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異世界転生術師  作者: 青山春彦
特別編1
165/176

165 閑話 スターズのクリスマスパーティー(中編)

 年初めの初投稿がクリスマス回というのは、少しおかしいですが、そこら辺はご了承下さい。クリスマス回が終わったら正月回もやろうかなと思っています。少し遅めとなってあります。改めまして、新年明けましておめでとうございます。どうか今年も『異世界転生術師』等の作品のご愛読のほどよろしくお願いします。

 スターズでのクリスマスパーティー当日。私達は、集合場所である城の私の執務室に集合していた。

 そしてこの場にいるメンバーは、私の婚約者組、リリーと副支部長であり「暗黒群(クラヤミ)」の副隊長でもあるニール大佐。コードネーム:ドレッド。その他に王宮警察本部本部長としてサラと副本部長であるカナデ。そして、私を合わせた計14人が集まっていた。

 ちなみにサラとカナデ以外は、スターズの礼服を着用し、サラとカナデは王宮警察の礼服を着用している。それと、事前に2人の仮身分証は渡してあるので、問題なく本部内に入ることができる。


「全員揃ったな。それじゃあ、スターズ本部に行くぞ。【ゲート】」


 【ゲート】をスターズ本部まで繋げて、潜り抜ける。そして最後のカナデが【ゲート】を潜り抜けたのを確認した後に【ゲート】を閉じた。


「なんだか、以前に来たときよりも警備が厳重になっていませんか?」


 トワが周りを見渡しながらそう言う。


「あの、もしかして皆様にはお話していないのですか?」


 サラが私の耳元でそう尋ねる。


「まあな。余計なことを言ってしまったら、せっかくのクリスマスパーティーをあの子達が楽しめなくなるかもしれないからな」

「ですが、恐らく今年もありますよ。突然発生したら余計に怖がると思うのですが?それに、アルマー支部長と副支部長だって、今回が初のクリスマスパーティーです。せめてあの2人には、知らせておいた方がよろしいかと私は思いますよ」

「確かにそうかもな……」

「あの、どうかされましたか?」


 私とサラが2人で、他のみんなには聞こえないぐらいの声量で話していると、そんな私達の様子を見て、トリスが不安そうな表情をしながらそう私に聞いて来た。


「いや、何でもない。それよりももう少しでイベント広間に着くぞ」

「意外と入り口に近いのですのね」

「まあ、イベント広間は、スターズ職員だけではなく来賓も使うからな。故に情報漏洩防止や警備上の都合によって、入り口近くに設置されてるんだよ」

「来賓?」


 テレスがイベント会場が思ったよりも入り口に近い場所だったことに驚いて、私がその理由を説明すると、来賓という言葉にピンと来ない様子だった。まあ、それも仕方ないことかもしれない。なんせ、スターズ本部は、秘匿性が高いため、スターズ職員しか入れないというのが普通だ。だが、例外的にこういったイベント行事などには、外部の人間も招待される場合があるのだ。


「さあ、イベント広間に着いたぞ。この入り口にいる警備係に身分証を見せるんだ」


 それぞれ身分証を警備係に見せ、問題ないかを確認してもらう。


「身分証に問題ありません。どうぞ、パーティーをお楽しみください。シリウス様方」


 警備係のひとりがそう言って扉を開く。

 イベント広間には既に、他の幹部職員などがクリスマスパーティーを楽しんでいた。


「あ!お父さん達!!こっちこっち!」


 そう私達に対して、手招きをしたのは春奈だった。


「あのなぁ春奈。お前はもう少し自分の立場というものをだな」

「別にクリスマスパーティーぐらい別に良いじゃん。それに、このパーティーは無礼講なんだし、偶には立場とか忘れたいじゃん」

「お前なぁ……」


 私は、そんな春奈の言葉に呆れながらそう言った。


「あの春人さん。素の春奈さんってこんな感じなんですか?なんだかもっとしっかりとした方だとばかり思っていたのですが……」


 エリアが春奈の様子を見ながらそう言った。まあ、私生活の方を知っている奴等からすればこれが普通の状態なんだが、仕事モードの状態の春奈しか見ていなければ、そんな反応になるのも無理はないか。

 実際、エリア以外の子達も若干驚きの表情を見せていた。……なんだか自分の子ながら少し恥ずかしくなってきたな。


「なんだかすまんな。仕事をしているときのあいつは、真面目なんだが、私生活ではあんな感じなんだよ」

「では春奈様は、このパーティーでは、私生活状態と同じ状態になっているということですか」

「まあ、そうなるな。このパーティーは、スターズ主催であり、大規模なイベントではあるんだ。だが、ここで酔っ払ってしまう奴も中にはいてな。その例が、こいつってわけだ」


 酔っ払いが自分の娘ていうのは、父親としては嫌なんだが、他にいい例が近くにいなかったから、こればっかりは仕方ない。


「我が家の全員は、基本的に酒に強い方なのです。ですが、春奈の場合は、こういったイベント行事となると、呑み過ぎる癖があるんです」


 白夜が、春奈のカバーをしているが、最後には結局、春奈の呑み癖を暴露してしまった。


「毎度、こういった行事の前に呑み過ぎるなと言ってはいるんだが……この有様だ」

「見た感じは、とても酔っ払っているようには見えませんが……」

「いや、そうでもないぞ。ここは、完全なプライベート空間じゃない。そして春奈は、完全なプライベート空間か完全に酔っ払ってない限り、私のことをお父さん呼びしないから、酔っ払っていることはすぐに分かったよ。だけど、春奈の場合は、酔っ払っても顔には出ないタイプだからパッと見じゃ分からないのは確かだな。だからプライベートのときは酔っ払ってるかどうかは分からないときがあるんだよなぁ」


 ほんと、顔に出ないタイプの酔っ払いは、分かりやすいのか分かりにくいのか、よく分からんから面倒だな。


「相変わらず春奈嬢は、愉快なお方ですね」


 そう私に話しかけて来たのは、右手にワインの入ったワイングラスを手にした、宗教ギルド本部の総帥(グランドマスター)であるエレントルディスだった。


「そうですね。愉快という点では同意しますが、父親としては、少し悩ましいところです……」

「春奈嬢達とは、こういった祭事でなければ会うことはなかなかできませんので、私としては、案外楽しいんですよ」

「私としましては、今回が初参加ですが、思っていたよりも楽しい祭事ですね」


 そう言って、私達の話に入って来たのは、ランス教教皇にして、宗教ギルド本部の枢機卿級職員であるゲルトルーデとその隣には、ランス教枢機卿にして、同じく宗教ギルド本部の枢機卿級職員であるエリザベートがいた。

 この2人は、先のランス教国での事件の影響もあって、今回は特別にスターズから招待されていると聞いている。


「お久しぶりです春人様」

「お久しぶりです」

「2人とも息災そうで何よりだ。今、国の方はどうだ?」


 最近ランス教国の話を聞かないからこの場で少し聞いてみるか。


「そうですね。まだ、宗教国家としての機能は宗教ギルド本部の方から制限されていますので、宗教的活動はできていませんが、国家としての機能は動いていますのでなんとかやっていけてます」

「ですが、先の事件の影響により、国家の重鎮が数名、宗教ギルドやスターズに拘束されたり、我が国で拘束して、除名により取り潰しになった者もいるため、国政が不安定なのもまた事実です」


 ゲルトルーデが端的に説明し、エリザベートが補足説明をする。


「そうか。やはり先の事件は、国にそれなりに影響を与えたようだな」

「そうですね。あのような者達だと任命前に気付けていたら、あのような事件が起きることもなければ、これほど国政が不安定になることもなかったのでしょう」

「まあ、そうかもしれんな。だが、結果的に言えばその間違った判断が良かったのかも知れんぞ」

「それはどういう意味でしょうか?」


 私の言葉の意味が分からなかったゲルトルーデがそう私に聞く。


「君が間違った判断をしたからこそ、ランス教国に人員が派遣された結果、邪神による民間人の犠牲をなくすことができたし、こうしてスターズとの関係を築けたのだから、国としては良い結果なのではないか?」

「そう言われたらそんな気がしないでもありません」


 すると、入り口の扉が開くと、カートを押した給養員達が続々と入って来た。


「皆さん。大変お待たせいたしました。本日のメインとなります。スターターキーの丸焼きです」


 その場の全員が『おぉおぉおお』と声をあげて興奮していた。

 ターキーは、地球でいうところの七面鳥のことであり、スターターキーは、スターズのブランド七面鳥である。まあ、表向きには、生息地等不明の謎多き高級食材扱いになっているが。


「スターターキーといえば、超高級食材ですわよ!なにせ、飼育場所どころか生息地域も不明の謎の多いターキーですわ」

「そのあまりの希少性から王族でさえ、その代の国王が食べられたらその国は、数代の間は国が安定すると言われるほどの伝説の食材……まさかこのような場所で、しかもこんなにも沢山も見られるなんて思いませんでした」


 テレスとエリアがそのように説明をする。まあ、市場には出回ることがないから、そんな伝説が生まれるのも無理はないか。


「まあ、そういう反応になるのも無理はないな。あのスターターキーが市場に全くといって出回らないのも当然なんだ。なんせ、あのスターターキーは、ここだけの話だが、スターズが管理している極秘の農業エリアの畜産区画で飼育されたものだからな」

「もしかしてだけどさ、スターターキーのスターって、スターズのスターから取ったの?」

「ああ、その通りだ。数百年前の畜産区画の畜産部長が名前は分かり易くても良いだろって感覚で、スターターキーって名付けたらしいぞ」

「そんな適当な」


 アイリスがスターターキーの名前の由来について私にそう聞いて、私が名前の由来を答えると、エイルがそんな反応をした。まあ、エイル。分かるぞその気持ち。私も初めてその理由を聞いたときにも君と同じ反応をしたからな。


「それじゃあ、とりあえず今は乾杯といこうか。あ、すまないのだが、ワイングラスを14 脚のうち3 脚はブドウジュース。それ以外は普通にワインを。それで良いか?」

「ええ、いいわよ」

「構いません」


 アイリスと信女がそう返事をした。


「畏まりました。少々お待ちください」


 そう言って、担当の者が飲み物を取りに向かった。こういった担当になっている者達も交代でやっているので、まったくパーティーを楽しめないわけではない。もちろん警備などに当たっている者達も同じだ。

 そして、先程の者が両手の丸いトレイに人数分の飲み物を入れて持って来た。


「お待たせしました。お飲み物をお持ち致しました」

「ああ、ありがとう」


 それぞれが飲み物をトレイから取る。


「では、ごゆっくりお楽しみください」


 そう言って彼女は、別なところに向かった。


「やはりお話には聞いてましたが、本当にスターズの方には、普通の人間(ヒューマン)はいないんですね」


 トリスが突然周りを見ながらそう言った。人間と変わらない見た目の者が実際には多いが、エルフや獣人などの亜人の長命種もこの場にはかなり多い。先程飲み物を持って来た彼女もエルフだったしな。それに、普通の人間(ヒューマン)に見えても、明らかに違うと分かる程の気配をしているから、それも含めてトリスは、言っているんだろう。

 なんでトリスが気配なんて分かるのかって?それは、他の婚約者も含めてだが、気配についての訓練をしているからだ。訓練を始める前までは、アイリス、トワ、信女、シルヴィアしか分からなく、特に敏感に感じられるのはシルヴィアだけだったのだが、そんな彼女達も含めて気配の訓練をした結果、こうして気配なども感じ取れたりどれぐらいの強さを持っているのか、ある程度は察することができたのだ。教えた私が言うのもなんだが、彼女達の訓練での吸収力はかなりヤバく、私が教えたことを本来ならば数日掛けて習得する内容をたった1日で習得したりと、流石の私でも驚かされたりしたのまた別の話だ。

 あ、そうだ。そういえば、リリーとニールにあのことを伝えなくちゃな。

 そう思った私は、ワインの入ったワイングラスをテーブルの上に置き、2人に話しかける。


「リリー、ニール。2人とも少し良いか?」

「はい。何でしょうか?」


 2人は、ワインの入ったワイングラスをテーブルの上に置き、リリーがそう聞き返す。


「悪いが、一旦部屋の外で話しても良いか?この場では少々話しにくい内容だからな」

「……承知しました」

「……構いません」


 私がエリア達の方をチラッと見ただけで何となくその意味を察して、2人が部屋を一旦出て話をすることに承諾をする。

 そうして、私達は一旦会場の外へと出て、警備係から少し離れたところで話す。


「さて、急に2人を連れ出してすまない。だが、これから言う内容はできるだけ彼女達に聞かれたくない内容だったからな」

「やはりそうでしたか」

「2人が、私の考えを察してくれて助かったよ。では早速、本題に入りたいんだがその前に、君達はこのクリスマスパーティーの目的を知っているか?」

「ええ。このクリスマスパーティーを含めたイベントを行うことによって、スターズ職員の仲や士気の向上を行うこと」

「それと、スターズ職員が『フェアラート』へと裏切らないように、スターズが良い組織だと思わせるためですよね」


 私の質問に対して、ニールとリリーがそう返答した。やはり2人とも、このクリスマスパーティーについて毎年のように起きること我々がイベントを行っている理由を知らないようだな」


「まあ、リリーの最後の言い方はともかく、君達の言うことは大体合っている。だが、本当の目的はそこにはないんだ」

「それはどういう意味ですか?」

「実は、このクリスマスパーティーは、その他のイベントなどに比べて、このスターズ本部に戦力が集中する。その理由は『フェアラート』の襲撃をわざとし易くするためだ」

「「!?」」


 2人が驚いたような表情を見せる。まあ、驚くのも無理はないか。


「確かにこれは、容易に婚約者様方には話し難い内容ですね」

「ああ。だが、君らには話しておくべきだと判断し、こうして話した。恐らく、もうそろそろ『フェアラート』の襲撃が始まるはずだ。まあ、念のために今回は、我々スターズだけでなく国際警察沿岸警備隊のアース支部にも協力要請をしているから、何かあったら私に連絡が来るように調整済みだ。まあ、そんな訳で、一応伝えただけだから、君らが何かする必要もないから心配するなよ。さて、そろそろ中に入るか」

「ええ、そうですね」

 

 そして再び、会場内に入る。

 会場内に戻り、私はテーブルに置いていたワインが入ったままのワイングラスを手に取り、一口飲む。すると、私の突如として私のスマホに着信が入る。このタイミングでスマホが鳴るって、嫌な予感しかしないんだが……。

 表示を見ると、やはりアース支部の沿岸警備隊からだった。


「はい、もしもし」

『こちら、国際警察沿岸警備隊アース支部通信司令室!現在、『フェアラート』の艦隊と思わしき艦隊より、我々の警備艇「やまぎく」が攻撃を受けている!場所は、レーン海域!至急、スターズに増援を求む!!』

「了解。至急、出撃準備が出次第、増援を向かわせる」

『沿岸警備隊アース支部通信司令室、了解』


 そう言って、通信が切れた。

 そして私は、第一艦隊提督であるカルム中将に話し掛ける。


「カルム中将」

「如何なれましたか?シリウス様」

「カルム中将率いる第一艦隊全艦艇に対して、五星使徒(ペンタグラム)シリウスの名において出撃を命ずる。場所は、スターズとアース王国との領海の境目付近のレーン海域であり、現在、国際警察アース支部沿岸警備隊が『フェアラート』艦隊と交戦中のため、近くの海域まで行けばすぐにでも分かるはずですので、頼みます」

「はっ」


 カルム中将が私に敬礼をそう短く返事をすると、無線を取り出す。


「待機中の全第一艦隊の乗組員は至急、各艦艇に乗艦後、出撃を開始する」


 無線で、そう指示を出しながら、会場を出て行った。


「春人様……何かあったのですね」


 トワが私の側に来て、そう言ってきた。やはり気付くか。でも、この子達にはあまり心配を掛けさせないようにしなくてはな。


「心配しなくとも良い。ただ虫が侵入するのを防ぐだけだからね」


 だが、さっきカルム中将に伝え忘れたことがあったし、伝えに行くとするか。

 そして、偶々近くにいたアラリに声を掛けた。


「アラリ大尉。少しよろしいか?」

「どうかしましたか?シリウス少将殿」

「申し訳ないのですが、ソーラル達と一緒にあの子達のことをお願いできませんか?」

「現場に向かわれるのですか?」

「いえ。ただ一旦席を外し、通信司令本部に向かうだけです」

「今回は、指揮だけという訳ですか」

「まあ、そんなところです。では、あの子達のことをお願いします」

「お任せください」


 私は、アラリにあの子達を託し、通信司令本部に向かう前にカルム中将のところへと向かった。

 カルム中将は、既に旗艦信濃のCDCに待機していた。


「カルム中将、先程伝え忘れていたことがあるのですが、今よろしいか?」

「問題ありません。して、伝え忘れていたこととは一体何でしょうか?」

「敵の幹部級の者達は、できるだけ生け取りにすることと、可能なら敵艦を無力化して奪取して下さい」

「お待ち下さい!それだと、我々だけでは不可能です」

 

 それはそうだろう。倒すだけならば簡単だ。だが、今言ったのは、敵艦の無力化しての奪取と敵の生け取りだ。これを成し遂げるには、その敵の倍の戦力が必要なのだ。


「分かりました。では、第一艦隊の他に第二、第五艦隊の出撃を命じさせます。それと、シールズの隊員も第一艦隊に乗艦させてもよろしいでしょうか?」

「敵艦に乗り込むためのですか?」

「そんなところです。一応、そちらでもいると思いますが、念のために連れて行ってはもらえませんか?」

「分かりました。ですが、我々は後3分後に出航します。それ以上は待てません」

「それで構いません」


 了解が取れたので、無線を取り出す。


五星使徒(ペンタグラム)シリウスより、シールズ第一大隊第三中隊第二小隊に告ぐ。至急、出撃準備を整えた後、第一艦隊の停泊港へ集結せよ。また、時間は3分以内とする」

『こちら第二小隊。了解』


 この時、春人は知らなかった。トワがコッソリと無線でのやり取りを、他のみんなには気付かれないように、髪で耳を隠しながら、イヤホンで聴いていたことに。


「また、第二、第五艦隊への出撃を命ずる。場所は、第一艦隊と位置情報を共有して迎え」

『こちら第二艦隊、了解』

『こちら第五艦隊、了解』


 敵艦を無力化し、入手することができれば、奪取した艦艇をこっちで改装等をすれば、新たな艦隊編成や単艦運行などの戦力増強に助かるからな。そうすれば、もっと広く警戒監視を行うことができる。


「では、カルム中将。指示などは追って伝えますので、今は、そちらでお願いします」

「承知しました」


 そのまま私は【テレポート】で、本部の建物内にある通信司令本部の少し前へと転移する。いくら私(すべてのスターズ職員)でも、通信司令本部に直接、空間魔法等やなよる転移しての入室は、スターズ憲章によって、固く禁止されているから、これに関しては仕方ないな。

 通信司令本部の前まで歩いて行くと、その入り口前には、警備として重武装の警備係がいる。そして、その者達に身分証を見せて扉が開くと、そのまま中へと入った。

 中に入ると、私だと分かったためか、全員が勢いよく立ち上がり、私に敬礼する。


「そのままで良い。して、現場の状況は?」


 そう指示を出しながら、現場海域であるレーン海域の現在の状況を、今入って来た入り口近くの専用席に座っていた通信司令本部本部長のアズールドレイク特佐に尋ねる。


「はい。現在、沿岸警備隊の警備艇「やまぎく」がギリギリで応戦していますが、このままでは撃沈されてしまいます」

「そうか。では、私がこの通信司令本部から指揮を行う。それで構わないな?アズールドレイク通信司令本部長」

「分かりました。では、お願いします」


 通信司令本部長のアズールドレイク特佐の許可を得たので、通信司令本部長の席に向かい、席を変わってもらう。


「通信司令本部より、スターズ職員各員へ告ぐ。現在『フェアラート』がスターズ本部へ向け、艦隊一つが進軍中。また、本事案に当たっては、第一・第二・第五艦隊が現場海域に向かって出撃を命じている。だが、敵艦の中に弾道ミサイルといった物を装備している可能性もある。その為、高射部隊は、ミサイル等の迎撃準備を行え。また、金剛・比叡も同じくミサイル等の迎撃準備を行え」


 無線でそう命令を出す。


『こちら第一艦隊より通信司令本部』

「こちら通信司令本部。どうぞ」

『各艦艇へのシールズ隊員の乗艦を確認。これより、現場海域へ向かう』

「通信司令本部、了解」


 やっと、第一艦隊は出撃したか。

 私はスマホを取り出して、沿岸警備隊アース支部の通信司令室へ電話を掛ける。本来ならここの無線でボタンを押せば繋がるようにしたいのだが、時間等の問題でできていない為、こうして電話でやるしか現在は、連絡方法がないのだ。はっきり言って、不便で仕方ない。そのうち国際警察の通信司令本部と話し合って、無線をお互いの通信司令室などに繋げられるように設備を整えてもらうことにしよう。


『こちら国際警察沿岸警備隊アース支部通信司令室です』

「私だ。たった今、現場海域に向かって、第一艦隊が向かった。先にスクランブル発進をした戦闘機も参加しているはずだが、少しの時間稼ぎ程度にしかならないはずだ。こちらでは、その海域にいる艦艇や機体しか分からん。その為、万が一に備え、第一艦隊が視認できる場所まで来たら、他の沿岸警備隊の警備艇等を速やかにその海域から離脱させろ」


 私は、部屋の正面にある特大液晶パネルと席にあるパソコンのスターズ本部から現場海域までの範囲の艦艇のマークが地図に映っている。


『了解。現場の警備艇等に連絡します』


 沿岸警備隊への連絡を一旦切った。

 すると今度は、別のところから無線が入る。


『こちら第二艦隊より通信司令本部、出撃完了。これより現場海域へ第五艦隊とともに出航する』

『こちら第五艦隊より通信司令本部。第二艦隊と同じく準備完了。よって、第二艦隊とともに現場海域へ向けて出撃する』

「こちら通信司令本部、了解。また、現在第一艦隊が現場海域へ向かっている。両艦隊の速度から推測して、第一艦隊と合流するのは、現場海域でになるはずだ。第一艦隊と合流次第、一時的に第一艦隊の指揮下に入れ」

『こちら第五艦隊より通信司令本部。なぜ、第一艦隊の指揮下に入る必要があるのか、理由を願いたい』


 第五艦隊提督のスペクトラム中将から今の私からの命令に対して、少し不服そうな声が出る。


「既に第一艦隊提督には、ある任務を命じている。その命令内容上の関係で、第二・第五艦隊は、第一艦隊の指揮下に入ってもらった方が、こちらとしてはやりやすい。これが理由である。解決したか?」

『こちら第五艦隊。了解』

『こちら第二艦隊。第一艦隊と合流次第、第一艦隊の指揮下に入る』

「また、第一・第二・第五艦隊へ告ぐ。何かあった場合の通信司令本部への報告を厳守とする」

『了解』


 無線を切って、椅子に座るのと同時に、短くため息を吐く。


 とりあえずはこれで良いな。まったく……やはり第五艦隊提督のスペクトラ中将は、少し第一艦隊提督のカルム中将のことをライバル視しているところがあるようだな。

 いや、それ自体は知っていることが、任務の時くらい、せめてその考えを抑えてほしいとは正直思う。

 そんなことを考えていると、ひとつの無線が入って来た。


『こちら高射部隊より、通信司令本部。迎撃準備完了』

「こちら通信司令本部より高射部隊。了解」


 高射部隊の方も準備が完了したようだな。


「まあ、とりあえず後はこれで、第一艦隊が現場海域へ着けばなんとかなるな」


 パソコンに映し出されている位置情報を見ながらそう呟いた。

 次回は、後編の前に少し別サイドでの話となります。このクリスマス回は、春人が珍しく幹部らしく指揮をするだけとなります。現場に行くということはないです。まあ、私の気が途中で変わらない限りはですが……。ちなみに、今回出てきた警備艇「やまぎく」ですが、本来は海上自衛隊で以前まで配備されていた艦艇から持ってきました(現在、ゆり型警備艇は、すべて退役済み)。巡視船と出すのを迷ったのですが、装備的にもこっちの方が良いと思い、こちらを採用しました。まあ、もしかしたら巡視船のモデルの船も出てくるかも?

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