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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第17章 ウルメリア王国
151/176

151話 朱雀とデスナイトロード

「コハク、少し良いか?」

「どうかなさいましたか?(あるじ)

「新たな情報網として、鳥類を使いたいのだが、丁度良いやつを知らないか?」

「でしたら、南方と火を司る我と同格の存在、朱雀は如何でしょうか?」


 朱雀か。やはり、この世界の四神獣は前の世界と同じ名前のようだな。


「では、朱雀を召喚したい。それでだが、朱雀は何か要求するとしたら何を契約の条件にしてくると思う?」

「朱雀は、我ら神獣の中で最も聡明です。既に我と玄武を従わせているので、力での実力を示してもらうということはないでしょう。ですので、要求は比較的簡単かと思います」

「分かった。では、これから朱雀を呼び出すとするか」


 それから、玄武であるヤト&ユカリ。そして、朱雀を召喚するための召喚陣を地面に描いた。


「では、コハクとヤト&ユカリは召喚陣に霊力を流してくれ」

「御意」

「分かったわ」

「お任せください」


 これで準備が整ったし、そろそろ始めるか。


「【南方と火を司りし神獣朱雀よ。我が声に応じ、現世へ顕現(けんげん)せよ】」


 詠唱が終わるのと同時に、召喚陣の中に突如として、火柱が発生した。火柱が落ち着くと、火柱によって隠れていた姿を見せた。


『私を呼び出したのは、やはりあなた達でしたか』

「相変わらず登場の仕方が派手だな。朱雀」

「久しぶりね、朱雀」

「久しぶりです、朱雀。お元気そうで何よりです」

『私を呼び出したのはその方ですね。……貴方、人間なのですか?』

「ほう」


 普通の人間だと、早々に判断しないだけ、コハクの言う通り神獣の中で最も聡明と言われるだけのことはあるようだな。


「一応確認だが、なぜそう思ったんだ?」

『貴方から漏れ出ている気配が、明らかに普通の人間が出せるものではありません。それこそ人間よりも遥か上位種のもの……』

「正解だ。私は人間(ヒューマン)ではなく、人間(ヒューマン)よりも遥か上位種の古代人間(エンシェントヒューマン)だ。流石は神獣の中で最も聡明と言われるだけのことはあるな」

『恐縮です』

「それで本題に入るが、私と契約してほしい」

『分かりました。貴方と主従の契約を致しましょう』


 随分とあっさり承諾したな。普通ならば、何かしらの条件を出して来そうだが。


「私から言うのもあれだが、そんな簡単に主従の契約を結んでも良いのか?」

『はい。白虎と玄武と契約を結んでいる貴方に実力で勝てるとは思えませんので。ですので、私に契約の証として、名をいただければ、それを契約条件と致します』


 悪くない条件だな。


「分かった。それならば、契約を行おう」


 契約の詠唱を唱える。


「【我が名は望月春人。ここに主従の契約を結びし種族は神獣朱雀。我が契約獣となりし汝らの名は……トウカ!】」

『トウカの名。拝命致しました』


 トウカが一言そう言う。


「早速だが、トウカに頼みたいことがあるんだが、その前にこいつらと同じく小さくなることは出来るか」

『承知しました』


 私がそう言うと、トウカはインコぐらいの大きさに小さくなった。


「さて、話を戻すが、お前に頼みたいのは、この城の付近にいる、ある程度の知能を持ち、人語を理解できる鳥類をここに呼び寄せて、あるものを探してほしいんだ」

『分かりました』


 トウカが一言そう言うと、トウカから超音波のようなものが出された瞬間、城の付近にいた鳥達が一斉に集まって来た。


「怪しい遺跡やダンジョン、建造物があったら報告をしてほしい」


 私がそう鳥達に命令すると飛び出して行った。これで、鳥達が何かしら見つけたら、トウカを通して私に伝わるようになっているので、すぐに分かる。


「私の方でも一応、式を使って探すか」


《召命───八咫烏(ヤタガラス)


 数羽の八咫烏を位相から出して、ベリルベルの遺跡を探し出すように命じた。

 それから数日後、トウカの眷属の鳥が遺跡を発見したらしいので、早速行ってみることにした。

 今回、私と同行するのは、私の婚約者組とマリンである。マリンもまた、ベリルベルの施設(特に大図書館)に興味があるようなので、連れて行くことにしたのだ。

 その遺跡が発見されたのは、フェイラーン王国の北側らしい。フェイラーン王国の国土は意外と広く、以前のアンデットドラゴンの時は、南側だったので、それほど寒くなかったが、今回は最も北側にある場所であり、その地域は、季節関係なく寒く、溶けることのない雪で覆われている地域で、スターズでさえ、第四級区画に指定するぐらいの危険性がある。だが、防寒対策やそこに生息する魔物に注意さえしていれば、あの子達でもそれほど危険はないし、最悪の場合は、私がどうにかすれば良い。

 流石に銃は、寒すぎて発泡ができないので、今回は魔法や物理攻撃が主体となるだろう。


「みんな準備は出来たかい?」

「いつでも良いですよ」

「今回の遺跡が大図書館のものなら良いのだけど」

「それは転移するまで分からないからなんとも言えないな」

「そんなことより早く行きましょ」

「そうですね。アイリス殿の言う通り、早く行ってその遺跡を見てみたいです」

「もう。お姉ちゃん達ったらせっかちなんだから……」

「防寒対策は良さそうだし、行くよ【ゲート】」


 【ゲート】で、その遺跡の近くまで繋いで向かった。

 【ゲート】を潜り抜け、全員が潜り抜けたのを確認して【ゲート】を閉じる。遺跡の前では、さっきまでいた城の天気と違って吹雪になっていて、目の前にある遺跡の入り口がなんとか見えるという感じだった。


「みんなそのまま真っ直ぐに進んで。それと、吹雪いているから、多分大丈夫だとは思うが逸れないように!」


 私はこの吹雪でも目は見えているが、あの子達は恐らくあまり見えていないはずだ。それでも、遺跡の入り口ぐらいは、見えているはずだから大丈夫だと思うし、もし逸れそうになったら私がどうにかすれば良いだけのことだ。

 それから少し歩いて、全員無事に遺跡内に入ることが出来たようだな。遺跡に入ることさえ出来れば、後はこっちのものだ。

 それから遺跡を探索し、奥へと進んで行く。

 遺跡の奥に進むと、かなり大きな部屋へと出た。恐らくここが、遺跡の最奥の部屋のはずだ。一応、銃を確認するが、やはりここも外と同じように冷えすぎていて使えないようだな。

 そんなことを考えていると、一瞬だけ、殺気のようなものを感じた。


「春人様」

「分かっている。【ダークブレイズ】」


 どうやらトワも気付いたようだな。そして、他のみんなも、私が【ダークブレイズ】を発動させたことにより、状況を把握したようで、戦闘態勢に入った。

 いったい何処に……上か!?

 【ダークブレイズ】で、上から襲いかかって来た攻撃を防ぐ。

 

「デスナイトだ!全員油断するな!そいつは君達にとってはアンデットドラゴンと同じぐらいの強敵だ!」

「ここは通さない」

「喋った……だと!」


 デスナイトは確かに上位アンデットで、アンデットの中では知能がある方だ。だが、デスナイトのほとんどは人語を話すことはできない。それが可能ということは、こいつは……。


「なんということだ。まさか、デスナイトではなくデスナイトロードだったとはな。アハハ……」


 デスナイトロードなんて笑えるか!私でも苦戦する相手だ。デスナイトロードになるパターンは主に2つ。1つ目は、デスナイトから進化するパターン。2つ目は、勇者や英雄またはそれに近い力を持った人物が死亡した際にアンデット化したパターンだ。恐らくこいつは2つ目のパターンだろう。そうなってくると、私一人だけならばともかく、あの子達を守りながらだとかなりキツイな。こうなったら……。


「君達はこの部屋から出ろ!」

「私達も戦います!」

「こいつ相手には私とて、少し本気で相手にしなくてはならない!」


 デスナイトロードと戦闘をしながらみんなにそう伝える。


「春人殿の言う通り、一旦撤退しましょう」

「そうですね。このままここにいれば、春人様の足手纏いになってしまいます」

「私も賛成ね。このままここにいても、春人の戦闘の邪魔にしかならないわ」


 信女とトワとマリンは、さっきの私の言葉の意図がしっかりと伝わったようで、他のみんなに撤退するように促した。

 みんなが部屋の外に撤退したのを確認して、デスナイトロードの攻撃の隙をついて、部屋全体に【ガッディスブレシング】を展開した。神級の広範囲結界魔法なので、外に被害が出ることはないだろう。それに、部屋の外にいる魔物程度ならば、あの子達でもなんとかなるし、それに、聖王級魔術師のマリンもいるから心配はいらないだろう。

 とにかく、これでようやくこっちに集中できるな。


「【アブソリュート・ゼロ】」


 【アブソリュート・ゼロ】で、デスナイトロードが凍っている隙に、急いで【ストレージ】に今使っている刀を仕舞ってから、新たに三日月宗近を取り出す。

 そして、デスナイトロードが【アブソリュート・ゼロ】を破った。


「【マジックブレイズ】」


 無属性以外の属性の色を纏った、魔力で作られた剣が、空中に無数に展開される。

 そして、私が手を挙げて一気に下ろした瞬間に、デスナイトロードへと向かって飛んで行く。デスナイトロードは、その【マジックブレイズ】を剣で弾いている。私は、その【マジックブレイズ】の隙間から、デスナイトロードに向かって【ホーリーチェーン】を放つ。そして、デスナイトロードに【ホーリーチェーン】が絡まったところで、更に地面からも【ホーリーチェーン】を絡ませて完全に固定する。【ホーリーチェーン】は、アンデット系の魔物には、触れるだけでもダメージが入るものだ。なので、これでもダメージは入っているのである。

 そして、ただ固定するためだけに【ホーリーチェーン】を使ったわけではない。その固定した理由は、このデスナイトロードに質問をするためである。


「それは簡単には破壊できんぞ。少しだけ、私の質問に答えてくれないか?」

「……構わん」

「感謝する。デスナイトロード、お前はなぜこのようなところにいるんだ?本来、お前のような奴がこんな遺跡にいるとは思えないのだが?」

「その話をするのなら、俺の昔話をすることになる。俺の昔話は少し長くなるかもだが、いいな?」

「ああ」

「俺の昔話をする前に、俺の本名を先に言おう。俺の本名は、エドガー・スラス・ツランツェルだ」

「ツランツェル……ツランツェルだと!?ツランツェルと言えば、8000年程前に滅びた伝説の大国。しかも、エドガー・スラス・ツランツェルと言えば、ツランツェル王国最後の国王にして、英雄王と呼ばれた存在……まさか、デスナイトロードとなってこんなところにいるとはな」


 元英雄王と呼ばれた存在ならば、デスナイトロードになっていても不思議ではないな。


「そうか。もはやツランツェル王国は、この時代には残っていないのだな」

「そうだな。既にツランツェル王国は伝説上の存在になりつつあるな。すまん、続きを話してくれ」

「そのツランツェル王国の国王であった俺は、民達を守るために、前戦でドランクと呼ばれる怪物と戦っていた。だが、そんなある時、他国との合同作戦を行っていた際に、今までに見たことのなかった姿をしたドランクが、突如として現れた。その姿は、まるで我々と同じ人間の男のような姿だった」


 恐らく支配級のことだろう。今の話からして、そいつは男性型だから、あの時の2体とは違う奴だな。


「その人間のような姿をしたドランクは、その場にいた戦友達を笑いながら次々と殺していった。そいつはまるで、狩を楽しむ猛獣のような姿だった。俺も瀕死の怪我を負ったが、生き残った……生き残ってしまった。俺はもう一度あのドランクを見つけて、戦友達の仇を取ろうと思ったが、その前に他のドランク共に殺されてしまった。俺は死んだ後、生前の未練からデスナイトロードとなった。その後、当時アバロント文明の中で最も名を馳せていた研究者であり発明家のルベルス・ベリルベル博士が俺に目をつけた。そして、ベリルベル博士は、ベリルベル博士の施設に繋がる転移陣のあるこの遺跡の守護者を俺に命じたが、俺の支配は、ベリルベル博士ではなく、転移陣に繋がる先の施設の管理者になっている」

「そうだったのだな」


 私はそう言って、指を鳴らして【ホーリーチェーン】を解除する。


「……いったい何の真似だ?」

「私は元々お前と戦うつもりはない。大人しく、していてくれさえしてくれれば助かる」

「さっきも言ったが、俺はここの守護を命じられている。適合者でなければ通すなと言われている」

「私は既に、ベリルベル博士の施設のうち『武具保管庫』と『万能工房』と『焼却場』の管理者には認められている」

「ベリルベル博士の施設は国家機密レベルで情報が管理されていて、その施設の名前は文献や資料として残ることは決してないようにしている。それに施設の名前を知っているのは、ベリルベル博士と俺だけの二人。つまり、本当に手に入れているようだな」

「そういうことだ。それでもまだやるか?」


 正直、ここで引いてくれると助かるんだが。


「残念だが、それでもここの守護者としての責務を果たさねばならん」

「そうか。ならば、私も遠慮はできない」


《シエラ、リミット解除を行う》

《了。準備が完了しました》


第一限界解除(ファーストリミットリリース)


 その瞬間、私の身体が文字通り変化する。額に漆黒の2本の角が生え、牙も伸びる。腕も服がはち切れるほどに筋肉が膨れ上がった。


「この姿になるのは、まだ先のことだと思ったんだがな……だが、この姿になった以上、さっきの私と比べられないほどに素速さと筋力が上がっているから精々気を付けろ」


 三日月宗近を強く握り、エドガーへと迫る。一瞬でエドガーの背後に回り込み、背中をとる。

【月剣流剣術 五の型


天満繊月(てんまんせんげつ)】」


 月剣流剣術の【天満繊月】を背後から攻撃するが、エドガーは間一髪のところで、私の剣を防ぎながら瞬時に私から距離を取った。


「【雷鳴流剣術 一の型 紫電一閃】」


 一瞬で(エドガー)に近づき攻撃する。エドガーは、攻撃の速度に対応することが出来ず、攻撃を許す。しかし、完全に対応出来ていないわけではなく、ダメージを軽減するといった感じだった。

 エドガーは、今の攻撃で態勢を崩して倒れる。その隙に近づく。立ち上がったところに発勁をエドガーの腹に打ち込む。すると、エドガーは吹き飛ぶ。


「【ホーリーブレイズ】」


 空中で身動きが取れないエドガーに対して【ホーリーブレイズ】を放つ。

 

「【付与(エンチャント):フローズン】」


 刀に【フローズン】という氷魔法を付与(エンチャント)した。

 刀をエドガーに振り下ろした瞬間、エドガーは瞬時に避けた。


「地面が凍った……なるほど。その剣に付与(エンチャント)をしたのか」


 その後も激しい剣と剣の攻防が繰り返された。

 それにしても妙だ。これだけこの刀が剣に当たっているのに、なんであの剣は、凍らないんだ?


「なんで凍らないのかって顔をしてるな。良いだろう教えてやる。俺が英雄王と呼ばれたのは、一重に俺だけの力だけじゃなく、この剣にあるのさ」


 こっそりと剣に『鑑定』を発動させる。


「眼が少し変わったな。魔眼……この状況的に『鑑定眼』といったところか」

「さっきからよく知っているな。そういえば、英雄王の他にも賢者の二つ名を持っていたな」

「伊達に賢者の二つ名を持ってないってことだ」


 あの剣は、エドガーが使っていたとされる魔剣ヴァルトアニマ。その能力は、状態異常系の攻撃を無効化と破壊がほぼ不可能とされる神器に近い性能を持つ魔剣。エドガーが死亡してから場所が不明だったが、まさか本人が死亡してもなお持っていたとはな。そりゃあ、自分の剣を持っていてもなんら不思議なことではないか。盲点だったな。

 攻撃を繰り返し、左手で発勁の構えを見せる。エドガーは、その攻撃を防ごうとしたが、これはあくまでもフェイントだ。そして燕返しのようにして片手で攻撃を行う。


「剣を短剣のようにして持って下から斬るだと!?」

「これで終わりだ。【月剣流剣術 一の型 常世孤月(とこよこげつ)】」


 激しい斬撃が起こる。この技は、生きている生物であれば間違いなく細切れになる技だ。アンデットあるエドガーならば、死ぬことはないが、付与(エンチャント)されたものを使用者本人まで防ぐことは、あの魔剣でもできない。なので、こうなってしまう。

 私の目の前にあるのは、今の攻撃で凍って氷の中に閉じ込められたエドガーの姿だった。

 

第一限界封印(ファーストリミットシール)


 戦いが終わったので、リミットをロックするのと同時に、この部屋に張られていた【ガッディスブレシング】も解除する。


『春人(様・殿・さん)!あの姿はなんなんですか!?』

「今から説明するから、落ち着いてくれ」


 みんな落ち着いたところで話す。


「あれは、私の力の限界を一段階解除したものだ。私の力は、かなり強力で、何段階かに分けて力を封印しているんだ。今のこの力は、封印されたものなんだ」

「今の段階で、力を封印した状態なんて……もう言葉も出ないわ」

「春人殿。先程、姿が変わっていましたが、春人殿は人間?なんですよね?」

「ああ、人間だ。あの姿は、人間の姿では限界があるから、その力に適した種族の姿に変化するんだ。筋肉だったら鬼だったりね。さて……」


 指を鳴らして、エドガーを閉じ込めていた氷を消し去る。


「エドガー。お前は私に負けた。それは分かるな?」

「分かっている。だが、転移陣の間を見つけるまでが、この遺跡の試練だ」

「なんだ、そんなことか。それならば、その壁の向こうだろ?」


 私は指を指しながら、エドガーにそう言った。


「お前は無意識だったのかもしれないが、あそこに向かないよう、注意しながら戦っていた。なんなら今すぐにあの壁を破壊しても良いぞ」

「……正解だ。転移陣は、その壁の向こう側にある。ただし、転移陣の使用を認めるのはお前一人だけだ。これだけは譲るわけにはいかない」

「それで構わん」

「そうか」

「ところで話は変わるんだが、私がその施設の管理者にマスターとして認められたら、お前は私の配下になるということだろ?」

「そうなるな」

「もし、お前さえ良ければなんだが、私と一緒来る気はないか?」

「……分かった。管理者に認められたならば、この俺、エドガー・スラス・ツランツェルは、お前の配下となることを約束しよう」

「私は、望月春人だ。この時代にあるアルマー王国という国の国王をしている。国といっても、新興国且つ小国だがな」

「それでも国王であることに変わりはない。これからよろしく頼むぞ。春人陛下」

「こちらこそよろしく頼む。元英雄王エドガー」


 私達は、お互いに握手を交わした。デスナイトロードは、基本的に霊体であり、触れることは出来ないのだが、エドガー自身が触れられるようにしているので、こうして握手を交わすことが出来たのだ。


「ついでだから、もう一つ私の身分を教えると、私は、スターズの最高幹部である五星使徒(ペンタグラム)も兼任している」

「スターズっていえば、ドランクと完全なる敵対をしている組織で、ドランクの討伐数も当時の組織的討伐数上位だった組織だな。あの人型ドランクを退けたのも、スターズトップの黒鉄様だった」

「黒鉄様がまだ前戦で戦っていた時だな」

「スターズの人間ってことは、人間(ヒューマン)ではないだろ?」


 やはり知っていたか。


「そうだな。私は人間(ヒューマン)ではなく、古代人間(エンシェントヒューマン)だ。お前ならば、人間の種族進化の進化系統は知ってるだろ?」

「確か、黒鉄様と白金様が最上位とされる究極人間(アルティメットヒューマン)で、そのひとつ下が古代人間(エンシェントヒューマン)だったよな?」

「まあ、その通りだったな。だが、黒鉄様と白金は、究極人間(アルティメットヒューマン)の先、本当の最上位種族である神族(しんぞく)となっている」

「そうなのか。それよりも、なんで白金様だけ呼び捨てなんだ?」


 そうか。エドガーは、白金がスターズに反逆する前にここに来たのか。だったら知らないか。


「呼び捨てにした理由は至極簡単だ。彼が、スターズに反逆し、現在は『フェアラート』という組織のトップをしている。そして、その『フェアラート』は、スターズが本部を突き止めようとしているが、現在に至るまで、尻尾が掴めていない」

「そうなんだな。スターズですら、情報が掴めないなんて、流石は元スターズのトップをしていただけのことはあるな」

「そうだな。かなり話が長くなってしまったな。私はそろそろ行かせてもらおう」


 私は、壁に向かって歩き出す。壁の前に立ち、壁を手探りで探し、少しだけ違和感のある部分を叩く。すると、中が空洞になっている場所があったので、その壁を容赦なく破壊する。壁を破壊すると、ベリルベルの施設へと繋がる転移陣がある部屋に繋がっていた。

 部屋の中に入り、その転移陣の上に乗る。


「それじゃあ、少し行って来るから、そこで少しだけ待っててくれ。ビエラ、コハク、ヤト&ユカリ、トウカ。その子達を任せた」

『お任せ下さい』


 いつも通り、属性魔力を流して、転移陣を起動させてベリルベルの施設へと飛んだ。

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