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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第17章 ウルメリア王国
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157話 正妃の救出

オーシャンハート公爵のところへ【ゲート】でやって来た私達は、オーシャンハート公爵の執務室で椅子に座り、今後の方針を話していた。因みに『暗黒群(クラヤミ)』達は、既にダークリー邸を包囲し、いつでも作戦を実行できる状態となっている。


「それでは王家の乗っ取りではないですか!?ですが、スターズ……それも最高幹部である五星使徒(ペンタグラム)の方がいればかなり心強いです」

「それにしても“諜報貴族”の幹部が何たる様か……」

「申し訳ありません、シリウス様」

「春人殿。その“諜報貴族”とは何ですか?」


 信女が私にそう尋ねる。まあ、今の時代では、スターズの者でさえ、知る者は少なくなってきてるからな。知らなくても無理はない。


「“諜報貴族”とは、スターズに協力的なその国所属の貴族のことで、国に忠義を持っているのと同時にスターズにも忠義を誓っている存在だ。そして“諜報貴族”にも階級が存在していて、その中でもオーシャンハート公爵は、宰相級の階級であるため“諜報貴族”の中でもかなりの発言権などを持っている。だが、現状は今の通りだ」

「申し訳ありません……」

「私は謝罪の言葉を聞きたいのではない。まあ、今はそのことはいい。それよりも、先程までの続きだが、これから30分後にダークリー邸の幽閉されているソフィア正妃を救出する。その際、ソフィア正妃が幽閉されている塔の周りには、多数の警備兵がいることが予想される。そのため、ダークリー邸の周りに、一緒に来た者達と既に現地に待機済みの者達を配置する。その後、ソフィア正妃の救出が完了次第、ダークリー邸にいる者達をスターズ職員及び国際警察の警官に拘束させる」


 国際警察に関しては、既にこの国に入国済みである。


「それで私は何をすればよろしいのでしょうか?」

「この国の“諜報貴族”はオーシャンハートのみだったか?」

「いいえ。我がオーシャンハート家の他にもグライスナー伯爵家、ウェズリー伯爵家、アララート子爵家、ラーゲンベルク男爵家があります」

「それで全部か?」

「はい」

「では、この国にいる全ての“諜報貴族”に対して、国王とマリウス王子の護衛及び国王派とサフラン派の貴族のリストを製作。また、近日中にあると思われる現国王の退位と新王の即位式に対する厳重警戒を行うように通達せよ」

「は!」

 

 オーシャンハート公爵にそう伝えると、すぐさま他の家に伝令を送りに行った。


「さて、30分後に作戦を開始すると言ったが、現地の者達とも改めて作戦会議を行うから、君達も一緒に来てくれ」


 テーブルの上にオーシャンハート公爵へのメモを残して、ダークリー邸の敷地外に【ゲート】を開く。

 そして近くに設置されたスターズと国際警察の合同作戦本部のテントがあったので、中へと入る。

 因みに今の私の服装は、新調したばかりのスターズの制服にマントコートを見に纏った格好である。


「中の状況はどうなっている?」

『お疲れ様です。(シリウス)少将』

「中の状況ですが、警備が想定以上に多いですね。ですが、作戦に支障がない範囲ですので問題ありません」

「そうか」


 スターズ職員の1人からの報告を聞き、そう一言だけ言った。

 私は、正面へと移動する。


「ではこれより、ウルメリア国王王妃、ソフィア正妃の救出及びダークリー邸の者達の拘束作戦の会議を始める。救出班についてだが、ソフィア正妃が幽閉されていると予想される場所に突入するのは、私、信女少佐、アイリス少佐、エイル神級魔術師、マリウス第二王子の5人だけとする。各自、作戦準備に取り掛れ!」

『は!』


 その場にいた者達が一斉に敬礼をし、作戦準備に取り掛かった。


「それじゃあ、私達も行くぞ」

「春人殿。まだ作戦開始時刻まで、時間があると思うのですが」


 時計を見ると、まだ作戦開始時刻まで20分あった。


「あと20分だな。だが、作戦会議に参加が出来なかった監視班などにも伝えたいことがあるからな。監視班と話をすれば時間になるだろう」


 作戦本部のテントから出て、監視班の担当となっていたナカサカとローレンスの所へと向かった。


「ナカサカ、ローレンス。状況は?」

「以前、状況変わらずですね。警備の数は少し多いようですが、数が多いだけで、その実力はそれほど高くありません」

「そうか。では、君達監視班に今後の作戦概要を説明する。この作戦概要を他の監視班にも無線で伝えてくれ」

「了解」


 監視班には、他の部隊とは違った内容があるので、そこら辺の違いなどの説明を行いながら作戦の説明を行った。


「───ということで、以上が今作戦概要となる。何か質問はあるか?」

「「ありません」」

「ならば良い。それでは、後のことは頼んだぞ」

「「了解」」


 私達は、その場を後にした。


「さて、作戦開始時刻の5分前だ。早速敷地内に入るぞ」


 ウルメリア城に潜入した時と同じように【フラウト】と気配遮断を行い、他人から見られないようにした後、人が通らない場所に【ゲート】を開き、敷地内へと侵入した。


「【サーチ】」


 一応、本当にあの建物の中にソフィア正妃がいるのかを確認するために【サーチ】で、その建物の中を調べると、あらかじめマリウスから【メモリーサーチ】で情報を得ていた通りの特徴をしている人物がその建物内にいた。間違いなくあの建物内にソフィア正妃がいるな。

 さて、作戦開始時刻1分前か。


《シエラ、作戦開始時刻と同時に、敵警備兵に対し【パラライズ】を発動》

《了》


 私は、持っていた懐中時計の秒針を見る。そして、懐中時計の秒針が作戦開始時刻を回った。


《敵警備兵に対し【パラライズ】発動します》


 その言葉と同時に、敵警備兵が一斉に倒れ、動かなくなった。

 私達は、そのまま敵警備兵を素通りし、建物内へと侵入する。もしも撃ち漏らしがあったとしても、敷地外に配備している監視班が即座に対応するから心配はいらない。そもそも【パラライズ】で動けなくなって倒れている奴は、スターズと国際警察が拘束する手筈となっている。あ、屋敷にエドモンドがいないことは確認済みである。

 そして、ソフィア正妃がいる建物内に入って【フラウト】と気配遮断を解除する。


「ここからは、この仮面を着けてほしい」

「さっきまでと同じじゃ駄目なの?」

「アイリスの言いたいことは理解できる。だが、ここから先は、姿が見えていた方がやりやすいんだよ。だけど、私達の素顔がバレるのはまずいから、その仮面を着けて変装してほしいんだよ」

「こんな仮面で意味あるの?」

「春人様。この仮面ですが、何か魔力が内包されているようですが、どういった仮面なのですか?」

「流石エイル。その仮面の内包されている魔力に気付いたか。時間もないから詳細は省くが、その仮面は『幻影の仮面』と呼ばれる仮面で、私が製作して【ストレージ】内に入れていたままだった変装用の魔導具だ。その仮面の特徴としては、仮面を装着すると、その装着した人物の姿がまったくの別人に変わるというものだ。ただし、その変化する人物は、まったくのランダムで、使いどころが難しいから放置していたんだよ」

「なるほど。では、この仮面を着けさせていただきます」


 エイルがそう言って、仮面ん装着する。すると、エイルがまったくの別人となった。


「上手く作動しているようだな。それじゃあ、みんなも早く仮面を着けて上に行くぞ」


 仮面を装着し、螺旋階段を登る。螺旋階段を走りながら登っていると、突如、上の方から殺気を感じて足を止めた直後、ナイフが4本私に向かって飛んで来た。しかも、そのどれもが、急所を狙った攻撃だった。

 私は、その飛んで来たナイフを4本とも防ぐと、階段の死角から、何者かが勢い良く私の方に向かって攻撃を仕掛けて来た。その襲撃者は、メイド服を着用していたが、その手には、さっき私に飛んで来たナイフと同じ物が手に握られていた。

 私は、そんな襲撃者のナイフを持っていた刀で防いだ。

 因みにこの螺旋階段の大きさとしては、縦約2m、横約3m、高さ約2.3mという、そこそこ大きい螺旋階段なので、刀を使用した戦闘も可能なのである。


「先程の投げナイフの攻撃といい、今の奇襲といい、的確に急所を狙う攻撃。お前、ただのメイドではないな?」


 メイドは、私から少し距離を取る。そして、そのメイドは、ナイフを構えながら私の質問に答える。


「それを答える義理はありません。ですが、只者ではないのは、貴方も同じでは?」

「悪いが、そこを通してはもらえないか?私達は、その奥にいる人物に用があるのでな」

「では、ますます通すわけにはいきませんね!」


 いったいこのメイドはなんなんだ!?ダークリー邸のメイドにこれほど腕の立つのがいるなんて報告聞いてないぞ。


「あの春人殿が苦戦するなんて……只者ではないですね」

「そうね。あんなに強いメイド見たことないわ」

「ですが、春人様ならば負けることはないと思いますよ」


 3人は、そんなことを話していた。このメイドの実力は、スターズの幹部クラスに匹敵するほどの力を持っている。正直言って、民間人とはとても思えないレベルである。


「奥様を暗殺者なんかに殺させはしません!」


 メイドはそう言いながら、私の眼球と頸動脈を狙って攻撃をしてくる。どうやらこのメイドは、私達のことを、ソフィア正妃を殺しに来た暗殺者だと思い込んでいるようだ。


「メイドよ。我々はソフィア正妃を殺しに来た暗殺者ではない。むしろ救出に来た者だ」

「私のことを憶えていませんか?フィリス」


 マリウスは仮面を外し、本来の姿なった状態で、そのメイドのと思わしき名前を呼ぶ。


「ま、マリウス様!?ご無事で良かった!!」


 そのメイド……フィリスは、手に持っていたナイフを地面に落とし、嬉し泣きする。


「嬉し泣きしているところ申し訳ないのだが、ソフィア正妃の所へ案内をしてくれないか?」

「それで、貴方達はいったい誰なのですか?」

「そうだな。私は、アルマー王国国王兼スターズ五星使徒(ペンタグラム)第2席兼神級魔術師『魔剣の魔術師』の望月春人だ」

「肩書きを持ちすぎなうえに、凄い肩書きばかりですね」

「他は、私の婚約者であり、そこにいる彼女以外は、スターズの者だ。そして、そこにいる彼女は、スターズの者ではないが、神級魔術師『治癒の魔術師』だ」

「凄い方々ですね」

「すまないが、時間がないから早く案内してもらえると助かる」

「かしこまりました。私に着いて来て下さい」


 そして、メイドのソフィアに着いて行くと、ある一室に辿り着いた。

 そして、ソフィアはその部屋のドワをコンコンコンとノックをして部屋の中へと入室する。


「失礼します。奥様にお客様がお見えになっております」


 ここは、ソフィア正妃の息子であるマリウスが一番最初に入室するべきだと思い、マリウスが最初に室内へと入室する。


「は、母上……」

「マリウス……マリウス!」


 数年振りに再会した親子は、お互いに嬉し泣きをしながら抱きしめる。


「母上が無事で……本当に…良かった!!」


 あれだけ気丈に振る舞っていたマリウスが、今だけはまるで子どものように泣いていた。今まで我慢してきた分がここで溢れ出て来たようだな。


「ええと、ところで先程から気になっていたのだけども、扉のところにいるのはどちら様でしょうか?」


 やっと気持ちが落ち着いたソフィア正妃が、扉のところにいた私達に気付いたようで、私達にそのような質問をして来た。


「ソフィア正妃初めまして。私は、アルマー王国国王兼スターズ五星使徒(ペンタグラム)第2席兼神級魔術師『魔剣の魔術師』の望月春人です。そして、こっちにおりますのが、スターズ本部所属アルマー王国支部特別派遣捜査官の少佐兼私の婚約者の信女。そしてその隣におりますのが、同じくスターズ本部所属アルマー王国支部特別派遣捜査官の少佐兼私の婚約者のアイリス。そして更に隣におりますのが、宗教ギルド本部公認聖女兼神気魔術師『治癒の魔術師』のエイルです」

「そ、そうですか……なんだか、どう反応すれば分からないです」


 ソフィア正妃がそんなことを言っていたが、そろそろここから出なければならないな。


「ソフィア正妃。一応確認しますが、体に異常があったりしませんか?例えば、目眩がするとかだったり、思うように力が入らないとか」

「特にそういったのはありませんね」

「そうですか。ですが、ここに囚われてかなり経過していますので、念のために私の国で詳しい検査を受けて下さい」

「分かりました」

「みんなは先に帰って、ソフィア正妃とフィリスを淡雪に診察させてくれ」

「はい」

「ところで春人様は、どうなさるのですか?」

「私は、少しやることがある」

「そうですか」


 その私の一言でエイルはなんとなく察したようだった。とりあえず城に【ゲート】を繋げて、後のことを任せて、私はそのまま外に出た。

 建物の外に出ると、私が来た時に【パラライズ】で身動きを取れなくした警備兵がスターズや国際警察によって拘束されていた。もちろんダークリー邸の中にいる使用人を含むすべての者達を拘束済みである。


「この敷地内にいるすべての者達の拘束が完了しました」

「ご苦労。では、事前に話していた通り、無理矢理従わされていた者に関しては、エドモンドから守ってもらえるということを伝えて、信じてもらえたら解放し、自分から従っていた者達はそのまま拘束するという流れで行ってくれ」

「承知しました」


 その次に、ナカサカとローレンスのところへと向かった。


「敷地外に逃げた者はいたか?」

「誰もいません。全員、師匠の状態異常魔法で身動きが取れなくなっていたようで、少しだけ退屈でしたね」

「なるほど。ご苦労だった。今から城に【ゲート】を開くから、お前達は戻っているといい」


 2人は、私の開いた【ゲート】で城へと戻って行った。

 そして私は、最後の仕事として、ウルメリア王に会いに行くため、ウルメリア城へと【ゲート】を開き、ウルメリア王へと会いに向かった。

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