164 閑話 スターズのクリスマスパーティー(前編)
クリスマスは過ぎてしまったけど、この作品内での出来事だから構わないよね?よね?
プルルル……プルルル。
懐に仕舞っているスマホから私以外、誰もいない執務室に着信音が鳴り響く。
スマホの画面を見ると、そこに表示されているのは、白夜の名前だった。
「お前から電話をして来るなんて珍しいな。それで何かあったか?」
「父上はいつ頃本部へいらっしゃる予定ですか?」
「今のところそっちに行く予定はないが、それがどうかしたのか?」
「父上……もしかして明後日が何の日か忘れましたか?」
「え?何の日って……あ!もしかしてクリスマスパーティーか!」
「やっと思い出しましたか。それで今年は参加なさるのですか?」
そういえば、ここ2年程そういったイベントに一切参加していなかったな。今年はあの子達もいるし、最近はどの仕事も落ち着きを見せているし、今年はみんなも連れて行って、参加するのも有りかも知れないな。
「そうだな。今年はあの子達もいるから参加しよう。一応確認なんだが、あの子達もクリスマスパーティーに参加できるんだよな?」
「ええ、できますよ。トワ特佐、エイル大佐、エリアリア中佐、テレスフィーナ中佐、シルヴィア中佐、アイリス少佐、トリス少佐、信女少佐、アルトリア少佐の9人は、もう既にスターズの所属ですので参加権はあります」
「その他にも、うちの支部長のリリー特佐や元スターズ幹部であるサラとカナデも連れて行っても良いか?」
「サラとカナデ?」
この2人が誰なのか分からなかったようで、少しの間沈黙が続いた後、プロキオンとベテルギウスの2人の本名が今言った2人のものだということを思い出した。
「あ! 思い出した。確かプロキオンがサラで、ベテルギウスがカナデでしたよね?」
「正解だ。それで、この3人も一緒に連れて行きたいのだが、構わないか?」
「リリー支部長は何の問題もありませんが、サラとカナデに関しては、2人ともスターズを辞めていますので、こちら側で発行した身分証があれば、問題なく参加できますよ。それに今年は、いつもよりも民間人が多いので仮身分証も多く発行してるんですよ」
「それはそれで問題ないのか?」
「ええ、問題ありません。それに民間人と言っても、表社会ではそれなりの地位にいる者達ですし、父上も会ったことがある人物ばかりですので、会えば直ぐに分かりますよ」
「そ、そうか。とりあえず、今年のクリスマスには参加するという方向で調整を頼んだ」
「分かりました。では、その2人の分の仮身分証として、サラの分にはアルマー王国王宮警察本部本部長(来賓) カナデの分にはアルマー王国王宮警察本部副本部長(来賓) と記載した仮身分証の発行をし、その仮身分証の発行が終わり次第、父上の方に送りますね」
「ああ、頼んだ」
そう言って私は、白夜との通話を切った。
さて、一応あの子達とリリー。それにサラとカナデにも参加の意思を聞きに行くとするか。本来なら順番が逆なんだが、今回は忘れていた私にも責任があるし、最悪どうにかなるだろ。
私は、急いで今日を含めた5日分の仕事を一気に終わらせてから、執務室を退室して、みんながこの時間帯にいる居間へと向かった。
…今年は、何にもなければ良いんだがな……。
「やっぱりみんなここにいたな」
「春人様、どうかしたんですの?」
「実は、みんなに聞きたいことがあるんだが良いか?」
私がみんなにそう言うと、さっきまで楽しく話していたみんなが私の方に集中した。
「聞きたいこととは何ですか?」
エリアが私にそう質問をする。
「実は、明後日にスターズ本部で、クリスマスというイベントがあるんだが、そのイベントに君達と一緒に参加しようと考えているんだが……どうだ?」
「そのくりすますというイベントはどういったイベントなのですか?」
エイルがクリスマスがどういったものなのかというのを尋ねる。元々クリスマスというイベントは、スターズにしか存在していない。このクリスマスというイベントは、私がこの世界に来る前の異世界人が持ち込んだものだ。この日が聖なる日という点やプレゼントを贈りあったりすることは同じであり、親が夜中にこっそりと子供にクリスマスプレゼントを贈るというのも同じである。だが、自身の子供にプレゼントを夜中にこっそりと贈る理由に関しては、スターズ独自のものとなっている。そして、この中で未成年なのは、リア・エリア・テレスの3人である。そのため、サンタプレゼント計画は、残りの成人組に協力をしてもらって夜中にこっそりと贈るつもりだ。もちろん、成人組にも贈るつもりだが。
ちなみに、この世界での成人年齢は、どの国も15歳となっているが、一部地域では違ったりする。
そして、クリスマスが何なのかについて話す。もちろん、未成年組のことも考慮して、サンタの話は無しにした。
「というのが、クリスマスについてだな」
「つまり聖夜祭ということですか?」
「まあ、簡単に言えばそうなるな」
厳密には違うらしいのだが、細かいとこまでは私も知らないし、そんなところまで説明したらかなりややこしい事になりそうなので、肯定することにした。
「それで、スターズのクリスマスパーティーに参加するかしないか、どっちかそろそろ聞いても良いか?」
「もちろん参加します」
「あたしも参加するわ」
「参加したいです」
「参加します」
「私も参加しますわ」
「師匠……春人さんや皆さんが参加なさるのであれば、私も参加したいです」
「拙者も参加したいと思います」
「私も参加でお願いします」
「私も参加でお願いします」
「了解、全員参加ね。それと、リアとエリアとテレスの3人以外は、悪いんだけどもこの後、時間があるときにでも良いから執務室に来てくれる?」
3人へのプレゼント相談に乗ってもらおうと、3人以外を執務室へと来てもらうように頼む。
「今じゃダメなの?」
そんなことを知るわけないアイリスがそう私に聞く。
「ああ、できれば3人には知られたくない内容だからな」
「そう、分かったわ。でも場合によっては3人にも話すかも知れないけど、それでも良い?」
「それで構わん」
「それじゃあ、私は一旦出るね」
「いったいどちらへ?」
私が居間のドアノブに手を掛けると、トワがそう聞いてくる。
「執務室に戻るだけだよ」
私はそう一言だけ言うと、扉を開けて、執務室へと戻った。
執務室に戻って来たは良いものの、仕事はさっき終わらせたため、やることがまったくといって良いほどないので、彼女達が来るまで、正直言って暇である。
すると、扉の方からコンコンコンとノックする音が鳴る。
「入って良いよ」
「失礼します」
トワを先頭に次々と入って来た。これで、3人以外の全員が揃ったな。
私は、椅子から立ち上がり、彼女達のところへと歩く。
「立ち話もなんだから、座って話そうか」
執務室の扉の鍵を施錠した後、彼女達に座るように促し、ソファーにそれぞれ腰掛ける。
「それで、エリアさん達3人以外の私達をお呼びになった理由をお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「実は、クリスマスには、さっき言ったこと以外にもあるんだが、それは、未成年の家族に成人した家族が夜中にこっそりとクリスマスプレゼントを贈り、決して自分がその子にクリスマスプレゼントをしたと知られてはならないというものなんだ」
「なぜ知られてはダメなのですか?」
「スターズに所属している構成員の子供ってね、民間人よりも気配とかに敏感なんだよ。なんせ、種族そのものが人間よりも上位の種族というのもあって、とにかく気配とかには敏感なんだ。だから子供のいる家庭では、子供にクリスマスプレゼントを贈るついでに自分達の気配を隠したり、もしバレたときの言い訳なんかの訓練も兼ねて夜中にこっそりとプレゼントを贈るという風習みたいなものができたんだよ」
私が昔、何で夜中に子供にクリスマスプレゼントをこっそり贈るのかって聞かれた際にそう答えたら、恰もそれが理由となってしまい、以降、それからはそれがスターズではクリスマスプレゼントを子供に贈る真相になってしまったのだ。
まあ、子供としてはそんな大人の事情は知らないため、子供からしたら、朝起きたら枕元に自分が欲しかったものが置いてあるという状況なので、子供と親の両方に利益があるので、お互いにWin-Winの関係になることから、元異世界人でも、今のところそんな理由でも誰も文句なんて喋らない。
「で、結局何を言いたいわけ?」
「たぶん春人さんは、私やお姉ちゃん達成人組で、未成年組の3人にクリスマスプレゼントを贈る手伝いをしてもらおうとしているんだと思うよ」
私の話を聞いてもイマイチ私が何を言いたいのか察することができなかったアイリスが、トリスが私の話から何をしたいのかを察して、それをアイリスに説明する。
「トリスの言う通りだ。だから君達には、渡すときの見張りなんかを頼みたいんだ」
「ですが、春人さんがいれば事足りるなのでは?」
「いや、まあ……確かにシルヴィアの言うのは確かだし、その方が手っ取り早いというのも確かだ。だけど、彼女達が寝静まった後にこっそりと成人組だけでこっそりと私達だけのクリスマスパーティーをやろうかと考えているんだよ」
「スターズでのパーティーの後にですか?」
「いや、流石に疲れるだろうから、本来の日にちよりも1日だけズラしてやろうかと思ってる」
「これ、エリアさん達が聞いたら絶対に怒りそうですね」
トワがエリア達3人が怒りそうな顔を想像しながら引きずった表情をしながらそう言った。
「でもなんで他の3人は、参加させないの?」
「理由は単純に、酒を用意するからだな。流石に未成年を酒の席に参加させるわけにはいかないからな」
※この世界において、15歳からは成人であるのと同時に飲酒が許可される年齢でもある。
「そういうことでしたら、分からなくはないですね。ですが、私達がお酒を飲まないとは思わなかったのですか?」
「まあ、思わなかったわけではないが、そろそろ君達にも酒を飲ませた方が良いんじゃないかと思ってな。これからは、国事やスターズのイベントなんかで酒を飲む機会があるわけだし、少しは酒を飲ませて酒がどういうものかを覚えても良い頃合いだと思ったんだよ。なんせ、よくよく考えてみたら、君達が酒を飲んでいる記憶が全くないし、これは私の予想だが、酒を飲んだことはないんじゃないか?」
「確かに飲んだことはありませんね。拙者は、お酒を飲むよりも食べる方が好きな故」
「まあ、そう言われると飲んだことがありませんでしたね。成人を迎えたのも旅に出てからでしたので……」
「私は、そもそもお酒を飲もうと思ったことがないですね。でも、お姉ちゃんは、時々お酒に興味を示したときはありましたけど……」
「お、そうなのか?」
意外というわけではないが、アイリスが酒に興味を持っていたとはな。
「た、確かにお酒には興味はあったわよ。でも飲んだことは一度もないわ」
アイリスがトリスの言ったことに対して、このように返した。言動からは飲んだように聞こえるが、体の仕草などから、どうやら本当に酒を飲んでいないようだ。
「それで、エリアさん達に渡すクリスマスプレゼントは、どうするのですか?用意するにしたって時間が掛かるものもあるでしょうし……いくらアセドライン商会でも限度はありますよ?」
「トワから伝えてもらうという手も考えなかったわけではないが、エリア達が欲しいものに関しては、以前にコッソリと【メモリーサーチ】で把握済みだから問題ない」
私が自信満々にそう言うと、彼女達は一斉に引いたような顔をした。
「春人様……大変申し訳にくいのですが……それは流石に倫理的どうかと思いますよ」
「いくら春人さんでも、女性の記憶をコッソリと読み取るのは、デリカシーに欠けていると思います」
トワとシルヴィアがそう言うと、他の4人もうんうんと頷く。
「春人様。罪人を裁くのもまた聖女である私の役目です。【ホーリーチェーン】」
エイルは【ホーリーチェーン】を私に向けて発動させると、私を拘束した【ホーリーチェーン】は、私の体を180度回転させて、頭と足の位置を逆にし、ほぼ逆さ吊り状態となっていた。
「あの……エイルさん?これはどういうことなんでしょうか?」
私は思わず、エイルに敬語で状況を聞こうとした。
「少しの間その状態で反省してください!」
「はい」
「あの春人さんが素直に従った!?」
シルヴィアが、私の今の行動が予想外過ぎたようで驚いていた。今の私はこの子達に逆らうことはほぼできないんだよ。なんせ、仕事とかは別として、家庭内での権力は、私よりも彼女達婚約者の方が上だからさ。
その後も話は続いたのだった。
「まあ、そんなわけだから、当日はスターズの制服に着替えたらこの執務室に集合ということで、あの子達にも伝えてちょうだい」
「分かりました。伝えておきますね」
クリスマスパーティーなどについて話終わると、彼女達はソファーから立ち上がり執務室から出ようとした。
「あのさエイル。ひとつ聞いても良いかな?」
「何でしょうか?」
部屋から退室しようとしているエイルを引き止める。
「いつになったらこの【ホーリーチェーン】を解除してくれるのでしょうか?流石の私も少しキツくなってきてるので、そろそろ解除してくれと大変ありがたいのですが……」
そう、あれから時間にして30分は経過しているのだが、一向に解除してくれることはなかった。流石にそろそろ頭に血が上り始めていてまあまあキツイのが現状である。
「あと、2時間はそのまま反省してくださいね。それと、私達がいなくなったからと言って【ホーリーチェーン】を勝手に解除したり、その紙を剥がしたら何の抵抗もしない状態で【ホーリーアロー】50連発をしますのでそのつもりでいてくださいね♪」
エイルは、とびっきりの笑顔でそう言うと、執務室から他の子達と出て行った。エイルはいつの間にあんな過激なことを言う子になったんだ?私の記憶では、確かもっと優しい子だった気がするんだが……。まあ、今はそんなことはどうでも良いか。
ちなみに、エイルが私に貼って、剥がすなと言っていた紙には『私は、デリカシーのない男です』と書かれている。
もしこの状態をスターズや城の人間に見られたら、私の尊厳などがなくなってしまうので、誰も来ないように祈るしかなかった。
《シエラ、聞こえるか?》
《どうしましたか?マスター》
《これ以上頭に血が上るのは流石にマズいから、頭に血が上る量をそっちで調整してくれるか?》
《エイルさんの意向を考えるのであれば許可しかねますが、マスターの生命維持にも関わる内容と判断し、血液調整を行います。ですが、これはマスターが女性の記憶を許可なく覗くというデリカシーのない行動が招いた結果だということを理解し、反省してください》
《もちろん分かってるさ。……お前が時々私のスキルなのか怪しく思うときがあるな》
《失礼ですよ!私はマスター以外の誰のものでもありませんが、彼女達の気持ちを理解することはできます。ですが、彼女達のように実体を持たず、スキルとしてのみしかマスターの存在できない私は、彼女達が羨ましくあります》
《シエラ……》
《彼女達のように肉体を持ち、マスターの側で慰めたいと思ったときもあり、それができないときは、何もできない自分を悔やみました》
《………》
私は、シエラの言葉を黙って聞いた。
《ですが今は、スキルである限り、マスターの中でずっと一緒にいて、一緒に考えたりなどをすることができることが嬉しく感じているんです》
《そうか……》
《ですが、最近は私に何か聞いて来たりするどころか、世間話もしてくれませんがね》
あれ?何だか良い雰囲気だったはずなのに話の流れが変わってきてないか?
《それはだな、えーと、シエラに聞くまでもないことがほとんどだからだ。だからどうしてもシエラに聞くことも少なくなるんだよ》
《確かにマスターは、それなりに優秀ですので、私の力を借りずとも、大抵のことはマスター自身でなんとかしてしまいますが、それでも少しは私ともお話をしてくだされば、私としては、とても有難いです》
《なあ、シエラ。ずっと前から思っていたことを聞いても良いか?》
《何ですか?》
シエラは、少し嬉しそうな声で私に聞いてくる。
《シエラってさ、スキルの割になんだか自我があるような話し方をするよな。確かスキルって自我が宿るということはないと思っていたんだが?》
《ああ。それはですね、エレナント様が、マスターがこの世界に馴染めなかったりしても寂しくないようにと配慮して、私に自我を宿してくださったのです。ですので、現段階では、私以外のスキルには、自我は存在していません》
《なるほど。シエラの自我は、エレナント様の私への配慮だったというわけか》
まさかこんなところで、長年分からなかったシエラの謎のひとつが解決するとは思わなかったな。
「まあ、それはともかくとして、リリーやサラとカナデにも参加の有無の連絡をしなくてはな」
私はそう独り言を言いながら、懐から落ちそうになっていたスマホを取り、まずはリリーに電話をかける。
『はい、どうかしましたか?シリウス様』
「明後日に開催されるスターズでのクリスマスパーティーについてなんだが、参加するか?」
『クリスマスパーティーですか……確か本部の方で行われるんでしたっけ?』
「ああ、本部のイベント広間で行われる予定だ」
『ところで、こちら側はどれぐらい参加できるのですか?』
「こっちからは、私とあの子達が今のところ参加予定だ。だから支部の参加者はお前と最大でもう1人が限界だな」
『分かりました。ではとりあえず、私は参加ということでお願いします』
「分かった。それじゃあ、もう1人増えそうなら私に連絡してくれ」
『承知しました』
私は、リリーとの通話を切ると、次はサラに電話を掛けた。
『はい、もしもし』
「私だ。少し聞きたいことがあるんだが、今大丈夫そうか?」
『はい、問題ありません。それで、如何ないましたか?』
「すまんが、カナデは近くにいるか?いるのだったらついでに伝えたいのだが……」
『ええ、カナデでしたら丁度私と同じく私の執務室にいますよ』
「ならすまんが、スピーカーにして会話をしてくれないか?」
『わ、分かりました』
そして、サラがスピーカーのボタンを押す。
『ねえ、サラ。電話の相手誰だったの?』
サラが、電話を切ったと思っのであろう。カナデが電話のスピーカー越しにそんな声が聞こえて来た。
『ちょ!ちょとカナデ!!まだ通話中よ!それに今スピーカーにしてるからカナデの声も向こうに普通に聞こえてるわ。それと電話の相手はシリウス様よ』
『し、シリウス様!?なんでもっと早く言ってくれなかったの!』
『私が言う前にカナデがああ言ったからこうなったんでしょうに……』
カナデがサラにそうツッコミを入れるが、サラがそう呆れながら言った。
「お前らっていつもそんな感じなのか?特にカナデなんかは、私が知っているのよりも大分抜けてる感じの子って印象だな」
『どう見ても電話を切っていない状態なのに、あんなことを言ってしまうぐらいには、抜けていますね。その他にも抜けてるというか、主に私のカナデに対する苦労話があるのですが、聞きますか?』
「普段真面目な2人の話か。少し聞いてみたくはあるな」
『あの〜、そろそろ本題に入っては如何でしょうか……?』
本人にとって、聞かれたらマズイ内容なのか、明らかに話題を変えようとして来た。
『まず、スターズにいた頃は、カナデと2人で同室だったのですが、獣人の中でも特に性欲が強いみたいで、よくベッドの中で一人でシテいんです』
『ちょ!?』
正直、いくら部下だからといって、女性の性事情を知っても問題になる気がする。少なくともあの子達にバレたらかなりマズイことは間違いないだろう。
『それでですね。そのオカズというのが、シリウス様とスピカ様の夫婦での夜の営みなんです』
『なに人の性事情を話してくれてるの?!』
「おいコラ、ちょっと待て。なんで私達の夜の営みをオカズにシテるんだ?ていうか。その前に、いつ私達のを覗いてたんだ?」
なに勝手に私達のを覗き見してるだ?しかもいつあいつは覗いてたんだ?まったく気が付かなかった……。無駄なところで高等技術を発動させてるんじゃねぇよ!
「まあ、お前の覗き見に関しては時効として、見逃してやるが、今度は罰として、理不尽な仕事量をやらせるからな」
『そ、そんな〜。私の夜の楽しみが〜』
『まったく貴女は……少しは反省しなさい!!』
まったく……。それにしても、まさかここにきてカナデとサラの新たな一面を見ることになろうとはな。
「そろそろ話を本題に戻しても良いか?」
『ゴホン、どうぞ』
「明後日にスターズでクリスマスパーティーがあるのは知ってるな?」
『ええ、毎年同じ日に行われていますので』
「そのクリスマスパーティーに君達も参加しないかというものなのだが……参加しないか?」
『僭越ながら、私達は既にスターズを引退した身ですので、スターズには入れないのでは?』
「いや、もし参加するのであれば、向こうで仮身分証を発行するそうだ」
『そうなのですね。というみたいだけど、カナデはどうする?』
『私としては参加したいけど……そういうサラはどう?』
『私?私は、せっかくだし参加したいと思ってるわよ』
「なら、二人とも参加ということで良いな?」
『はい』
「では、そのように向こうには伝えておく」
『お願いします』
そう言って、二人との通話を切った。これで後は、当日を待つだけだな。
クリスマス回はもう少し続きます。