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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第17章 ウルメリア王国
153/176

153話 怪しげな婚姻

「そうか……引き続き調査に当たれ」

「は」

 

 一言そう言うと、菖蒲の部下の一人である『忍』の諜報員は、姿を一瞬で消した。

 報告して来た内容は、北にある小さな大陸であるウルス大陸。その大陸内にある国のうちの一国であるウルメリア王国。そのウルメリア王国で不審な動きがあるそうで、現在『(しのび)』の諜報員が調査を行なっている。

 私がそのウルメリア王国について考えていると、後ろの方からトトトトと誰かが走ってくる音がした。


「春人さぁぁぁん!!」


 突如として走ってやって来たリアが、私に思いっきり飛び込んで抱きついて来た。

 ………どういうこと?


「私と結婚してください!!他の方達と同じ立場において頂けなくても構いません!お願い、します!!」


 リアがそう泣け叫びながら、私の胸の中でもう一度思いっきり泣き始めた。とりあえずこの子を落ち着かせないと。


「落ち着けリア。ジアスさん状況の説明を願う」

「申し訳ありません、アルマー国王陛下。それについては、私の方からしっかりとご説明させていただきます」


 立ち話もなんだからということで、客室のバルコニーの方に移動する。そして、リアが落ち着いたところで、ジアスから説明を聞く。


「さて、さっきのリアの状態は明らかにおかしかった。それについての説明をお願いします」

「はい。お嬢様に対して縁談の話があったのです」

「私は、春人さんと結婚がしたいです。ですが、私は大公爵家の令嬢。政略結婚も仕方ない立場ですので、縁談の相手について聞きましたが、あれが相手なのは絶対に嫌です!」

「私もこの縁談に関しては、反対でございます」

「その縁談相手っていうのはいったい誰なんです?」


 その相手が気になった私は、ジアスにその相手の名前を聞く。


「ウルメリア王国第一王子のフィリップス殿下でございます」

「フィリップスだと!?」


 私はその名前を聞き、思わず声を上げながら椅子から立ち上がってしまった。


「確かに反対だという気持ちは、理解できるな。私としてもあのゴミにリアを嫁がせるのは反対だ」

「かなり言いますね……まあ、私も陛下には同意見です。フィリップス殿下には様々な悪評があり、特に女性関係に関しては最悪で、貴族令嬢から村娘まで関係なく手を出しているそうで……しかも子が宿った女性にはなんの援助もなく、そのまま貧しい生活になってしまった方も多いと聞きます」

「この件、クラウディウス大公爵はどう思っているんですか?」

「国としては無視できないといった感じです。なにせ、この婚約が成立すれば、国同士の関係が良好となり、貿易などもしやすくなるといったメリットがありますので」

「政略結婚としての考え方としては普通か。だが、あの国は今、スターズの監視対象となっていてかなり危険だ。もしそんな状態で嫁いだとなったら、リアはスターズの現地部隊によって拘束される可能性が高いですね」

「ですので、私と結婚していただければ、この婚約の件はなんとかなります。それに、ベルンガ王国としても、ウルメリア王国と良好になるよりも、アルマー王国と良好になった方が国としても良いはずです」

「リアの意見は分かった。婚約の話し云々に関しては、他のみんなと協議してからになるが、構わないか?」

「はい、構いません」


 話を進めていると、突然として、リリーがやって来た。


「至急の報告があります」

「なんだ?」

「ウルメリア王国の側妃と宰相が妙な動きをしています」

「妙な動き?」

「は。何やら軍備を強化しており、戦争の準備をしている可能性がございます」

「やはりか……ご苦労。あとついでに頼みたいことがあるのだが良いか?」

「なんでしょうか?」

「ここにいる、ベルンガ王国クラウディウス大公爵家令嬢、アルトリア・フォン・クラウディウスが何故、ウルメリアのフィリップスに結婚を申し込まれたのかを急ぎで調べてほしい」

「承知しました」


 そう言って、リリーは再びウルメリアへと向かった。

 私はその場で、手をパンパンと鳴らす。すると『(しのび)』の諜報員の一人がやって来た。諜報員を呼び出す方法は、この国には2種類ある。一つ目は、指をパチンと鳴らすこと。これは『暗黒群(クラヤミ)』用のもの。二つ目は、先程のように、手をパンパンと2回鳴らすこと。これは『(しのび)』用のものである。これを、王家や私が使用権限を与えた者が鳴らすと、国内であれば、基本どこでも現れる仕組みになっている。


「エリア達、婚約者全員を大広間に集めてくれ」

「承知しました」


 『(しのび)』の諜報員は、みんなを集めに向かった。そして、私達も大広間に移動するが、ジアスには、部屋の外に待っていてもらった。

 全員が揃って、話し合いを始める。


「みんなに集まってもらったのは、リアについてだ」


 みんなに、リアの今の状況などについて話し、リアの考えも伝えた。


「というわけで、私の判断で決めて良い問題ではない。君達が良いかどうか聞こうと思って、こうして集まってもらったというわけだ」

「私はいつかこうなると思っていましたので、反対するつもりはないですし、どちらかというと賛成です」

「拙者もエリア殿と同じです」

「あたしも反対しないわ。むしろ今更って感じよ」

「私も、リアさんなら、問題ありません」

(わたくし)は、反対する気はありませんわ」

「春人様が良いのであれば、私に反対する理由はありません」

「私は春人様のご意思に従います」


 みんなリアが私の婚約者になることに賛成のようだな。あとはクラウディウス大公爵と今後について話し合うとして、あの人のことだから、こうなることが分かってて、リアを止めないでここに来させたよな。


「とりあえずリアを婚約者とする方向で話を進めるとして、次の対応はウルメリア王国のフィリップス第一王子への対応だ」

「普通に春人と婚約してるからって言って、断れないの?」

「アイリス。貴族社会の結婚や婚姻というのは、そう簡単なものではない。エリアやテレスを見ていて勘違いしているのかもしれないが、王侯貴族で好きな人と結婚できる者は稀だ。はっきり言って、好きな人と結婚できるのは王侯貴族ではかなり凄いことだと思う。そもそも王侯貴族の結婚とは、あくまでも政治のうちの一つなんだ。だからそれを邪魔するということは、その国の政治を邪魔するのと同じことなんだ。だから、リアを婚約者だと言った場合、ベルンガ王国への貿易の関税を上げたりなどの嫌がらせや我が国に何かしらの嫌がらせをしてくることは間違いないだろうな」

「何よそれ!」


 アイリスが私の話を聞いて、怒りを露わにする。


「あくまでも予想の話だ。だが、今回の件は国家間の問題だから、スターズとしては関与することはできないだろうが、一国の王、そして神級魔術師の身分ならば話をすることができるだろうから、早速クラウディウス大公爵の所に行こうと思う。そういうわけだから、リア、ジアスさん。行きましょう【ゲート】」


 というわけで【ゲート】を開き、クラウディウス大公爵の所へと向かった。


「そんなわけで、私としてはリアをウルメリア王国のフィリップス第一王子に嫁がせることに反対します」


 クラウディウス大公爵にある程度の説明をした後に、リアをフィリップスに嫁がせることに反対だと言った。


「それとですが、リアを我が国に来るのを止めるどころか、ジアスさんを同行させたのは、リアを私の庇護下に置いてもらおうとしたからではないですか?」

「やはりバレていたか」

「そりゃあ、そもそも護衛役が執事であるジアスさん一人だけだったのも違和感がありましたし、何より、国際問題になるかもしれないのにも関わらず、フィリップス第一王子以外の嫁ぎ先として一番良い物件は、国際問題なんてものともしない権力を持っているのは、私ぐらいですからね」

「だけど、あの子自身も春人殿のことが好きなのは本当だし、親としては好きな者と添い遂げてほしいと思っている」

「この件に関して、ベルンガ王はなんて言っているのですか?」

「我が国としては、ウルメリア王国に媚びを売って、リアの将来を潰すよりも、将来性があり、信頼のおける春人殿の所に嫁がせた方が両国にとっても都合が良いと」


 まあ、国王としては普通の反応だな。


「旦那様、失礼致します。ウルメリア王国より使者が参りました」

「予定よりも大分早いぞ!痺れを切らして来たようだな。この際だからはっきりと婚姻の件を断ってやる!」


 ジアスが室内に入り、ウルメリアの使者がクラウディウス大公爵邸にやって来たことを報告する。そしてクラウディウス大公爵は、婚姻の件を断ることをこの場で使者に伝えるようだ。

 この人なら大丈夫だと思い【ゲート】を開いて城に帰ろうとすると、クラウディウス大公爵が私のコートの裾を掴む。


「なんですか?」

「春人殿にも話し合いに同席してほしい。もしも使者の者達が無理矢理にでもリアを攫う可能性も否定できないのでな。春人殿がいてくれればその心配もないだろう」


 詰まるところ、話し合いの最中に揉め事が起こったら解決してほしいわけか。


「分かりました。同席しましょう」


 そんなわけで、クラウディウス大公爵とウルメリア王国の使者達との話し合いに同席することとなった。

 ウルメリアの使者は、外交官と思われる人物が1人とその護衛が2人の計3人だった。拉致を考えているのであれば、この人数は少な過ぎるので、拉致の可能性はないなと思いつつも、警戒はしておくことにした。


「クラウディウス大公爵閣下。早速なのですが、我々がここに来たのは、アルトリア様の婚姻の件で参りました」

「その件は、我が国としては有難い申し出ではありますが、お断りさせていただきたい」

「……分かりました。ですが、理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


 断られたのに随分とあっさりしているな。もしかしたらこの者は、最初からこうなることを予想していたのだろうな。


「こちらにいらっしゃる、アルマー王国国王の望月春人陛下と婚約することとなったため、辞退させていただきたい」

「貴方がアルマー国王陛下!」


 そう言ってその使者達は、椅子から立ち上がるや否や床にほぼ土下座の態勢で私に頭を下げた。流石の私も少し困惑したが、とりあえず面を上げるように言う。


「公の場でもないのだから気にしなくても構わない」

「いえ!それよりもアルマー国王陛下は、転移魔法の使い手であり、神級魔術師の『魔剣の魔術師』様で間違いありませんか?!」

「あ、ああ……」

「私の……私の母を救ってはいただけないでしょうか?」


 いったいどういうことだ?


「事情が分からないから説明をしてくれ」

「まず私は、ウルメリア王国第二王子マリウス・ハイス・ウルメリアと申します」

「「なんだと!?」」


 私とクラウディウス大公爵がまったく同じ反応をした。だって普通に考えて、使者として王子を他国に護衛が2人だけで向かわせることなんてありえないことだ。だからこそ驚いてしまったのだ。


「そして、後ろにいる2人は兄弟であり、私が幼い頃から護衛として仕えている者達です。兄の方がジョセフ・ゼオンで、弟の方がカルロッサ・ゼオンです」

「マリウス殿下専属護衛第二階級騎士で兄のジョセフ・ゼオンと申します」

「同じくマリウス殿下専属護衛第二階級騎士で弟のカルロッサ・ゼオンです」

「さて、先程君は、母を助けてほしいと言っていたが、それはどういうことだ?」

「はい。私の母は病の感染を阻止するためという理由で、現宰相のエドモンド・ダークリーの領地にある隔離棟にて隔離されていますが、あくまでもそれは表向きの理由であり、本当のところは、正妃である母を隔離棟に何年もの間、幽閉しているのです」

「そうなのですか?アルマー国王陛下」


 マリウス第二王子の話にクラウディウス大公爵が私に質問をしてくる。


「私もその件に関しては初耳だ。それにウルス大陸を含む統合管轄は私の担当ではなく、前五星使徒(ペンタグラム)第3席のスピカ大将だったから詳しいことは分からない。それにウルス大陸は唯一スターズ支部がない場所だから情報収集もあまり出来ていないのが現状であり、更に未だ後任さえ決まっていません」

「その後任の第3席の方が担当すれば良いのでは?」

「その者は既に別の地区の統合管轄官だし、東方だからウルス大陸は難しいんですよ。今は仮の統合管轄官として、スピカ元大将の夫であり、一番担当地区から近い私が担当をしているんです」

「もしかしてそのスピカ大将は……」

「クラウディウス大公爵の予想通りですよ」


 少し話が逸れたと思った私は、さっきの話の続きに戻る。


「さて、話を戻すが、現在の状況として、ウルメリア国王正妃は、宰相の策略によって隔離棟に幽閉されているということで良いのだったな?」

「正確には、側妃であり、兄のフィリップス第一王子母であるサフラン側妃の一派によるものです。派閥としてあまりに強大であり、城のほとんどの者達がサフラン一派の手の者達です。反対派閥の者達は、城から左遷やクビになりました。前宰相であるドルヴァイン・オーシャンハート公爵も左遷という扱いで地方へと飛ばされてしまい、私に協力的な者は、城にはほとんどいなくなってしまいました。いるといっても、表向きにはサフラン一派となっていますので、私に表だった協力は難しくなっているのが現状です。あ、この2人は私に忠義を誓ってくれていますので問題ありません」


 そうでなくては大変なことになるからな。でも万が一のことがあっては困るので、一応『鑑定眼』でこっそりと観たが、本当にマリウス第二王子に忠誠を誓っていることが分かった。この2人ならば裏切ることはなさそうだな。

 すると突然、クラウディウス大公爵が椅子から立ち上がる。


「アルマー国王陛下に僭越ながら申し上げます」


 クラウディウス大公爵が改まった口調でそう言う。


「ここは西方諸国同盟に加盟している各国に緊急の西方諸国同盟会議を開くことを具申します」


 今回の件は、下手をすればベルンガ王国と戦争になる可能性もあるし、同盟国ではないにせよ、ウルメリア王国の現状は、ほぼほぼ側妃でサフランの一派によって支配されているに等しい状態だ。それに、そのウルメリア王国の第二王子からアルマー国王としての私に正式に捕らわれている正妃の救助を要請して来た。それならば、同盟会議を開いても問題ないはずだ。


「私は、至急城に戻り、同盟国の各王に緊急西方諸国同盟会議の開催に基づく、招集状を作成し、各国の王達に招集をしてもらう。というわけで、マリウス第二王子達も一緒に来てもらいたい」

「は、はい!」


 【ゲート】を開き、すぐさま城に戻った後、執務室へと向かった私は、緊急西方諸国同盟会議開催に際する招集状を作成し、各国の王達に送った。

 その後、急だったにも関わらず、意外にも早く、招集に応じて来てくれた。なんでも、私から緊急の会議の開催と招集があったとなれば、来ないわけにはいかないということらしい。なんとも有難い。


「ではこれより、緊急西方諸国同盟会議を開催します。本日、みなさんに集まっていただいたのは、ウルメリア王国についてです。そして、そのウルメリア王国第二王子であるマリウス・ハイス・ウルメリア殿下がいらしています。更にそのマリウス殿下より先ほど、正式な形でアルマー王国の国王としての私に対して、緊急救助要請がありました。詳細はマリウス殿下から、先ほど私に話したことをもう一度、みなさんに話していただきたい」

「分かりました」


 この場にいる者達に、さっき私に話したのと同じことをもう一度話す。

 

「というわけで、我が国としては、ウルメリア国王正妃を救出後、これに関与したサフラン一派の者達を拘束しようと考えています。したがってみなさんには、この作戦の承認を求めたいと思い、招集をかけさせていただきました」

「カメレオンの情報でも、サフラン一派は問題が多いとは聞いていたが、まさかここまでとはな……。もはや国家転覆を図った内容。我がベルンガ王国はアルマー王国を支持するとともに、マリウス第二王子の後ろ盾となろう」

「ヴァース帝国も同じく」

「アース王国も同じく」

「バルハラン王国も支持しよう」

「ランス教国も同じく」


 各国からの承認も得たことだし、国として動いても問題はなくなったな。それにマリウス第二王子の後ろ盾の用意もできたし、これでマリウス第二王子に万が一があったら西方諸国同盟を敵に回すことになるから、そう下手な真似はできなくなったわけだ。


「それにしてもひでぇ奴等だな。そのサフランとかいう側妃共もそうだが、フィリップスとかいう第一王子もクソみたいな奴だし、儂が思いっきり殴り飛ばしてやりたいわ!」


 バルハラン王がそう言って怒りを露わにしていた。


「話はまとまりましたので、緊急西方諸国同盟会議を終了とします。あ、申し訳ありませんが、今日はこちらの都合で遊戯室は使用ができませんので、そのままお帰り下さい」


 今日は仕事を抜け出して来てもらったので、流石にこのまま遊戯室で遊んでしまっては、各国の宰相達に申し訳ないので、今日はそのまま帰ってもらった。

 その後、流石に無策でウルメリア王国に向かうわけにはいかないので、エリア達とたまたま城の方に来ていたベリルシスターズ達を大広間へと集めた。流石にベリルシスターズのことは内密にしたいので、マリウス第二王子と護衛の2人には貴賓室にて待機してもらった。


「各国からウルメリア国王正妃の救出作戦の承認とマリウス第二王子へと後ろ盾となることを誓言してもらった。だが、サフラン一派の拘束は、国として行うことができない。そこで今回は、スターズも動くことが正式に決定した。そして今回の件は、同盟国であるベルンガ王国のクラウディウス大公爵令嬢と婚姻した後に奴隷にしようとしていた容疑があるため、国際警察も動員することとする」

「リアを奴隷にしようとしているということは本当ですか!?」


 エリアがそう切羽詰まったように私に聞いて来た。


「最近になって、購入リストの中に、隷属の首輪の購入履歴があることが、つい先ほど判明した。よって、ベルンガ王国の者に対する隷属未遂事件として、国際警察にも動くことになるとため、トワも仕事をしてもらう。国際警察だけではなく、スターズ職員としてもだがな」

「分かりました。至急、本部に行き、いつでも動かせるよう準備しておきます」

「頼んだ」


 そんなわけで、トワは国際警察本部へと向かい、捜査員をいつでも動かせるよう、準備をしに行った。


「さて、問題はどうフィリップスをどう対処するかだな」

「オレに提案があるぜ」

「なんだフェル?」

「『武具保管庫』に保管されてるガトリングで蜂の巣にしてやれば解決するぜ!」

「殺害対象以外も殺しかねないから却下だ」

「だったら、私の『練金塔』で、アマニタトキシンを作って飲食物に混入させれば、苦しんで死ぬの」


※アマニタトキシンとは、ハラタケ目テングタケ科テングタケ属のタマゴテングタケなどに含まれる環状オクタペプチド毒の総称。アマニチンα-, β-, γ-, などがある。摂取してから6〜24時間程度で、コレラの下痢、嘔吐、腹痛を引き起こす。更に数日後からは肝臓肥大、黄疸、胃や腸からの出血、その他、内臓細胞破壊が起こり、最悪の場合、死に至ることがある。


※黄疸とは、赤血球が壊れた際につくられる物質であるビリルビンの過剰による皮膚や目の黄ばみのことであり、症状の原因として、ギルバート症候群(良性)または薬物療法の副作用などが原因として挙げられる。


「確かに遅効性の毒だから混入させても、どこに毒が仕掛けられていたかは分からないが、混入させた後の処理が面倒だから却下だ」

「オレが作った『焼却場』自慢の特製火炎放射器で燃やせばすべて解決だ」

「そんなことしたらウルメリア城まで燃えるわ!あとこの城まで燃やしかねないからその火炎放射器を今すぐ片付けろ!」

「ちぇ〜」


 ファーナがそう文句を言いながら、火炎放射器を片付けた。そんな物をここに持って来るなよ……。


「でしたら、私の『万能工房』で製作した、狙撃用ライフルで遠距離からヘッドショットをしてしまえばバレやしません」

「確かに今までの中では一番現実的ではあるが、ライフルだとスターズの犯行だとバレるリスクが高いから却下だ。それに現在ある証拠だけでは、暗殺許可が出ない。だから私としては、私が【フラウト】という相手からその魔法をかけられた人物のことを無視するという無属性魔法と念のための気配遮断を使って、マリウス第二王子を【ゲート】でウルメリア城の近くまで向かい、マリウス第二王子に混ざってこっそりと城の中に潜入し、私が証拠を収集し、すべての証拠の収集が完了次第、フィリップス及びサフラン一派を拘束するつもりだ」

「ねえ春人、あたしも一緒に連れて行ってちょうだい。そのフィリップスとかいう奴を見てみたいわ」

「拙者もその不埒者(ふらちもの)を一度この目でいてみたくなりました」

「春人様。(わたくし)も連れて行ってくださいまし」

「春人様、私もその者の心を浄化したく存じます。ですので、一度その者の心を見たいので、同行の許可を下さい」

「春人さん、私もお願いします」

「私もお願い、します」


 みんなが一緒に同行したいと言って来たが、流石に人数が多いので、人数を絞り込むことにした。


「まず、トワは国際警察本部本部長としての仕事があるから無理だ。次にエリアは代理国王権所持者だから、万が一何かあった場合には、それに対応してほしいから、ここに残ってほしい。次にトリスは、エリアと共にこの後来る客の相手をしてほしい」

「お客さん、ですか?」


 トリスが首を傾げながら聞いて来た。


「その相手は、スターズ元帥の望月白夜と五星使徒(ペンタグラム)第5席、コードネーム|カプラこと望月春奈の2人だ」

「それって、スターズの実質的なトップな上に春人の子供達じゃない!?」

「そうだ。だが今回は、スターズの人間として来るから、2人もそのように対応をしてくれ。なんなら、2人が来たらトワに連絡をして、トワにも同席してもらうのもありだな。トワとならば話もしやすいだろうし」

「わ、分かりました」


 それから話を進めた後に、その事をマリウス第二王子に伝えた後、予定通りに【ゲート】を使って、城の近くまで移動した。

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