表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生術師  作者: 青山春彦
第17章 ウルメリア王国
163/176

163話 8・9人目の婚約者とスターズの仕事について

 城に戻った翌日、私は、気晴らしに城にある庭園エリアを歩いていた。この庭園の手入れは、宮廷専属庭師のケルシュと時々厨房が暇なときには、ケルシュの妻であり、宮廷料理長のクリスが一緒に行っている。

 因みにこの時には、あのウルメリア事件から2週間が経過していた。


「あの事件がやっと落ち着いて、この2週間の間に西方諸国同盟に新たにウルメリア王国が加盟した。もう、ウルメリア王国のことは心配ないな。後のことは“諜報貴族”や新たに設置されることになったスターズのウルメリア支部がなんとかするだろう」


 この事件をきっかけに、今まで設置されていなかったスターズの支部を設置することが、人事局と作戦局の局長が協議した結果、ウルメリア支部の設置が決定した。


「あ、春人さん!」

「師匠!」


 私がそんなことを考えていると、いつ城に来たのか分からないリアと現在、城で療養中の身となっているシルヴィアが私に声を掛けてきた。


「リア。いつから来てたんだ?それにシルヴィアまで」

「つい先程です。それで春人さんが何処にいるのかをメイドの方に聞いたら、こちらにいらっしゃると聞いたので」

「私は、リアさんと似たような感じで、師匠にお話があって参りました」

「そうだったのか。それで、いったい何の用なんだ?」


 私は、リアとシルヴィアにそう質問をする。


「先日は、私のためにありがとうございました。それと、父上から聞いたのですが、私のために怒って下さったそうですね」

「別にリアだけのためではないが、リアの件でも怒ったのは確かだな。これで私との偽婚約も終了だな」

「何を言っているのですか?そもそも婚約自体本物では?」

「え?」

「え?」


 私が婚約のことでリアにそう言うと、そのような返事が返ってきて思わずそのような返しをしてしまう。するとリアも私と同じような反応になってしまった。


「この間、皆さんから婚約の承諾は得ましたよね?それに、春人さんもそれを承認しましたよね?」

「あれはてっきり、フィリップスとの婚約を避けるためのものとばかり考えていたから……」

「私と結婚どころか、婚約もしてくださらないのですか?」


 すると、リアの瞳には涙が浮かんでいた。

 ……仕方ない。あの子達と婚約している私が今更と思うが、一応婚約の意思を確認するか。


「……リア。私は君の知っての通り、スターズの……それも最高幹部である五星使徒(ペンタグラム)一柱(ひとり)だ。あの子達と婚約をしていて今更だとは思うが、私と婚約するとなれば、今以上に命の危険がある。もちろん私もできる範囲では守るつもりだ。だが、完全に守れるわけではない。それに、これからはもっと大変になるだろう。それでも、本当に私と婚約をする気はあるのか?」


 少しだけキツく言ってしまっただろうか。だが、これでもし躊躇うのであれば、私とは婚約をしない方がリアのためだろう。


「それでも私は!春人さんと婚約、いえ結婚したいです!!」


 私がそんな風に考えていると、リアは私の予想とは反対の言葉を力強く口にした。


「本当に良いんだな。こちら側に来れば、闇の世界を知ることとなる。そうしたらもう今までの人生には、後戻りはできない。それを分かって言ってるんだな?」

「はい!」

「分かった。その言葉を受け入れよう。リア、これから婚約者としてよろしく頼む」

「はい!」


 こうして、リアと正式に婚約を結んだ。


「ゴホン。とても良い雰囲気のところで大変申し訳ないのですが、そろそろ私からもよろしいでしょうか?」

「えーと、すまん。それで話とは何だ?」

「まずは、お礼を言わせてください。先日は、ついでとはいえ、助けて下さりありがとうございました。師匠のおかげで、奴隷の身分からも無事に解放され、こうして自由に動くことができます」


 シルヴィアは、そう言ってその場で元気になったと証明するかのように体を動かして見せた。


「だいぶ良くなったようだな。だが、まだ体の方は本調子ではないだろうから、くれぐれも無茶な行動だけはしないようにな」

「はい。……それで、私が本当に伝えたいのはこのことではないんです」

「そうなのか?」

「はい。私よりも先にリアさんが先に決まっていたようですが、私もどうか師匠の婚約者にして下さい!!」


 シルヴィアは私に頭を下げて必死にそう懇願(こんがん)した。


「……リアにも言ったが、私と婚約するとなれば、今以上に命の危険がある。それにシルヴィア、君は先日まで奴隷としてかなり辛い目に遭ってきた。そんな君がこの先の出来事に耐えられるか?もちろん、私もできる範囲では守るつもりだ。だが、私でも完全に守れるわけではない。それに、これからは今まで以上にもっと大変な目に遭う可能性もある。それでも、本当に私と婚約をする気はあるのか?」


 シルヴィアがもしこの質問に対して、婚約を躊躇うのであれば、私との婚約はせず、他の奴と結婚した方がシルヴィアのためになるだろう。


「確かに奴隷となってからは、辛いことも沢山ありました。それこそ死にたいと思うことも……ですが、好きな方と一緒にいられるのであれば、それ以上の幸せはないでしょうし、辛いことだって、師匠とならば打ち砕くことができると思っています。それに、既に他の婚約者の方々には承諾を得ています。ですのでどうか、師匠の婚約者の末席に加えさせて下さい!!」


 私が考え過ぎだったようだな。それにあの子達も認めているんなら問題ないか。そういえばこの子は、普段はよそよそしいけど、必要なときには、はっきりとものを言う子だったな……。


「この先、二度と後戻りはできないが良いんだな?」

「はい!」


 シルヴィアは元気よく答えた。


「分かった。これからはよろしくなシルヴィア」

「よろしくお願いします!師匠!!」

「……せっかく婚約者になったんだから、私のことは師匠ではなく名前で呼んでくれ」

「そんな恐れ多い……いえ。はい、分かりました。春人さん」


 そんな訳で、リアに引き続き、シルヴィアとも婚約を結ぶこととなった。

 さて、そろそろさっきからコソコソ隠れてこっちを覗いている子達に声でもかけるか。


「リアおよびシルヴィアとの婚約をアルマー王国国王、望月春人。および、スターズ五星使徒(ペンタグラム)第2席少将シリウスの名の下に承認する。これで良いんだろ?みんな」

 

 すると、草木の陰に隠れていたみんなが姿を見せる。


「やっぱりバレていましたか」


 そう答えたのは、信女だった。


「まあね。でも、なんで隠れてたんだ?」

「それは……」

「こうでもしないとアンタ、リアとの婚約の話をなかったことにすると思ったからよ。それとシルヴィアさんとの婚約もね。その結果、あたし達の予想通りだったわ」


 私の質問に、エリアの声を遮るようにして、アイリスがそう答えた。


「あの、春人様はなんで、リアさんとシルヴィアさんとの婚約に反対ですの?」

「さっきも言ったが、私はスターズ、それも最高幹部の五星使徒(ペンタグラム)一柱(ひとり)だ。正直、フィリップスとの婚約の話で直接私に泣きついて来たリアとついこの間まで奴隷となり何の抵抗もできていなかったシルヴィアが、今後もっと厳しくなるであろう私の側にいれば、精神的に持たない可能性が高いと思ったんだ。それに中途半端な考えだけで私の側にいたいと思うのであれば、すぐにでも普通の生活に戻った方がこの子のためだと考えたんだ。でも、それは私の思い上がりだったようだな」

「リアさんとシルヴィアさんは、春人様のことを本気で愛していますわ。そこのところは理解してほしいですわ」

「ああ。さっきのでよく分かったよ」


 そこまで心配されるとはな。


「これで、リア殿もシルヴィア殿も拙者達と同じ春人殿の婚約者ですね」

「あの、春人さん。少し良いですか?」


 信女がリアとシルヴィアのことを歓迎する言葉を述べると同時に、トワが私の耳元でそのように言った。


「どうした?」


 それに対して、私はトワの耳元でそう聞き返した。


「今回の件で、私達にも何かあったりするのでしょうか?」

「どうして、そう思うんだ?」

「一応、私達もスターズ職員ですし、何かあるのでしょうか?」


 ああ、そういうことね。


「いや、確かにトワ達は、一応スターズ職員だが、だからといって、範囲外の仕事をさせるつもりはないよ」

「今更なんですけども、私達のスターズでの仕事ってなんなんですか?」

「言ってなかったっけ?」

「はい」


 言ってたとばかり思っていたが、言ってなかったけな。


「先程から、お2人で何をコソコソとお話しているのですか?」


 そんな話をしていると、エイルがジト目で私達を見ながらそう言ってきた。


「この間あった五星使徒(ペンタグラム)の会議の件で、トワが自分達も何かしなくちゃならないのかって聞いてきてね。その説明の中で、そもそも詳しい仕事内容を説明してなかったのを思い出したんだよ」

「そういえば、ソフィア様の時のあたし達の紹介の時に役職みたいなのを言ってたような気もするけど、スターズとしての仕事って、一度もしたことないような気がするわ」

「私も、です」

「それは、私も薄々そう思っていました」

「拙者も同感です」


 私がそんな話をすると、アイリスが言ったのをきっかけに、スターズの所属組がそのように言う。


「説明していなかった私も悪いし、君達のスターズとしての役職なんかを説明するから、一旦私の執務室に行こうか」


 私がそう言った後、全員で私の執務室へと向かった。

 執務室に入るが、流石に人数分のソフィアーがなかったので、即席のソフィアーを用意して座ってもらった後、さっきの話の続きをする。


「さて、説明と言っても、みんなはどこから聞きたい?あ、因みに君達の階級は、以前と変わってないからそこら辺は覚えているだろうから省かせてもらうよ」


 私がそう言うと、トワが手を挙げた。


「私から良いですか?」

「ああ」

「私達は全員が佐官。そして、私は特佐。エリアさんは中佐です。その中で、それぞれの役割というのは異なると思うのですが、そこの説明をお願いします」

「分かった。まず、それぞれの役職について説明する。アイリスと信女は、以前の紹介の時に知っているだろうが、アイリスと信女そしてトリスが、スターズ本部所属アルマー王国支部特別捜査官という役職になっていて、主な仕事内容は、派遣されている国で、何か異常事態が発生した場合、その調査などを行ったり、私の指示があった場合には、その任務を行うことだ。そしてエリアは、スターズ本部所属アルマー王国支部特別派遣警務官という役職で、その主な仕事内容は、アルマー支部のスターズ職員の犯罪行為の取り締まりや支部内で発生した事件の捜査。要人警護などだ。トワは、五星使徒(ペンタグラム)第2席付特別補佐官という役職で、その主な仕事内容は、文字通り私の仕事の補佐がメインだな」

「なんだか、私とエリアさんだけ役職が特別な気がするのですが、気のせいですか?」

「実際のところは、みんな特別なんだけども、確かにエリアとトワ。特にトワに関しては特別だね」


 すると今度は、トリスが手を挙げた。


「その役職って、階級によって変わるのですか?」

「階級によって変わるね。少佐の場合は、捜査官。中佐からは、そういった者達を取り締まる立場になることができる。まあ、トワの場合はかなり特別なんだけどね」

「なるほど。では、春人様。その役職には、どのような権限が与えられているのですか?」


 まあ、自分達が与えられている権限は気になるわなぁ。


「順番に説明する。まず、アイリス・トリス・信女の3人のスターズ本部所属アルマー王国支部特別捜査官に与えられている権限は、その派遣国で発生した事件に対する捜査・逮捕。派遣国で活動している最高階級者の補佐。武器の無制限使用。スターズ書類重要度レベル3以下すべての閲覧権だ。次に、エリアのスターズ本部所属アルマー王国支部特別派遣警務室警務官に与えられている権限は、支部のスターズ職員に対する逮捕・取り調べ。支部内事案の捜査指揮。要人警護の警護計画・実行。スターズ書類重要度レベル4以下すべての閲覧権だな。次に、トワの五星使徒(ペンタグラム)第2席付特別補佐官に与えられている権限は、私の統合管轄内の支部への命令権。監獄島への単独入島。スターズ書類重要度レベル5以下すべての閲覧権など多岐にわたる」

「トワさんだけ権限が凄いですね……」


 まあ、補佐官だしね。


「それは、トワが特佐ということにも関係している。特佐はもう上級幹部だ。大佐までは予備役で所属していたが、特佐からは正式な幹部職員であり上級幹部となる。だからこそ、指揮経験が求められるから、私の下でスターズでの指揮の行い方などを学ばせるために、その役職に就かせたんだよ」


 私が持っている権力を全力で使って、みんなの役職を与えたからな。本来存在する役職に特別選任することによってのみ許可を得たから、本来の特別が入っていない役職よりも権限の制限は多少あったりする部分もあるが、どちらもほとんど変わらないから、別に私としては構わないと思っている。


「春人様」

「テレス。どうかしたのか?」

「ふと、思ったのですけれども、(わたくし)達もスターズに入った方がよろしいんですの?」


 今言った、テレス達というのは恐らく、テレス・エイル・リア・シルヴィアのことだろう。


「いや、必ずしもスターズに所属しなければならないというわけじゃないから、嫌なら別に所属する必要はないよ」

「春人様的には、私達にスターズに入ってほしいですか?」


 エイルが私にそのように言ってくる。


「正直言ったら、スターズに入ってほしくないっていうのが本音だな。だが、元帥としての白夜や私以外の五星使徒(ペンタグラム)としては、君達……特に神級魔術師であるエイルが所属すれば、スターズでも数少ない回復役となるから助かるからな。それにスターズは、ああ見えても、人手不足の問題もあったりするからな。あっちとしては、少しでも人材が欲しいんだろう」

「春人様はどうなんですの?」

「さっきも言った通り、君達の意思を尊重するが、できれば危険な目にはあってほしくないから、入ってほしくはないな」


 すると、テレス・エイル・リア・シルヴィアの4人が集まって、何かを話し合う。

 その数秒後に話し合いが終わったようで、それぞれがさっきまでいた場所に戻った。

 そして、さっきの話し合いの結果を伝える役になったのは、この様子からして、どうやらエイルのようだ。


「スターズに入るのかどうかを4人で話し合いました」


 うん。それは、さっきのから見ても分かる。


「私達4人で話し合った結果、全員一致で、スターズに所属することにしました」

「そうか。スターズに入る………え?すまん。聞き間違いか?すまんがもう一度言ってくれるか?」

「ですから、先程4人で協議した結果、私達もスターズに入ろうと思います」

「……本当に良いのか?今ならその言葉を撤回することができる。だが、スターズに所属してしまえば、スターズから抜けることは、ほぼ不可能になる。それでも、スターズに所属する覚悟があるか?」


 少しだけ威圧(プレッシャー)を与えながらそう言った。


(わたくし)達のことをあまり舐めないでほしいですわ。この場にいるのは全員、春人様の婚約者、春人様の側に立てるようにしようと努力しようとする方の集まり。その程度の威圧で(わたくし)達の意思は折れませんわ!」


 テレスが私にそう言うと、エイルとリアそしてシルヴィアが、うんうんと首を縦に振りながら頷いていた。


《シエラ。この4人を本当にスターズに関わらせても良いのだろうか?》

《もう既に、マスターというスターズの最高幹部と関わりを持っていると思いますが?》

《そういう意味じゃない。私が言いたいのは、これ以上こちら側に彼女達を踏み入れさせても良いのかってことだ》

《既に、他の方々もスターズに所属しているわけですし、彼女達をスターズに所属させるのに私は反対しません。また、マスターが思っている以上に彼女達は、素質を持っています。ですので、スターズに所属できるだけの存在価値はあると思います》

《お前がそこまで言うほどか……》


 そして私は、そんな4人のことに対して、シエラとともに少し考える。


「……分かった。君達の意思を尊重して、スターズの採用試験への参加を許可する。ただし、スターズの採用……特に君達の受けるキャリア採用試験は、実技試験だけでなく、筆記試験も行われる。だから、その2つの試験への対策を行う。したがって、今日は試験についての説明を行い、明日から本格的な講習会を行う。いいね?」

「分かりましたわ」

「はい」

「分かりました」


 この日から数週間後に行われたスターズキャリア採用試験にて、4人とも合格することができた。4人のそれぞれの階級は、テレスとシルヴィアが中佐、エイルが大佐、リアが少佐となった。

 4人ともスターズに所属することなったため、テレスはエリアと同じ役職。リアはアイリス達と同じ役職。そしてエイルは神級魔術師の『治癒の魔術師』ということも考慮して、五星使徒(ペンタグラム)第2席付特別医官にした。またシルヴィアは、スターズ本部所属アルマー王国支部特別派遣警務室副室長となった。

 これで、4人ともスターズのキャリア採用試験に合格したし、後はあの4人がもっと実力と経験を身に付けてくれれば文句はないな。

 私はそう思いながら、城の執務室で残っていた仕事を片付けていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ