想はできますが、その勘違いについてお聞きしても?」

「ああ。我々は最初、スターズの武装船だと思っていたのだ。たが、今の話を聞いて、スターズの五星使徒(ペンタグラム)第二席のシリウス少将が関わっていることは間違いなさそうだが、スターズとは、関わりのない組織に対して攻撃を行ったことに関しては、この『フェアラート』第8艦隊群群司令として、国際警察沿岸警備隊アース支部所属警備艇「やまぎく」に対して、正式に謝罪する」


 そう言ってサーモが頭を下げて謝罪した。そして、その様子を見ていたビアンが少し動揺する。


「謝罪は受け取りました。ですので、頭をお上げください」

「ああ」

「では、対談に移りましょう」

「そうだな。我々が国際警察沿岸警備隊に求めることは、たった一つ。我々の任務の妨害をしないことです。これを守ってくだされば、貴方達と敵対しない事をお約束します」

「そうですね。我々としても、貴方々と敵対したくはありません。ですが、我々の人は、アース王国領海内の安全を守る事です───失礼」


 対談の最中に、ライサンダーのスマホが鳴る。知らない番号からだったが、とりあえず出ることにし、一言そう言った後に電話に出る。


「はい。ライサンダーです」

『国際警察沿岸警備隊統括本部警備局長のスレインです』

「ッ!?」


 驚くのも無理はないだろう。なんせ、統括本部の警備局長が、警備艇の艦長に直接電話をするということ事態がありえないことだからだ。


「いったい何のご用件でしょうか?」

『時間切れです。交渉を断念し、速やかに警備艇へ戻るよう命じます』

「もう少し待ってはいただけませんか!」

『許可出来ません。それに、既に統括本部の方から巡洋警備艇2隻と普通警備艇を3隻派遣しました』

「本気でやるおつもりですか……」

『本気ですよ。それに、スターズの航空部隊に連絡をし、スクランブル発進をしましたので、もう少しでそちらに到着する頃だと思いますよ』

「待ってもらう方法はないんですか?」

『あるにはありますよ。ですが、向こうが納得しないものです』

「それはいったいなんですか?」

『速やかに艦隊を撤収させることです。そうすれば、争うことなく、その場の騒動は治る可能性はあります』

「承知しました。では、とりあえず交渉をしてみます」

『分かりました。交渉を許可します。ただし、交渉先程の件を向こうが承諾しなかった場合は、速やかに警備艇の方に戻ることが条件です。良いですね』

「承知しております」

『話は以上です』


 そう言って通話が切られた。

 スマホを仕舞い、再度椅子に座る。


「対談中に失礼しました」

「いいえ、構いません」


 さっきの話を何処で切り出したら良いのか悩むが言うことにした。


「先程の電話は、国際警察沿岸警備隊統括本部からです。そして統括本部は、巡洋警備艇2隻と普通警備艇3隻を新たに派遣し、ここに向かっている艦艇は全部で14隻です。この艦隊の巡洋艦クラスならば撃沈できる戦力だと思っています。そして、我々が望むのは、速やかに撤退することです」

「それは脅しか?」


 サーモは、ライサンダーに殺気を放ちながらそう聞く。


「脅迫ではなく、あくまでも忠告です。ですが、個人的には、撤退をお勧めします」

「脅しではなく忠告ですか。その忠告は感謝します。ですが、我々も任務で動いているますので、その忠告を受け入れることは出来ません」

「そうですか……分かりました。そちら側から何かありますか?なければ警備艇の方に戻らなければなりません」

「では、最後にひとつだけ」


 サーモがそう言った瞬間にサーモの雰囲気が一瞬で変わる。


「先程も言いましたが、我々の任務の妨害をしなければ、スターズが定めている領海での戦闘をしないことを誓いましょう」


 何故、わざわざ国家ではなく、スターズが定めている領海と言ったのかというと、国家が領海と定めている場所は曖昧なことが多い。しかし、スターズの場合は、測量船などを駆使(くし)し、正確な測量を行っているため、正確な地図を制作することが可能であり、スターズ内では当たり前に使われている。ちなみに、スターズが使っている地図を市場(しじょう)に出た場合の価格は、1枚で白金貨50枚程の価値になることは間違いないほどの代物(しろもの)である。

 

「ライサンダー警視正。貴方があの警備艇に戻った時、我々は貴方達とは敵対関係になります。ですが、貴方があの警備艇に到着するまでは、我々から攻撃を仕掛けることはありませんので、その辺はご安心下さい」

「ならば、その言葉を信じましょう」


 2人がそんな会話をした瞬間、突然ドカンッという主砲の発射音のような音が聞こえて来た。この部屋は、窓が無くそれなりに防音性が高い部屋だ。それでも聞こえて来たというのは、多分そういうことなのだろう。

 すると、無線からライサンダーに対して、やまぎくから連絡が入る。


『至急至急!艦長、応答を願う!』


 その声は、副長こコモンズだった。


「私だ。そちらの状況を報告せよ」

『現在、敵巡洋艦より我が艦に向け、主砲弾一発を発射。回避行動を取ったことにより、主砲弾を回避したものの、右弦前方に微かに被弾し、主砲弾はそのまま海上に着弾。被害は、右弦前方に微かに被弾した以外に被害はなし。操舵等への影響はなし』

「了解。総員に対空、対水上戦闘用意と伝えろ」

『それでは、艦長の身が!』

「俺のことは気にするな。俺が死んでも、骨さえ拾ってくれたらそれで良い。ヘリも危険だと判断したら、自分達の判断で船に戻れ。これは、俺からの命令だ」

『はッ!!』


 そう言って、通信は終了した。

 その無線の声は、イヤホンをしていた訳ではないので、当然その場にいた全員がその会話を聞いている。


「まさか、対談中に仕掛けるとは思いもよりませんでしたよ」

「これは違う!確かに先に攻撃を仕掛けたのは、我が艦隊の巡洋艦だが、私は断じて攻撃命令を出していない!!」


 サーモがライサンダーに必死にそう言って弁明をする。


「ピアン!大至急、主砲を発射した巡洋艦を調べ、その艦長を聴取しろ!!」

「はッ!!」


 サーモがピアンにそう命じると、ピアンが貴賓室から駆け足で出て行った。



「我が艦隊の中に裏切り者がいたようだ。そちらへの攻撃は、私が命令を下した訳ではないが、我が艦隊に所属する艦艇である以上、責任は、郡司令である私の責任だ。本当に申し訳ない」


 サーモはライサンダーに対して、そう深々と頭を下げながら謝罪した。

 その謝罪と同時に、ライサンダーのスマホが鳴る。このタイミングで来るということは、大体誰からなのかは予想が付く。そして、ライサンダーがスマホを取り出して電話番号を確認すると、ライサンダーの予想通りの人物だった。


「はい、ライサンダーです」

『私です。私が貴方に電話した理由は、察していますね?』

「はい……」

『結果から分かるように交渉は決裂。可及的速やかに警備艇に戻りなさい』

「失礼ながら申し上げますと、あの攻撃は、艦隊としての意思ではなく、巡洋艦が独自に行った攻撃であることが判明しています」

『貴方は今、その巡洋艦が艦隊から反乱したと言っていましたが、もしそのことが事実だとしても、何故、艦隊の艦艇ではなく、警備艇の方に攻撃を行ったのですか?』

「個人的な考えにはなりますが、あの巡洋艦はスターズにもフェアラートにも敵対意思があります。ですが、フェアラートは艦隊で行動をしており、もしも旗艦であるこの空母「プテラノドン」を攻撃すれば、速攻であの巡洋艦は、袋叩きに遭っていたでしょう。その点を考慮すれば、武装がフェアラートの艦艇に比べて貧弱な警備艇な上に一隻だけであるため、逃走手段としての攻撃でもあり、そう考えれば、理に(かな)った行動だとも言えなくはありません」

『なるほど。貴方が言っていることは理解できます。ですが、貴方は肝心なところを見落としているのでは?』

「それはいったい……」

『先程まで言っていたことは、フェアラート側が言っていた言葉を信じた上での考察ですよね?』

「ええ、そうですが」

『では、フェアラート側の主張が嘘で、本当は事前に攻撃命令を出していたとしたら話は変わって来ると思いますよ』


 それを聞いたライサンダーは、局長に返す言葉が出なかった。なんせ、さっきまで言っていたことは全て、局長が言っていた通り、サーモの言葉を真実だというのが前提なのだ。もしも本当にそれが真実ではなく嘘だとしたら、かなり危険な状況である。

 更に局長は、信じられない言葉を口にする。


『たった今、警備艇「やまぎく」から救援要請を支部の通信指令室からスターズの方に連絡を入れ、スターズの第一・第二・第五艦隊がレーン海域に向けて出現したようです。それと、あと2分以内にスクランブル発進をした戦闘機が向かって来ますので、それまでに警備艇の方に戻らなければ、どちらにせよ貴方の命は無いものと思って下さい。では、私はこれで失礼』


 局長は、そう言い残して通話を切った。そして、スマホを仕舞うと、サーモへと今のことを話す。


「貴方の言葉を私は信じたいですが、どうやら上の方は、納得しなかったようです。もう少しで、スターズからスクランブル発進された戦闘機による攻撃が始まります。そして、沿岸警備隊の巡洋警備艇やその他の警備艇も到着します。それだけでなく、スターズからもこのレーン海域に向け、第一・第二・第五艦隊が出撃したとの連絡がたった今入りました。ですので、話し合いは時間切れとなりましたので、申し訳ありませんが、私はこれにて失礼させていただきます」


 ライサンダーはサーモにそう言い残して、貴賓室を退室してヘリのある飛行甲板へと向かった。

 飛行甲板へ着き、待機していたヘリに乗り込み、やまぎくの方へと急いで戻った。その戻る途中で、戦闘機がヘリの上空を通ると、艦隊はその戦闘機に向けて対空戦闘を開始した。後ろで始まった攻撃による被害を何とか回避しながら「やまぎく」にヘリを着艦させると、ライサンダーは急いでヘリから降り、艦橋へと向かった。


「状況報告!」

「艦長!」


 ライサンダーが艦橋に入り、状況報告を聞こうとすると、それに逸早(いちはや)く反応をしたのは、副長のコモンズだった。そしてコモンズが現状報告をする。


「現在、スターズからスクランブル発進された戦闘機が十機編隊でフェアラート艦隊に向け、攻撃を開始と同時にフェアラート艦隊も対空戦闘を開始しました」

「うむ。我々も攻撃を開始する。魚雷戦用意!」

「魚雷戦用意!」


 艦内に警報音が鳴る。


「目標、我が艦に攻撃した巡洋艦。1番2番3番攻撃始め!」


 ライサンダーの合図と同時に、魚雷発射管から三本の魚雷が、やまぎくに攻撃を行った巡洋艦に向けて発射された。

 そして、その魚雷三本は、目標(ターゲット)だった巡洋艦に三本中一本が命中し、その他は、一本が敵駆逐艦に命中。もう一本は外れてしまった。


「報告。目標に魚雷一本命中。更にもう一本は、その奥に控えていた駆逐艦に命中。三本目は外れました」

「ご苦労」


 三本中ニ本が敵艦に命中したことに少しだけ安堵する。なんせ、沿岸警備隊が創設してから数ヶ月程度であるが、今まで実際に使ったのは、主砲ぐらいであり、しかもそれは命中させるのではなく、脅しに使う程度のものだった。しかし、今回初めて、魚雷を使用したことに対して、迷いがなかったかと言えば嘘になる。だからこそライサンダーは、このこと出来事を忘れてはいけないと誓った。それは恐らく、この場にいる全員が同じ気持ちだろう。

 すると、敵艦を監視していた見張り員が声を張り上げる。


「敵艦ミサイル発射!敵ミサイルは、こちらに向かって発射された模様!」

 

 敵艦隊からそこそこ離れているとはいえ、ミサイルならばすぐに「やまぎく」まで着く。そうなれば、やまぎくは大破するのは間違いないだろう。


「SAM撃て!」


 ライサンダーの合図で、SAMから迎撃用ミサイルが発射された。


「主砲、CIWS用意」


 もし、迎撃ミサイルが外れたりしても良いように準備をする。


「SAM命中。迎撃を確認」

「敵艦より新たにミサイルが2発発射されました!」

「さっきと同じく迎撃しろ!」


 迎撃ミサイルが2発発射された。1発は命中し、そのまま迎撃に成功したが、もう1発は、軌道が外れたことにより迎撃が失敗した。


「迎撃1発失敗!」

「主砲撃て!」


 迎撃ミサイルが失敗したことにより、次は主砲で対応する。


「距離的にマズいな。CIWSの方はどうだ」

「いつでも大丈夫です」


 すると突然、迎撃しようとしていたミサイルが空中で爆発した。主砲による攻撃が当たったかと思うだろうが違う。この時、ライサンダーは見逃していなかった。「やまぎく」の主砲とは違う攻撃による爆発だったことに。


「船務長!9時の方向に何かいるか!?」


 プレサイズがレーダーで確認する。


「9時の方向に艦艇の反応あり!続いて識別信号を確認。識別信号は、警備艇「ひなぎく」です」

「ようやく到着か」

「艦長。「ひなぎく」艦長より通信が入っています」

「分かった」


 そう言って無線を受け取る。


『こちら警備艇「ひなぎく」より警備艇「やまぎく」応援に来た』

「こちら警備艇「やまぎく」応援に感謝する」


 ライサンダーは、一言そう言うと、通信を終了する。すると、プレサイズが報告する。


「艦長!6時の方向と8時の方向より増援を確認!」

「どうやら、揃ったようだな……」


 6時の方向からは、アース支部からの応援。そして8時の方向からは、統括本部からの応援がここに集結した。

 そして、到着した警備艇から、敵艦隊に向けて次々とミサイルを発射した。

 すると、「やまぎく」の後方にいた警備艇が突如として、大きな音が鳴ると、船体に穴が空いていた。

 すぐにレーダーで確認すると、今まで分からなかった存在が映っていた。


「敵潜水艦が海中にいます!」

「今まで気付かせなかったのか!?魚雷急げ!」


 急いでその潜水艦に向けて魚雷を5本発射する。敵も応戦して、魚雷を3本迎撃されたが、そのうちの2本が潜水艦に命中した。ただ、命中したと言っても、被害は軽微だったため、大したダメージを与えることができなかった。


「確認できる潜水艦は、その一隻だけか?」

「はい、今のところ潜水艦は、この一隻だけです」

「よし、ならばその潜水艦は、こちらが相手をしよう」

「了解」


 それから暫くの間、このレーン海域は、一気に戦場と化した。そして、数分が経過頃、やっと敵戦力を少しだけだが、減らすことに成功した。


「やっと潜水艦を撃破できたな」

「ええ。それに敵駆逐艦を一隻大破させましたし、それなりの成果だと思います」


 ネットがそう独り言を言うと、それに反応するかの様にコモンズがそう付け加えた。


「だがその分、こちらの被害もそこそこあるがな」


 ライサンダーの言う通り、沿岸警備隊の方も被害が出ており、警備隊が6隻大破し、船体が炎上していたり、攻撃による穴から海水が流れ込み、船体が傾いて、今にも沈みそうになっている警備艇もあった。かく言う「やまぎく」もそれなりの被害を受けており、船体には幾つもの傷があった。巡洋警備艇も傷ついているものの、他の警備艇よりも頑丈に造られているだけのことはあって、戦闘に全く影響がない様子だった。ちなみに「やまぎく」の場合は、軽微の被害とは言っても魚雷発射管が設置されている場所が破壊され、魚雷が撃てない状態となってしまった。まあ、運が良いのか、魚雷のほとんどは使われており、残っている魚雷は、1本のみという状態だ。残っている魚雷がもっと多ければ話は変わるだろうが、今はこれでなんとかなるから、多分大丈夫なんだと思う。

 

「VLSの魚雷を撃ち込む」

「了解」


 ライサンダーがその発射の合図を出そうとした瞬間、突然敵艦隊にミサイルの雨が降り注いだ。

 その時、ライサンダーは瞬時に状況を理解しようとする。この様な大量のミサイルを撃ち込めるのは限られる。だからこそ、その攻撃が何処の所属のものなのかはすぐに分かった。


「やっとお出ましか」


 ミサイルが飛んできた方向に双眼鏡で見ると、複数の艦影が確認できた。


「識別信号を確認。スターズの信号です」


 スターズの艦隊が徐々に近づき、肉眼でもはっきりと見える場所まで到着すると、スターズの艦隊からスピーカーで音声が流れた。


『我々は、スターズ第一・第二・第五艦隊である。沿岸警備隊は、負傷者等の救出等が完了次第、速やかにこの海域から離脱せよ。これは、沿岸警備隊統括本部からの命令でもある。繰り返す。我々は、スターズ第一・第二・第五艦隊である。沿岸警備隊は、負傷者等の救出等が完了次第、速やかにこの海域から離脱せよ。これは、沿岸警備隊統括本部からの命令でもある』


 その発言にライサンダー達は驚く。恐らく他の艦の乗組員達も同様だろう。なんせ、スターズとは協力関係にはあるが、沿岸警備隊への指揮権はない。また逆も然りである。であるのに命令するのは、少しおかしな話である。

 だが、統括本部からの命令と言われればそれまでなので、素直に従わなければいけないのは、事実なのだが。


「被害の受けた船の乗組員の救出を行った後、レーン海域を離脱し、支部へ帰投する」

「よろしいのですか?」

「統括本部からの命令ならば、従った方が良いだろう」

「それはそうですが……分かりました。至急、他の警備艇とも連携し、救出を行い、救出活動が終了次第、レーン海域を離脱します」


 それから警備艇が救出活動を行っている間、スターズの艦隊は、戦闘に入った。そして、約10分程で全ての乗組員を救出した。残念なことに2人の隊員の遺体が確認され、その遺体も回収した後、何とか無事な船に乗り込んだ。

 そして、ライサンダー達は、今回の事件を決して忘れてはいけないと思いながら、支部へと帰投して行ったのだった。

 今回の話は如何だったでしょうか?私個人としては、今までで一番長く書いた話だったと思います。さて、次回からは、再び春人視点に戻ります。

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