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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第17章 ウルメリア王国
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162話 ウルメリア事件スターズ事後会議

「それでソーラル?緊急会議を行うこととなった理由は、本来この五星使徒(ペンタグラム)の会議に参加することのない元帥が参加していることと関係があるのか?」

「ああ。今回のウルメリア王国で発生した事件が、想定以上に被害が出ていたからな。それに、今回サフラン元側妃らによって操られていたという異形の怪物は、明らかに『フェアラート』の呪特部隊である“ツァウバー”が製作に関与しているだろう。この異形の怪物について春人から説明がある」


 そして私が椅子から立ち上がる。


「まず、この異形の怪物の正式名称は『絶滅牢の人形』と言う。そして、この『絶滅牢の人形』の能力は、術者がコントロールしている場合は、その術者の指示で行動をするが、一定の時間が経過してしまうと、術者自身でもコントロールが不能となるため、その前に停止命令をするか、破壊する必要がある。また、術者がいないかコントロール下にない『絶滅牢の人形』は、その本体から円形状に呪いを拡げて行き、その呪域では全ての生物が老若男女関係なく、死滅するという能力を持っている。また、その製作材料にされた人間の量が多ければ多いほどその効果を発揮する」

「それって逆に言えば、材料となる人間が少なければ少ないほど、効果は小さいってことかしら?」

 

 イレルリカが私の説明に対して、そのような質問をする。


「その考え方で、基本的には間違いない。ただし、影響が少ないとは言っても、例え材料となる人間が1人だったとしても、1日もあれば都市国家ぐらいならば簡単に滅ぼすことが可能だということを覚えていてほしい」

「分かったわ」

「他に何か質問はあるか?カーラル」


 私がイレルリカの他に質問がないか聞くと、カーラルが手を挙げた。


「その『絶滅牢の人形』だったかな?それに対する対策というのは、存在するのかい?」

「これといった対策は存在しない。あるといえば、そのものの製作をさせないことぐらいだろうな」

「それだけなのかい?」

「他にあるとすれば、その『絶滅牢の人形』に埋め込まれている術式を破壊することぐらいだな。だが、その術式は、本体よりも固く守られているため、解除や破壊が困難だから、本体を破壊した方が早いかもしれんな」

「あの『絶滅牢の人形』というのは、君の世界のものなのかな?」


 カーラルが突然そのようなことを聞いてきたが、答えても問題ないだろう。


「ああ、そうだ。だが何故、奴らが『絶滅牢の人形』の製作方法を知っているのかは不明だ。偶々なのかそれとも私と同じ立場だった異世界人が関与しているのか……それは私にも分からない」

「うん。分かった」

「他に何か質問はあるか?」


 見渡すが、誰も挙手をしない。


「どうやらいないようだな。この事案で使われた『絶滅牢の人形』又はそれに似た特性のものがあったりした場合は、私に連絡をしてほしい」


 この場にいた全員が首を縦に振った。


「ソーラル」

「ああ。これで春人からの説明は以上となる。次に元帥閣下からお願い致します」


 そして今まで座っていた白夜が椅子から立ち上がる。


「今回のウルメリアでの一件では、民間人に多大なる被害者が出てしまいました。今回の事件の主犯は、サフラン一派のトップである元ウルメリア国王側妃であるサフラン・ハイス・ウルメリアらによる犯行でしたが、更にその背後には、先程のシリウス少将の説明にあった通り、『フェアラート』の“ツァウバー”がいる可能性が極めて高いです。ですので、これまで以上に『フェアラート』の動きを監視するのと同時に、何かあり次第、すぐに五星使徒(ペンタグラム)の誰かが事案に対処できるようにしておいてください。また、現在それぞれが統合管轄区域を持っており、他の統合管轄官の管轄区域で活動をする場合には、原則として、その統合管轄官の許可が必要ですが、その活動制限をこの場をもって、元帥である私の名の下に、その活動制限を廃止します。以上これらの内容を関係各所に通達をするようお願いします」

『ハッ!』


 全員が椅子から立ち上がり、白夜に向けてそのように返事をしながら敬礼をする。そしてその3秒後にまた椅子に座った。


「他に何かあるやつはいるか?」


 ソーラルがそう全員に聞くと、春奈が手を挙げる。


「本事案とは関係ありませんが、よろしいでしょうか?」

「ああ、構わん」


 ソーラルが短くそう返答する。


「先日、私の諜報部隊であるカタスコポスから、ベラトリックス中将の統合管轄区域内にあるシルバレイン王国の東方にあるイシュタリカ神王国に一番近い港町で『札の勇者』を発見したとの報告がありました」

『ッ!?』


 その瞬間、報告をする春奈以外の全員が驚く。


「よりによって私の統合管轄区域内で発見されるなんて……」

「それよりも、このタイミングで『札の勇者』は、正直タイミングが悪いとしか言いようがないな」

「それは、どういう意味でしょうか?」


 春奈がそう質問をする。


「『札の勇者』は、その名の通り、呪符などを使用するため、その関係上どうしても、呪いなどに関して詳しい場合が多くなるんだ」

「つまり、今の『札の勇者』の発見の情報によって、ウルメリアでの一件で裏で糸を引いていたのが、『フェアラート』の“ツァウバー”以外にも、『札の勇者』が関与している可能性も出て来てしまったということか」


 ソーラルが、私の言いたいことをそうまとめて言った。


「まあ、そんなところだな」

「……なるほど。ならば、これからは『フェアラート』だけでなく『札の勇者』の動向も調べた方が良さそうね」


 イレルリカがそのように言った。


「とりあえず一旦、これにて、緊急会議を終了する。ただしこの後、俺とカーラル以外は、その『札の勇者』の対応について話し合ってもらいたい」

「このまま話し合わないのですか?」


 ソーラル『札の勇者』の対応を私達に任せて、会議を終了しようとしたのに対して、春奈がそのようにソーラルに質問をする。


「すまないが、俺とカーラルとで、合同任務がこの後、入ってるんだよ」

「わざわざ、ソーラルとカーラルの2人が行かなくてはならない程なのか?」


 私は思わずそのようにソーラルに問いかける。なんせ、スターズ最高戦力とも言える五星使徒(ペンタグラム)の第1席と第3席の2柱が同じ任務に就くなんて余程のことがない限りあり得ないことなのだ。だからこそ、どうしてもその任務内容が気になってしまった。


「あくまでも調査任務だ。調査内容は、海上活動を行っている『フェアラート』の艦隊の動向を探ることだ。そのため、第六艦隊を調査隊として調査に向かうことになり、俺達は、旗艦赤城に搭乗することになった」


 確か第六艦隊は、空母赤城を旗艦とした、戦艦伊勢、霧島。空母赤城、加賀。重巡洋艦高雄、摩耶。駆逐艦満潮、霞、霰。潜水艦伊400、伊401、伊402で構成される艦隊だったな。

 調査のために艦隊を動かす必要があるのかと思うが、相手が相手だからな。こうした方が良いんだろうな。


「それじゃあ、俺達はこれで失礼する」

「では、お先に失礼」


 2人はそう言って、会議室から出て行った。


「ではこれより、『札の勇者』対策会議を行う」


 2人がいなくなったので、代わりに私が、会議の進行を行う。


「『札の勇者』の動向は、先程の報告でもあった通り、シルバレイン王国の東方港町で主に活動をしている。現在の『札の勇者』を監視しているのは、カタスコポス以外にはいないか?」


 イレルリカの方を見るが、やはりさっきの反応からして、監視しているわけないか。


「やはりいないようだな。『札の勇者』他の勇者に比べても発生率は少ない分、その特徴というのはあまり分かっていない。だから、最大限の注意を払わなければならない。そこで、『札の勇者』専用の調査部隊を編成しようと考えている」

「シリウス少将。その調査部隊の編成はどのようにするのですか?」


 元帥としての白夜が質問をする。


「調査部隊の基本的な構成は、ベラトリックスの統合管轄区域内ということを考慮し、ベラトリックスの直属特殊部隊『ディフェンス』の数十人。そして『シールズ』や『カタスコポス』からも数名。また、元帥閣下直属特殊部隊『モルテ』からも数名の合同調査部隊を考えています」

「調査部隊にしては、人数も多いですし、些か過剰な気もするのですが……」

「『札の勇者』の強さは正直言って、未知数です。ですので、少し過剰な方が良いと私は思います」

「分かりました。では、用意する隊員はこちらの方で用意しますので、細かな編成はそちらでお願いします」

「承知しました。あ、イレルリカ。少し良いだろうか?」


 私は、白夜に返事をした後にイレルリカに話しかける。


「何かしら」

「『札の勇者』の調査部隊の総司令を任せたいんだが、頼めるか?」

「あら、私で良いの?」

「統合管轄官であるイレルリカの方が何かと都合が良いだろうからな」

「分かったわ。それじゃあ、私は一足先にシルバレイン支部の方に向かってるわね」


 そう言ってイレルリカは、転移魔法でシルバレイン支部へと向かった。


「残りの者達は、有事の際に備えて各自待機とする。ではこれにて、『札の勇者』対策会議を終了する」


 ウルメリア王国事件の事後と『札の勇者』の対策会議会議が終了し、私は城へと戻った。

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