161話 愚者の末路
霊界へと旅立つ彼らの魂を見送った後、3人の方へと体を向ける。
「さて、次はお前達の番だ。ただし、楽に終わると思うなよ。お前達があの子達をはじめとして、苦しめてきた者達の苦しみの倍の苦しみをお前達に与える。それが、被害に遭って死んで逝った者達への弔いになるはずだ」
「ふざけんなよ!なんで俺までやられなけりゃならないんだよ!!悪いのは母上と父上だろうが!」
私は、目にも止まらぬ速さで、殺気を放ちながら、フィリップスの目の前まで行く。
「さっき、あの子達のためと言ったが、少し訂正しよう」
私はそう言った直後に、フィリップスの首を手で掴みながら身体を浮かせる。その時の私の目は、その視線だけで人を殺せる程のものだったと思う。
フィリップスはその視線を見て、恐怖以外の感情が出てこなかった。
私は、懐から1枚の写真を出す。
「彼女のことを憶えているか?」
「なんで…貴様が…俺の…奴隷を…知って…いる……」
「良いだろう、教えてやる。お前が奴隷として散々痛めつけたこの子は、私の愛弟子なんだよ!!」
そう言って、私は更にそいつの首を強く握った後、円盤投げの要領で、それを壁にめり込む勢いで投げた。そして、地面から6メートルぐらいの高さの場所にめり込んだフィリップスが、地面へと落下する。壁に打ち付けられた勢いで、背骨が粉砕しており、今にも死にそうになっていた。
「こんなことなら、回復役にエイルを連れて来れば良かったな。まあ、エイルほどではないが、この程度ならば、私でも治せるし、さっさと治すか。【アルティメットヒール】」
意識を飛ばしているフィリップスに【アルティメットヒール】を掛け、怪我を治す。そして、傷が治ったところで、目を覚さないフィリップスを起こす。
「おい、ゲスが。いつまで寝ているつもりだ?」
そう言って私は、顔面を蹴り上げて、目を覚させる。
「何しやがる!?」
「目覚まし代わりの顔面キックだ。お前もシルヴィアにやっていたそうじゃないか?だったら問題ないだろ?」
「ふざけんな!俺を誰だと思ってやがる!!」
「ただの腐れ外道だろうが!」
私は、殺気を放ちながら奴にそう言い放つ。
「フィリップスちゃん!」
すると、近くにいたサフランがフィリップスに近づく。
「外道でも、自分の子供は大事か?」
「当たり前じゃない!この子は、そこら辺の卑しい生まれの奴等とは違うのよ!」
「自分の子供が大切なのは理解できる。だが、お前のガキは、元々王族の血が入っていなかった。そこまでならば、お前らの元々の身分で、貴族令息くらいにはなれたかもしれん。だが、お前達の行動により、お前達の身分も剥奪され、今はお前が言うところの卑しい生まれのガキになったんだよ。もちろん、お前達もだがな」
自分達が特別だと本当に思い込んでいるようだな。まずは、そこから直していく必要がありそうだな。
「そこのアンタ達!何そんなところに立ってるの!さっさとソイツを始末しなさい!!」
「「「は、はい!!」」」
サフランにそう命令された騎士3人がこっちへと向かってくる。こいつらは確か資料の中にあった、始末しても構わない3人だったな。だったら問題ないか。
「愚かな……」
私はそう呟き、向かってくる3人組の騎士の首を音速の速さで斬り落とした。その斬り落とした3人組の騎士が倒れるのと同時に、その切断された3人分の首がサフラン達の方へと転がって行った。
サフラン達は、今何があったのか理解しておらず、その場で固まっていた。
「え?」
「は?」
そんな声を出して、何も出来ずにいる。まあ、普通の人間が音速の斬撃を見えるはずがないのだから、こうなってしまっても仕方ないだろう。
「きゃあああ!!?」
「うわぁああ!!?」
そして、状況が理解してきたサフラン達がそのような悲鳴をあげる。
これで邪魔は入らないな。さてと、さっきの続きに戻るか。
私はそう思いつつ、私が持っている魔眼のひとつである『歪曲眼』を使って、フィリップスの両手足を歪曲させ、立てないようにする。
「ギャアアアア!!」
フィリップスは、そんな醜い悲鳴をあげながら、床へと崩れ落ちる。
「あの程度で終わったと思ったか?だとすれば残念だったな。お前にとっての地獄はこれからだ。あ、そうだ。お前が先日までいたぶっていた奴隷の女の子はな……私の愛弟子だった子なんだよ。そう言うわけだから、覚悟するんだな」
私は、床へと崩れ落ちていたフィリップスに殺気の籠った視線を向けながら、そう言った。
「……そろそろ、そんなところで覗き見てないで、姿を現したらどうですか?元帥閣下」
「やはり気付かれていましたか。シリウス少将」
私がそう言うと、扉の陰に隠れていた白夜が、扉の陰から出て来ながらそう言って近づいて来る。
「それで、何のようですか?」
「いえ、このままでは、そいつだけでなくそこの2人も殺されないかと思いましてね」
「もし、そこの2人も私が始末すると言ったらどうしますか?」
私は、少しだけ殺気を込めながら、そう白夜に問いかける。
「止めます」
「何故ですか?今回の件に関しては、私にすべて一任されているはずです。そこに干渉されるのは、矛盾しているのでは?」
「確かに矛盾しているかもしれません。ですが、状況が変わったので、その2人から事情を聞かなくてはならなくなりました」
「もしかしてそれは、先程の『絶滅牢の人形』に関係していますか?」
「はい。先程のその『絶滅牢の人形』?がその2人だけで作れるとは到底思えません。ですので、その背後にいるのが何なのかを調べる必要があるため、生きて捕える必要があるのです」
確かに白夜の言う通りだ。この2人が『絶滅牢の人形』の製作方法を知るはずがない。だとすれば、こいつらの背後に何者かがいるのは確かだ。そうなってくると、恐らく『フェアラート』それも、こういった呪いなどに特化した部隊……“ツァオバー”が関係しているかも知れない。
「確かに背後にいる存在などに関しては無視できません。……分かりました。では、そこの2人はそちらにお譲りします。ですが、コイツは私の方でやらせて下さい」
「分かりました。そこの2人さえ確保できればそれで構いません。それに、シルヴィア殿を奴隷として散々弄んだそこの小僧を許すつもりはありませんので、地獄すらも生温い責苦を与えて下さいね、父上」
「当たり前だ」
「それが聞けて満足です。【コンクリートチェーン】」
「「なッ!?」」
私がそう言うと、白夜は満足したようにそう言いながら、2人を素早く拘束する。そして、部隊編成に含まれていない者達が扉の向こう側からやって来た。
確かあの者達は、元帥(白夜)直属の中でも最強と恐れられる特殊部隊“モルテ”だな。わざわざあの部隊を連れて来るとはな……余程の殺意があることだけは分かるな。
スターズの中でも“モルテ”という特殊部隊は特別な存在だ。元帥直属の特殊部隊で、元帥からの命令ならばどのような任務も成功させるだけでなく、スターズの裏切り者の始末や残忍な拷問などを行ってから殺すことが得意で、その構成員全員が、拷問官の資格を持っているのが特徴の特殊部隊であり、その特徴や部隊の情報の少ないうえに、シャドウ評議会員や五星使徒に匹敵する程の実力者も複数在籍している噂もあったりするため、スターズ内では、恐れられている特殊部隊なのである。
「では、この2人は連れて行きますね」
白夜はそう言うと、2人を拘束した【コンクリートチェーン】を持ち、そして“モルテ”の隊員の1人が開いた【ゲート】で、本部まで戻って行った。あの2人は恐らく、本部内で取り調べを受けた後、監獄島へ投獄されることだろう。更に白夜のことだから、あの2人はアスラルの所に送られただろうな。
「あっちは白夜に任せるか。さて、続きを始めようか。【創造】」
【創造】によって、フィリップスを固定させるための十字架を用意する。
「なんだそれ……」
「見て分からんか?十字架だ。まあ、今回は少し特殊なやり方を用いるがな」
「は?何言って───」
「【ダークチェーン】」
フィリップスが最後まで言い終わる前に、私は【ダークチェーン】で、床に崩れ落ちたままのフィリップスを十字架に固定する。この固定する作業と同時に、先程まで『歪曲眼』で捻じ曲げていた両手足を【ハイヒール】で治療する。
「貴様は凌遅刑というものを知っているか?この凌遅刑というのは、人間の肉体を少しずつ切り落とし、長時間にわたり激しい苦痛を与えながら死に至らしめる処刑方法だ」
「ま、まさか……!?」
「その凌遅刑を貴様に執行する。【ストレージ】」
【ストレージ】から、拷問用の斬りにくい刃こぼれしていて、尚且つ若干錆びついた剣を取り出す。
「や、やめ……」
そいつは、泣いてそう訴えるが、私がそんな言葉を聞き入れるはずがない。
「お前に子孫を残す価値はない!!」
私はそう言って、そいつの汚いものを斬り落とした。
「ぎゃああああああああ───!」
フィリップスはそのような悲鳴をあげた。なんせ男の急所で象徴とも言える物を斬り落としたのだから、どれだけ身体を鍛えていたり、痛覚が鈍い者でもその痛みは計り知れないものだ。
「何をこの程度で悲鳴をあげているんだ?この拷問は、まだこれからだぞ?あと、お前に教えておいてやる。私の大切な者達に危害を及ぼした者達はな、揃って死ぬことすらできない絶望を永遠に味わうことになるんだよ。だから、もうお前が苦しみから解放されることは、ほぼ永久的にないだろう」
私の言葉を聞いて、絶望感に苛まれた顔になり、気絶しそうになっていたが、気絶して苦痛を味わうのを感じさせないようにするために【ストレージ】から注射器と薬品を取り出しす。そしてまず、精神刺激薬を投与して、目を覚まさせた後、精神を安定させるために向精神薬を投与する。更にこれをフィリップスが気絶する度に繰り返した。因みにこの凌遅刑は、その方法故に時間が掛かってしまう。
《シエラ。私とこいつ以外を【クロノスロック】この辺り一帯を空間ごとすべての者達の時間を停止するのと同時に、こいつに『思考加速』をかけてくれ》
《了。速やかに実行します》
【クロノスロック】により、私とこいつ以外の時間が止まった。
そして再度、そいつの肉をじっくりと削ぎ落としていく。また、肉を削ぎ落としていき、肉体が薄くなって死にそうになったタイミングで、【アルティメットヒール】で治療をして、私が削ぎ落とした肉体を再生させていく。回復させた後に十字架から解放するが、逃げられないように私の殺気で体を動けないようにした。
《シエラ。【クロノスロック】を解除してくれ》
《了。【クロノスロック】を解除します》
そして再び、辺り一帯の時間が動きだした。
「フィリップス・ハイス・ウルメリア。貴様への処分を決めた。貴様をタルタロスの最奥へと幽閉するものとする。【タルタロス】」
私が【タルタロス】を発動させると、辺り一帯が暗闇に包まれ、その中に大扉が現れ、その扉が開くと、その扉の中から無数の手が伸び、そのうちのふたつの手がフィリップスの足首を掴んだ。
「や、やめろぉおおおおおおおッ!!」
私の殺気によって抵抗ができなかったそいつは、何の抵抗もできぬまま、扉の先にある地獄の空間へと引き摺られて行った。
そして、そいつが【タルタロス】の中に入ると、その大扉はゆっくりと閉まっていく。これは、中に入ったヤツに対して絶望感を与えるための演出のひとつとなっている。
完全にその扉が閉じると、すぐに辺り一帯のが元に戻った。
「これで終わったな。あ、あの子達の周りに張った結界を解除しないとな」
みんなの周りに展開していた結界を解除して、彼女達の所へと向かった。
「お疲れ様。みんなは怪我とかしてない?」
「大丈夫よ」
「そうか」
「それにしても、相変わらず春人殿の【タルタロス】?は凄いですね。ですが、拙者の思い違いかも知れませんが、幾分か、以前に見た時よりも凄い進化していませんか?」
【タルタロス】のことを覚えていたんだな。それにしても、信女からそのようなことを聞かれるとは、思いもしなかったな。
「前よりも変わって、より、中へ入れる際の絶望感を与えるのが高くなったね」
「絶望感……ですか。確かにあれをこの身に受けると考えるだけでゾッとします」
「そうだろうね。だけど、あれは私のオリジナル魔法だから、他の者が同じ魔法を使えることはないだろう。つまり、私を本気で怒らせなければ、発動することはないということだ」
「確かにその通りですね。春人様は、世界でも有数の実力者です。そのような人物と敵対しようなんて馬鹿げてますからね」
「トワよ。世の中には、私よりも怒らせてはならない人物も存在しているんだよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ。それよりも、今は即位式の件をなんとかしなくちゃな」
即位式の途中で、やる計画だったとはいえ、流石に予想外のことが起きたから、被害が当初の計画よりも大分出てしまったな。
「アルマー国王陛下、お陰様で助かりました」
「無事だったようだな。マリウス殿下いえ、ウルメリア国王陛下」
もうあの時、正式にウルメリア国王に即位しているわけだから、こっちの方で呼んだ方が良いだろう。
「その呼び名は、慣れませんね」
「国王に就任したばかりなのだ。呼ばれ慣れなくても仕方ないだろう。まあ、国王となって最初の仕事がこんな仕事になって大変だとは思うがな」
「即位した限りはやってみせます。それに亡き弟にみっともない姿は見せられませんからね」
「フッ……そうだな」
その後、拘束した者達を地下牢へ幽閉したり、城の修繕作業を行った。
更にその数日後、サフラン一派によって犠牲となり、尚且つ葬儀や埋葬などが行われなかった者達の葬儀や埋葬が雨が降り頻る中、3日間行われた。
そして、その最後の埋葬が完了した後、スターズ本部で、五星使徒の緊急会議が行われることとなった。
「ではこれより、五星使徒緊急会議を始める」
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